やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版 発刊にあたって
 日本成人矯正歯科学会は佐藤元彦先生が中心となり,矯正歯科臨床医を主体とした学会を創りたいとの趣旨で1993年に設立されました.その後,2005年,内閣府の下に全国的な学会として特定非営利活動法人となり,当学会のモットーである“開かれた学会”の理念実現のため,理想的チーム歯科医療の実践を試みて来ました.
 この理想的チーム歯科医療の実現のため,歯並びコーディネーター認定制度をはじめとして,認定矯正歯科衛生士および認定医研修プログラムが実施され,武内 豊前理事長のご尽力により認定矯正歯科技工士の制度も設立することができました.これらの認定制度の拡充に伴い,当学会は急激な会員数の増加とともに発展してまいりました.
 開かれた学会としての最も重要な使命は,国民に対する正しい矯正歯科(よい歯並び,かみ合わせ)の知識の啓蒙と,正しい知識を普及する人材の育成です.この学会としての使命実現のため,2007年,上記のとおり歯並びコーディネーター研修会および歯並びコーディネーター認定制度が設立されました.この研修会受講の対象者は,国民に対する正しい矯正歯科の知識啓蒙の使命をもつ歯科医師,歯科衛生士,歯科技工士,そして歯科助手,受付などのスタッフを含むいわゆる「コ・デンタル」です.さらに矯正歯科に興味をもつ一般の方々も受講可能で,研修会後に実施される認定審査に合格すると「歯並びコーディネーター」の認定証が授与されます.
 歯並びコーディネーター研修会スタートにあたり,正しい矯正歯科の知識を学ぶための適当な教材がなかったため,歯並びコーディネーター委員会が中心となり「歯並びコーディネーター・白い美しい歯並びは美と健康のシンボルです」(デンタルダイヤモンド社,2008年)を出版しました.その後2015年に内容の刷新を図り,医歯薬出版株式会社より「やさしくわかる矯正歯科治療―歯並びコーディネーター入門書」を出版しましたが,さらに最新の情報を提供するため,今回,「第2版」を出版することになった次第です.
 歯並びコーディネーター委員会歴代委員長の板倉醸幸先生(故人),石野善男先生,椿 丈二先生をはじめ委員の先生方のご協力によって歯並びコーディネーター認定制度が順調に発展した結果,2019年3月時点で約1,700名の歯並びコーディネーターが誕生し,矯正歯科治療の重要性を国民に広く啓蒙する使命をもって全国で活躍しています.
 最後に,歯並びコーディネーター研修会の計画初期から参画され,第1回から講師を勤めていただいた故人の板倉醸幸先生,酒井信夫先生に感謝をこめて本書を捧げます.
 2019年秋
 日本成人矯正歯科学会
 理事長 小谷田 仁


発刊にあたって
 日本成人矯正歯科学会は1993年6月27日に産声をあげて以来,早いもので既に20年余の歳月が経過し,まさに成人矯正歯科学会となりました.この間,1994年には『日本成人矯正歯科学会雑誌』を創刊し,1996年には日本学術会議の登録学術団体に認定され,2005年には特定非営利活動法人として法人化し,2006年には矯正歯科専門医制度を発足いたしました.
 2007年にはよい歯並び・よいかみ合わせの知識の普及と適切な指導ができる人材の養成を目的に歯並びコーディネーター研修会および歯並びコーディネーター認定制度を開始いたしました.よくかめる機能的なかみ合わせは人々の健康を守り,また,美しい歯並び,口元は自信にあふれたさわやかな笑顔をもたらします.歯並びをよくするのに年齢は関係ありません.子どもから,成人,高齢者でも可能です.この研修会は日本成人矯正歯科学会の会員だけではなく非会員の方々も対象とし,歯科医師,歯科衛生士,歯科技工士などの歯科医療有資格者,歯科助手,受付などのスタッフ,さらに歯並びやかみ合わせに関心をもつ一般の方々も受講することができ,研修会後に行われる認定審査に合格すると認定証が授与され「歯並びコーディネーター」の資格を取得することができます.
 歯並びコーディネーター認定制度は歴代の歯並びコーディネーター委員会委員長の板倉醸幸先生(故人),石野善男先生,椿 丈二先生をはじめ委員の先生方のご尽力によって順調に発展し,平成2015年9月までに約2,150名の歯並びコーディネーターが誕生し,矯正歯科治療の伝道者として歯並び・かみ合わせの大切さ,矯正歯科治療の重要性を啓蒙する使命をもって全国で活躍しています.また,「E-ライン・ビューティフル大賞」授賞式,矯正歯科月間などさまざまな広報,啓蒙活動も功を奏し,成人でも矯正歯科治療を受ける人が急速に増えています.
 さて,本書の前身は,『歯並びコーディネーター―白い美しい歯並びは美と健康のシンボルです―』(デンタルダイヤモンド社,2008年)になりますが,最新の情報を提供するために内容を精査,検討してこのたび新たに出版する運びとなりました.本書の出版にあたりご尽力頂いた医歯薬出版の編集担当者に深く感謝いたします.
 最後に,歯並びコーディネーター研修会の構想の段階から参画され,第1回から講師をお勤めいただいた故人の板倉醸幸先生,酒井信夫先生に本書を捧げます.
 2015年秋
 日本成人矯正歯科学会
 理事長 武内 豊
第1章 歯並びに関する基礎知識
 (重枝 徹)
 はじめに
 乳歯列の形成
 混合歯列の形成
 永久歯列の形成
 正しい歯並びとは
 悪い歯並びの原因
 不正咬合の分類と種類
 まとめ
 column 固定の考え方と歯科矯正用アンカースクリュー
第2章 知っておくべき矯正歯科治療の流れ
 (佐藤元彦)
 はじめに
 初診相談
 精密検査
 検査結果の説明
 矯正歯科治療の開始
 矯正料金に含まれるもの
 支払いのシステム
 子どもの矯正と大人の矯正の違い
 矯正歯科治療中に患者さんがすべきこと
 健康医療における矯正歯科治療
 おわりに
第3章 不正咬合の原因と口腔習癖
 (石野善男)
 口元の品格
 口腔軟組織
 不正咬合の原因と口腔習癖
 口腔習癖が及ぼす影響
 口腔習癖の種類
 その他の口腔習癖
 口腔筋機能療法(MFT)による対処
 MFTにおける機能訓練
 MFTの歯科臨床における応用
 おわりに
第4章 矯正歯科治療の開始時期
 (椿 丈二)
 はじめに
 矯正歯科治療の種類と時期
 医療面接
 インフォームドコンセント
 各歯列期の不正咬合と治療の種類
 矯正歯科治療における成長発育
 成人の矯正歯科治療
 おわりに
第5章 矯正歯科治療の利点,歯並びと顔貌との関係
 (武内 豊)
 はじめに
 歯,口の役割
 不正咬合がもたらす障害と矯正歯科治療
第6章 矯正歯科治療の目的と矯正装置
 (小谷田 仁)
 はじめに
 矯正歯科治療の目標
 矯正歯科治療の現代,将来の課題と目的
 矯正歯科治療の分類
 矯正装置の種類
 成人矯正における矯正装置(審美的矯正装置)
 column エッジワイズ法
 column ストレートワイヤー法
 保定装置
第7章 どうして歯が動くのか 保定の重要性
 (今村隆一)
 はじめに
 矯正歯科治療とメカニクス
 なぜ歯は動くのか
 矯正治療における歯の移動
 器械的な矯正力のためのツール
 機能的な矯正力のためのツール
 保定
 おわりに
第8章 症例に基づく解説
 (大作武彦・相澤一郎)
 はじめに
 矯正歯科治療におけるアプローチの方法
 矯正歯科治療のみによる症例(1)
 矯正歯科治療のみによる症例(2)
 補綴処置を伴った症例
 治療中の偶発事項
 治療期間
 抜歯の有無
 インフォームドコンセント
 おわりに

 本書のあとがきにかえて(佐藤元彦)
 索引