やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 現代の医療は,医師だけでなく,管理栄養士,看護師,薬剤師,臨床検査技師,診療放射線技師,理学療法士など多くの医療専門職種が参加するチーム医療を根幹としている.科学的根拠に基づいてチーム医療を実践するには,それぞれの医療スタッフが患者の病態を的確に把握し,診断を正確に理解しておかねばならない.病態を明らかにし,正しく診断する上で,臨床検査の果たす役割は大きい.
 栄養指導および栄養管理を実施する際には,患者の疾患名を理解しておくことはもちろんであるが,個々の患者の病態を適切に理解し,その上で個々の患者に応じてメニューを考えなくてはならない.その目的に重要なのが臨床検査であり,患者の臨床検査データを認識し,そのデータを活用することが求められる.この意味で,結果の読み方と解釈を正しく理解することは,栄養指導,栄養管理の実践に重要である.
 このように栄養指導,栄養管理に臨床検査を応用することは大切である.しかしながら,実際に現場で管理栄養士や栄養士に聞いてみると,臨床検査値の読み方や解釈が十分にはできないとの話しを耳にする.医学的な教育を受けているとはいうものの,実際の症例のデータをみて解釈するトレーニングを受ける機会がきわめて少ないので,解釈が難しいというのは理解できる.だが,論理的な栄養指導,食事療法を実践するには,やはり臨床検査値を正しく読み,解釈できる実力をつけておくことが望ましい.
 そこで,本書では,とくに栄養指導,食事療法において重要な臨床検査について,その意義と解釈について解説することを目的に編集した.あまり検査データをみる機会の少ない管理栄養士,栄養士にも本書を見ただけで十分に理解できるよう,できるだけ実際の症例を多く提示することにした.
 ぜひ本書を活用し,栄養指導,栄養管理の向上に役立てていただきたい.
 本書の企画,編集には医歯薬出版編集部のご尽力を賜った.ここに深謝する.
 平成16年初冬
 奈良信雄
第1章 臨床検査の意義と内容
 1.臨床検査の目的
  1 疾患の診断
  2 早期発見
  3 経過のモニター
 2.臨床検査の内容
  1 検体検査
  2 生理機能検査(臨床生理検査・生体検査)
  3 画像検査
 3.臨床検査値の読み方と解釈
  1 基準値(基準範囲)
  2 カットオフ値
 4.栄養指導・栄養管理と臨床検査
第2章 臨床検査値の解釈
 1.尿・便検査
  尿検査
   尿量
   尿pH
   尿たんぱく
   尿糖
   尿潜血
   尿沈渣
  便検査
   便潜血
   寄生虫
 2.血液検査
  血球検査
   赤血球(RBC),ヘモグロビン
   (Hb),ヘマトクリット(Hct)
   白血球(WBC)
   血小板(Plt)
   血液像
  血栓・止血検査
   出血時間
   プロトロンビン時間(PT)
   活性化部分トロンボプラスチン
   時間(APTT)
   フィブリノゲン(Fbg)
   トロンボ試験(TT)
 3.血液生化学検査
  たんぱく検査
   血清総たんぱく(TP)
   血清アルブミン(Alb)
  糖検査
   血糖
   糖負荷試験(GTT)
   糖化ヘモグロビン(ヘモグロビンA1c),フルクトサミン,糖化アルブミン
   1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)
   インスリン,Cペプチド
  脂質検査
   総コレステロール(T-Chol)
   トリグリセリド(TG)
   リポたんぱく(LP)
   HDL-コレステロール(HDL-Chol)
   LDL-コレステロール(LDL-Chol)
  肝・胆道機能検査
   アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)(慣用:GOT),アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(慣用:GPT)
   乳酸脱水素酵素(LDH,LD)
   ビリルビン(Bil)
   アルカリホスファターゼ(ALP)
   γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP,γ-GT)
   コリンエステラーゼ(ChE)
   チモール混濁試験(TTT),硫酸
   亜鉛混濁試験(ZTT)
   インドシアニングリーン試験(ICG検査)
   アンモニア(NH3)
  膵機能検査
   アミラーゼ(AMY)
   リパーゼ
  腎機能検査
   血中尿素窒素(BUN,UN)
   クレアチニン(Creat)
   クレアチニンクリアランス(Ccr)
   フェノールスルホンフタレイン試験(PSP)
   β2-ミクログロブリン(β2MG)
  尿酸(UA)
  電解質検査
   ナトリウム(Na)
   クロール(Cl)
   カリウム(K)
   カルシウム(Ca)
   リン(P)
  ホルモン検査
   甲状腺ホルモン
   甲状腺刺激ホルモン(TSH)
  無機質検査
   鉄(Fe)
   総鉄結合能(TIBC),不飽和鉄結合能(UIBC)
   フェリチン
   銅(Cu)
 4.免疫・血清検査
  炎症マーカー検査
   赤血球沈降速度(血沈,赤沈)(ESR)
   C反応性たんぱく(CRP)
  感染症関連検査
   抗ストレプトリジンO抗体(ASO)
   梅毒反応
   A型肝炎ウイルス検査(HAV)
   B型肝炎ウイルス検査(HBV)
   C型肝炎ウイルス検査(HCV)
   エイズウイルス検査(HIV)
  自己抗体検査
   リウマチ因子(RF)
   抗核抗体(ANA)
  アレルゲン検査
   免疫グロブリンE(RAST,RIST)
  免疫グロブリン検査
   血清免疫電気泳動(IEP)
   免疫グロブリン定量(Ig)
  腫瘍マーカー検査
   α-フェトプロテイン(AFP)
   癌胎児性抗原(CEA)
   CA19-9
 5.病原微生物検査
  微生物検査法
   塗抹検査
   培養検査
   その他の検査
  おもな感染症の起炎菌
 6.染色体・遺伝子検査
  染色体検査
  遺伝子検査
 7.生理機能検査
  心電図検査(ECG)
  呼吸機能検査
   肺活量測定
   努力肺活量測定
第3章 臨床検査データ値を基にした栄養指導のポイント
 ・糖尿病の臨床検査
 ・高脂血症の臨床検査
 ・虚血性心疾患の臨床検査
 ・痛風の臨床検査
 ・肝疾患の臨床検査
  急性肝炎
  慢性肝炎
  肝硬変
 ・腎疾患の臨床検査
  急性糸球体腎炎
  慢性糸球体腎炎
  ネフローゼ症候群
  慢性腎不全
 ・貧血の臨床検査
  甲状腺疾患の臨床検査
  甲状腺@能亢進症(バセドウ病またはグレーブス病)
  甲状腺機能低下症
 ・膠原病の臨床検査
 ●演習問題
 付録・基準値一覧
 索引