やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序にかえて

 “補綴には診断がない”とよく言われる.たしかに診査結果が処置方針と結びつきにくいものが多い.診査結果そのものが,医科の検査値のようには明確に把握できず,数値化されても非常にグローブなものである.
 しかし現実には,欠損補綴であれば接着ブリッジからテレスコープデンチャーまで,“なにか“をよりどころとして選択され,それが適切でなければ“失敗例”としてしっぺ返しを受ける.ある程度経験を積んでくると,この“なにか“はおのずと備わってくる.しかしこの“なにか”を,客観的に表現できる部分は少なく,多くのものがいわゆる“臨床経験”に包括されてしまう.
 これまで学生諸君や卒直後の若い人達に,この潜在的な“なにか“を顕在化して伝えようと努めてきたつもりである.このたびこれをまとめる機会を得た.その内容の大半は恩師ならびに先輩諸兄からご教示いただいたものであるが,私なりの考えを付け加えさせていただいた.若い方がたの“経験”の一助となれば幸いである.
 歯科補綴学第1講座 藍 稔教授ならびに顎顔面機能統合評価学講座 松元 誠教授には,ご校閲ご指導をいただき,厚くお礼申し上げます.東京医科歯科大学 中沢 勇名誉教授ならびに鶴見大学 尾花甚一名誉教授には,長年にわたりご教示いただき,深く感謝いたしております.
 さらに付属病院歯科技工部 土平和秀副部長はじめ職員各位ならびに付属歯科技工士学校各位の多大な努力に深謝いたします.
 おわりに,このような機会を与えていただいた医歯薬出版株式会社ならびに編集担当諸氏にお礼申し上げます.
 1995年1月31日 後藤忠正
序にかえて

第1章 欠損歯列のとらえ方 1
 A 症例の概要…1
 B 症例の条件…4
  1.咬合の条件…4
  2.残存歯の条件…7
  3.顎堤の条件…8

第2章 処置方針の検討 11
 A 当面の処置…11
 B 咬合位の保持…12
 C 維持歯の選択…13
 D 補綴方法の選択…15
  1.パーシャルデンチャーの設計原則…15
  2.補綴方法の選択…17
   1) アタッチメント・テレスコープデンチャー…18
   2) クラスプデンチャー…20
 E 前処置…21
  1.残存歯に対する処置…22
  2.顎堤に対する処置…22
  3.咬合に対する処置…23
  4.仮義歯…23

第3章 義歯の設計 25
 A クラスプデンチャー設計の要点…25
  1.クラスプのとらえ方…25
  2.前処置…25
  3.クラスピング…28
  4.予防歯学的な配慮…32
  5.破損の防止…33
 B アタッチメント・テレスコープ系デンチャー設計の要点…34
  1.適応症の検討…34
  2.歯冠アタッチメント…36
  3.歯根アタッチメント(オーバーデンチャー)…37
  4.コーヌステレスコープ…40

第4章 プランニング & デザイニングの実際 43
 症例 1 ブリッジかパーシャルデンチャーか…43
 症例 2 コーヌスクローネ応用のリムーバブルブリッジ…51
 症例 3 コンパクトなクラスプデンチャーで装着感を向上…58
 症例 4 “ニード“と“ウォント”との調和を図る…63
 症例 5 予防歯周病的配慮のもとに把持を確保する…67
 症例 6 義歯の安定確保により“すれ違い”に対応…74
 症例 7 不確定要因が多く最小限の前処要で経過をみる…80
 症例 8 パーシャルデンチャーによる咬合の挙上…86
 症例 9 アンレーレストで咬合位を設定,保持する…92
 症例 10 “すれ違い”への移行を阻止するために…97
 症例 11 短期間で前処置少なく高齢者の咬合を変更する…104
 症例 12 少数残存歯へのクラスピング…110
 症例 13 パーシャルデンチャーかフルデンチャーか…113
 症例 14 67欠損へのアタッチメントの応用…117
 症例 15 アタッチメント応用のオーバーデンチャー…123
 症例 16 咬合の緊密さを歯根アタッチメントの応用で解決…131
 症例 17 オーバーデンチャーにおける予防歯学的配慮…139
 症例 18 審美的条件からアタッチメントとテレスコープを併用…146
 症例 19 咬合支持と口腔清掃とが予後を大きく左右する…155
 症例 20 コーヌステレスコープの術後トラブルとその応用…161
 症例 21 1歯残存のコーヌスからフルデンチャーへ…168

文 献 174
索 引 175