やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 高齢者歯科学は,平成18年版歯科医師国家試験出題基準では,必修と一般の総論に「加齢」があり,各論では,「高齢者の歯科診療」という中項目がありました.平成22年版出題基準では,必修と一般の総論に「加齢」があり,各論では高齢者の齲蝕・歯内・歯周治療がそれぞれの大項目のなかの中項目として分かれていました.ようやく平成26年版出題基準で,各論の大項目に「高齢者の歯科診療」として独立し,各論の6%の出題数とされました.平成30年版出題基準では,これが8%と増やされ,保存系24%,補綴系24%であること考えると,大きな柱となりました.しかしながら,多くの国家試験対策教科書・参考書をみても,独立した書籍はありません.補綴,口腔外科,衛生,麻酔の中で埋もれてしまっています.
 このところの歯科医師国家試験問題をみると,従来から出題されてきた「歯と全身の老化」に加えて,全身疾患をもった高齢者への対応,口腔機能低下症への対応,摂食嚥下リハビリテーション,多職種連携による周術期・在宅での対応などが多く出題されてきています.そこで,出題基準・出題傾向の変化を踏まえて,最新の高齢者歯科学のエッセンスをまとめました.特に2020年2月の第113回歯科医師国家試験では4問も出題された「口腔機能低下症・関連検査」については,従来の書籍では十分でなかった点を簡潔にまとめることに注力しました.高齢者歯科学は,多くの科目と関連が深いので,補綴,口腔外科,衛生,麻酔と共通の部分は他書に譲り,贅肉をそぎ落とし,ダイエットに努めました.
 本書が歯学生の卒前教育の教材として,幅広く活用され,高齢者歯科学への理解がさらに深まること,またCBT対策,臨床実習,卒後研修で活用されることを願っています.
 2020年9月
 佐藤裕二
 北川 昇
Chapter 1 高齢者の特徴
Chapter 2 高齢者の疾患と寿命
Chapter 3 社会保障・口腔保健
Chapter 4 全身の加齢と老化
Chapter 5 口腔の加齢と老化
Chapter 6 臨床評価と治療方針の決定
Chapter 7 高齢者歯科の臨床
Chapter 8 全身疾患と管理
Chapter 9 訪問診療
Chapter 10 摂食嚥下リハビリテーション
Chapter 11 構音機能のリハビリテーション
 参考文献
 索引