やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序/患者さんの口の中を「診たり」「読んだり」すると……
 患者さんの口の中をみていると,「おやっ?何かあったのかな?」と思うことがときどきあります.そんなとき,患者さんにたずねると,「実は,入院していたのです」とか,「親の介護で大変なのです」,果ては「離婚したのです」といった,体調の変化はもちろん,生活の変化まで聞けたりすることがよくあります.口の中にはいろいろな情報が詰まっているようです.
 「この口の中の多くの情報を臨床で活用したい.特に,ブラッシング指導で大いに活用できるのでは」と考え,日ごろから注意深く歯肉を診て,「なぜそうなったのか」を読むことに努めていると,経験を重ねるうちに,いつしか病態を「診たり」「読んだり」することが身についてきます.
 私は,歯肉の状態・病態を観察して状況を判断することを「歯肉を診る」,そしてその背景や原因を推察することを「歯肉を読む」と区別して考えてみることにしています.とはいえ,はっきりと区別できないところもありますが,こんな見方のなかに,歯科疾患や患者さんを理解する鍵があるように思えるのです.
 ブラッシング指導や治療で,歯肉をよく診て,読んでいると,患者さんの抱えている問題点が浮かび上がってきますし,歯肉の変化を注意深く診たり,読んだりしていると,対応も的確になってくると思います.
 まずは,口の中をよく診て,患者さんをよく見て,観察し,考察し,理解することに挑戦してみてください.患者さんとの信頼の扉が,音を立てて開くはずです.
 最後に,記録写真の頁(P.40〜41)を担当して下さった多田 宏先生,病理の視点を紹介してくださり,「巻頭図解」にご助言をいただいた橋本貞充先生,資料の活用をご許可いただいた下野正基先生に深く感謝いたします.
 2014年 初春
 三上 直一郎
巻頭図解 歯肉のしくみ
I編 診ること・読むこと
 1.指導のポイントが見えてきますか?(I)
 2.指導のポイントが見えてきますか?(II)
 3.指導のポイントが見えてきますか?(III)
II編 歯肉を診る
 1.歯肉の質・性格を診る
 2.歯肉炎を診る
 3.歯周炎を診る
 4.外傷を診る
 ちょっとひとやすみ 歯肉の観察になくてはならない記録写真
 5.プローブで診る
 6.エックス線で診る
 7.治り方を診る
III編 歯肉を読む
 1.炎症を読む
 2.外傷を読む
 3.磨き方・磨き癖を読む
 4.変化から読む
 5.全身状態を読む
IV編 ブラッシング指導のポイント
 1.効率よく磨ける磨き方
 2.患者さんを意欲的にするワンポイント指導
 3.ブラッシング指導のヒント
 4.ブラッシング用具アラカルト