第9版改訂の序
本書の特徴は,WHOがオタワ憲章において提唱した“ヘルスプロモーション”の概念を軸に,主観的な生活の満足度を加味した“ウエルネス”の視点に基づく活動ができる管理栄養士・栄養士の養成と育成を目指すところにある.これは,1996年に初版が刊行されて以来,本書を貫く指針でもある.
その後16年が経過するなかで,社会を取り巻く状況の変化に応じて“公衆栄養”に求められる課題も変遷してきた.しかし,社会情勢がどのように移り変わろうと,管理栄養士・栄養士の社会的使命は,専門職としてすべての人々の自己実現を目指し,“栄養・食”を視座とした活動を通して公衆衛生の向上に寄与することにある.その活動の場は,人々の生活に直結して非常に幅広い.このため管理栄養士・栄養士は,課せられた社会的使命を十分認識したうえで,包括的な対応を積極的に行うことを何よりも大切にしなければならない.
しかし,人々の健康・栄養課題に対処して自己実現を目指すことは,管理栄養士・栄養士だけが取り組んでできることではない.保健・医療・福祉・介護・教育などの多くの専門職,関係機関・団体・組織,住民等との連携・協働により初めて実現可能となるものである.すなわち,“連携と協働”が,今後の公衆栄養活動の重要なキーワードとなるといっても過言ではない.
こうした状況のなかで,厚生労働省は2010年,「管理栄養士としての第一歩を踏み出し,その職務を果たすのに必要な基本的知識及び技能について的確に評価する」という観点から,「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)」を改定した.これに伴い,本書は同基準に準拠して,大幅な改訂をおこなった.管理栄養士・栄養士を目指す方々が,“ヘルスプロモーション”,“ウエルネス”そして“連携と協働”の考え方とともに,今の時代に必要とされる実際的な基本的知識と技能を身につける一助となれば幸いである.
また,本書が管理栄養士・栄養士の養成・育成のためだけでなく,人々の健康にかかわる多くの方々の学習書・実務書としても活用されてその貢献度を高め,真に社会に求められ,信頼される存在となることを切望してやまない.
終わりに,本書の改訂に当たり,多大なるご尽力をいただいた医歯薬出版に厚くお礼を申し上げる.
平成24年3月吉日
編者一同
初版の序
「公衆栄養」が栄養士養成施設での教科目として採用されてから22年を経過し,いま大きな転換期を迎えようとしている.
それは少子・高齢化社会と環境問題を目前にして,その目的である健康づくりが住民参加型のヘルスプロモーション,さらにはウエルネスへと転換し,それへの地域ぐるみの新しい対応が求められてきたことである.そしてそのためには地域で働く栄養士や栄養ボランティアの意識改革とそれに即した活動が必要で,その体制をどう構築していくかがこれからの大きな課題である.「方法を生み出す栄養士」への期待と併せて,これからの公衆栄養学にそれが求められる.
本書は現在,栄養士養成施設で公衆栄養学を担当している者と管理栄養士として公衆栄養活動に従事している者らによる共著である.上記のような主旨にそってこれからの「公衆栄養」に大きな期待を込めて,各章を分担執筆している.
脱稿したうえで読み返してみると,初めの意図がどれだけ達成されたかと反省される点もある.また専門の立場からは行き届かない点や不備の点も指摘されると思う.これらの点については読者諸賢ならびに同学の士のご批判とご叱正を待ちたい.なお執筆に当たっては多くの著書・論文等を参考にしたが,なかでも巻末に記した文献には負うところが多い.これらの著者各位に深く謝意を表する.
終わりに,本書の出版にご理解を賜り出版の労をとられた医歯薬出版株式会社に深くお礼を申しあげる.
平成8年1月20日
編者 沖増 哲
本書の特徴は,WHOがオタワ憲章において提唱した“ヘルスプロモーション”の概念を軸に,主観的な生活の満足度を加味した“ウエルネス”の視点に基づく活動ができる管理栄養士・栄養士の養成と育成を目指すところにある.これは,1996年に初版が刊行されて以来,本書を貫く指針でもある.
その後16年が経過するなかで,社会を取り巻く状況の変化に応じて“公衆栄養”に求められる課題も変遷してきた.しかし,社会情勢がどのように移り変わろうと,管理栄養士・栄養士の社会的使命は,専門職としてすべての人々の自己実現を目指し,“栄養・食”を視座とした活動を通して公衆衛生の向上に寄与することにある.その活動の場は,人々の生活に直結して非常に幅広い.このため管理栄養士・栄養士は,課せられた社会的使命を十分認識したうえで,包括的な対応を積極的に行うことを何よりも大切にしなければならない.
しかし,人々の健康・栄養課題に対処して自己実現を目指すことは,管理栄養士・栄養士だけが取り組んでできることではない.保健・医療・福祉・介護・教育などの多くの専門職,関係機関・団体・組織,住民等との連携・協働により初めて実現可能となるものである.すなわち,“連携と協働”が,今後の公衆栄養活動の重要なキーワードとなるといっても過言ではない.
こうした状況のなかで,厚生労働省は2010年,「管理栄養士としての第一歩を踏み出し,その職務を果たすのに必要な基本的知識及び技能について的確に評価する」という観点から,「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)」を改定した.これに伴い,本書は同基準に準拠して,大幅な改訂をおこなった.管理栄養士・栄養士を目指す方々が,“ヘルスプロモーション”,“ウエルネス”そして“連携と協働”の考え方とともに,今の時代に必要とされる実際的な基本的知識と技能を身につける一助となれば幸いである.
また,本書が管理栄養士・栄養士の養成・育成のためだけでなく,人々の健康にかかわる多くの方々の学習書・実務書としても活用されてその貢献度を高め,真に社会に求められ,信頼される存在となることを切望してやまない.
終わりに,本書の改訂に当たり,多大なるご尽力をいただいた医歯薬出版に厚くお礼を申し上げる.
平成24年3月吉日
編者一同
初版の序
「公衆栄養」が栄養士養成施設での教科目として採用されてから22年を経過し,いま大きな転換期を迎えようとしている.
それは少子・高齢化社会と環境問題を目前にして,その目的である健康づくりが住民参加型のヘルスプロモーション,さらにはウエルネスへと転換し,それへの地域ぐるみの新しい対応が求められてきたことである.そしてそのためには地域で働く栄養士や栄養ボランティアの意識改革とそれに即した活動が必要で,その体制をどう構築していくかがこれからの大きな課題である.「方法を生み出す栄養士」への期待と併せて,これからの公衆栄養学にそれが求められる.
本書は現在,栄養士養成施設で公衆栄養学を担当している者と管理栄養士として公衆栄養活動に従事している者らによる共著である.上記のような主旨にそってこれからの「公衆栄養」に大きな期待を込めて,各章を分担執筆している.
脱稿したうえで読み返してみると,初めの意図がどれだけ達成されたかと反省される点もある.また専門の立場からは行き届かない点や不備の点も指摘されると思う.これらの点については読者諸賢ならびに同学の士のご批判とご叱正を待ちたい.なお執筆に当たっては多くの著書・論文等を参考にしたが,なかでも巻末に記した文献には負うところが多い.これらの著者各位に深く謝意を表する.
終わりに,本書の出版にご理解を賜り出版の労をとられた医歯薬出版株式会社に深くお礼を申しあげる.
平成8年1月20日
編者 沖増 哲
第9版改訂の序
Chapter 1 公衆栄養の概念(沖増 哲,前大道教子)
1-1. 公衆栄養の概念
1)公衆栄養の意義と目的
2)生態系と食料・栄養
3)保健・医療・福祉・介護・教育システムと公衆栄養
4)コミュニティと公衆栄養活動
1-2. 公衆栄養活動
1)公衆栄養活動の歴史
2)生態系保全のための公衆栄養活動
3)地域づくりのための公衆栄養活動
4)ヘルスプロモーションのための公衆栄養活動
5)自己管理能力(エンパワメント)のための公衆栄養活動
6)疾病予防のための公衆栄養活動
7)少子・高齢社会における健康増進
8)ウエルネスのための公衆栄養活動
Chapter 2 健康・栄養問題の現状と課題
2-1. 社会環境と健康・栄養問題(佐久間章子)
1)人口問題
2)人口構成の変遷
3)少子化
4)長寿社会
5)食料問題
2-2. 健康状態の変化
1)死因別死亡
2)平均寿命・健康寿命
3)生活習慣病の有病率
2-3. 食事の変化
1)エネルギー・栄養素摂取量
2)食品群別摂取量
3)料理・食事パターン
2-4. 食生活の変化(森脇弘子)
1)食行動
2)食知識,食態度,食スキル
2-5. 食環境の変化
1)食品生産・流通
2)食情報の提供
3)保健を目的とした食品の提供
4)フードバランスシート(食料需給表)
5)食料自給率
2-6. 諸外国の健康・栄養問題の現状と課題(草間かおる)
1)先進諸国・発展途上国の現状と課題
2)先進国と開発途上国の地域格差
Chapter 3 栄養政策
3-1. わが国の公衆栄養活動(松原知子)
1)公衆栄養活動の役割
2)公衆栄養活動と組織・人材育成
3-2. 公衆栄養関連法規
1)地域保健法
2)健康増進法
3)食育基本法
4)その他の主な法律
3-3. わが国の管理栄養士・栄養士制度(前大道教子)
1)栄養士法
2)管理栄養士・栄養士の社会的役割
3)管理栄養士・栄養士制度の沿革
4)管理栄養士・栄養士養成制度
3-4. 国民健康・栄養調査
1)調査の目的・沿革
2)調査の内容・方法
3-5. 実施に関連する指針,ツール(松原知子)
1)食生活指針
2)食事バランスガイド
3)健康づくりのための運動指針2006
4)健康づくりのための休養指針
5)健康づくりのための睡眠指針
3-6. 国の健康増進基本方針と地方計画(前大道教子)
1)国の基本方針策定の目的・内容
2)基本方針の推進と地方健康増進計画
3)食育推進基本計画策定の目的・内容
4)食育の推進と地方食育推進計画
3-7. 諸外国の健康・栄養政策(草間かおる)
1)公衆栄養活動に関係する国際的な栄養行政組織
2)諸外国の公衆栄養関連計画
3)食事摂取基準
4)食事ガイド(食生活指針,フードガイド)
5)栄養士養成制度
Chapter 4 栄養疫学(下方浩史)
4-1. 栄養疫学の概要
1)栄養疫学の役割
2)公衆栄養活動への応用
4-2. 曝露情報としての食事摂取量
1)食物と栄養素
2)食事摂取量の個人内変動と個人間変動
3)日常的(平均的)な食事摂取量
4-3. 食事摂取量の測定方法
1)24時間食事思い出し法
2)記録法
3)食物摂取頻度調査法とその妥当性・再現性
4)陰膳法とマーケットバスケット法
5)食生活状況調査
6)食事摂取量を反映する身体測定値・生化学的指標
4-4. 食事摂取量の評価方法
1)食事調査と食事摂取基準
2)総エネルギー調整栄養素摂取量
3)データの処理と解析
Chapter 5 公衆栄養マネジメント
5-1. 公衆栄養マネジメント(松原知子)
1)公衆栄養マネジメントの考え方・重要性
2)公衆栄養マネジメントの過程
5-2. 公衆栄養アセスメント
1)公衆栄養アセスメントの目的と方法
2)食事摂取基準の地域集団への活用
3)地域観察の方法と活用
4)質問調査の方法と活用(質問紙法,面接法,電話調査法)
5)既存資料活用の方法と留意点
6)健康・栄養情報の収集と管理
5-3. 公衆栄養プログラムの目標設定(前大道教子)
1)公衆栄養アセスメント結果の評価
2)改善課題の抽出
3)短期・中期・長期の課題設定の目的と相互の関連
4)改善課題に基づく改善目標の設定
5)目標設定の優先順位
5-4. 公衆栄養プログラムの計画,実施,評価(松原知子)
1)地域社会資源の把握と管理
2)運営面・政策面のアセスメント
3)計画策定
4)住民参加
5)プログラムに関連する関係者・機関の役割
6)評価の種類・デザイン
7)経過(過程)評価
8)影響・結果評価
9)評価結果のフィードバック
Chapter 6 公衆栄養プログラムの展開
6-1. 地域特性に対応したプログラムの展開
1)健康づくり(竹内育子)
2)食育
3)在宅療養,介護支援(小田光子)
4)健康・食生活の危機管理と食支援(竹内育子)
5)地域栄養ケアのためのネットワークづくり
6-2. 食環境づくりのためのプログラムの展開(小田光子)
1)特別用途食品,特定保健用食品,栄養機能食品の活用
2)栄養成分表示の活用
3)健康づくりのための外食料理の活用
6-3. 地域集団の特性別プログラムの展開(加島浩子)
1)ライフステージ別
2)生活習慣病ハイリスク集団
付表&資料(食事摂取基準,関係法規,公衆栄養学の歴史)
索引
Chapter 1 公衆栄養の概念(沖増 哲,前大道教子)
1-1. 公衆栄養の概念
1)公衆栄養の意義と目的
2)生態系と食料・栄養
3)保健・医療・福祉・介護・教育システムと公衆栄養
4)コミュニティと公衆栄養活動
1-2. 公衆栄養活動
1)公衆栄養活動の歴史
2)生態系保全のための公衆栄養活動
3)地域づくりのための公衆栄養活動
4)ヘルスプロモーションのための公衆栄養活動
5)自己管理能力(エンパワメント)のための公衆栄養活動
6)疾病予防のための公衆栄養活動
7)少子・高齢社会における健康増進
8)ウエルネスのための公衆栄養活動
Chapter 2 健康・栄養問題の現状と課題
2-1. 社会環境と健康・栄養問題(佐久間章子)
1)人口問題
2)人口構成の変遷
3)少子化
4)長寿社会
5)食料問題
2-2. 健康状態の変化
1)死因別死亡
2)平均寿命・健康寿命
3)生活習慣病の有病率
2-3. 食事の変化
1)エネルギー・栄養素摂取量
2)食品群別摂取量
3)料理・食事パターン
2-4. 食生活の変化(森脇弘子)
1)食行動
2)食知識,食態度,食スキル
2-5. 食環境の変化
1)食品生産・流通
2)食情報の提供
3)保健を目的とした食品の提供
4)フードバランスシート(食料需給表)
5)食料自給率
2-6. 諸外国の健康・栄養問題の現状と課題(草間かおる)
1)先進諸国・発展途上国の現状と課題
2)先進国と開発途上国の地域格差
Chapter 3 栄養政策
3-1. わが国の公衆栄養活動(松原知子)
1)公衆栄養活動の役割
2)公衆栄養活動と組織・人材育成
3-2. 公衆栄養関連法規
1)地域保健法
2)健康増進法
3)食育基本法
4)その他の主な法律
3-3. わが国の管理栄養士・栄養士制度(前大道教子)
1)栄養士法
2)管理栄養士・栄養士の社会的役割
3)管理栄養士・栄養士制度の沿革
4)管理栄養士・栄養士養成制度
3-4. 国民健康・栄養調査
1)調査の目的・沿革
2)調査の内容・方法
3-5. 実施に関連する指針,ツール(松原知子)
1)食生活指針
2)食事バランスガイド
3)健康づくりのための運動指針2006
4)健康づくりのための休養指針
5)健康づくりのための睡眠指針
3-6. 国の健康増進基本方針と地方計画(前大道教子)
1)国の基本方針策定の目的・内容
2)基本方針の推進と地方健康増進計画
3)食育推進基本計画策定の目的・内容
4)食育の推進と地方食育推進計画
3-7. 諸外国の健康・栄養政策(草間かおる)
1)公衆栄養活動に関係する国際的な栄養行政組織
2)諸外国の公衆栄養関連計画
3)食事摂取基準
4)食事ガイド(食生活指針,フードガイド)
5)栄養士養成制度
Chapter 4 栄養疫学(下方浩史)
4-1. 栄養疫学の概要
1)栄養疫学の役割
2)公衆栄養活動への応用
4-2. 曝露情報としての食事摂取量
1)食物と栄養素
2)食事摂取量の個人内変動と個人間変動
3)日常的(平均的)な食事摂取量
4-3. 食事摂取量の測定方法
1)24時間食事思い出し法
2)記録法
3)食物摂取頻度調査法とその妥当性・再現性
4)陰膳法とマーケットバスケット法
5)食生活状況調査
6)食事摂取量を反映する身体測定値・生化学的指標
4-4. 食事摂取量の評価方法
1)食事調査と食事摂取基準
2)総エネルギー調整栄養素摂取量
3)データの処理と解析
Chapter 5 公衆栄養マネジメント
5-1. 公衆栄養マネジメント(松原知子)
1)公衆栄養マネジメントの考え方・重要性
2)公衆栄養マネジメントの過程
5-2. 公衆栄養アセスメント
1)公衆栄養アセスメントの目的と方法
2)食事摂取基準の地域集団への活用
3)地域観察の方法と活用
4)質問調査の方法と活用(質問紙法,面接法,電話調査法)
5)既存資料活用の方法と留意点
6)健康・栄養情報の収集と管理
5-3. 公衆栄養プログラムの目標設定(前大道教子)
1)公衆栄養アセスメント結果の評価
2)改善課題の抽出
3)短期・中期・長期の課題設定の目的と相互の関連
4)改善課題に基づく改善目標の設定
5)目標設定の優先順位
5-4. 公衆栄養プログラムの計画,実施,評価(松原知子)
1)地域社会資源の把握と管理
2)運営面・政策面のアセスメント
3)計画策定
4)住民参加
5)プログラムに関連する関係者・機関の役割
6)評価の種類・デザイン
7)経過(過程)評価
8)影響・結果評価
9)評価結果のフィードバック
Chapter 6 公衆栄養プログラムの展開
6-1. 地域特性に対応したプログラムの展開
1)健康づくり(竹内育子)
2)食育
3)在宅療養,介護支援(小田光子)
4)健康・食生活の危機管理と食支援(竹内育子)
5)地域栄養ケアのためのネットワークづくり
6-2. 食環境づくりのためのプログラムの展開(小田光子)
1)特別用途食品,特定保健用食品,栄養機能食品の活用
2)栄養成分表示の活用
3)健康づくりのための外食料理の活用
6-3. 地域集団の特性別プログラムの展開(加島浩子)
1)ライフステージ別
2)生活習慣病ハイリスク集団
付表&資料(食事摂取基準,関係法規,公衆栄養学の歴史)
索引