やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 歯には機能的な側面と審美的な側面があり,ともに心身の健康のためには重要な要素です.しかしながら,健康保険制度での治療は機能的な治療に偏重しがちで,審美的な治療を行うには限界があります.この保険制度の影響もあり,わが国ではいまだに機能が優先され,審美を追及することを遠慮してしまう風潮が残っています.これは,歯科医療サイドにも患者サイドにもいえることで,「きれいにしたい=贅沢,はずかしい」という感覚が,審美修復を手掛けて何年もたつ私たちにも理解できてしまいます.しかし,審美的な側面もかなえられてこそ,真の健康といえるのではないでしょうか.
 私たちは,審美を追求していくためには,まず1 本のCR修復を極めることが不可欠だと考えています.CRを審美的に仕上げるためには,接着とMIのコンセプト,色の基礎,歯の解剖学的形態,口元や顔貌との関係など,審美修復で習得しておくべきすべての事項に熟知していないと満足のいく結果が残せないからです.そして,それらの知識をもとに,実際に狭い窩洞内で目標とする審美を表現する「技」も必要です.審美修復のレベルアップには,一見,地味に思えますがCR修復を極めることが近道なのです.決して大袈裟ではなく,ほかの修復処置(セラミックインレー,オールセラミッククラウンなど)は後からついてきます.
 また,CR修復は,患者に素早く結果を伝えることができる治療なので,CR修復を1 歯成功させれば,早い段階で患者の信頼を得ることができます.口腔内全体に及ぶ治療(フルマウスリコンストラクション)に繋がることも実際に経験してきました.1 窩洞を大事に治療している空気は,必ず患者に伝わり感動を与えます.
 本書は,『歯界展望』123 巻4 号〜124 巻2 号(2014 年4〜8 月号)で連載された「自由診療を目指す! CR成功に導く10 のポイント」に大幅な加筆をし,審美修復をスムーズに導入するために必要最低限押さえておかなければいけない知識とテクニックを,前半のCR修復と後半のセラミック修復に分けてやさしく具体的に解説しています.臨床におけるなんらかのヒントになれば幸いです.
 2015年6月
 井上 優
 荒木秀文
 泥谷高博
 巻頭カラー ここまでできる審美修復

第1編 審美修復を成功させるために CR修復からセラミック修復へ
 (1)なぜCR修復から始めるか
 (2)審美修復を成功させる歯科医院づくり
 column 1 患者が親しみやすい歯科医院の設計を考える
 column 2 開業成功の鍵を握る歯科医院の新しいビジネスモデルを知る
第2編 CR修復 おさえておきたい10のポイント
 編著者鼎談:自費診療によるCR修復の勧め方-歯科医院によって,アプローチの方法は違う
 1 適切なコンサルテーションを行うためには?
 2 色合わせのポイントは?
 3 やさしいケースと難しいケースをどう見極めるか?
 4 難しいケースをどうするか?
 5 CR修復におけるホワイトニングの効果とは?
 6 前処置としての歯周基本治療,PMTCの目的は?
 7 プレパレーションのデザインはどうするか?
 8 メインテナンス時のリペアのポイントは?
 9 根面齲蝕へのCR応用のポイントは?
 10 器材はどうそろえるか?
 column 3 フロアブルレジンの昔といま
第3編 CR修復の臨床例
 1.I級
 2.V級
 3.外傷への対応(IV級,VI級)
 4.歯間空隙の閉鎖
 5.歯冠幅径の回復
 6.キャラクタライズ
 7.形態の変更(セミダイレクト)
 付.ホワイトニング
 column 4 モックアップを活用する
 column 5 ラバーダムの有用性
第4編 セラミック修復 おさえておきたい10のポイント
 1 色合わせのポイントは?
 2 やさしいケースと難しいケースをどう見極めるか?
 3 診断用ワックスアップの活用法は?
 4 セラミックインレーのデザインは?
 5 セラミックアンレーのデザインは?
 6 ラミネートベニアの形成の方法は?
 7 セラミックスの接着の仕組みは?
 8 セラミックスの接着のポイントは?
 9 メインテナンス時の注意点は?
 10 器材はどうそろえるか?
 column 6 CR修復とセラミック修復の違い
第5編 セラミック修復の臨床例
 1.インレー・アンレー
 2.アンレー
 3.ラミネートベニア(審美障害への対応)
 4.ラミネートベニア(外傷への対応,サンドウィッチテクニック)