改訂の序
本書は,21世紀が「すべての人が健康を享受できる“ウエルネス社会”」となるよう,その実現への願いを込めて,2000年に初版を刊行しました.しかし,同年,栄養士法の一部改正により,管理栄養士制度が見直され,管理栄養士の免許化・業務内容の明確化等が図られました.これを受けて翌年,政省令が改正され,管理栄養士課程の新カリキュラムに『栄養教育論』が,栄養士課程では『栄養の指導』が設けられ,前者の教育目標には“栄養教育の方法・食行動・総合的マネジメントの充実”等が提示されました.2002年4月から改正された栄養士法が施行され,同年8月には栄養改善法が健康増進法に組み替えられて公布され,その後引き続いて管理栄養士国家試験出題基準の改訂が行われる等,ここ2年足らずの間に管理栄養士・栄養士免許の取得を目指す者をはじめ養成施設側も大きな変動の渦の中に巻き込まれています.
一方,人にはそれぞれのライフステージやライフスタイルがあり,障害者等にも配慮した細かい教育が必要とされ,また,いわゆる健康食品といわれるものも生活の中に取り入れられるようになってきており,これらと生活習慣病に絡んだ健康問題を栄養教育の中でどのように取り上げていくべきかという新たな課題も生じています.このような状況から,最新の知識・技術・情報を駆使した新しい栄養教育方法が管理栄養士・栄養士には求められるようになっています.
改正された栄養士法では,管理栄養士業務として“人の栄養管理”等が明示されており,栄養士ともども真に保健・医療・福祉サービスの担い手としてその役割を発揮するためには,担当者の力量形成が重要な課題であると考えています.
以上のような社会情勢の変化や前述したカリキュラムおよび出題基準の改訂を踏まえ,今回,本書の改訂に当たり,統計資料等を最新のものに改めるとともに,特に“栄養教育の方法”“栄養教育の国際的動向”の項を充実させ,“ 食行動変容と栄養教育”“障害者の栄養教育”を追加する等,内容を拡充しました.著者陣も現役で教育や現場で活躍している先生方にお願いしています.
なお,書名は,管理栄養士養成施設・栄養士養成施設に活用していただけるよう『ウエルネス栄養教育・栄養指導論』に変更しました.また,管理栄養士・栄養士免許取得を目指す学生や既に免許を取得している方々の実践活動にも役立つよう編纂しました.しかし,これだけ多くの改訂を短時間で行ったことから,いたらぬ点も多々あることと存じます.読者諸氏からの率直なご意見,ご批判をいただけましたら,関係者一同にとって望外の喜びです.
2003年初春
編者
序文
2000年を迎えた今,栄養士の誕生から80余年が経過しようとしています.その間の栄養改善活動は,食料不足に伴う栄養欠乏対策に始まりましたが,近年では過剰・偏り・誤りの是正へと変わり,対象も国,地域,集団から個人を重視する時代を迎えています.また,内容は物としての栄養成分や料理を捉えることに始まり,そして,食事や食生活などの行動現象を,さらには,健康状態などの生命現象を捉える方向へと変容しています.
どんな時代でも,ヒトが究極の目的とするところは,健やかに生まれ,健康であること,そしてできる限り長生きすることでしょう.
人生80年と言われ,栄養知識も普及し,飽食時代,グルメブーム等の言葉が一般化するほどですから,現在の食環境は一見恵まれたように思われます.しかし,生活習慣病の増加など課題も多く,生活の質の向上が求められています.
昭和30年代に“40〜60歳くらいの働き盛りに多い疾病”として行政的に提唱され,その後,加齢に伴って罹患率が高くなるとされた“成人病”の発症には,生活習慣が深く関与することが明らかになりました.従って,これを改善することにより,疾病の発症・進行が予防できるという認識を広く国民に醸成し,行動に結びつけていく必要があります.
そのためには,21世紀が「自分の健康は自分で責任もち,より幸福で充実した人生を送るために,自分の現在の生活習慣を点検し,自分で変えなければならないことに気づき,生活習慣の変容に積極的に取り組んでいく人たちによってつくられる“ウエルネス社会”」となるよう,栄養士は,グローバルな視点で知識や技術を身につけ,指導や教育を強力に推進していくことが肝要です.
Small Changes Can Make a Big Difference.(Travisによる)
-どんな小さな生活習慣の変化でもそこから大きな変化が生ずる-
本書は,21世紀が「すべての人が健康を享受できる“ウエルネス社会”」となるよう,その実現への願いを込めて,2000年に初版を刊行しました.しかし,同年,栄養士法の一部改正により,管理栄養士制度が見直され,管理栄養士の免許化・業務内容の明確化等が図られました.これを受けて翌年,政省令が改正され,管理栄養士課程の新カリキュラムに『栄養教育論』が,栄養士課程では『栄養の指導』が設けられ,前者の教育目標には“栄養教育の方法・食行動・総合的マネジメントの充実”等が提示されました.2002年4月から改正された栄養士法が施行され,同年8月には栄養改善法が健康増進法に組み替えられて公布され,その後引き続いて管理栄養士国家試験出題基準の改訂が行われる等,ここ2年足らずの間に管理栄養士・栄養士免許の取得を目指す者をはじめ養成施設側も大きな変動の渦の中に巻き込まれています.
一方,人にはそれぞれのライフステージやライフスタイルがあり,障害者等にも配慮した細かい教育が必要とされ,また,いわゆる健康食品といわれるものも生活の中に取り入れられるようになってきており,これらと生活習慣病に絡んだ健康問題を栄養教育の中でどのように取り上げていくべきかという新たな課題も生じています.このような状況から,最新の知識・技術・情報を駆使した新しい栄養教育方法が管理栄養士・栄養士には求められるようになっています.
改正された栄養士法では,管理栄養士業務として“人の栄養管理”等が明示されており,栄養士ともども真に保健・医療・福祉サービスの担い手としてその役割を発揮するためには,担当者の力量形成が重要な課題であると考えています.
以上のような社会情勢の変化や前述したカリキュラムおよび出題基準の改訂を踏まえ,今回,本書の改訂に当たり,統計資料等を最新のものに改めるとともに,特に“栄養教育の方法”“栄養教育の国際的動向”の項を充実させ,“ 食行動変容と栄養教育”“障害者の栄養教育”を追加する等,内容を拡充しました.著者陣も現役で教育や現場で活躍している先生方にお願いしています.
なお,書名は,管理栄養士養成施設・栄養士養成施設に活用していただけるよう『ウエルネス栄養教育・栄養指導論』に変更しました.また,管理栄養士・栄養士免許取得を目指す学生や既に免許を取得している方々の実践活動にも役立つよう編纂しました.しかし,これだけ多くの改訂を短時間で行ったことから,いたらぬ点も多々あることと存じます.読者諸氏からの率直なご意見,ご批判をいただけましたら,関係者一同にとって望外の喜びです.
2003年初春
編者
序文
2000年を迎えた今,栄養士の誕生から80余年が経過しようとしています.その間の栄養改善活動は,食料不足に伴う栄養欠乏対策に始まりましたが,近年では過剰・偏り・誤りの是正へと変わり,対象も国,地域,集団から個人を重視する時代を迎えています.また,内容は物としての栄養成分や料理を捉えることに始まり,そして,食事や食生活などの行動現象を,さらには,健康状態などの生命現象を捉える方向へと変容しています.
どんな時代でも,ヒトが究極の目的とするところは,健やかに生まれ,健康であること,そしてできる限り長生きすることでしょう.
人生80年と言われ,栄養知識も普及し,飽食時代,グルメブーム等の言葉が一般化するほどですから,現在の食環境は一見恵まれたように思われます.しかし,生活習慣病の増加など課題も多く,生活の質の向上が求められています.
昭和30年代に“40〜60歳くらいの働き盛りに多い疾病”として行政的に提唱され,その後,加齢に伴って罹患率が高くなるとされた“成人病”の発症には,生活習慣が深く関与することが明らかになりました.従って,これを改善することにより,疾病の発症・進行が予防できるという認識を広く国民に醸成し,行動に結びつけていく必要があります.
そのためには,21世紀が「自分の健康は自分で責任もち,より幸福で充実した人生を送るために,自分の現在の生活習慣を点検し,自分で変えなければならないことに気づき,生活習慣の変容に積極的に取り組んでいく人たちによってつくられる“ウエルネス社会”」となるよう,栄養士は,グローバルな視点で知識や技術を身につけ,指導や教育を強力に推進していくことが肝要です.
Small Changes Can Make a Big Difference.(Travisによる)
-どんな小さな生活習慣の変化でもそこから大きな変化が生ずる-