はじめに
全部床義歯補綴学とは,片顎または上下両顎のすべての歯を喪失した患者に対し,歯とその周囲組織を全部床義歯により補綴することで,形態と機能および外観を回復させるとともに,患者のQOLの維持・向上を図るために必要な理論と技術を考究する学問です.
わが国の65歳以上の高齢者人口は約3,640万人で,総人口に占める割合は29.1%となり,人口,割合ともに過去最高となりました(2022年3月15日現在).この割合は今後も上昇を続け,2035年には3人に1人が高齢者になると見込まれ,諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しています.このような社会的背景からも,今後,ますますの無歯顎患者の増加が見込まれ,全部床義歯による補綴治療が高齢者の口腔環境を改善し,健康寿命の延伸に寄与することは大きな意義があると考えます.
このような社会情勢の変化に合わせて,令和5年版歯科医師国家試験出題基準では,「高齢化等による疾病構造の変化に伴う歯科診療の変化に関する内容」や「口腔機能の維持向上や摂食機能障害への歯科診療に関する内容」の項目について引き続き充実が図られていることからも,歯科医師国家試験の出題傾向と内容が変容していることが理解できます.
以上を踏まえて,本書では下記に配慮した構成としました.・標準的な全部床義歯補綴学の教科書『無歯顎補綴治療学第4版』(医歯薬出版)に準拠し,重要項目をできるだけ簡潔に記載しました.また,図表と写真を多用することで理解を促す一助としました.・学術用語は,『歯科補綴学専門用語集 第5版』に準拠し,歯科医師国家試験出題基準との整合性を図り,かつ上述の出題傾向の変容に対応できる内容を加味しました.・全部床義歯補綴学の総論と各論領域に加えて,特殊な装置による治療について簡潔かつ明瞭に記載しました.
本書が,これからの歯科医療を担う多くの歯学生に活用され,全部床義歯補綴学への理解が深まる助力となれば幸甚です.
本書のいくつかの写真は,鶴見大学 細井紀雄名誉教授と大久保力廣教授にご提供いただきました.ここに深く感謝の意を記します.
2022年5月
西山雄一郎
全部床義歯補綴学とは,片顎または上下両顎のすべての歯を喪失した患者に対し,歯とその周囲組織を全部床義歯により補綴することで,形態と機能および外観を回復させるとともに,患者のQOLの維持・向上を図るために必要な理論と技術を考究する学問です.
わが国の65歳以上の高齢者人口は約3,640万人で,総人口に占める割合は29.1%となり,人口,割合ともに過去最高となりました(2022年3月15日現在).この割合は今後も上昇を続け,2035年には3人に1人が高齢者になると見込まれ,諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しています.このような社会的背景からも,今後,ますますの無歯顎患者の増加が見込まれ,全部床義歯による補綴治療が高齢者の口腔環境を改善し,健康寿命の延伸に寄与することは大きな意義があると考えます.
このような社会情勢の変化に合わせて,令和5年版歯科医師国家試験出題基準では,「高齢化等による疾病構造の変化に伴う歯科診療の変化に関する内容」や「口腔機能の維持向上や摂食機能障害への歯科診療に関する内容」の項目について引き続き充実が図られていることからも,歯科医師国家試験の出題傾向と内容が変容していることが理解できます.
以上を踏まえて,本書では下記に配慮した構成としました.・標準的な全部床義歯補綴学の教科書『無歯顎補綴治療学第4版』(医歯薬出版)に準拠し,重要項目をできるだけ簡潔に記載しました.また,図表と写真を多用することで理解を促す一助としました.・学術用語は,『歯科補綴学専門用語集 第5版』に準拠し,歯科医師国家試験出題基準との整合性を図り,かつ上述の出題傾向の変容に対応できる内容を加味しました.・全部床義歯補綴学の総論と各論領域に加えて,特殊な装置による治療について簡潔かつ明瞭に記載しました.
本書が,これからの歯科医療を担う多くの歯学生に活用され,全部床義歯補綴学への理解が深まる助力となれば幸甚です.
本書のいくつかの写真は,鶴見大学 細井紀雄名誉教授と大久保力廣教授にご提供いただきました.ここに深く感謝の意を記します.
2022年5月
西山雄一郎
Chapter 1 口腔・顎顔面の加齢変化
Chapter 2 下顎位と下顎運動要素
Chapter 3 無歯顎の解剖学的指標(ランドマーク)
Chapter 4 全部床義歯の構成要素
Chapter 5 全部床義歯治療の流れ
Chapter 6 診察・検査
Chapter 7 前処置,複製義歯による治療
Chapter 8 印象採得
Chapter 9 顎間関係の記録
Chapter 10 咬合器装着と顆路調節
Chapter 11 人工歯の選択・排列と歯肉形成
Chapter 12 ろう義歯の試適
Chapter 13 埋没・重合・研磨
Chapter 14 重合後の咬合器再装着と削合
Chapter 15 義歯の装着と患者指導
Chapter 16 術後管理と義歯修理
Chapter 17 金属床義歯による治療
Chapter 18 インプラントオーバーデンチャーによる治療
Chapter 19 特殊な装置による治療
付録 令和5年版歯科医師国家試験出題基準対応表
文献
牽引
Chapter 2 下顎位と下顎運動要素
Chapter 3 無歯顎の解剖学的指標(ランドマーク)
Chapter 4 全部床義歯の構成要素
Chapter 5 全部床義歯治療の流れ
Chapter 6 診察・検査
Chapter 7 前処置,複製義歯による治療
Chapter 8 印象採得
Chapter 9 顎間関係の記録
Chapter 10 咬合器装着と顆路調節
Chapter 11 人工歯の選択・排列と歯肉形成
Chapter 12 ろう義歯の試適
Chapter 13 埋没・重合・研磨
Chapter 14 重合後の咬合器再装着と削合
Chapter 15 義歯の装着と患者指導
Chapter 16 術後管理と義歯修理
Chapter 17 金属床義歯による治療
Chapter 18 インプラントオーバーデンチャーによる治療
Chapter 19 特殊な装置による治療
付録 令和5年版歯科医師国家試験出題基準対応表
文献
牽引