やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

推薦のことば
 多くの臨床医に親しまれてきた「外来医マニュアル」が,今回5年ぶりに大幅に改訂されて,新たに第4版として世に出されることとなった.
 外来診療のマニュアル本は他にも多々あるが,本書の特徴は,何と言ってもコンパクトで持ち歩きができる点にある.今回の改訂でページ数は大幅に増えたが,「白衣のポケットに入れて持ち歩ける大きさ」という当初の編集姿勢は頑として守られ,調べたいときにすぐにみることができる.また,ページの余白に設けられたユニークなメモ欄もそのまま維持されており,書き込みを入れることにより,自分だけのオリジナルマニュアルを創りあげることができる.
 内容は,第1章総論編,第2章症候編,第3章健診・検査異常への対応編,第4章疾患編,第5章小児編,第6章資料編との構成になっているが,まずは,総論編が秀逸である.外来初診患者診療の心得から始まり,高齢者診療,女性診療,医療連携,慢性疾患の管理,精神科への紹介,予防接種,緩和ケア,在宅・往診・訪問診療,社会福祉制度・社会資源など,私たちが毎日外来で行っている多様な問題への対応の原則が明快に記されている.多忙な診療の中,我流となりがちな場面の対処に関しても,ここに立ち返ることにより,自らの診療姿勢を正しく保つことができる.
 そして,今回の改訂で特筆すべきは,第2章の症候編である.前版に掲載されていた頭痛,めまいなどの基本30症候に加え,今回,潮紅,頸部痛,腹部膨満,認知機能障害,無月経などの新たな24症候が加わり,多彩な症状への対応を求められるプライマリ・ケアの外来で,痒いところに手がとどく,きわめて有用な54症候のラインアップとなった.症候ごとの鑑別疾患に加え,鑑別の臨床的なポイントが詳細に記載される構成となっており,より実践的で使いやすい内容に改訂された.
 メインとなる第4章と第5章の疾患編と小児編では,前版でも外来で扱うcommonな疾患はほとんど網羅されていたが,医学・医療の進歩やガイドラインの改定に伴い内容が一新され,医療・介護関連肺炎,骨盤臓器脱,ロコモティブシンドロームなどの項目も新たに加えられた.疾患ごとの適切な検査法や実際の処方内容なども詳細に記され,きわめて実践的な診療マニュアルとなっている.
 本年は新専門医制度の下,新たに総合診療専門研修プログラムが開始された記念すべき年である.ジェネラリストにとって最も大切な診療能力とは,目の前の患者の多様で多彩な問題に対して柔軟に対応できることである.その意味では,このマニュアルは,まさに総合診療医,家庭医,そしてプライマリ・ケアの現場を支える全ての臨床家のためのマニュアルと言えよう.
 どうか,本書を白衣のポケットの中にいつも入れておいていただき,書き込みを自在に加え,自分だけのオリジナルなマニュアルとして,ボロボロになるまで可愛がっていただきたい.この一冊は,外来診療において,かけがえのない心強いパートナーとなるであろう.
 2018年5月
 大阪医科大学地域総合医療科学寄附講座,同附属病院総合診療科
 鈴木富雄


第4版の序
 本書の前身である「プライマリケアマニュアル」が,外来診療におけるcommon diseaseへの実践的な対応にフォーカスして「当直医マニュアル」の姉妹版として発行されたのが1990年です.その後,2004年には新しい医師臨床研修制度が導入され,この分野は医師の必須条件として認知が進んできました.それに合わせ本書も2005年より「外来医マニュアル」としてリニューアルし,今版で第4版を迎えることとなりました.
 今回は5年ぶりの改訂にあたり,コンセプトから新たに見直し議論を重ねました.今までの白衣のポケットに入るサイズ,可能なかぎりエビデンスに基づいた情報の記載等の柱は踏襲したうえで,さらなる視認性の追求,研修制度に沿った項目設定の追求等を行いました.
 おもな改訂の要点は以下のとおりです.
 1 第2章の症候編では,(1)厚生労働省の臨床研修到達目標に挙げられている「頻度の高い症状」35項目を網羅し,(2)さらに日本内科学会の研修カリキュラムの総合内科における「主要症候」についてもカバーするよう努め,(3)項目計54症候を収載し,鑑別診断をメインにポイントを絞って記載いたしました.
 2 第3章の検診・検査異常への対応編では,健康診断や術前検査,全身検索などで偶発的に発見された検査異常への対応マニュアルという,より実践で使用可能な内容に一新いたしました.
 3 第4章の疾患編では,(1)一般外来で非専門医が行うべきことと専門医で行うこと,(2)専門医へのコンサルトのタイミング,(3)フォローの仕方,として記載内容を統一し,簡潔にわかりやすくまとめました.
 4 第5章として小児編を新設し,一般外来で遭遇することの多い症候や疾患について調べやすくするべく,疾患編から独立させて記載いたしました.
 多忙な外来診療の合間に本書を手に取っていただき,知りたい情報がすぐ分かるよう,章立てや各項目の見出し,図表などを刷新しました.常時携帯していただきご活用いただければ幸甚です.本年は新専門医制度がスタートし,総合診療専門医が新設された年となりました.読者の皆様からのご意見,ご批判をいただき,さらに役立つマニュアルへと改訂を重ねて参りたいと思います.
 最後に出版に尽力頂きました医歯薬出版株式会社に深く感謝いたします.
 2018年5月
 編集代表加藤なつ江(太田協立診療所)



『プライマリケアマニュアル』から『外来医マニュアル』への序
 新しい臨床研修制度が始まり,プライマリケアに対する意識が高まっています.プライマリケアは救急救命処置とcommon diseaseの管理の2本柱からなりますが,これらの能力は当直診療と外来診療を通じて飛躍的に高まるとされています.現在の卒後臨床研修においては,病棟での研修が中心となっていますが,先進的な研修病院では,当直や外来の研修にも力を入れています.私たちは,1988年に当直診療や急性疾患診療に対応した『当直医マニュアル』を,1990年に外来診療や慢性疾患診療に対応した『プライマリケアマニュアル』を出版し,以来改訂を重ねてきました.お陰様で多くの読者の支持を得ることができました.ここに感謝の意を表します.当直診療や外来診療に幅広く対応した医学書が少なかった中で,診療科を超えて幅広さを追求できたことと,白衣のポケットに入るコンパクトなサイズであったことが評価されたようです.
 『プライマリケアマニュアル』は外来診療で役立つようにと書かれたものですが,姉妹編『当直医マニュアル』とセットで使用することを想定していましたので,重複を避けるために,急性疾患のいくつかが項目から外されました.当初は,プライマリケアという言葉が新鮮味をもっていたため,プライマリケアの現場における外来診療のためのマニュアルという意味で,『プライマリケアマニュアル』と名づけたのですが,プライマリケアという言葉が多くの人々に使われるようになった現在,この書名と内容がそぐわないものとなってきた感があります.そこで,急性疾患についても外来診療で頻度の高いものは項目に加えるなど,大幅に増項目,増頁(30%強)するとともに,目的をより明確化するために,『外来医マニュアル』の名称で新たに出版することになりました.
 本書は外来診療において遭遇する頻度の高い疾患,病態に対して,診療科を超えて幅広く対応できるマニュアルを目指しました.構成は総論編,症候編,検査・健診編,疾患編,資料編の5部からなっています.臨床研修制度で求められる経験目標を可及的に網羅しました.また,外来診療において遭遇する機会の多い健診結果異常への対応も可能なように工夫しました.執筆者はプライマリケア,総合診療,家庭医療といったフィールドで働く第一線の医師たちです.実践ですぐに役立つ内容に富んだものに仕上がったのではないかと自負しております.常時携帯してご活用頂ければ幸いです.また,ご意見,ご批判を頂き,さらに役立つマニュアルへと育てていければと思っております.
 最後に,推薦の言葉をお書き頂いた吉田修(奈良医大学長)先生,出版にご尽力くださった医歯薬出版株式会社に深く感謝申し上げます.
 2005年9月
 編者一同
 推薦のことば(鈴木富雄)
 第4版の序
 編集・執筆・執筆協力者一覧
 「プライマリケアマニュアル」から「外来医マニュアル」への序
 本マニュアル使用の前に
 本書掲載の抗菌薬(注射薬)の略語一覧
第1章 総論編
 外来初診患者診療の心得
 高齢者診療の心得
 女性診療の心得
 妊娠中・授乳中の注意
 医療連携―紹介するとき・されるとき
 精神科への紹介の仕方
 メディカル・インタビュー
 インフォームド・コンセント
 診療ガイドライン総論
 慢性疾患の管理
 運動療法と運動処方指導
 禁煙指導・禁煙外来
 予防接種
 クリニカル・オンコロジー
 緩和ケア
 在宅・往診・訪問診療
 要介護者のマネジメント
 介護保険制度
 社会福祉制度・社会資源
第2章 症候編
 全身倦怠感
 発熱
 食思不振
 体重減少・増加
 浮腫(リンパ浮腫も含む)
 リンパ節腫脹
 黄疸
 掻痒
 発疹
 出血傾向・紫斑
 潮紅
 発汗過剰・寝汗
 頭痛
 頸部痛
 咽頭痛
 めまい
 動悸
 意識障害
 失神
 ショック
 けいれん発作
 不随意運動
 四肢脱力
 歩行障害
 四肢のしびれ
 嚥下困難
 味覚障害
 嗄声
 呼吸困難・息切れ
 チアノーゼ
 胸痛
 咳・痰
 喀血・吐血
 腹部膨満
 腹痛
 胸焼け
 悪心・嘔吐
 下血・血便
 便通異常(下痢・便秘)
 尿量異常
 排尿障害
 血尿
 腰背部痛
 関節痛
 認知機能障害
 睡眠障害
 幻覚
 不安・抑うつ
 無月経
 結膜充血
 視力障害・視野狭窄・複視
 鼻汁
 鼻出血
 聴覚障害
第3章 健診・検査異常への対応
  検査・健診の見方(含・特定健診)
 <検体検査>
  血算(WBC)
  肝機能
  腎機能・尿検査異常
  血糖・尿糖(HbA1c含む)
  脂質(TG,HDL-C,LDL-C)
  尿酸
  ペプシノゲン
  高ガンマグロブリン血症
  腫瘍マーカー
  便潜血
  肝炎ウイルス検査
  HIV検査
  梅毒検査
 <生理機能検査>
  血圧
  心電図
  呼吸機能検査
 <画像検査>
  胸部Xp/CT
  腹部エコー
  心エコー
  上部消化管検査
  頭部MRI・MRA
第4章 疾患編
 ≪循環器疾患≫
  高血圧
  不整脈
  虚血性心疾患
  慢性心不全
  弁膜症
  心筋疾患
  胸・腹部大動脈瘤
  末梢動脈疾患(PAD)
  下肢静脈瘤
 ≪呼吸器疾患≫
  かぜ症候群・急性気管支炎
  市中肺炎
  胸水・胸膜炎
  肺結核(Tb)
  非結核性抗酸菌症
  慢性咳嗽(咳喘息・アトピー性咳嗽)
  気管支喘息(BA)
  慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  びまん性肺疾患
  気管支拡張症
  呼吸不全
  睡眠時無呼吸症候群(SAS)
  肺癌
  インフルエンザ
  医療・介護関連肺炎(NHCAP)
 ≪消化器疾患≫
  胃食道逆流症(GERD)
  食道癌
  慢性胃炎
  消化性潰瘍
  ヘリコバクター・ピロリ除菌療法
  機能性ディスペプシア
  胃癌
  胃切除後症侯群
  感染性胃腸炎
  虚血性腸炎
  特発性炎症性腸疾患(IBD)
  過敏性腸症侯群(IBS)
  腸閉塞(イレウス)
  大腸憩室
  大腸ポリープ
  大腸癌
  痔疾患
  人工肛門患者の管理
  急性肝炎
  慢性肝炎
  アルコール性肝障害
  非アルコール性脂肪肝炎
  薬物性肝障害
  肝硬変
  肝腫瘤性病変・肝癌
  胆石症
  胆嚢ポリープ
  胆嚢癌・胆管癌
  慢性膵炎
  膵腫瘍
 ≪神経・精神疾患≫
  頭痛
  顔面神経麻痺(Bell麻痺)
  パーキンソン病・パーキンソン症侯群
  慢性期脳血管障害患者の管理
  認知症
  過労・疲労
  睡眠障害
  身体表現性障害
  パニック障害
  うつ病
  アルコール依存症
 ≪内分泌・代謝疾患≫
  糖尿病(DM)
  脂質異常症
  痛風・高尿酸血症
  甲状腺機能亢進症
  甲状腺機能低下症
  甲状腺腫
  メタボリック・シンドローム
  肥満
 ≪膠原病とその類縁疾患≫
  関節リウマチ
  膠原病
 ≪腎・泌尿器疾患≫
  CKD(慢性腎臓病)
  糸球体疾患
  ネフローゼ症候群
  尿路結石症
  尿路感染症
  下部尿路機能障害
  泌尿器系の癌(前立腺・膀胱・腎)
  性行為感染症(STI)
 ≪血液疾患≫
  貧血
  赤血球増多症
  白血球減少症
  白血球増多症
  血小板減少症
  血小板増多症
  汎血球減少症
 ≪女性疾患≫
  女性診療の心得
  妊娠中・授乳中の注意
  異所性妊娠(子宮外妊娠)
  腟炎
  子宮頸管炎
  骨盤内炎症性疾患(PID)
  機能性月経困難症
  子宮内膜症
  更年期障害
  子宮筋腫
  子宮頸癌
  子宮体癌
  卵巣癌
  乳がん
  骨盤臓器脱
 ≪運動器疾患≫
  頸椎症
  肩関節周囲炎(五十肩)
  急性腰痛/筋・筋膜性腰痛
  腰部脊柱管狭窄症
  変形性膝関節症
  骨粗鬆症
  ロコモティブ・シンドローム
 ≪眼・耳鼻咽喉・皮膚疾患≫
  白内障
  緑内障
  耳鳴
  アレルギー性鼻炎・結膜炎
  鼻副鼻腔炎
  蕁麻疹
  湿疹
  あせも
  口内炎
  ざ瘡
  軟部組織感染症
  白癬・カンジタ症
  口唇ヘルペス
  帯状疱疹
  薬疹
  熱傷・化学熱傷・日焼け
  凍瘡(しもやけ)
  褥瘡
  皮膚がん
第5章 小児編
 小児診療の心得
 発熱
 咳嗽
 胸痛
 腹痛
 下痢
 嘔吐
 よくある相談(ソフトサイン他)
 発疹・伝染性疾患
  突発性発疹/水痘
  流行性耳下腺炎(ムンプス)
  手足口病/溶連菌感染症
  伝染性紅斑
  伝染性単核症/麻疹
  風疹
 かぜ症候群
 インフルエンザ
 反復性耳下腺炎,扁桃肥大,アデノイド
 クループ症侯群・急性喉頭蓋炎
 急性細気管支炎・肺炎
 気管支喘息(BA)
 子どもの心臓病
 川崎病(MCLS)
 起立性調節障害(OD)
 熱性痙攣・てんかん
 小児の心身症
 血管性紫斑病(アレルギー性紫斑病)
 特発性(免疫性)血小板減少性紫斑病(ITP)
 学校検尿異常者の扱い
 尿路感染症
 溶連菌感染後急性(糸球体)腎炎
 ネフローゼ症侯群
 鼠径ヘルニア
 停留精巣ほか
 皮膚疾患
 アトピー性皮膚炎
 食物アレルギー
第6章 資料編
 薬物血中濃度
 抗凝固療法
 ステロイド<経口薬>
 皮膚外用剤の使い方
 薬物相互作用
 抗菌薬の選択と投与法
 主要な抗菌薬(内服薬)
 届出が必要な感染症
 細菌学的検査
 感染症に関する各種迅速診断法
 腎不全に対する薬物投与
 症候から疑う薬剤副作用
  事項索引
  薬剤索引

 第2章 症候編(50音順)
  [ア行]
   息切れ
   意識障害
   咽頭痛
   嚥下困難
   黄疸
   嘔吐
   悪心
  [カ行]
   喀血
   関節痛
   胸痛
   頸部痛
   けいれん発作
   下血
   血尿
   血便
   結膜充血
   下痢
   幻覚
   呼吸困難
  [サ行]
   嗄声
   四肢脱力
   四肢のしびれ
   失神
   紫斑
   視野狭窄
   出血傾向
   食思不振
   ショック
   視力障害
   睡眠障害
   頭痛
   咳
   全身倦怠感
   掻痒
  [タ行]
   体重減少・増加
   痰
   チアノーゼ
   聴覚障害
   潮紅
   動悸
   吐血
  [ナ行]
   尿量異常
   認知機能障害
   寝汗
  [ハ行]
   排尿障害
   発汗過剰
   発熱
   鼻汁
   鼻出血
   不安
   複視
   腹痛
   腹部膨満
   浮腫
   不随意運動
   便通異常
   便秘
   歩行障害
   発疹
  [マ行]
   味覚障害
   無月経
   胸焼け
   めまい
  [ヤ行]
   腰背部痛
   抑うつ
  [ラ行]
   リンパ節腫脹