やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

PREFACE 「決定版」の発刊にあたって
 コンポジットレジン修復に関する情報は,材料あるいはこれを取り扱う臨床手技を含めて,書籍とともに動画などで入手できるようになっている.特に動画に関しては,DVDあるいはインターネットを用いて視聴することが可能であり,最近では対面式の講演会を開催できにくいこともあって,その利用はさらに広がっているようである.思い起こせば,今から約20年前における講演では,スライドを挿入したカーソルを大きなカバンに入れて会場まで出向き,1枚ずつスライドを送りながら講義をしたものであった.そんな当時と比較すれば,情報量はもちろんであるが,クオリティも格段に向上しているのが令和の時代である.
 そのような現状にありながらも,やはり書籍による情報伝達の重要性については,いずれの時代においても変わることはない.すなわち,一般的な講演あるいは動画の視聴は,情報量が多いものの,どうしても受動的なものとなり,それらが時間経過とともに流れていってしまう.それに比較すると,書籍の場合は同じセンテンスを繰り返し読むことで理解が深まり,図表を見ることでそれを確実なものとすることが可能である.読むという能動的な行為は,記憶を深めるとともに何を知るべきなのかを明確にしてくれる.
 本書は2015年に発行された歯界展望別冊『わかる!できる!コンポジットレジン修復』を改訂し,“決定版“ として書籍化したものである.その内容は,伝えたい内容をできるだけ短い文書で記述するとともに,臨床手技のポイントを明瞭に示す図を挿入することで,著者らのテクニックを理解できるように構成されている.また,そのためには繰り返し読む必要があるのだが,手に取ったらおわかりいただけるように,いわゆる飽きのこないページ構成となっている.ぜひとも,コンポジットレジン修復におけるレジェンドである著者らの“ 熱” を感じていただければ幸甚である.
 令和2年11月 宮崎真至
CHAPTER I Basic&Trend 失敗しないためのマテリアルセレクション
 (宮崎真至 高見澤俊樹 辻本暁正)
 歯質接着のベーシックトレンド/ユニバーサルアドヒーシブのクリニカルトレンド/フロアブルコンポジットレジンのベーシックトレンド/まとめ
 主なユニバーサルアドヒーシブ製品の一覧
 主なフロアブルコンポジットレジン製品の一覧
CHAPTER II 再確認! できていますか? 基本ステップ
 (宮崎真至 黒川弘康 高見澤俊樹 辻本暁正)
 齲蝕病巣の除去と窩洞形成の留意点/歯肉排除の利点をもたらす器材/ラバーダム法の重要性/前歯部におけるマトリックスシステムの応用/隔壁法とその実際/シリコーンガイドの製作と使い方/接着操作の各ステップにおける役割/フロアブルとペーストタイプの使い分けのポイント/レイヤリングテクニックをマスターするために/咬合面形態付与のポイント/形態修正と研磨の留意点
CHAPTER III Case 症例別コンポジットレジン修復の実際
 Case 01 歯頸部欠損窩洞(V級窩洞)(宮崎真至 黒川弘康)
 Case 02 III級窩洞(宮崎真至 高見澤俊樹)
 Case 03 IV級窩洞(青島徹児)
 Case 04 破折歯(青島徹児)
 Case 05 臼歯部のI級窩洞
  メタルインレーの二次齲蝕(秋本尚武)
 Case 06 II級窩洞1
  隣接面の解剖学的形態が保存されている(不顕性齲蝕)(秋本尚武)
 Case 07 II級窩洞2
  接触点が崩壊している(メタルインレーの再修復など)(秋本尚武)
 Case 08 離開歯への修復(田代浩史)
 Case 09 ダイレクトベニア修復(田代浩史)
CHAPTER IV Q&A コンポジットレジン修復 Q&A
 接着・被着面についての疑問
  Q.01 ラバーダム法が必要な症例は?(田代浩史)/Q.02 齲蝕象牙質内層への接着の留意事項は?(田代浩史)/Q.03 セレクティブエッチングが必要な症例は?(宮崎真至 辻本暁正)/Q.04 ワンステップセルフエッチングシステムの臨床使用の勘所は?(宮崎真至 黒川弘康)
 臨床操作における疑問
  Q.05 遊離エナメル質はどこまで残すか?(青島徹児)/Q.06 コンポジットレジンの使い分けは必要?(青島徹児)/Q.07 明度のコントロールとは?(青島徹児)/Q.08 ステイン(ティント)の使用法は?(青島徹児)/Q.09 前歯の解剖学的形態のポイントは?(田代浩史)/Q.10 臼歯の解剖学的形態のポイントは?(田代浩史)/Q.11 光強度は高ければいいの?(宮崎真至 辻本暁正)/Q.12 エマージェンスプロファイルの付与は?(田代浩史)
 症例ごとの疑問
  Q.13 術後疼痛の予防法は?(田代浩史)/Q.14 確実な楔状欠損の修復法を教えてください(宮崎真至 坪田圭司)/Q.15 どのような症例でもコンポジットレジン修復は可能なのでしょうか?(秋本尚武)/Q.16 コンポジットレジン修復の寿命は?(秋本尚武)/Q.17 コンポジットレジン修復の補修修復と再修復の基準は?(秋本尚武)/Q.18 コンポジットレジンによる補修修復の接着操作における留意事項は?(秋本尚武)/Q.19 再修復にあたっての考慮事項は?(秋本尚武)

 COLUMN
  歯頸部充填に使用する修復材は?(宮崎真至)
  シェードの選択(青島徹児)
  隣接面形態回復の勘所(秋本尚武)
  審美性の回復とマトリックスの選択(田代浩史)

 索引