第4版 序
歯学生諸君を対象とする局部床義歯補綴学(部分床義歯補綴学)の入門書として,初版の上梓以来3版23刷を重ねて25年の歳月を閲した.そして改版の都度,著者・編者としての責務の重さを痛感してきた.
さてこのたび,5年ぶりの改版にあたって,修正,強化を目指した主な内容は,@局部床義歯(部分床義歯)による治療の意義(信頼関係に基づく全人的医療→患者のQOL向上の達成)の重さを認識すること,A医療の質的向上を促す問題解決志向システム(POS)医療のインセンティブを高めること,Bその実践に欠かせない治療術式のマニュアルとして役立つこと,C専門学会主導により軌道にのった統一用語への準拠に努めること,などである.読者諸氏に改版の意図をご理解いただき,益するところがあれば幸いである.なお,前版にならって20世紀における歯科医学の発達の歴史を回顧し,あるいはやや多様な伝統的コンセプトと術式について述べた部分があるが,その軽重・採否は指導教官ならびに読者諸氏の裁量にお任せするしかない.
本書で用いた専門用語のうち,ごく一部が上記の用語集の規範からはずれている理由は単純ではないが,歴史的な慣用語の使用,あるいは原語(主として英語)と翻訳語の字義の合致をやや重視した過渡的な判断の現れといわざるをえない.たとえば,本書では,“咀嚼系“のほか,書名の“パーシャルデンチャー”,本文中の“局部床義歯“,一部の図の説明に“RPD”を用いている.詳細は巻末の「用語の解説」を参照されたい.
改版にあたり,諸般の事情で朝日大学名誉教授 川野襄二先生(故人),日本歯科大学名誉教授 旗手 敏先生,および明海大学名誉教授柳生嘉博先生のご勇退を受けて著者の構成に異動を生じた.第2版第1刷(1988)以来今日までの三先生のご支援に対して深甚の謝意を表したい.
幸い,ご退任の三先生をはじめ多数の方がたからその空席を補う人材のご推挽をうけ,ここに21世紀の補綴学のリーダーとしてご活躍中の8氏にお願いして,あらたに共著者の隊列に加わっていただくことができた.章ごとの紙面の清新な改稿はもとより,全著者の一体感が生まれて,改版の意図を汲んだ一貫性のある記述の底流が醸しだされた.この力強い基盤に立って予期した成果を世に問うことの喜びを禁じえない.チームワークの成果は,チームメイトが“準備活動のひとつひとつをいかに創造的なやり方で…接触し合って…遂行したか”にかかっているという畏友 川喜田二郎(元東京工業大学教授)の論説(光文社刊「チームワーク」,1966)の一節に,編者として深い共感を覚えていることを申し述べて,著者諸氏への心からの敬意と謝意に代えたい.
2004年3月5日
三谷春保
歯学生諸君を対象とする局部床義歯補綴学(部分床義歯補綴学)の入門書として,初版の上梓以来3版23刷を重ねて25年の歳月を閲した.そして改版の都度,著者・編者としての責務の重さを痛感してきた.
さてこのたび,5年ぶりの改版にあたって,修正,強化を目指した主な内容は,@局部床義歯(部分床義歯)による治療の意義(信頼関係に基づく全人的医療→患者のQOL向上の達成)の重さを認識すること,A医療の質的向上を促す問題解決志向システム(POS)医療のインセンティブを高めること,Bその実践に欠かせない治療術式のマニュアルとして役立つこと,C専門学会主導により軌道にのった統一用語への準拠に努めること,などである.読者諸氏に改版の意図をご理解いただき,益するところがあれば幸いである.なお,前版にならって20世紀における歯科医学の発達の歴史を回顧し,あるいはやや多様な伝統的コンセプトと術式について述べた部分があるが,その軽重・採否は指導教官ならびに読者諸氏の裁量にお任せするしかない.
本書で用いた専門用語のうち,ごく一部が上記の用語集の規範からはずれている理由は単純ではないが,歴史的な慣用語の使用,あるいは原語(主として英語)と翻訳語の字義の合致をやや重視した過渡的な判断の現れといわざるをえない.たとえば,本書では,“咀嚼系“のほか,書名の“パーシャルデンチャー”,本文中の“局部床義歯“,一部の図の説明に“RPD”を用いている.詳細は巻末の「用語の解説」を参照されたい.
改版にあたり,諸般の事情で朝日大学名誉教授 川野襄二先生(故人),日本歯科大学名誉教授 旗手 敏先生,および明海大学名誉教授柳生嘉博先生のご勇退を受けて著者の構成に異動を生じた.第2版第1刷(1988)以来今日までの三先生のご支援に対して深甚の謝意を表したい.
幸い,ご退任の三先生をはじめ多数の方がたからその空席を補う人材のご推挽をうけ,ここに21世紀の補綴学のリーダーとしてご活躍中の8氏にお願いして,あらたに共著者の隊列に加わっていただくことができた.章ごとの紙面の清新な改稿はもとより,全著者の一体感が生まれて,改版の意図を汲んだ一貫性のある記述の底流が醸しだされた.この力強い基盤に立って予期した成果を世に問うことの喜びを禁じえない.チームワークの成果は,チームメイトが“準備活動のひとつひとつをいかに創造的なやり方で…接触し合って…遂行したか”にかかっているという畏友 川喜田二郎(元東京工業大学教授)の論説(光文社刊「チームワーク」,1966)の一節に,編者として深い共感を覚えていることを申し述べて,著者諸氏への心からの敬意と謝意に代えたい.
2004年3月5日
三谷春保
第4版 歯学生のパーシャルデンチャー 目次
■I 基礎編
1章 医療のなかの歯科補綴学
I 医の原則
II 歯科医師としての基本的態度
2章 咀嚼系(顎口腔系)の構成と機能運動
I 顎関節(側頭下顎関節)
II 咀嚼・嚥下に関与する筋群
III 下顎骨に付着する靱帯
IV 下顎運動の神経支配
V 下顎の位置と運動
VI 咀嚼・摂食・嚥下運動
3章 咬合の不調和,歯の欠損などに継発する症状
I 正常咬合
II 歯の支持組織(歯周組織)
III 咬合性外傷の背景
IV 咀嚼系(顎口腔系)の機能障害
V 咀嚼系(顎口腔系)の変化
VI 補綴学的咬合関係の形式
VII 局部床義歯(部分床義歯)の咬合
4章 局部床義歯にかかわる解剖学的事項
I 審美性の回復
II 義歯床縁の形態と解剖
III 義歯研磨面の形態と解剖
5章 Hanau H2-O咬合器
I 咬合器の分類
II 咬合器の選択
III 咬合器装着と下顎運動要素の測定
IV 半調節性咬合器使用時の注意点
6章 ディナーマークII咬合器
I ディナーマークII咬合器の特徴
II 咬合器本体と付属品
III 模型装着と咬合器の調整
IV スライドマチックフェイスボウの使用法
7章 局部床義歯の歴史と趨向
I 歯科補綴治療の歴史
II 20世紀の歯科補綴学の流れ
III 局部床義歯(部分床義歯)の趨向
8章 局部床義歯補綴の目的と臨床的意義
I 局部床義歯(部分床義歯)補綴の目的
II 局部床義歯(部分床義歯)の臨床的意義
III 義歯による高齢者の咬合管理
IV 歯科医師の心構えと責任
9章 局部床義歯の特徴と構成要素
10章 補綴方法の選択
I 口腔以外の諸因子
II 固定性局部義歯(ブリッジ)の側からみた条件
III 局部床義歯(部分床義歯)の側からみた条件
11章 局部床義歯症例の分類
I Kennedyの分類
II Applegate-Kennedyの分類
III Eichnerの分類
IV その他の分類法
12章 局部床義歯の支持の考え方
I 義歯床下組織(粘膜)の生物力学
II 支台歯(歯根膜)の生物力学
III 局部床義歯の支持
13章 連結子の基本的考え方
I 連結子の分類と使用目的
II 連結子の具備条件
III 大連結子に関する一般的注意事項
IV 大連結子の種類
14章 局部床義歯の維持の考え方
I 維持装置(支台装置)の所要条件
II 維持装置(支台装置)の種類
III クラスプの一般的構造(レスト付き2腕鉤を例として)
IV クラスプの歯面適合位置
V クラスプの機能(レスト付き2腕鉤を例として)
VI 鉤腕の弾性限界
VII 鉤間線と維持線
VIII 維持力の働き方
IX クラスプの分類
X 間接維持装置(間接支台装置)
XI 床による維持
XII 筋による維持
15章 局部床義歯用材料
I 局部床義歯に用いられる材料
II 義歯床(およびフレームワーク)用材料
III クラスプ,連結子(バー)用材料
IV 人工歯材料
V リライニング(義歯裏装)用材料
■II 臨床編
16章 診察と治療計画
I 医療面接
II 現症の検査
III 治療計画
IV 問題志向型診療録〔POMR〕の導入
17章 口腔内前処置
I 咬合治療〔咬合位と咬合接触関係の修正〕
II 鉤歯(支台歯)の前処置
III 鉤歯(支台歯)のための歯冠補綴
18章 局部床義歯補綴治療の臨床ステップ
19章 前処置としての咬合調整
I 咬合調整の概説
II 咬合干渉の検査
III 咬合調整の法則と術式
20章 印象採得と模型製作
I 維持ならびに支持(負担)様式と印象法の選択
II 印象材の種類と特徴,トレーおよび印象採得の準備
III 水性コロイド印象材による印象
IV 一塊機能印象(個人トレーと弾性印象材による)
V 模型改造印象(オルタードキャスト法)
VI リライニング印象(リベース印象)
VII 模 型
21章 サベイング(平行測定)173
I サベイヤーの構造
II 研究用模型のサベイング(予備測定)
III 義歯装着方向決定の要因
IV 歯冠修復物の成形法(ミリングテクニック)
V 作業用模型のサベイング(本測定)
22章 局部床義歯の設計とフレームワークの製作
I 局部床義歯(部分床義歯)設計の考え方
II Kennedy分類に基づく設計の考え方
III 歯周衛生を考慮した設計
IV 少数歯残存症例の設計
V フレームワークの製作
23章 大連結子
I 上顎の大連結子
II 下顎の大連結子
III レジン床義歯の大連結子
IV バッカルバー(外側バー)
24章 維持装置(支台装置)203
I 線 鉤(屈曲鉤)
II 鋳造鉤
III アタッチメント
25章 咬合採得(中心咬合位の決定)225
I 上顎模型の咬合器装着
II 咬合採得
26章 人工歯の選択,排列および【蝋】義歯の形成
I 人工歯の選択
II 前歯の人工歯排列
III FrushとFisherによるSPA要素の表現法
IV 臼歯の人工歯排列
V 【蝋】義歯の形成と試適
27章 埋没から義歯完成まで
I 埋 没
II コア法
III 研 磨
IV 再装着
28章 義歯の装着,調整および指導
I 装 着
II 装着時に不適合をきたす原因
III 調 整
IV 義歯床下粘膜の疼痛
V 患者の指導
VI リコール
29章 修理,リライニングおよびリベース
I 義歯破損の背景と内容
II 義歯の修理法
III リライニング(裏装法)とリベース(改床法)
30章 暫間義歯,即時義歯,移行義歯,診断用義歯,ならびに治療用義歯
I 概 説
II 義歯の適応症と設計の要点
III 治療用義歯による顎関節症の治療
31章 顎顔面補綴と歯科インプラント
I 顎顔面補綴
II 歯科インプラント
用語の解説
索引
参考文献および参考書目
■I 基礎編
1章 医療のなかの歯科補綴学
I 医の原則
II 歯科医師としての基本的態度
2章 咀嚼系(顎口腔系)の構成と機能運動
I 顎関節(側頭下顎関節)
II 咀嚼・嚥下に関与する筋群
III 下顎骨に付着する靱帯
IV 下顎運動の神経支配
V 下顎の位置と運動
VI 咀嚼・摂食・嚥下運動
3章 咬合の不調和,歯の欠損などに継発する症状
I 正常咬合
II 歯の支持組織(歯周組織)
III 咬合性外傷の背景
IV 咀嚼系(顎口腔系)の機能障害
V 咀嚼系(顎口腔系)の変化
VI 補綴学的咬合関係の形式
VII 局部床義歯(部分床義歯)の咬合
4章 局部床義歯にかかわる解剖学的事項
I 審美性の回復
II 義歯床縁の形態と解剖
III 義歯研磨面の形態と解剖
5章 Hanau H2-O咬合器
I 咬合器の分類
II 咬合器の選択
III 咬合器装着と下顎運動要素の測定
IV 半調節性咬合器使用時の注意点
6章 ディナーマークII咬合器
I ディナーマークII咬合器の特徴
II 咬合器本体と付属品
III 模型装着と咬合器の調整
IV スライドマチックフェイスボウの使用法
7章 局部床義歯の歴史と趨向
I 歯科補綴治療の歴史
II 20世紀の歯科補綴学の流れ
III 局部床義歯(部分床義歯)の趨向
8章 局部床義歯補綴の目的と臨床的意義
I 局部床義歯(部分床義歯)補綴の目的
II 局部床義歯(部分床義歯)の臨床的意義
III 義歯による高齢者の咬合管理
IV 歯科医師の心構えと責任
9章 局部床義歯の特徴と構成要素
10章 補綴方法の選択
I 口腔以外の諸因子
II 固定性局部義歯(ブリッジ)の側からみた条件
III 局部床義歯(部分床義歯)の側からみた条件
11章 局部床義歯症例の分類
I Kennedyの分類
II Applegate-Kennedyの分類
III Eichnerの分類
IV その他の分類法
12章 局部床義歯の支持の考え方
I 義歯床下組織(粘膜)の生物力学
II 支台歯(歯根膜)の生物力学
III 局部床義歯の支持
13章 連結子の基本的考え方
I 連結子の分類と使用目的
II 連結子の具備条件
III 大連結子に関する一般的注意事項
IV 大連結子の種類
14章 局部床義歯の維持の考え方
I 維持装置(支台装置)の所要条件
II 維持装置(支台装置)の種類
III クラスプの一般的構造(レスト付き2腕鉤を例として)
IV クラスプの歯面適合位置
V クラスプの機能(レスト付き2腕鉤を例として)
VI 鉤腕の弾性限界
VII 鉤間線と維持線
VIII 維持力の働き方
IX クラスプの分類
X 間接維持装置(間接支台装置)
XI 床による維持
XII 筋による維持
15章 局部床義歯用材料
I 局部床義歯に用いられる材料
II 義歯床(およびフレームワーク)用材料
III クラスプ,連結子(バー)用材料
IV 人工歯材料
V リライニング(義歯裏装)用材料
■II 臨床編
16章 診察と治療計画
I 医療面接
II 現症の検査
III 治療計画
IV 問題志向型診療録〔POMR〕の導入
17章 口腔内前処置
I 咬合治療〔咬合位と咬合接触関係の修正〕
II 鉤歯(支台歯)の前処置
III 鉤歯(支台歯)のための歯冠補綴
18章 局部床義歯補綴治療の臨床ステップ
19章 前処置としての咬合調整
I 咬合調整の概説
II 咬合干渉の検査
III 咬合調整の法則と術式
20章 印象採得と模型製作
I 維持ならびに支持(負担)様式と印象法の選択
II 印象材の種類と特徴,トレーおよび印象採得の準備
III 水性コロイド印象材による印象
IV 一塊機能印象(個人トレーと弾性印象材による)
V 模型改造印象(オルタードキャスト法)
VI リライニング印象(リベース印象)
VII 模 型
21章 サベイング(平行測定)173
I サベイヤーの構造
II 研究用模型のサベイング(予備測定)
III 義歯装着方向決定の要因
IV 歯冠修復物の成形法(ミリングテクニック)
V 作業用模型のサベイング(本測定)
22章 局部床義歯の設計とフレームワークの製作
I 局部床義歯(部分床義歯)設計の考え方
II Kennedy分類に基づく設計の考え方
III 歯周衛生を考慮した設計
IV 少数歯残存症例の設計
V フレームワークの製作
23章 大連結子
I 上顎の大連結子
II 下顎の大連結子
III レジン床義歯の大連結子
IV バッカルバー(外側バー)
24章 維持装置(支台装置)203
I 線 鉤(屈曲鉤)
II 鋳造鉤
III アタッチメント
25章 咬合採得(中心咬合位の決定)225
I 上顎模型の咬合器装着
II 咬合採得
26章 人工歯の選択,排列および【蝋】義歯の形成
I 人工歯の選択
II 前歯の人工歯排列
III FrushとFisherによるSPA要素の表現法
IV 臼歯の人工歯排列
V 【蝋】義歯の形成と試適
27章 埋没から義歯完成まで
I 埋 没
II コア法
III 研 磨
IV 再装着
28章 義歯の装着,調整および指導
I 装 着
II 装着時に不適合をきたす原因
III 調 整
IV 義歯床下粘膜の疼痛
V 患者の指導
VI リコール
29章 修理,リライニングおよびリベース
I 義歯破損の背景と内容
II 義歯の修理法
III リライニング(裏装法)とリベース(改床法)
30章 暫間義歯,即時義歯,移行義歯,診断用義歯,ならびに治療用義歯
I 概 説
II 義歯の適応症と設計の要点
III 治療用義歯による顎関節症の治療
31章 顎顔面補綴と歯科インプラント
I 顎顔面補綴
II 歯科インプラント
用語の解説
索引
参考文献および参考書目