やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 日本歯科医学会総会の淵源は,明治36(1903)年に創立された歯科医学会であり,第1回の総会は昭和24(1949)年に開催され,爾後4年ごとに開催されています.今回,21年ぶりに平成24年11月に大阪で開催される総会は第22回になります.科学の進歩によって口腔の健康が全身の健康に大きく関わっていることがエビデンスに基づいて次々と解き明かされています.
 総会のメインテーマは『お口の健康 全身元気─各世代の最新歯科医療─』としています.本書は,このテーマの下,これまでに培われた多くの情報を広く社会に発信するために企画されたものです.折しも平成23年8月には「歯科口腔保健の推進に関する法律」が国会で可決,制定され,さらなる国民健康の向上を目指すことが求められています.
 現在では疾病構造の変化によって従来の考えだけでは通じなくなってきています.日進月歩の科学知見を求めて口腔の健康を俯瞰する必要があります.超高齢社会のなかで,将来に向けて更なる全身の健康を見据えて口腔の健康を維持することが求められる時代になっています.そのために乳幼児から高齢者までのすべてのライフステージにわたって口腔の健康を診ていくことが肝要と思います.今回,口腔と全身の関係,歯科領域における再生,歯科における検査,長寿と歯科,咀嚼と嚥下,歯周病と全身をキーワードとして多くの情報を発信して口腔の健康を維持することの重要性を更に喚起し,全身の健康を守るために歯科の重要性,必要性の認識を広め,より一層,国民の健康を確保する啓発に活用していただければ幸いです.
 2012年11月
 第22回日本歯科医学会総会会頭 川添堯彬
第1部 口腔と全身の関係
 第1章 全身からみた口腔─歯周病と糖尿病─(関西電力病院院長 清野裕)
 第2章 口腔から全身をみる(大阪歯科大学内科学講座准教授 大久保直)
第2部 歯科領域における再生
 第3章 再生医学の現状・未来(京都大学iPS細胞研究所所長 山中伸弥)(京都大学iPS細胞研究所国際広報室サイエンスコミュニケーター 和田M裕之)
 第4章 再生医療の未来(岐阜大学大学院医学系研究科組織・器官形成分野教授 國貞隆弘)
 第5章 未来の歯科治療としての歯の再生(東京理科大学総合研究機構教授 辻孝)
 第6章 歯周組織の再生(大阪歯科大学口腔病理学講座教授 田中昭男)
 第7章 顎・顔面の再生(大阪歯科大学口腔外科学第二講座教授 覚道健治)
 第8章 唾液腺の再生(大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能治療学分野教授 阪井丘芳)
 第9章 骨生物医学の新たな潮流:オステオネットワークの獲得・維持・破綻(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔病理学分野教授 山口朗)
 コラム iPSを考える(理化学研究所発生・再生科学総合研究センター幹細胞研究グループグループディレクター 西川伸一)
第3部 歯科における検査
 第10章 歯科医療と検査(東京歯科大学臨床検査病理学講座教授 井上孝)
 第11章 遺伝子診断(日本大学松戸歯学部生化学・分子生物学 安孫子宜光)
 第12章 唾液検査(大阪歯科大学生理学講座准教授 内橋賢二)(大阪歯科大学生理学講座教授 西川泰央)
第4部 長寿と歯科
 第13章 歯科医療と長寿(大阪歯科大学高齢者歯科学講座教授 小正裕)
 第14章 認知期に問題のある脳卒中患者の嚥下障害(浜松市リハビリテーション病院院長 藤島一郎)
第5部 咀嚼と嚥下
 第15章 咀嚼の重要性(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科認知神経生物学分野教授 泰羅雅登)
第6部 歯周病と全身
 第16章 歯周病と糖尿病(大阪歯科大学歯周病学講座教授 梅田誠)