やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第4版改訂の序
 本書は,日本が高齢化,国際化,情報化の時代を迎え,健康問題が国民の大きな関心事となり,栄養士・管理栄養士の幅広い高度な栄養教育,栄養指導の能力が必要とされることを考え,また21世紀の栄養士・管理栄養士のあり方を視野に入れ,地域性も考慮して刊行した.
 その後,最新の情報やデータを取り入れるべく改訂を重ねてきた.今回の改訂に当たっては,「日本人の食事摂取基準(2005年版)」が策定されたことに伴い,その新しい考え方に基づく資料を示し,主な改正点をわかりやすく解説した.また図表についても最新のデータに基づき加筆訂正を加え,時代のニーズに応えられるようにした.
 わが国の健康増進対策が,栄養欠乏の予防政策から生活習慣病予防政策へ大きく変換している状況の中で,栄養士・管理栄養士養成教育の重要な科目である栄養教育・指導論の内容もさらに充実をしていかなければならない.今後とも諸先生方からのご教示,ご指導を賜れば幸いである.
 2005年2月
 執筆者一同

まえがき
 わが国においては,高齢化・国際化・情報化の時代を迎え,健康問題が国民の大きな関心事となり,健康・医療・福祉において栄養士はトータルヘルスのコーディネーターとして幅広い高度な栄養指導が望まれる.このように健康教育の一環として栄養教育の重要性が問われるなかで,21世紀は栄養士・管理栄養士をコアとして,健康政策を発展させる時代であり,アクティブヘルス,QOL(Quality of Life)の時代である.
 特に地域保健対策の総合的推進,強化が企てられているなかでのケアコーディネーションにおける栄養士の役割を考えると,食生活を中心とする生活習慣全体の栄養指導ができる能力が必要となる.
 また,栄養指導の担当者は理論的思考の展開に基づいた計画の立案,実行,評価の実践が要求される.
 以上のような視点から,栄養指導論は栄養士の専門性,栄養指導の実践に直接結びつく知識・技術を総合的に網羅した内容の教科であり,栄養士教育科目の中核として位置づけられている.
 本書はこの趣旨に沿って,21世紀の諸問題と併せて,地域性を考慮し,テンポの早い社会情勢の変動や,食環境の変化に柔軟に対応できる栄養士教育を目指して新たな視点で執筆し,管理栄養士国家試験のガイドラインを視野に入れながら編集を試みた.
 本書の構成は「総論」・「方法論」・「各論」からなり,「総論」では指導論の概論,社会構造の変化を的確に把握し,社会のニーズに見合った栄養指導を述べ,「方法論」において指導の一般的原則である情報収集,問題点の発見,指導,評価の各構成と栄養指導に必要な基礎知識を解説した.「各論]ではこれらの理論に基づいてライフステージ,ライフスタイルからみた指導の特性,要点について詳しく記述している.
 栄養士・管理栄養士を目指す学生にとって有益な教科書としてはもちろん,日常の栄養指導に尽力している多くの人々が,研究や実践活動を行う場合の参考書としてご利用いただければと念願している.
 執筆にあたり,多くの先輩諸氏の著書および研究論文を参考文献として引用させていただいたことをここに厚く御礼申しあげる.
 最後に,本書刊行にあたり,医歯薬出版株式会社のご熱意とご協力に心から感謝する.
 1997年8月吉日
 執筆者一同
第4版改訂の序
まえがき

■総論
 1.栄養教育・指導(永野)
  1―栄養教育・指導の意義
  2―栄養教育・指導の目的
  3―健康教育としての栄養教育・指導(春木)
   1)ヘルスプロモーション
   2)健康教育
   3)健康日本21
   4)栄養表示基準制度
  4―栄養教育・指導の重要性(永野)
   1)健康増進としての栄養教育・指導
   2)臨床栄養としての栄養教育・指導
 2.栄養士・管理栄養士と栄養教育・指導(斉藤・石崎)
  1―栄養士・管理栄養士の定義
  2―栄養士・管理栄養士の養成制度
   1)栄養士養成制度
   2)諸外国の養成制度
  3―栄養教育・指導関係法規
   1)栄養士法
   2)健康増進法
  4―栄養教育・指導のシステム
   1)地域保健法
   2)各領域での栄養教育・指導とネットワーク
   3)ネットワークの機能
   4)栄養教育・指導のシステム
   5)これからの活動
  5―災害時の栄養士・管理栄養士の活動
   1)災害用備蓄品
   2)栄養士・管理栄養士間の情報網について
   3)栄養士・管理栄養士としての活動
   4)今後の課題
 3.栄養教育・指導の歴史(樋口・妹尾)
  1―第二次世界大戦前の栄養教育・指導
  2―第二次世界大戦後の栄養教育・指導
   1)食料不足の時代
   2)食生活近代化の時代
   3)飽食見直しの時代
  3―高齢社会における栄養教育・指導
 4.21世紀における栄養教育・指導(池田・志垣)
  1―食生活の現状
   1)エネルギー・各種栄養素の摂取状況
  2―食品の取り方からみた現状
   1)食品群別摂取状況の現状
   2)食パターンからみた食品摂取の現状―伝統的食品からの離反
   3)加工食品・調理済み食品の摂取の現状
   4)健康食品志向の現状
  3―食行動の現状
   1)朝食の欠食
   2)孤食
   3)食事時間
   4)外食
   5)やせ志向
  4―食生活に関与する因子
   1)地理的因子
   2)経済的因子
   3)社会的因子
  5―食生活と疾病
   1)食生活の変化と疾病構造
   2)食生活と疾病とのかかわり
  6―栄養教育・指導の課題(春木)
   1)高齢社会と栄養教育・指導の課題
   2)情報化社会と栄養教育・指導の課題
   3)国際化社会と栄養教育・指導の課題
   4)少子化社会と栄養教育・指導の課題
   5)環境問題と栄養教育・指導の課題
   6)ライフスタイルと栄養教育・指導の課題
   7)ライフステージ別栄養教育・指導から個別栄養教育・指導への課題
 5.栄養教育・指導の基礎知識(樋口・妹尾)
  1―食品成分表
   1)日本の食品成分表のあゆみ
   2)五訂日本食品標準成分表
  2―食品群
   1)3色食品群
   2)4つの食品群
   3)6つの基礎食品
  3―日本人の食事摂取基準(2005年版)
   1)目的
   2)食事摂取基準の活用方法
   3)食事摂取基準
   4)エネルギー必要量の算定
   5)栄養素の食事摂取基準
  4―食品構成
  5―栄養比率
  6―健康づくりのための指針
 6.栄養教育・指導の方法(澤田・堀・橘・向井)
  1―栄養教育・指導の原則
   1)情報収集
   2)問題点の発見
   3)教育指導の実施
   4)評価
  2―情報収集と栄養状態の評価
   1)調査方法と判定
   2)統計処理
   3)コンピュータの活用
   4)新しい情報の収集
  3―栄養教育・指導の方法(矢和多)
   1)教育指導目標の設定
   2)カリキュラムの組み方
   3)教育方法の分類と学習形態
   4)教育指導の技法
   5)栄養教育・指導におけるカウンセリング
■栄養教育・指導
 1.ライフステージ別栄養教育・指導(南・浅野・山本)
  1―妊娠・授乳期
   1)妊娠・授乳期の特性
   2)妊娠・授乳期の栄養
   3)問題点と栄養教育・指導の要点
  2―乳幼児期
   1)乳幼児期の特性
   2)乳幼児期の栄養
   3)問題点と栄養教育・指導の要点
  3―成長期(学童期・青少年期)
   1)学童期・青少年期の特性
   2)学童期・青少年期の栄養
   3)問題点と栄養教育・指導の要点
  4―成人期
   1)成人期の特性
   2)成人期の栄養
   3)生活習慣病検診の必要性
   4)問題点と栄養教育・指導の要点
  5―老年期
   1)老年期の特性
   2)老年期の栄養
   3)問題点と栄養教育・指導の要点
 2.ライフスタイル別栄養教育・指導(岸部・小西・坂田)
  1―ライフスタイル多様化の背景
  2―家族形態別による栄養教育・指導
   1)出産・育児期の核家族
   2)実年期の核家族
   3)老年期の夫婦
   4)三世代家族
   5)若年単身者
   6)実年期の単身赴任者
   7)一人暮らしの高齢者
   8)母子(あるいは父子)の家族
   9)障害者または障害者を介護する家族
  3―ライフスタイル別による栄養教育・指導
   1)有職主婦
   2)長距離トラックの運転手
   3)塾通いと子ども
  4―競技選手の栄養教育・指導
   1)競技選手の栄養の特性
   2)栄養教育・指導上の問題点と対策
 3.特定給食施設における栄養教育・指導(河南・岡田)
  1―病院給食における栄養教育・指導
   1)給食の特徴
   2)問題点と栄養教育・指導の要点
  2―学校給食における栄養教育・指導
   1)給食の特徴
   2)問題点と栄養教育・指導の要点
  3―児童福祉施設における栄養教育・指導
   1)児童福祉施設の特徴
   2)問題点と栄養教育・指導の要点
  4―老人福祉施設における栄養教育・指導
   1)老人福祉施設の特徴
   2)問題点と栄養教育・指導の要点
  5―事業所等の特定給食における栄養教育・指導
   1)事業所等の特定給食の特徴
   2)問題点と栄養教育・指導の要点

参考文献
資料・付表