推薦の辞
木村英生先生と知り合って23年が過ぎた.彼は,それほど器用な臨床家ではない.その彼が,エンド治療に関するきわめて臨床的で実践的な書籍を書いた.
ざっと目を通してみて,正直なところ驚いた.経過観察と資料が実に豊富なのである.日常臨床のなかで,これほどの治療経過のデータを整理して発表するのは大変なことであろう.
エンド治療は,術式だけでは語ることができない.長期経過観察のなかで,はじめて話が成り立つ.したがって,書籍としてまとめたいのであれば,少なくとも20年以上の経過観察が必要となる.日常臨床で行ったエンド治療の症例の20年後を確認するためには,後に行う補綴処置がきわめて重要であり,しかも,治療歯の歯周環境がきわめて悪く,保存か,抜歯かに迷うようなケースでは,エンド,歯周,外科,矯正,補綴などあらゆる知識と技術が求められる.
筆者の症例をみてみると,単なるエンド治療だけではなく,歯根分割,逆根管充填,歯周外科,インプラント治療などさまざまな術式を駆使して長期的な保存へと導いている.本書は,単なるエンド治療の書籍としてとらえるのではなく,総合的な歯科治療のなかでエンド治療にどのように取り組めばよいかという見方をすれば,よりわかりやすいはずである.
筆者は「下川エンド」という表現をしているが,自信をもって「木村エンド」としての治療法をまとめた書籍である.ぜひ明日からの臨床に役立てていただきたい.
2014年8月
福岡県北九州市 下川公一
はじめに
本書は,私が2001年に『歯界展望』で発表した「残根を活かすI・II」(共著)で提示した症例,および2003〜2004年に『歯界展望』で連載した「私の根尖病変への取り組み10年間の変遷(1)〜(6)」で提示した症例の予後について,読者諸兄にお伝えすることを第一の目的としている.
当時の連載では,エンド治療の研究者が掲げる原則(理想論)と臨床家の日々の実践(現実論)との間には大きなギャップが存在すること,および研究者と臨床家が一致協力してそのギャップを埋める努力をすべきであることを強く訴えた.また,「標準的エンド治療の理論」(いわゆる「グローバルスタンダード」)が有する盲点,欠点,問題点にまで言及し,それらを十分に考慮して構築された「下川エンド」の優位性について紹介した.しかし,当時は紙幅の関係もあり,「下川エンド」の詳細な内容を伝えることはできず,症例の提示も十分とは言えなかった.そこで今回はそれを補い,再度,「下川エンド」の論理性と高い実戦性を十分にお伝えしたいということが第二の目的となっている.
当時,私が指摘したギャップは,残念ながらいまも解消されていない.しかし,若い研究者のなかには,現実から目をそらさず,きちんと向き合って考えていこうという姿勢をもった方が増えてきていることを肌で感じている.そこで,この機を逃さず,長年の懸案であったエンド治療のドグマにメスを入れたいということが第三の目的である.
本書では,失敗症例や臨床的に問題のある症例もたくさん掲載しているが,提示する必要度を優先させ,あえて掲載に踏み切っている.本書が,エンド治療について考えるひとつのきっかけとなり,ここで詳説している「下川エンド」の理論が読者諸兄の日常臨床に少しでも役立つことがあれば幸いである.
2014年8月
木村英生
木村英生先生と知り合って23年が過ぎた.彼は,それほど器用な臨床家ではない.その彼が,エンド治療に関するきわめて臨床的で実践的な書籍を書いた.
ざっと目を通してみて,正直なところ驚いた.経過観察と資料が実に豊富なのである.日常臨床のなかで,これほどの治療経過のデータを整理して発表するのは大変なことであろう.
エンド治療は,術式だけでは語ることができない.長期経過観察のなかで,はじめて話が成り立つ.したがって,書籍としてまとめたいのであれば,少なくとも20年以上の経過観察が必要となる.日常臨床で行ったエンド治療の症例の20年後を確認するためには,後に行う補綴処置がきわめて重要であり,しかも,治療歯の歯周環境がきわめて悪く,保存か,抜歯かに迷うようなケースでは,エンド,歯周,外科,矯正,補綴などあらゆる知識と技術が求められる.
筆者の症例をみてみると,単なるエンド治療だけではなく,歯根分割,逆根管充填,歯周外科,インプラント治療などさまざまな術式を駆使して長期的な保存へと導いている.本書は,単なるエンド治療の書籍としてとらえるのではなく,総合的な歯科治療のなかでエンド治療にどのように取り組めばよいかという見方をすれば,よりわかりやすいはずである.
筆者は「下川エンド」という表現をしているが,自信をもって「木村エンド」としての治療法をまとめた書籍である.ぜひ明日からの臨床に役立てていただきたい.
2014年8月
福岡県北九州市 下川公一
はじめに
本書は,私が2001年に『歯界展望』で発表した「残根を活かすI・II」(共著)で提示した症例,および2003〜2004年に『歯界展望』で連載した「私の根尖病変への取り組み10年間の変遷(1)〜(6)」で提示した症例の予後について,読者諸兄にお伝えすることを第一の目的としている.
当時の連載では,エンド治療の研究者が掲げる原則(理想論)と臨床家の日々の実践(現実論)との間には大きなギャップが存在すること,および研究者と臨床家が一致協力してそのギャップを埋める努力をすべきであることを強く訴えた.また,「標準的エンド治療の理論」(いわゆる「グローバルスタンダード」)が有する盲点,欠点,問題点にまで言及し,それらを十分に考慮して構築された「下川エンド」の優位性について紹介した.しかし,当時は紙幅の関係もあり,「下川エンド」の詳細な内容を伝えることはできず,症例の提示も十分とは言えなかった.そこで今回はそれを補い,再度,「下川エンド」の論理性と高い実戦性を十分にお伝えしたいということが第二の目的となっている.
当時,私が指摘したギャップは,残念ながらいまも解消されていない.しかし,若い研究者のなかには,現実から目をそらさず,きちんと向き合って考えていこうという姿勢をもった方が増えてきていることを肌で感じている.そこで,この機を逃さず,長年の懸案であったエンド治療のドグマにメスを入れたいということが第三の目的である.
本書では,失敗症例や臨床的に問題のある症例もたくさん掲載しているが,提示する必要度を優先させ,あえて掲載に踏み切っている.本書が,エンド治療について考えるひとつのきっかけとなり,ここで詳説している「下川エンド」の理論が読者諸兄の日常臨床に少しでも役立つことがあれば幸いである.
2014年8月
木村英生
推薦の辞
はじめに
エンド治療 理想の治療像を目指して
第1編 エンド治療の実態
1 エンド治療の科学的根拠とは
変わらないエンド治療の実態
エンド治療の科学的根拠とは
2 エンド治療の成功率
エンド治療の結果は何年もてばよいのか
歯科治療がもつ宿命
エンド治療の成功率
第2編 根管の分類と治療の実際 基本編
3 エンド治療を予知性高く,効率的に行うために
「下川エンド」との出合い
診査・診断―根管ごとの評価を行う
診断に基づき目標をクリアにする
4 エンド治療の基本─根尖狭窄部が存在する根管への対応
エンド治療の基本的術式
5 「下川エンド」の基本を知る
エンド治療を始める前に
標準的エンド治療の理論に潜む盲点と「下川エンド」の基本
第3編 根管の分類と治療の実際 アドバンス編
6 感染根管─吸収根管への対応
感染根管─吸収根管の症例に取り組む前に
感染根管─吸収根管を狙って治す
7 さまざまな難症例への対応
エンド難症例と診断したら
非嚢胞性疾患への対応
歯根嚢胞への対応
彎曲根管への対応
破折リーマー・ファイルへの対応
歯根端切除術での対応
8 エンド難症例への意識改革
難症例は客観的な判定基準と長期経過観察によって決まる
第4編 これからのエンド治療に向けて
9 エンド治療への3つの提言
エンド治療に対してモラルをもちたい
症例提示は全顎で行いたい
インプラントを補助的に活用したい
COLUMN
天然歯は「腐っても鯛!」
「三種の神器」の功と罪
手指感覚は一朝一夕では身につかない
勤務医時代の思い出
「知っていること」と「できていること」──スタディグループの意義
発表は常に全力を尽くすべし
メタルコアは原則を守ればベターチョイス
エンド治療の「難治症」
参考文献
索引
あとがき
はじめに
エンド治療 理想の治療像を目指して
第1編 エンド治療の実態
1 エンド治療の科学的根拠とは
変わらないエンド治療の実態
エンド治療の科学的根拠とは
2 エンド治療の成功率
エンド治療の結果は何年もてばよいのか
歯科治療がもつ宿命
エンド治療の成功率
第2編 根管の分類と治療の実際 基本編
3 エンド治療を予知性高く,効率的に行うために
「下川エンド」との出合い
診査・診断―根管ごとの評価を行う
診断に基づき目標をクリアにする
4 エンド治療の基本─根尖狭窄部が存在する根管への対応
エンド治療の基本的術式
5 「下川エンド」の基本を知る
エンド治療を始める前に
標準的エンド治療の理論に潜む盲点と「下川エンド」の基本
第3編 根管の分類と治療の実際 アドバンス編
6 感染根管─吸収根管への対応
感染根管─吸収根管の症例に取り組む前に
感染根管─吸収根管を狙って治す
7 さまざまな難症例への対応
エンド難症例と診断したら
非嚢胞性疾患への対応
歯根嚢胞への対応
彎曲根管への対応
破折リーマー・ファイルへの対応
歯根端切除術での対応
8 エンド難症例への意識改革
難症例は客観的な判定基準と長期経過観察によって決まる
第4編 これからのエンド治療に向けて
9 エンド治療への3つの提言
エンド治療に対してモラルをもちたい
症例提示は全顎で行いたい
インプラントを補助的に活用したい
COLUMN
天然歯は「腐っても鯛!」
「三種の神器」の功と罪
手指感覚は一朝一夕では身につかない
勤務医時代の思い出
「知っていること」と「できていること」──スタディグループの意義
発表は常に全力を尽くすべし
メタルコアは原則を守ればベターチョイス
エンド治療の「難治症」
参考文献
索引
あとがき