やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 「釣りは鮒に始まり鮒に終わる」という言葉がありますが,「口腔外科は抜歯に始まり,抜歯に終わる」といわれるぐらいに抜歯術は奥の深い手術です.
 抜歯術は日常の歯科臨床の場で最も多い手術の一つです.抜歯の考え方,術式はわが国における口腔外科の発達の歴史とも関係しており,教育機関によって多少異なっておりますが,安全で確実な抜歯を行うためには,創傷の治癒機転,外科処置の基本を理解するとともに,基本的な抜歯の術式を学ぶことが必要です.
 そこで,手指の消毒,術者の姿勢,患者の体位,使用する器具,麻酔,抜歯操作に至るまでの基本操作を,主に経験の少ない歯科医師,臨床研修歯科医師,歯学部学生を対象として,DVDとイラストを用いて理解していただくことを目的として企画しました.
 書籍とDVDという,歯科においてはこれまでにない新しい本企画において,DVDでは,抜歯の症例解説はもとより,手指の消毒,手袋の装着,術者の姿勢,患者の体位,抜歯の手技,切開,粘膜骨膜弁の形成,縫合など,動作を伴うテクニックについて主に解説しています.実際の抜歯に際して,能率よく,かつ必要な「手の動き」を修得していただけることを意図しました.
 そして,書籍では,DVDをさらに詳しく解説することに加えて,麻酔,使用する器具,偶発症への対応についての解説など,イラストや写真を中心にしながら,知識の整理を一つのポイントに編集しました.
 このように,書籍とDVDは相互に関連しながら,それぞれのメディアのもつ特徴を生かした最も有効なコラボレーションを実現するよう試みました.両者を併せて見ていただくことで,テクニックをより効果的に修得できると確信しております.
 2005年12月1日
 新潟大学大学院教授 齊藤 力
 東京歯科大学教授 高野伸夫
・はじめに
1 手指の消毒法
 消毒剤と手袋
 手袋の開封
 手指の洗浄
 手袋の装着
2 術者の姿勢,患者の体位,患者との位置関係
 術者の姿勢
 患者の体位
 鉗子による抜歯時の姿勢
 挺子による抜歯時の姿勢
 術者が座位のときの姿勢
3 器具の選択
4 麻酔
 1)浸潤麻酔
  下顎の浸潤麻酔
  上顎の浸潤麻酔
  浸潤麻酔の部位別の刺入部位
  浸潤麻酔の奏効範囲
 2)下顎孔伝達麻酔(直達法)
5 鉗子,挺子の作用原理
 1)抜歯鉗子の作用原理
  (1)頬(唇)舌側作用
  (2)回転作用
 2)抜歯挺子の作用原理
  (1)くさびの作用(挺子挿入時の力学作用)
  (2)輪軸の作用(挺子回転時の力学作用)
  (3)てこの作用
6 抜歯の手技
 鉗子による上顎前歯の抜歯
 鉗子による上顎小臼歯の抜歯
 鉗子による上顎大臼歯の抜歯
 下顎臼歯部における抜歯鉗子の適合
 鉗子による下顎大臼歯の抜歯
 挺子による下顎小臼歯の抜歯
 下顎小臼歯残根の抜歯
 下顎大臼歯残根の根分割
 下顎智歯抜歯に際しての粘膜骨膜弁の形成,
  歯の分割,抜去操作,縫合
7 症例1歯科矯正治療のために左側上下顎第一小臼歯を抜歯した例
8 症例2歯冠・歯根を分割しないで左側上顎智歯を抜歯した例
9 症例3歯冠・歯根を分割しないで左側下顎埋伏智歯を抜歯した例
10 症例4歯冠を分割して左側下顎智歯を抜歯した例
11 症例5歯冠・歯根を分割して左側下顎水平埋伏智歯を抜歯した例
12 症例6歯冠・歯根の分割,分割歯冠を頬舌側に正中分割して左側下顎智歯を抜歯した例
13 歯の位置・形態,歯根の異常
 歯の位置の異常など
 根の彎曲
 癒合歯
14 抜歯の偶発症の種類と対応
 1)抜歯の偶発症
  (1)抜歯中の偶発症
  (2)抜歯後の偶発症
 2)偶発症への対応
  (1)抜歯中の偶発症
  (2)抜歯後の偶発症
15 抜歯創の治癒