やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 薬理学は生体分子と薬物の相互作用を科学する学問である.近年の分子生物学的解析手法の進歩にともない,薬物の標的受容体や酵素,細胞内情報伝達機構および遺伝情報の詳細が分子レベルで解明され,新しい作用メカニズムによって効果を発揮する薬物や,有害作用を回避する薬物が目覚ましい勢いで誕生してきている.
 一方,歯科医療の現場では,薬物による治療が欠かせないものになっている.超高齢社会の到来によって,患者は他科での薬物治療を受けていることが多い.歯科医師には,これらの患者に対して歯科医療で薬物を安全に使用できる十分な知識が求められる.すなわち薬物の作用機序はもとより,薬物の体内動態,薬物の有害作用,適用上の注意および効果に影響をおよぼす因子などについて総合的に理解していなくてはならない.
 歯科薬理学の領域では,上述の「歯科医師に求められる薬物の知識」を学び,薬の安全な使用が実践できることを到達目的とする.本書は歯科薬理学のエッセンスをできる限り要約し,多くの図表を用いてまとめたものである.また,社会情勢の変化にともない変更されている,歯科医師国家試験出題基準,歯学教育モデル・コア・カリキュラムなどに沿った内容で構成されている.
 歯科薬理学と口腔生理学,口腔病理学,口腔生化学などの基礎系科目,さらに臨床系各科とのかかわりについて理解し,歯科医師国家試験の対策のために本書をご活用されることを強く願う.
 2018年9月
 柏俣正典
Chapter 1 薬物療法の種類と特徴
Chapter 2 薬物の作用部位・作用機序
Chapter 3 薬物動態(吸収・分布・代謝・排泄)
Chapter 4 投与経路と剤形の種類と特徴
Chapter 5 用量と反応
Chapter 6 服薬計画・指導
Chapter 7 薬物の副作用
Chapter 8 薬物適用の注意
Chapter 9 薬物と医薬品
Chapter 10 鎮痛薬
Chapter 11 抗炎症薬
Chapter 12 抗感染症薬
Chapter 13 抗腫瘍薬
Chapter 14 代謝改善薬,ビタミン
Chapter 15 止血薬,抗血栓薬
Chapter 16 齲蝕予防薬
 文献
 索引