Prologue
2010 年に発刊した前著『包括的治療戦略』は,多くの読者に受け入れられ,現在でも増刷を続けている.著者として,たいへん喜ばしいと同時に,お読みいただいた読者の方々に感謝申し上げたい.
その前著で,紙幅の関係上,あまり触れることができなかったのが「機能」である.言うまでもなく,歯科治療は機能と審美が一体となってはじめて成功と呼べ,長期的な維持・安定には,適切な機能回復が必要不可欠である.
ところが,これまで臨床的にどのように機能に対応していけば良いか,さまざまな顎形態および顎運動が存在する中,不明な部分が多いことも現状である.
臨床に携わっていると,教科書通りにはいかない症例に多々遭遇する.顎模型の咬合面形態をそのまま受け入れられない症例も少なくない.また臨床では,骨格の違い,治癒能力の差などの遺伝的因子や歯ぎしり,ストレス,職業などのさまざまな生活環境を持つ多種多様な患者を治療しなければならない.
よく患者に「このセラミックはどれくらい保ちますか?」と聞かれることがある.その際,私は必ず,模型にのった補綴物を見せながら「この模型にかぶせて飾っておけば,一生保ちます」と答えている.この補綴物が口腔内にセットされたその日から崩壊のリスクが始まるのである.「咬合力」に対して,我々になにができるか,どう対応していくべきかが課題となる.
そこで大切なことは,骨格,顎運動,歯列の調和である.骨格と調和した口腔内の場合,崩壊のリスクは少ないのだが,骨格は口腔内や顔貌だけではわからない.そこで参考になるのが,セファロ分析である.Chapter1において,我々が知っておきたいセファロ分析について,さらにChapter2においては,力と向き合う咬合治療において理解しておくべき基本コンセプトについて解説した.
咬合力に影響を受ける部位には,顎関節,歯,歯周組織など,患者によってさまざまである.どこに影響が出やすい患者なのかを把握した上で,患者ごとに適した対応をする必要がある.その対応策をChapter3で詳説し,さらに不正咬合の患者に対する治療法についてChapter4にて解説した.最後にChapter5にて,インプラントを用いた補綴治療における診査・診断の重要性について症例と共に解説した.
本書が読者諸兄の臨床の一助となり,ひいては患者の健康に寄与することができれば,著者として望外の喜びである.
2019 年3 月
麹町にて 土屋賢司
包括的治療戦略Vol.2 発刊に寄せて
山ア長郎
Masao Yamazaki
原宿デンタルオフィス院長
日本臨床歯科医学会理事長
東京SJCD最高顧問
待望の一冊,といっても過言ではないだろう.土屋賢司先生の前著『包括的治療戦略』から9 年.ついに続編が完成したとの報を受け,喜ばしいと同時に,どのような内容なのかと期待に胸が膨らんだ.
拝読したところ,前回の“審美“を中心とした内容から,今回は“機能”にフォーカスを当て,難症例に対して咬合・補綴治療,インプラント治療,矯正治療などInterdiciplinary approachで治療に取り組まれている.そして10 年,20 年,それ以上,といった長期経過症例も提示されている.読者の方々には,この長期経過症例が“なぜ,うまくいったのか“,“なぜ,ここは壊れたのか”といったことを一緒に考え擬似体験しながら読み進めていただきたい.
また,セファロ分析を活用した手法は,顎機能に問題を抱えた患者,不正咬合の患者など,口腔内の診査・診断だけではわからない複雑な症例に対してとりわけ有用である.さらに最新のデジタル技術を診断という観点からも柔軟に取り入れており,これからの歯科医療の一つの方向性も示している.
いまから30 年以上前になるが, 土屋先生がSJCD(Society of Japan ClinicalDentistry)で学び始めたころは,歯周補綴の時代であった.歯の動揺,咬合性外傷など,咬合の安定と硬組織,軟組織が失われた症例に対して,歯周治療を行って口腔内環境を改善し,連結等を駆使して補綴治療を行い,咬合を安定させるわけだが,そこで学んできた手法・考え方を,自分なりにアレンジして現代の臨床に活かしている.
そのベースとなるのが,土屋先生が当時から変わらずにこだわってきた「診査・診断」にほかならない.それは歯科の王道であり,年月が経ち,使用する器機・材料が変わろうとも“王道は色褪せない”ということをあらためて痛感した次第である.
審美と機能は両輪である.本著『包括的治療戦略 Vol.2』,そして前著『包括的治療戦略』を併せて読むことで,複雑な症例に対して審美と機能を両立させ,さらにそれを長期的に維持するための診断力,技術力がつくものと確信している.本書が,読者の臨床の一助となることを祈念している.
2019 年3 月 原宿にて
2010 年に発刊した前著『包括的治療戦略』は,多くの読者に受け入れられ,現在でも増刷を続けている.著者として,たいへん喜ばしいと同時に,お読みいただいた読者の方々に感謝申し上げたい.
その前著で,紙幅の関係上,あまり触れることができなかったのが「機能」である.言うまでもなく,歯科治療は機能と審美が一体となってはじめて成功と呼べ,長期的な維持・安定には,適切な機能回復が必要不可欠である.
ところが,これまで臨床的にどのように機能に対応していけば良いか,さまざまな顎形態および顎運動が存在する中,不明な部分が多いことも現状である.
臨床に携わっていると,教科書通りにはいかない症例に多々遭遇する.顎模型の咬合面形態をそのまま受け入れられない症例も少なくない.また臨床では,骨格の違い,治癒能力の差などの遺伝的因子や歯ぎしり,ストレス,職業などのさまざまな生活環境を持つ多種多様な患者を治療しなければならない.
よく患者に「このセラミックはどれくらい保ちますか?」と聞かれることがある.その際,私は必ず,模型にのった補綴物を見せながら「この模型にかぶせて飾っておけば,一生保ちます」と答えている.この補綴物が口腔内にセットされたその日から崩壊のリスクが始まるのである.「咬合力」に対して,我々になにができるか,どう対応していくべきかが課題となる.
そこで大切なことは,骨格,顎運動,歯列の調和である.骨格と調和した口腔内の場合,崩壊のリスクは少ないのだが,骨格は口腔内や顔貌だけではわからない.そこで参考になるのが,セファロ分析である.Chapter1において,我々が知っておきたいセファロ分析について,さらにChapter2においては,力と向き合う咬合治療において理解しておくべき基本コンセプトについて解説した.
咬合力に影響を受ける部位には,顎関節,歯,歯周組織など,患者によってさまざまである.どこに影響が出やすい患者なのかを把握した上で,患者ごとに適した対応をする必要がある.その対応策をChapter3で詳説し,さらに不正咬合の患者に対する治療法についてChapter4にて解説した.最後にChapter5にて,インプラントを用いた補綴治療における診査・診断の重要性について症例と共に解説した.
本書が読者諸兄の臨床の一助となり,ひいては患者の健康に寄与することができれば,著者として望外の喜びである.
2019 年3 月
麹町にて 土屋賢司
包括的治療戦略Vol.2 発刊に寄せて
山ア長郎
Masao Yamazaki
原宿デンタルオフィス院長
日本臨床歯科医学会理事長
東京SJCD最高顧問
待望の一冊,といっても過言ではないだろう.土屋賢司先生の前著『包括的治療戦略』から9 年.ついに続編が完成したとの報を受け,喜ばしいと同時に,どのような内容なのかと期待に胸が膨らんだ.
拝読したところ,前回の“審美“を中心とした内容から,今回は“機能”にフォーカスを当て,難症例に対して咬合・補綴治療,インプラント治療,矯正治療などInterdiciplinary approachで治療に取り組まれている.そして10 年,20 年,それ以上,といった長期経過症例も提示されている.読者の方々には,この長期経過症例が“なぜ,うまくいったのか“,“なぜ,ここは壊れたのか”といったことを一緒に考え擬似体験しながら読み進めていただきたい.
また,セファロ分析を活用した手法は,顎機能に問題を抱えた患者,不正咬合の患者など,口腔内の診査・診断だけではわからない複雑な症例に対してとりわけ有用である.さらに最新のデジタル技術を診断という観点からも柔軟に取り入れており,これからの歯科医療の一つの方向性も示している.
いまから30 年以上前になるが, 土屋先生がSJCD(Society of Japan ClinicalDentistry)で学び始めたころは,歯周補綴の時代であった.歯の動揺,咬合性外傷など,咬合の安定と硬組織,軟組織が失われた症例に対して,歯周治療を行って口腔内環境を改善し,連結等を駆使して補綴治療を行い,咬合を安定させるわけだが,そこで学んできた手法・考え方を,自分なりにアレンジして現代の臨床に活かしている.
そのベースとなるのが,土屋先生が当時から変わらずにこだわってきた「診査・診断」にほかならない.それは歯科の王道であり,年月が経ち,使用する器機・材料が変わろうとも“王道は色褪せない”ということをあらためて痛感した次第である.
審美と機能は両輪である.本著『包括的治療戦略 Vol.2』,そして前著『包括的治療戦略』を併せて読むことで,複雑な症例に対して審美と機能を両立させ,さらにそれを長期的に維持するための診断力,技術力がつくものと確信している.本書が,読者の臨床の一助となることを祈念している.
2019 年3 月 原宿にて
Prologue
発刊に寄せて(山ア長郎)
Opening graph 時間軸から学ぶ長期維持治療戦略の重要性
Chapter 1 Functional Cephalometric Analysis
Section 1 補綴医のためのセファロ分析
Section 2 Occlusal height,plane,curve
Section 3 セファロ分析の臨床的活用法
Chapter 2 Fundamental Concepts for Occlusal clinical-path
Section 1 前方決定要素,後方決定要素の診査・診断
Section 2 咬合に問題のある患者に対する治療の流れ
Section 3 天然歯とインプラントの咬合の変化
Chapter 3 Weak Link Theory(Force Management)
Section 1 顎口腔系に生じたメカニカルストレスの影響を受ける組織
Section 2 顎関節,咀嚼筋に影響が出る患者
Section 3 力の影響を歯周組織で受ける患者
Section 4 力の影響を歯で受ける患者
Section 5 wearパターンによる診断
Section 6 トライアルセラピー
Chapter 4 Solution for Malocclusion
Section 1 Open biteの分類とその影響に対する解決法
Section 2 Deep biteの分類とその審美的,および機能的解決法
Section 3 Dual biteの分類とその臨床的解決法
Chapter 5 Case Gallery
Case 1 Planning for Parallel Implant Prosthesis
Case 2 Planning for Gingival Zenith of Implant Prosthesis
Case 3 Planning for Time Dimensional Implant Prosthesis
付録 Esthetic site,Functional site
Epilogue
参考文献
索引
発刊に寄せて(山ア長郎)
Opening graph 時間軸から学ぶ長期維持治療戦略の重要性
Chapter 1 Functional Cephalometric Analysis
Section 1 補綴医のためのセファロ分析
Section 2 Occlusal height,plane,curve
Section 3 セファロ分析の臨床的活用法
Chapter 2 Fundamental Concepts for Occlusal clinical-path
Section 1 前方決定要素,後方決定要素の診査・診断
Section 2 咬合に問題のある患者に対する治療の流れ
Section 3 天然歯とインプラントの咬合の変化
Chapter 3 Weak Link Theory(Force Management)
Section 1 顎口腔系に生じたメカニカルストレスの影響を受ける組織
Section 2 顎関節,咀嚼筋に影響が出る患者
Section 3 力の影響を歯周組織で受ける患者
Section 4 力の影響を歯で受ける患者
Section 5 wearパターンによる診断
Section 6 トライアルセラピー
Chapter 4 Solution for Malocclusion
Section 1 Open biteの分類とその影響に対する解決法
Section 2 Deep biteの分類とその審美的,および機能的解決法
Section 3 Dual biteの分類とその臨床的解決法
Chapter 5 Case Gallery
Case 1 Planning for Parallel Implant Prosthesis
Case 2 Planning for Gingival Zenith of Implant Prosthesis
Case 3 Planning for Time Dimensional Implant Prosthesis
付録 Esthetic site,Functional site
Epilogue
参考文献
索引