やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 口腔外科学は,口腔顎顔面部に発生する疾患の診断と治療を担任する学問です.また,口腔外科学は“咬合の外科学”でもあり,咬合の異常を外科的手法をもって治す学問でもあるといえます.このことから,基礎から臨床,隣接医学まで幅広い知識の習得が必要となっています.
 近年,わが国は超高齢社会を迎え,歯科治療は口腔内の局所治療だけにとどまらず,全身状態とより密接に関連するようになってきました.治療の成功のためには,全身疾患の知識,すなわち,医学的素養をもつことが重要となっています.つまり,歯科医師にとって,口腔外科的な知識をもつことは日常の歯科診療を安全に行ううえでのいわゆる“転ばぬ先の杖”になると考えます.
 昨今の歯科医師国家試験での口腔外科領域の問題は,幅広く,かつ,深く,なかには,口腔外科認定医レベルであろうと考えられる問題も出題されるようになっています.そこで,本書もこれに対応すべく,国家試験に向けて必ず押さえておきたい重要項目はもとより,最新のトピックまで網羅するため複数巻にまとめることになりました.内容は,日本口腔外科学会編『イラストでみる口腔外科手術』第1〜4巻および各社の口腔外科学の教科書などを参考としています.また,症例写真には,過去に国家試験で出題された写真を多く使用し,これに加え,オリジナル写真,簡潔なイラスト,表などを用いて知識を整理し,記憶しやすいようにまとめてあります.“百聞は一見にしかず”のことわざ通り,視覚素材の質の向上にも重点を置いてまとめました.
 本書は,国家試験の勉強のためだけでなく,その後の口腔外科認定医,口腔外科専門医を目指すための基礎的事項の整理にも役立つものと考えます.
 皆様にご活用いただければ幸いです.
 2020年10月
 外木守雄
Chapter 1 先天異常および発育異常
Chapter 2 顎変形症
Chapter 3 顎口腔領域に関連した症候群
Chapter 4 顎関節疾患
Chapter 5 損傷
Chapter 6 神経系疾患
Chapter 7 嚢胞
 文献
 索引