やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 我が国は2007年に世界初の超高齢社会へ突入した.現在も高齢化率は28.4%で世界一を独走しており,国民の長寿に対応して,更なる健康寿命の延伸をもたらす高度な歯科医療が強く求められている.8020運動も当初の1989年には達成率7%であったものが,現在では約52%と増加の一途をたどっている.結果として,パーシャルデンチャーによる治療が必要な部分欠損患者の割合が,今後も当分の間増加すると予想される.
 しかも近年,マスコミやインターネットにより様々な情報が誰にでも容易に入手できるため,患者さんの要求する治療の質は急速に高度化しており,今後もこの傾向は高まることが必至である.この多様な患者さんの要望に対して,我々歯科医療者は十分に満足していただける対応ができるように,絶えずより高度な知識と技術の修得を怠ってはならない.
 本書では,一般に複雑で捉えどころがなく難しいとされるパーシャルデンチャーの設計について,特に臨床で頻度の高いクラスプデンチャーにテーマを絞って構成した.本設計法は,その症例に求められている因子を抽出し,漏れることなく治療に的確に盛り込んで予知性の高い治療に仕上げていくもので,その考え方と具体的な設計法について詳細に解説した.この治療の組み立て方は,パーシャルデンチャーに限らず補綴治療全般に幅広く応用すべきものと考えており,これまで40年にわたり教育と臨床に用いてきた実績がある.
 なお本書は,2002年7月に隔月刊『補綴臨床』別冊として発刊され,6刷まで改訂を重ねてきたものに,このたびさらに全面的な改訂と新たに索引を加えて書籍化したものである.いよいよ人生100年時代を迎え,歯科の果たす役割の重要性が注目されており,要点をしっかりと押さえた予知性の高い治療は,歯科医療者にとって大きな生き甲斐に繋がる.患者さんに喜んでいただける役割を,私たちは共に自覚して,現場の歯科医療に邁進したいものである.
 2020年3月
 小出 馨
 日本歯科大学新潟生命歯学部歯科補綴学第1講座教授
 星 久雄
 新潟市中央区/星デンタルラボラトリー
 序
 執筆者一覧
Part1 パーシャルデンチャーのための診査と診断
 Section 1 パーシャルデンチャーによる補綴にあたっての重要事項
 Section 2 術前の診査と診断
 Section 3 残存組織の支持能力の推定
 Section 4 歯列に加わる力の推定
 Section 5 パーシャルデンチャーの設計に有効なケースの分類
Part2 パーシャルデンチャーの設計原則
 Section 1 パーシャルデンチャーの設計原則
 Section 2 パーシャルデンチャーの設計にあたり検討すべき6要素の詳細
Part3 クラスプデンチャーの構成要素別にみた検討事項
 Section 1 支台装置
 Section 2 大連結子
Part4 サベイングと前処置
 Section 1 サベイング
 Section 2 マウスプレパレーション
Part5 症例に応じた基本設計4種
 基本設計にあたっての設定条件
 第1症例 76 567 欠損症例
 第2症例 765 456 欠損症例
 第3症例 7621 1256 欠損症例
 第4症例 765 567 欠損症例
Part6 パーシャルデンチャーによる治療の評価と設計のチェック
 パーシャルデンチャーによる治療の評価
 クラスプデンチャー設計チャート

 参考文献
 索引