やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 近年の分子生物学および細胞生物学の進歩はさまざまな科学研究の中でも大変著しいものがあります.これらの学問を基盤とした「口腔生化学」はすばらしい発展を遂げてきました.
 わが国において戦後1947年に制定された「歯科教授要綱」が1967年に「歯学教授要綱」として改定された際に口腔生化学が新たに加えられました.この比較的新しい学問を理解するためには,一般生化学の知識を身につけることが必須であることはいうまでもありません.いまや「歯科医師国家試験」においても口腔生化学の最新の知識を修得することが求められています.本書においては,生化学領域の広大かつ難解な学習内容のエッセンスを免疫学や分子生物学を含めて多くの図表を用いてできるだけわかりやすくまとめてみました.生理学・細菌学・病理学をはじめとした基礎医学との関連性を理解するとともに,歯周疾患や齲蝕の発症メカニズム,そして歯周疾患と関係する各種全身疾患の病因について生化学的に理解してほしいと願っております.
 私の「口腔生化学」との出会いは,今から36年前に原田 實先生(前松本歯科大学口腔生化学講座教授)に出会ったことに遡ります.その後,私が高橋直之先生(松本歯科大学大学院歯学独立研究科長)の下で,骨の研究を一生の仕事とするとはその当時想像もできませんでした.
 本書をまとめるにあたり,松本歯科大学総合歯科医学研究所・平岡行博教授に大変有意義なご示唆をいただきました.また本書は,私の恩師である須田立雄先生(昭和大学名誉教授)と早川太郎先生(愛知学院大学名誉教授)が1987年にまとめられた『口腔生化学』(医歯薬出版)(現在第5版)がベースとなっております.本書においては,愛知学院大学歯学部・金森孝雄教授,日本大学歯学部・前野正夫教授および磯川桂太郎教授が作成された図を掲載させていただきました.深く感謝申し上げます.
 2017年9月 宇田川信之
Chapter 1 エネルギー源としての糖質と脂質
Chapter 2 タンパク質の機能
Chapter 3 細胞の構造・機能・細胞死
Chapter 4 細胞間情報伝達機構
Chapter 5 遺伝情報の発現と伝達
Chapter 6 遺伝性疾患と遺伝子操作
Chapter 7 結合組織
Chapter 8 骨・歯・歯周組織
Chapter 9 血清カルシウム代謝
Chapter 10 骨形成
Chapter 11 骨と歯の石灰化
Chapter 12 骨吸収・骨リモデリング
Chapter 13 唾 液
Chapter 14 齲蝕と歯周病
Chapter 15 免 疫
Chapter 16 生化学検査
Chapter 17 栄養素の消化・吸収と生活習慣病
 参考文献
 索引