DVD・術者の視野で見るインプラント治療 発刊にあたって
インプラントに関する情報は世にあふれ出ており,より,先端的,審美的な治療に衆目が集まっている.しかし,日常臨床における基本的な治療のステップを確認しようとすると,参考となる有益な情報が少ないことに気づかされる.さらに,マニュアルに書いてあることを理解しても,治療技術の詳細な注意点はわからない場合も多い.
最近では動画を使った技術伝達も徐々に出てきているが,当然のごとく術式の理解を深めるための撮影条件であるために,術者として手術を行う場合には,全く異なる視点,視線となる.それゆえ,実際に術者となると,狭窄した視野のために,折角収集した情報,技術も十分に発揮できない場合もでてくる.いわゆるシミュレーションが十分にできない状況下で,手術を迎えることとなってしまう.
そこで,本シリーズでは,日常的な基本症例を対象とし,わかっていると思いがちなことについても,一つ一つ注意点を明確にして,さらに,術者の拡大鏡につけたカメラを用いて,術者と全く同じ視点,視野でインプラント治療の基本臨床術式を伝達することを企画した.
本書で基本を理解していただき,動画で実際の臨床をご覧いただくことが,確実な治療を行う一助となれば幸甚である.
2010年早春
武田孝之
Immediate Loading 下顎無歯顎・序
オッセオインテグレーションインプラントの臨床は,下顎無歯顎への適応に端を発していることは周知の事実である.
無歯顎でかつ顎堤の条件に恵まれない症例の場合,良好な下顎義歯を得ることは困難で,患者さんの満足の得にくい分野だった.少数歯欠損や遊離端欠損と違って食べるという行為に直結する状況であり,義歯に不満をもつ患者さんの場合,再び十分な咀嚼のできることに大きな感謝をいただける分野である.そして近年は,治癒過程での患者さんのQOLの向上に大きな恩恵となる,「即時荷重」も行えるようになり,さらなる進歩が感じられる.
患者さんに歓迎される歯科処置ではあるが,一方,下顎無歯顎症例では,部分欠損症例と全く異なり,インプラントポジションの参考とすべき歯がないため,植立ポジションが不確実となりやすい.そして,下顎骨舌側の陥凹,下歯槽管の存在など,重篤な事故にもつながりかねない解剖学的制約もあり,植立に際しては十分な検査と綿密な診断・治療計画が求められる.
さらに,「即時荷重」を行う場合には,長時間にわたる手術後に,適切なプロビジョナルを装着しなければならず,患者さんおよび術者の負担が大きい.高齢者にとって,極度の緊張のもと診療台に同じ姿勢で1時間を超えて拘束を強いられることは,想像以上に大きな負担であり,また術者にとっても,難易度の高い手術後に,適正な下顎位で生物学的に問題を起こしにくく機能的に許容される形態を付与した全顎的なプロビジョナルを装着することは,容易ではない.
即時荷重を適切に行うためには,術前の周到な準備とシミュレーションが必須であるが,それは診療室サイドだけではなく,歯科技工士サイドの対応も含まれる.術者視点の動画を参考にして,実際の臨床の場で戸惑うことがないよう本書を活用して,患医ともども満足のいく臨床システムを構築していただければと考える.
2010年2月吉日
武田孝之
椎貝達夫
井上敬介
インプラントに関する情報は世にあふれ出ており,より,先端的,審美的な治療に衆目が集まっている.しかし,日常臨床における基本的な治療のステップを確認しようとすると,参考となる有益な情報が少ないことに気づかされる.さらに,マニュアルに書いてあることを理解しても,治療技術の詳細な注意点はわからない場合も多い.
最近では動画を使った技術伝達も徐々に出てきているが,当然のごとく術式の理解を深めるための撮影条件であるために,術者として手術を行う場合には,全く異なる視点,視線となる.それゆえ,実際に術者となると,狭窄した視野のために,折角収集した情報,技術も十分に発揮できない場合もでてくる.いわゆるシミュレーションが十分にできない状況下で,手術を迎えることとなってしまう.
そこで,本シリーズでは,日常的な基本症例を対象とし,わかっていると思いがちなことについても,一つ一つ注意点を明確にして,さらに,術者の拡大鏡につけたカメラを用いて,術者と全く同じ視点,視野でインプラント治療の基本臨床術式を伝達することを企画した.
本書で基本を理解していただき,動画で実際の臨床をご覧いただくことが,確実な治療を行う一助となれば幸甚である.
2010年早春
武田孝之
Immediate Loading 下顎無歯顎・序
オッセオインテグレーションインプラントの臨床は,下顎無歯顎への適応に端を発していることは周知の事実である.
無歯顎でかつ顎堤の条件に恵まれない症例の場合,良好な下顎義歯を得ることは困難で,患者さんの満足の得にくい分野だった.少数歯欠損や遊離端欠損と違って食べるという行為に直結する状況であり,義歯に不満をもつ患者さんの場合,再び十分な咀嚼のできることに大きな感謝をいただける分野である.そして近年は,治癒過程での患者さんのQOLの向上に大きな恩恵となる,「即時荷重」も行えるようになり,さらなる進歩が感じられる.
患者さんに歓迎される歯科処置ではあるが,一方,下顎無歯顎症例では,部分欠損症例と全く異なり,インプラントポジションの参考とすべき歯がないため,植立ポジションが不確実となりやすい.そして,下顎骨舌側の陥凹,下歯槽管の存在など,重篤な事故にもつながりかねない解剖学的制約もあり,植立に際しては十分な検査と綿密な診断・治療計画が求められる.
さらに,「即時荷重」を行う場合には,長時間にわたる手術後に,適切なプロビジョナルを装着しなければならず,患者さんおよび術者の負担が大きい.高齢者にとって,極度の緊張のもと診療台に同じ姿勢で1時間を超えて拘束を強いられることは,想像以上に大きな負担であり,また術者にとっても,難易度の高い手術後に,適正な下顎位で生物学的に問題を起こしにくく機能的に許容される形態を付与した全顎的なプロビジョナルを装着することは,容易ではない.
即時荷重を適切に行うためには,術前の周到な準備とシミュレーションが必須であるが,それは診療室サイドだけではなく,歯科技工士サイドの対応も含まれる.術者視点の動画を参考にして,実際の臨床の場で戸惑うことがないよう本書を活用して,患医ともども満足のいく臨床システムを構築していただければと考える.
2010年2月吉日
武田孝之
椎貝達夫
井上敬介
第1章 下顎無歯顎症例の治療原則
1 下顎無歯顎症例に対する基本的な考え方
2 下顎無歯顎症例の設計のポイント
3 インプラント植立におけるサージカルガイドの選択と利用
4 即時負荷の可能性と実際
第2章 即時荷重の実際/インプラントブリッジ
5 医療面接
6 下顎無歯顎症例における検査・診察・確認事項
7 診断用テンプレート
8 植立計画の立案
9 サージカルガイドへの改変と即時荷重用プロビジョナルの作製
10 手術前準備
11 切開・剥離
12 植立位置と方向の決定
13 植立深度の決定と最終形成
14 インプラント体の植立・アバットメントの連結
15 トランスファー・咬合採得・術後の対応
・column1:間接法におけるトランスファーの方法とプロビジョナルの種類
・column2:即時荷重用プロビジョナルの特徴と選択基準
16 即時荷重用プロビジョナルの作製と装着
17 即時荷重
・column3:上部構造の選択
18 印象採得と咬合採得
19 排列・試適・メタルフレームの作製・鑞着コアの採得
20 上部構造の装着
21 メインテナンス
第3章 オーバーデンチャーの維持装置の選択と治療手順
22 インプラントの本数と維持装置選択の判断基準
23 新しい維持装置・ロケーター
24 ロケーターを維持装置としたオーバーデンチャーの治療手順
第4章 コンピュータ主導型のインプラント治療
25 CT上で決定した位置・方向に誘導できるサージカルガイド
26 骨支持型サージカルガイド・歯科用 CTを適用した一例
27 粘膜および歯牙支持型サージカルガイド・
歯科用CTを適用した一例
付
・DVDについて
・サージカムの特徴
・シミュレーションソフトSimPlantの特徴
・Step by Step下顎遊離端欠損・目次
1 下顎無歯顎症例に対する基本的な考え方
2 下顎無歯顎症例の設計のポイント
3 インプラント植立におけるサージカルガイドの選択と利用
4 即時負荷の可能性と実際
第2章 即時荷重の実際/インプラントブリッジ
5 医療面接
6 下顎無歯顎症例における検査・診察・確認事項
7 診断用テンプレート
8 植立計画の立案
9 サージカルガイドへの改変と即時荷重用プロビジョナルの作製
10 手術前準備
11 切開・剥離
12 植立位置と方向の決定
13 植立深度の決定と最終形成
14 インプラント体の植立・アバットメントの連結
15 トランスファー・咬合採得・術後の対応
・column1:間接法におけるトランスファーの方法とプロビジョナルの種類
・column2:即時荷重用プロビジョナルの特徴と選択基準
16 即時荷重用プロビジョナルの作製と装着
17 即時荷重
・column3:上部構造の選択
18 印象採得と咬合採得
19 排列・試適・メタルフレームの作製・鑞着コアの採得
20 上部構造の装着
21 メインテナンス
第3章 オーバーデンチャーの維持装置の選択と治療手順
22 インプラントの本数と維持装置選択の判断基準
23 新しい維持装置・ロケーター
24 ロケーターを維持装置としたオーバーデンチャーの治療手順
第4章 コンピュータ主導型のインプラント治療
25 CT上で決定した位置・方向に誘導できるサージカルガイド
26 骨支持型サージカルガイド・歯科用 CTを適用した一例
27 粘膜および歯牙支持型サージカルガイド・
歯科用CTを適用した一例
付
・DVDについて
・サージカムの特徴
・シミュレーションソフトSimPlantの特徴
・Step by Step下顎遊離端欠損・目次