発行にあたって
摂食嚥下機能障害患者の存在をはじめて認識できたのは,「WHOフェローシップ」により,1977年,デンマークの首都コペンハーゲン郊外にあるバンゲード小児病院に遊学中でありました.また,その時にDysphagiaという用語も知りました.
帰国後は,この分野の研究と療法の開発に心身を注ぎました.そして10年後の1987年に成果を本にまとめ,世に問いました.同時に全国的に講習会を開催しました.この本は後にベストセラー本となり,また講習会の参加者が1,000人を超すことも稀ではありませんでした.健康保険での点数算定も比較的早期の開始となり(1994年),この分野の療法が全国的に広まりました.そして,1997年に日本摂食嚥下リハビリテーション学会が設立されました.
2019年の初秋になって田村文誉先生から電話が入り,その話によると,近年,摂食嚥下機能の発達に問題のある外国人子女の来院・受診が増えているとのことで,問題点は,言葉の壁のため治療に支障をきたすことが増えているそうです.そこで,それを解決すべく診療時に使われる英語を示したわかりやすい本を出版したいとのことでした.私もこの事情は知っていましたので,GOサインを出しました.
なお,この本の制作には,英語のネイティブスピーカーであるアメリカのGroher先生に助力いただいています.先生はこの分野のパイオニアのお一人で親日家であり,日本摂食嚥下リハビリテーション学会の名誉会員でもあります.
この本が術者の皆様のお役に立てれば幸いです.
2021年4月
金子芳洋
はじめに
本書は私たちにとって初めての試みです.きっと手に取ってくださった方々にも,新鮮なものになっているのではないでしょうか.
この本を作ることになったきっかけは,摂食指導の場に外国籍の患者さんが増えてきたことにあります.日本に来て間もなかったり,日本語が通じなくて困っていたり…….そのようななかで,試行錯誤しながら摂食指導を行ってきました.子どもたちや保護者の方と身振り手振りでやりとりをしながら,「ちゃんと伝わっているのかな…….何か視覚的にわかりやすいツールがあるとよいのに」と何度も感じていたのです.そのような思いを受け取り,本書の企画を進めてくださった医歯薬出版様には本当に感謝しています.
また,監修を金子芳洋先生,Michael E.Groher先生にお願いできたことは,大変な喜びです.両先生には30年ほど前から師事させていただいており,筆者の私たちの土台を作っていただいたといっても過言ではありません.その感謝の思いも込めて,本書を作らせていただきました.
本書は,摂食指導の解説本と絵カードがセットになっています.解説本には金子先生編著の『食べる機能の障害』を土台としたエッセンスが詰まっています.そして,絵カードには日本語と英語での患者説明用の例文を付しました.新しいタイプの本書を,どうぞご活用ください.
2021年4月
田村文誉
摂食嚥下機能障害患者の存在をはじめて認識できたのは,「WHOフェローシップ」により,1977年,デンマークの首都コペンハーゲン郊外にあるバンゲード小児病院に遊学中でありました.また,その時にDysphagiaという用語も知りました.
帰国後は,この分野の研究と療法の開発に心身を注ぎました.そして10年後の1987年に成果を本にまとめ,世に問いました.同時に全国的に講習会を開催しました.この本は後にベストセラー本となり,また講習会の参加者が1,000人を超すことも稀ではありませんでした.健康保険での点数算定も比較的早期の開始となり(1994年),この分野の療法が全国的に広まりました.そして,1997年に日本摂食嚥下リハビリテーション学会が設立されました.
2019年の初秋になって田村文誉先生から電話が入り,その話によると,近年,摂食嚥下機能の発達に問題のある外国人子女の来院・受診が増えているとのことで,問題点は,言葉の壁のため治療に支障をきたすことが増えているそうです.そこで,それを解決すべく診療時に使われる英語を示したわかりやすい本を出版したいとのことでした.私もこの事情は知っていましたので,GOサインを出しました.
なお,この本の制作には,英語のネイティブスピーカーであるアメリカのGroher先生に助力いただいています.先生はこの分野のパイオニアのお一人で親日家であり,日本摂食嚥下リハビリテーション学会の名誉会員でもあります.
この本が術者の皆様のお役に立てれば幸いです.
2021年4月
金子芳洋
はじめに
本書は私たちにとって初めての試みです.きっと手に取ってくださった方々にも,新鮮なものになっているのではないでしょうか.
この本を作ることになったきっかけは,摂食指導の場に外国籍の患者さんが増えてきたことにあります.日本に来て間もなかったり,日本語が通じなくて困っていたり…….そのようななかで,試行錯誤しながら摂食指導を行ってきました.子どもたちや保護者の方と身振り手振りでやりとりをしながら,「ちゃんと伝わっているのかな…….何か視覚的にわかりやすいツールがあるとよいのに」と何度も感じていたのです.そのような思いを受け取り,本書の企画を進めてくださった医歯薬出版様には本当に感謝しています.
また,監修を金子芳洋先生,Michael E.Groher先生にお願いできたことは,大変な喜びです.両先生には30年ほど前から師事させていただいており,筆者の私たちの土台を作っていただいたといっても過言ではありません.その感謝の思いも込めて,本書を作らせていただきました.
本書は,摂食指導の解説本と絵カードがセットになっています.解説本には金子先生編著の『食べる機能の障害』を土台としたエッセンスが詰まっています.そして,絵カードには日本語と英語での患者説明用の例文を付しました.新しいタイプの本書を,どうぞご活用ください.
2021年4月
田村文誉
Part 1 摂食嚥下機能はどのように発達するのでしょうか?
(大久保真衣)
1 発達のきまりごと
1.発達
2.摂食嚥下機能における発達の原則
2 哺乳機能の発達
1.哺乳の発達
2.哺乳のための原始反射(哺乳反射)の発達
3.反射の消失
3 摂食嚥下器官の成長と発達
1.口腔形態の特徴
2.吸啜運動
3.直接乳房と人工乳首/びんでの哺乳
4 母乳・育児用ミルクから離乳食へ
1.反射の消失
2.上顎の形態
3.頬の形態
4.乳歯の萌出
5.中咽頭の成長
6.乳児嚥下と成人嚥下
7.咀嚼機能への変化 MunchingとChewing
5 離乳食初期
1.離乳食初期 ごっくん期(5〜6か月頃)
2.食べさせ方
3.姿勢について
4.離乳食の調理形態について
6 離乳食中期
1.離乳食中期 もぐもぐ期(7〜8か月頃)
2.食べさせ方
3.姿勢について
4.離乳食の調理形態について
7 離乳食後期
1.離乳食後期 かみかみ期(9〜11か月頃)
2.舌の動き
3.下顎の動き
4.食べさせ方
5.姿勢について
6.離乳食の調理形態について
8 水の飲み方
1.コップとストローを使う
2.介助の方法
3.ストローの使用
9 自分で食べる
1.手づかみ食べ
2.食具を使う
Part 2 摂食嚥下障害の基本,かかわり方の基本
1 小児の摂食嚥下障害とは(田村文誉)
1.小児の摂食嚥下障害の特徴
2.小児の障害へのかかわり方
2 小児の摂食嚥下障害の原因
1.摂食嚥下障害の原因は単独でも重複しても起こりえる(田村文誉)
2.併存疾患の影響(田村文誉)
3.代表的な原疾患(水上美樹)
3 医療的ケア児の理解(田村文誉)
4 摂食指導にかかわる職種とは(田村文誉)
1.かかわる職種と保険医療上の対象疾患
2.保育,療育,教育のなかでの摂食指導
5 障害児の摂食機能発達と粗大運動・微細運動の獲得との関係…水上美樹
1.粗大運動と摂食機能
2.微細運動(手指機能)と摂食機能
Part 3 上手に食べられないのはどうしてでしょう?
(田村文誉)
1 摂食指導の考え方,心構え
1.子どもの摂食指導の難しさ
2 診察の流れ,注意点
1.まずは医療面接から
3 摂食嚥下機能の評価・検査
1.スクリーニング検査
2.外部観察評価
3.精密検査
4 摂食嚥下障害の特徴的な症状と随伴症状
1.摂食中の症状
2.摂食嚥下障害に伴う問題
5 栄養指導
1.子どもの成長の目安
2.必要な栄養や水分の目安
3.哺乳期から離乳期の栄養
4.経管栄養
COLUMN 「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」のポイント
Part 4 食べる機能に障害のある子どもの支援
(綾野理加)
1 支援の考え方,心構え
1.はじめに
2.対応の基本
2 診察時のポイント
1.診査用紙と摂食機能評価
2.評価に基づいた摂食機能療法
3 姿勢について
1.摂食時の姿勢について
4 スプーンを使って介助する
5 唇と顎の動きを出す
6 自分で食べられるように
7 訓練を始める前に
8 脱感作・鼻呼吸の訓練
1.脱感作
2.鼻呼吸の訓練
9 バンゲード法I
1.バンゲード法とは
2.受動的刺激法
3.半能動的刺激法
4.能動的刺激法
5.抵抗法
10 バンゲード法II
1.吸う訓練
2.吹く訓練
3.舌訓練
11 その他の訓練法
1.味覚刺激
2.咀嚼訓練
12 困ったときの相談先を聞かれたら
付 一般社団法人日本障害者歯科学会認定医のいる施設(2021年4月現在)
文献
索引
付録絵カード(田村文誉,水上美樹,綾野理加,Michael E.Groher)
(大久保真衣)
1 発達のきまりごと
1.発達
2.摂食嚥下機能における発達の原則
2 哺乳機能の発達
1.哺乳の発達
2.哺乳のための原始反射(哺乳反射)の発達
3.反射の消失
3 摂食嚥下器官の成長と発達
1.口腔形態の特徴
2.吸啜運動
3.直接乳房と人工乳首/びんでの哺乳
4 母乳・育児用ミルクから離乳食へ
1.反射の消失
2.上顎の形態
3.頬の形態
4.乳歯の萌出
5.中咽頭の成長
6.乳児嚥下と成人嚥下
7.咀嚼機能への変化 MunchingとChewing
5 離乳食初期
1.離乳食初期 ごっくん期(5〜6か月頃)
2.食べさせ方
3.姿勢について
4.離乳食の調理形態について
6 離乳食中期
1.離乳食中期 もぐもぐ期(7〜8か月頃)
2.食べさせ方
3.姿勢について
4.離乳食の調理形態について
7 離乳食後期
1.離乳食後期 かみかみ期(9〜11か月頃)
2.舌の動き
3.下顎の動き
4.食べさせ方
5.姿勢について
6.離乳食の調理形態について
8 水の飲み方
1.コップとストローを使う
2.介助の方法
3.ストローの使用
9 自分で食べる
1.手づかみ食べ
2.食具を使う
Part 2 摂食嚥下障害の基本,かかわり方の基本
1 小児の摂食嚥下障害とは(田村文誉)
1.小児の摂食嚥下障害の特徴
2.小児の障害へのかかわり方
2 小児の摂食嚥下障害の原因
1.摂食嚥下障害の原因は単独でも重複しても起こりえる(田村文誉)
2.併存疾患の影響(田村文誉)
3.代表的な原疾患(水上美樹)
3 医療的ケア児の理解(田村文誉)
4 摂食指導にかかわる職種とは(田村文誉)
1.かかわる職種と保険医療上の対象疾患
2.保育,療育,教育のなかでの摂食指導
5 障害児の摂食機能発達と粗大運動・微細運動の獲得との関係…水上美樹
1.粗大運動と摂食機能
2.微細運動(手指機能)と摂食機能
Part 3 上手に食べられないのはどうしてでしょう?
(田村文誉)
1 摂食指導の考え方,心構え
1.子どもの摂食指導の難しさ
2 診察の流れ,注意点
1.まずは医療面接から
3 摂食嚥下機能の評価・検査
1.スクリーニング検査
2.外部観察評価
3.精密検査
4 摂食嚥下障害の特徴的な症状と随伴症状
1.摂食中の症状
2.摂食嚥下障害に伴う問題
5 栄養指導
1.子どもの成長の目安
2.必要な栄養や水分の目安
3.哺乳期から離乳期の栄養
4.経管栄養
COLUMN 「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」のポイント
Part 4 食べる機能に障害のある子どもの支援
(綾野理加)
1 支援の考え方,心構え
1.はじめに
2.対応の基本
2 診察時のポイント
1.診査用紙と摂食機能評価
2.評価に基づいた摂食機能療法
3 姿勢について
1.摂食時の姿勢について
4 スプーンを使って介助する
5 唇と顎の動きを出す
6 自分で食べられるように
7 訓練を始める前に
8 脱感作・鼻呼吸の訓練
1.脱感作
2.鼻呼吸の訓練
9 バンゲード法I
1.バンゲード法とは
2.受動的刺激法
3.半能動的刺激法
4.能動的刺激法
5.抵抗法
10 バンゲード法II
1.吸う訓練
2.吹く訓練
3.舌訓練
11 その他の訓練法
1.味覚刺激
2.咀嚼訓練
12 困ったときの相談先を聞かれたら
付 一般社団法人日本障害者歯科学会認定医のいる施設(2021年4月現在)
文献
索引
付録絵カード(田村文誉,水上美樹,綾野理加,Michael E.Groher)