序文
わが国では65歳以上の高齢者が人口の25%を超え,超高齢社会に突入しました.今後,団塊の世代が後期高齢者となる,いわゆる2025年問題を控え,医療,介護の分野では高齢者対策が喫緊の課題として動いています.歯科医療においても,今後ますます増加する多疾患,多障害の高齢者への対応が急務です.訪問歯科診療のニーズもますます増えていくことでしょう.
高齢者の特徴としてあげられるのは,個々人のバリエーションが非常に大きいということです.80歳を過ぎても非常に元気な人もいれば,多数の疾患を有して1回の内服薬が10種類を超えるという人もいます.これらのバリエーションには,今まで大学で勉強してきた従来型の歯科医療だけではとても対応できません.
本書は,現在までさまざまな現場で高齢者歯科医療に携わってきた筆者らが,それぞれの専門領域についてまとめ上げた高齢者歯科入門のための一冊になっています.岩佐,古屋,戸原,大野,松尾の5名は,十数年前に大学院時代の苦楽を共にし,高齢者歯科医療の未来を考えてきた仲間です.本書は,これから新たに高齢者歯科医療に取り組む若手歯科医師,レジデントのためのスタートブックとしてこの5名によって企画されました.内容は,できるだけシンプルにして,図表を増やし,見開きで本文と図表がみられるような構成にしました.内容をより深く理解するためには他の成書を参考にしていただくとして,本書は,これから高齢者歯科医療に関わっていく若い歯科医師(もちろん若くなくてもよいのですが)にとって足がかりの一冊となることを期待しています.
最後に微細に渡るご尽力を頂いた医歯薬出版株式会社の方々に感謝申し上げます.
平成28年6月 編著者 松尾浩一郎
わが国では65歳以上の高齢者が人口の25%を超え,超高齢社会に突入しました.今後,団塊の世代が後期高齢者となる,いわゆる2025年問題を控え,医療,介護の分野では高齢者対策が喫緊の課題として動いています.歯科医療においても,今後ますます増加する多疾患,多障害の高齢者への対応が急務です.訪問歯科診療のニーズもますます増えていくことでしょう.
高齢者の特徴としてあげられるのは,個々人のバリエーションが非常に大きいということです.80歳を過ぎても非常に元気な人もいれば,多数の疾患を有して1回の内服薬が10種類を超えるという人もいます.これらのバリエーションには,今まで大学で勉強してきた従来型の歯科医療だけではとても対応できません.
本書は,現在までさまざまな現場で高齢者歯科医療に携わってきた筆者らが,それぞれの専門領域についてまとめ上げた高齢者歯科入門のための一冊になっています.岩佐,古屋,戸原,大野,松尾の5名は,十数年前に大学院時代の苦楽を共にし,高齢者歯科医療の未来を考えてきた仲間です.本書は,これから新たに高齢者歯科医療に取り組む若手歯科医師,レジデントのためのスタートブックとしてこの5名によって企画されました.内容は,できるだけシンプルにして,図表を増やし,見開きで本文と図表がみられるような構成にしました.内容をより深く理解するためには他の成書を参考にしていただくとして,本書は,これから高齢者歯科医療に関わっていく若い歯科医師(もちろん若くなくてもよいのですが)にとって足がかりの一冊となることを期待しています.
最後に微細に渡るご尽力を頂いた医歯薬出版株式会社の方々に感謝申し上げます.
平成28年6月 編著者 松尾浩一郎
1章 疾患と注意点
(大野友久)
1 高齢者の歯科診療にあたって
2 高血圧
3 虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞)
4 感染性心内膜炎
5 肺炎
6 ウイルス性肝炎
7 腎不全
8 糖尿病
9 がん
10 脳血管障害
11 神経筋疾患
12 認知症
13 注意すべき薬剤
1.抗血小板薬
2.抗凝固薬
3.Ca拮抗薬,抗てんかん薬,免疫抑制剤
4.ビスフォスフォネート製剤,デノスマブ
5.ステロイド
2章 有床義歯
(古屋純一)
1 高齢者の有床義歯への補綴的介入
有床義歯を装着していない
1-義歯なしでも食べられる 2-義歯がないと食べにくい
2 有床義歯の調整
義歯が痛くて食べられない
1-支台歯が痛い 2-咬傷 3-顎堤粘膜が痛い
3 有床義歯の修理
義歯調整だけでは対応できない
1-不良な辺縁形態,小さな破損と口腔内での直接法による修理
2-不良な床形態,大きな破損と口腔外での間接法による修理
3-支台装置の破損 4-ティッシュコンディショニング 5-リライン
4 有床義歯の印象採得
欠損部の補綴的難易度が高い
1-歯根膜負担か?粘膜負担か? 2-既製トレーで概形印象
3-個人トレーの製作 4-筋圧形成と個人トレーによる最終印象
5 有床義歯の咬合採得
天然歯による咬合支持はあるか?
1-模型が咬頭嵌合位でかたつくか? 2-咬合床の製作
3-咬合高径は形態と機能で決める 4-水平的下顎位は誘導して決める
5-ゴシックアーチ
6 有床義歯の装着と指導
装着当日または翌日に十分な調整と指導ができる
1-義歯床粘膜面の調整 2-下顎位の確認 3-咬合調整
4-咀嚼圧負荷での調整 5-維持力の確認・調整 6-患者指導
7 特殊な義歯と口腔内装置
特殊な義歯や口腔内装置が必要か?
3章 口腔ケア
(松尾浩一郎)
1 準備物品
1-SpO2モニター 2-開口器具 3-ペンライト 4-歯ブラシ
5-スポンジブラシ 6-保湿剤 7-吸引 8-コップとガーグルベース
9-口腔ケア用ウェットティッシュ 10-歯磨剤
2 開口手技
開口しない
1-口唇を開ける 2-顎を開ける
3 口腔アセスメント
1.アセスメントの目的
2.Oral Health Assessment Tool日本語版(OHAT-J)
1-OHAT-Jの各項目の要点
4 口腔ケアの基本手技
口腔ケア時の注意点
1-粘膜の保湿 2-乾燥汚染物の軟化 3-歯面清掃
4-軟化された汚染物の除去 5-拭き取りと保湿剤の塗布
5 疾患ごとの口腔ケア 脳血管障害
1.脳血管障害のタイプ
2.全身状態を把握する
3.摂食嚥下障害の程度
4.非経口摂取の場合
5.麻痺を知る
6 疾患ごとの口腔ケア 認知症
1.認知症のタイプ別対応
2.認知症のステージ別対応
3.拒否の理由を考える
4.疼痛や不快感の訴えがない
5.摂食嚥下障害を考慮する
7 疾患ごとの口腔ケア 周術期
1.周術期口腔機能管理の目的は?
2.術後の口腔管理
3.入院後の口腔管理
4.退院後の口腔管理
8 疾患ごとの口腔ケア がん化学療法
1.がん化学療法とは
2.がん化学療法のための口腔ケア
3.がん化学療法開始前の対応
4.がん化学療法開始後の対応
9 疾患ごとの口腔ケア 緩和ケア
1.がん緩和ケアとは
2.緩和ケア患者における口腔ケア
3.緩和ケア患者への対応
4章 摂食嚥下リハビリテーション
(原 豪志,戸原 玄)
1 診察
診察の流れ
1-問診 2-評価
2 スクリーニングテスト
スクリーニングテストの種類
1-誤嚥を予測 2-不顕性誤嚥を予測 3-咽頭残留を予測
3 栄養状態の評価
栄養状態のスクリーニングとアセスメント
1-スクリーニング 2-アセスメント
4 摂食嚥下障害の検査法 嚥下造影(VF)
VF(videofl uoroscopic examination of swallowing)
1-VFに必要な物品・機器 2-VFの進め方 3-VFの観察項目
4-VF結果の解釈
5 摂食嚥下障害の検査法 嚥下内視鏡検査(VE)
VE(videoendoscopic examination of swallowing)
1-観察手順 2-観察項目(食物摂取前)
3-観察項目(食物摂取中) 4-VE後の指導について
6 摂食嚥下障害の対応法 間接訓練
訓練の選択
1-嚥下前体操 2-口腔周囲筋・舌の運動訓練 3-構音訓練
4-軟口蓋挙上訓練 5-Thermal tactile stimulation
6-Shaker exercise,開口訓練 7-バルーン拡張訓練
8-声門閉鎖訓練 9-呼吸訓練・咳嗽訓練
7 摂食嚥下障害の対応法 直接訓練
直接訓練
1-摂食姿勢の設定 2-一口量の調整 3-食形態の調整
4-嚥下手技の実施 5-食器・食具の使用 6-環境の調整
7-直接訓練で用いる嚥下誘発手技
5章 訪問歯科診療の進め方,保険請求の特徴
(岩佐康行)
1 訪問歯科診療の対象者と居住空間(在宅・施設の特徴)
2 診療の進め方と使用する器材
1.診療の進め方
1-依頼時に確認すること 2-初回訪問時に確認・説明すること
3-治療,および治療内容の説明・報告
2.使用する機材
3 安全管理
1.診療計画
2.治療中の事故防止
3.感染防止
4.治療後のトラブル
1-術後の出血 2-ビスフォスフォネート(BP)製剤
4 診療報酬算定の特徴
1.医療保険制度の特徴
2.介護保険による算定
3.医療保険と介護保険の給付調整
5 要介護認定と居宅療養管理指導,介護保険のみなし指定
1.介護保険制度について(要介護認定)
2.介護支援専門員(ケアマネジャー)の役割
3.歯科と介護保険(介護保険のみなし指定・居宅療養管理指導)
1-医療系サービス事業者のみなし指定
2-居宅療養管理指導(および介護予防居宅療養管理指導)
6 地域包括ケアシステムと歯科
1.在宅療養支援歯科診療所・かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所
2.医師・看護師・薬剤師・管理栄養士による在宅療養支援
1-医師:診療所・在宅療養支援診療所と在宅療養支援病院
2-看護師:病院・診療所と訪問看護ステーション
3-薬剤師:病院・診療所と保険調剤薬局
4-管理栄養士:病院・診療所または指定居宅療養管理指導事業所
3.介護予防と歯科
4.地域包括ケアシステム
1-地域包括ケアシステムは市町村を中心に 2-地域包括支援センターについて
3-地域ケア会議について 4-生活支援サービスの充実と高齢者の社会参加
5-地域の医療・介護連携に歯科も参加を
索引
(大野友久)
1 高齢者の歯科診療にあたって
2 高血圧
3 虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞)
4 感染性心内膜炎
5 肺炎
6 ウイルス性肝炎
7 腎不全
8 糖尿病
9 がん
10 脳血管障害
11 神経筋疾患
12 認知症
13 注意すべき薬剤
1.抗血小板薬
2.抗凝固薬
3.Ca拮抗薬,抗てんかん薬,免疫抑制剤
4.ビスフォスフォネート製剤,デノスマブ
5.ステロイド
2章 有床義歯
(古屋純一)
1 高齢者の有床義歯への補綴的介入
有床義歯を装着していない
1-義歯なしでも食べられる 2-義歯がないと食べにくい
2 有床義歯の調整
義歯が痛くて食べられない
1-支台歯が痛い 2-咬傷 3-顎堤粘膜が痛い
3 有床義歯の修理
義歯調整だけでは対応できない
1-不良な辺縁形態,小さな破損と口腔内での直接法による修理
2-不良な床形態,大きな破損と口腔外での間接法による修理
3-支台装置の破損 4-ティッシュコンディショニング 5-リライン
4 有床義歯の印象採得
欠損部の補綴的難易度が高い
1-歯根膜負担か?粘膜負担か? 2-既製トレーで概形印象
3-個人トレーの製作 4-筋圧形成と個人トレーによる最終印象
5 有床義歯の咬合採得
天然歯による咬合支持はあるか?
1-模型が咬頭嵌合位でかたつくか? 2-咬合床の製作
3-咬合高径は形態と機能で決める 4-水平的下顎位は誘導して決める
5-ゴシックアーチ
6 有床義歯の装着と指導
装着当日または翌日に十分な調整と指導ができる
1-義歯床粘膜面の調整 2-下顎位の確認 3-咬合調整
4-咀嚼圧負荷での調整 5-維持力の確認・調整 6-患者指導
7 特殊な義歯と口腔内装置
特殊な義歯や口腔内装置が必要か?
3章 口腔ケア
(松尾浩一郎)
1 準備物品
1-SpO2モニター 2-開口器具 3-ペンライト 4-歯ブラシ
5-スポンジブラシ 6-保湿剤 7-吸引 8-コップとガーグルベース
9-口腔ケア用ウェットティッシュ 10-歯磨剤
2 開口手技
開口しない
1-口唇を開ける 2-顎を開ける
3 口腔アセスメント
1.アセスメントの目的
2.Oral Health Assessment Tool日本語版(OHAT-J)
1-OHAT-Jの各項目の要点
4 口腔ケアの基本手技
口腔ケア時の注意点
1-粘膜の保湿 2-乾燥汚染物の軟化 3-歯面清掃
4-軟化された汚染物の除去 5-拭き取りと保湿剤の塗布
5 疾患ごとの口腔ケア 脳血管障害
1.脳血管障害のタイプ
2.全身状態を把握する
3.摂食嚥下障害の程度
4.非経口摂取の場合
5.麻痺を知る
6 疾患ごとの口腔ケア 認知症
1.認知症のタイプ別対応
2.認知症のステージ別対応
3.拒否の理由を考える
4.疼痛や不快感の訴えがない
5.摂食嚥下障害を考慮する
7 疾患ごとの口腔ケア 周術期
1.周術期口腔機能管理の目的は?
2.術後の口腔管理
3.入院後の口腔管理
4.退院後の口腔管理
8 疾患ごとの口腔ケア がん化学療法
1.がん化学療法とは
2.がん化学療法のための口腔ケア
3.がん化学療法開始前の対応
4.がん化学療法開始後の対応
9 疾患ごとの口腔ケア 緩和ケア
1.がん緩和ケアとは
2.緩和ケア患者における口腔ケア
3.緩和ケア患者への対応
4章 摂食嚥下リハビリテーション
(原 豪志,戸原 玄)
1 診察
診察の流れ
1-問診 2-評価
2 スクリーニングテスト
スクリーニングテストの種類
1-誤嚥を予測 2-不顕性誤嚥を予測 3-咽頭残留を予測
3 栄養状態の評価
栄養状態のスクリーニングとアセスメント
1-スクリーニング 2-アセスメント
4 摂食嚥下障害の検査法 嚥下造影(VF)
VF(videofl uoroscopic examination of swallowing)
1-VFに必要な物品・機器 2-VFの進め方 3-VFの観察項目
4-VF結果の解釈
5 摂食嚥下障害の検査法 嚥下内視鏡検査(VE)
VE(videoendoscopic examination of swallowing)
1-観察手順 2-観察項目(食物摂取前)
3-観察項目(食物摂取中) 4-VE後の指導について
6 摂食嚥下障害の対応法 間接訓練
訓練の選択
1-嚥下前体操 2-口腔周囲筋・舌の運動訓練 3-構音訓練
4-軟口蓋挙上訓練 5-Thermal tactile stimulation
6-Shaker exercise,開口訓練 7-バルーン拡張訓練
8-声門閉鎖訓練 9-呼吸訓練・咳嗽訓練
7 摂食嚥下障害の対応法 直接訓練
直接訓練
1-摂食姿勢の設定 2-一口量の調整 3-食形態の調整
4-嚥下手技の実施 5-食器・食具の使用 6-環境の調整
7-直接訓練で用いる嚥下誘発手技
5章 訪問歯科診療の進め方,保険請求の特徴
(岩佐康行)
1 訪問歯科診療の対象者と居住空間(在宅・施設の特徴)
2 診療の進め方と使用する器材
1.診療の進め方
1-依頼時に確認すること 2-初回訪問時に確認・説明すること
3-治療,および治療内容の説明・報告
2.使用する機材
3 安全管理
1.診療計画
2.治療中の事故防止
3.感染防止
4.治療後のトラブル
1-術後の出血 2-ビスフォスフォネート(BP)製剤
4 診療報酬算定の特徴
1.医療保険制度の特徴
2.介護保険による算定
3.医療保険と介護保険の給付調整
5 要介護認定と居宅療養管理指導,介護保険のみなし指定
1.介護保険制度について(要介護認定)
2.介護支援専門員(ケアマネジャー)の役割
3.歯科と介護保険(介護保険のみなし指定・居宅療養管理指導)
1-医療系サービス事業者のみなし指定
2-居宅療養管理指導(および介護予防居宅療養管理指導)
6 地域包括ケアシステムと歯科
1.在宅療養支援歯科診療所・かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所
2.医師・看護師・薬剤師・管理栄養士による在宅療養支援
1-医師:診療所・在宅療養支援診療所と在宅療養支援病院
2-看護師:病院・診療所と訪問看護ステーション
3-薬剤師:病院・診療所と保険調剤薬局
4-管理栄養士:病院・診療所または指定居宅療養管理指導事業所
3.介護予防と歯科
4.地域包括ケアシステム
1-地域包括ケアシステムは市町村を中心に 2-地域包括支援センターについて
3-地域ケア会議について 4-生活支援サービスの充実と高齢者の社会参加
5-地域の医療・介護連携に歯科も参加を
索引