やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 日本顎口腔機能学会は1982年に日本ME学会専門別研究会の「下顎運動機能とEMG研究会」として発足し,1985年に「顎口腔機能研究会」となり,1993年に学会へと発展,移行した.本学会の目的は,次の2項目である.
 1.顎口腔機能の分野に興味,関心を有する研究者,臨床家に広く門戸を開く.
 2.学会誌を発行し,この分野の研究,臨床の成果の発表の場を作る.
 これらの基本的目的は,先の研究会から引き継がれた方針であり,研究会が10年の節目をむかえた1991年には,それまで培ってきた研究業績を集約し,関連の研究が広く理解できるような総説を十分に加え,研究者には研究の方法と内容についての基本的な情報を,また臨床医には分析の基礎と具体的な臨床応用を提供できる,より包括的な内容を含む単行本(『顎口腔機能分析の基礎とその応用-ME機器をいかに臨床に活かすか-』デンタルダイヤモンド社)を発行した.
 その後,学会としてさらなる研鑽を重ねつつ10年の年月を経過したので,ここに再度,学会編纂の単行本を企画した.単行本の発行に際して編集小委員会を立ち上げ,内容,執筆者等について検討を重ね,ここに発行できる運びとなった.
 本書は大きくは「基本的事項」と「応用的事項」の2つに分けられ,前者では,顎口腔機能診断に必要な基本的事項として,検査目的,検査方法,資料の分析,基準値などについて,顎口腔機能の基幹である筋活動,顎運動,咬合について解説し,また後者では,顎口腔機能そのものである咀嚼,嚥下,発音について,またそれらと密接に関係する咬合,さらには,顎機能障害について検査,診断,および治療について最近の情報を提供している.それぞれの領域を多くの項目に分けて,図や写真を用いながら2〜7ページのコンパクトな分量で解説した.また,巻頭には「カラーで見る 顎口腔機能とその診査・診断」を掲げ,最先端のさまざまな試みを紹介した.そして巻末には,各項での解説を補う意味で「用語解説」を付し,読者の理解をより容易にすることを意図するとともに,この本の「事典的」な性格を補強した.
 本書は,歯学部学生から若手研究者,一般歯科臨床医,歯科衛生士および歯科技工士も含めた広範囲な歯科領域の読者を対象とし,歯科において最も重要な顎口腔機能を容易に理解できるように編集した.教科書あるいは参考書として活用できることを確信するとともに,広くこの領域における「事典」としての愛用をお願いしたい.
 最後に,本書の発行の機械を与えてくださった医歯薬出版株式会社ならびに編集担当の辻寿氏に感謝申しあげる.
 2005年6月
 日本顎口腔機能学会 単行本編集小委員会 委員長 古屋良一
基本的事項
 ■筋活動
  ●筋電図記録法
   筋電図法の基礎
    1.筋の構造 /2.筋収縮のメカニズム /3.運動単位
   表面筋電図法
    1.表面筋電図法とは /2.筋電計と筋電図の導出 /3.歯科領域におけるEMG診査のねらい /4.表面筋電図の記録・解析例
   針電極・fine wire電極法
    1.誘導法 /2.構造と用途 /3.記録例と解析
  ●筋電図分析法
   非対称性指数(asymmetry index)
    1.本式の筋電図学的評価法 /2.筋電図学的特徴 /3.臨床的意義
   マッスルバランスモニター
    1.マッスルバランスモニターとは /2.考察
   muscular sound
    1.定義 /2.解説 /3.測定法 /4.咬筋の筋音
   筋活動 /張力比
   筋疲労
    1.筋疲労のメカニズムと筋線維 /2.咀嚼筋と四肢筋の疲労 /3.筋電図による筋疲労の評価 /4.咀嚼筋の疲労の評価
 ■顎運動
  ●運動について
   顎運動とはどんな運動か
    1.顎運動の定義 /2.相補下顎運動 /3.頭蓋運動 /4.基本的な下顎運動
   歯列と顎関節はどのように動くか
    1.下顎の運動範囲 /2.運動範囲の様態や大きさの違いがなぜ生じるか
   顎運動の測りかた
    1.6自由度顎運動測定器による記録項目 /2.6自由度顎運動測定器による測定時の注意点 /3.今後の顎運動測定のありかた
   顎運動の標準データ
    1.成人 /2.小児 /3.高齢者 /4.解説
   顎運動モデル
    1.瞬間中心 /2.蝶番軸(ヒンジアキシス) /3.全運動軸 /4.顎間軸
  ●力について
   咬合力の発生メカニズム
    1.咬合力の原動力 /2.咬合力の支点,力点,作用点 /3.咬合力の調節機構 /4.咬合力の特殊性
   咬合力測定法
    1.咬合力測定法の意義 /2.咬合力測定法の種類
   咬合力の標準データ
   1.成人 /2.小児 /3.高齢者 /4.義歯ならびにインプラント補綴患者
   咬合力とクレンチング
    1.クレンチングの強さの規定 /2.歯種別にみた咬合力 /3.クレンチングの強さと咬合力
   顎関節にかかる負荷,上下顎骨に加わる力はどのくらいか
    1.顎関節負荷とは /2.上下顎に加わる力・骨内応力とは /3.顎関節負荷の推定値 /4.顎骨内の応力分布
  ●臨床への応用(正常状態としての応用)
   顎運動をどう評価するか
    1.顎運動の臨床評価 /2.下顎位の評価 /3.下顎運動の咬合器への再現
   咀嚼運動時の顎運動
    1.咀嚼運動とは /2.咀嚼サイクル /3.食品差
 ■咬合
  ●咬合の機能診断
   咬合の機能診断
    1.咬合の機能診断の意義 /2.咬合の機能診断法 /3.咬合の診断基準
  ●歯の動揺度の機能診断
   歯の動揺度の機能診断
    1.歯の動揺度の機能診断の意義 /2.歯の動揺度の機能診断法

応用的事項
 ■顎機能障害
  ●顎口腔機能検査法 /咀嚼筋筋電図検査
   顎機能障害とは
    1.顎機能障害とは /2.顎機能障害に対する検査の必要性
   咀嚼筋や胸鎖乳突筋の自発放電量
    1.検出法 /2.振幅密度関数分析の原理 /3.分析結果 /4.結 論
   非対称性指数
    1.顎機能障害治療への応用 /2.不正咬合と咀嚼筋AIとの関係
   ブラキシズム
    1.ブラキシズムとは /2.記録条件 /3.分析条件
  ●顎口腔機能検査法 /顎運動検査
   咀嚼運動
    1.咀嚼運動の検査方法 /2.臨床的意義
   下顎限界運動(切歯路,顆路)
    1.臨床的意義 /2.各病態でみられる特徴 /3.顎機能異常の診断への応用
   運動範囲パラメータ
    1.パラメータを求める /2.パラメータの特徴と臨床的意義 /3.臨床応用 /4.簡便な診断応用と展望
   頭部運動
    1.タッピング運動と頭部の協調運動 /2.頭部運動の運動中心 /3.頭部の協調運動のもつ意味 /4.顎機能障害例と頭部運動 /5.咀嚼運動時の頭部の協調運動
  ●顎口腔機能検査法 /その他
   顎関節雑音検査
    1.定性的,主観的な検査法 /2.定量的,客観的な検査法
   円板転位検査(MRI)
    1.磁気共鳴画像法(MRI) /2.顎関節部粘弾性特性測定
   咬合力検査
    1.歪み(ストレイン)ゲージを用いた咬合力計 /2.液圧を用いた咬合力計 /3.デンタルプレスケール /4.T-scan
   咀嚼筋のエネルギー代謝解析(31P-MRS)
    1.MRSの原理 /2.筋のエネルギー代謝 /3.顎機能障害者の31P-MRS /4.血流,筋線維組成とPCr量 /5.将来展望
  ●治療への応用
   顎機能障害の治療のフローチャート
    1.目的 /2.フローチャートの実際
  ●治療への応用 /各種治療法
   スプリント療法
    1.スプリントの種類と適応 /2.スタビリゼーション型スプリント
   理学療法
    1.臨床的意義 /2.温罨法 /3.超音波療法 /4.低周波通電療法 /5.TENS /6.低出力エネルギーレーザー治療
   バイオフィードバック
   1.バイオフィードバックとは /2.顎口腔領域でのバイオフィードバック /3.バイオフィードバック装置および方法
   薬物療法,外科的療法
    1.薬物療法 /2.外科的療法
 ■咀嚼
  ●総論
   咀嚼の意義と効用―総論に代えて―
    1.「摂食」,「咀嚼」の意味 /2.咀嚼と生命維持 /3.咀嚼の効用 /4.咀嚼と健康
   咀嚼機能の成長・発育
    1.咀嚼の発達 /2.咀嚼様式と咀嚼筋活動の変化
   咀嚼と脳機能
    1.脳機能 /2.咀嚼 /3.運動の発現 /4.咀嚼中枢 /5.顎反射
   味覚
    1.味覚 /2.受容機構 /3.味覚情報の処理 /4.味覚の加齢変化 /5.味覚障害 /6.味覚検査
   満腹感覚
    1.食行動調節 /2.食欲の調節系にかかわる咀嚼 /3.エネルギー代謝系における咀嚼の役割 /4.咀嚼の肥満症治療への応用
   咀嚼運動と唾液との関係
    1.唾液分泌量の測定方法 /2.咀嚼機能と唾液分泌量 /3.口渇の診断
   咀嚼と舌運動
    1.舌運動の巧緻性の測定 /2.舌圧の測定
  ●咀嚼能力を診断する
   咀嚼能力を診断する
    1.咀嚼能力の診断 /2.咀嚼能力を評価する方法
  ●咀嚼能力評価方法 /主観的評価
   咀嚼機能スコア
    1.解説
   咀嚼機能評価表
    1.摂取可能食品アンケート表と評価法 /2.評価基準 /3.咀嚼スコア /4.臨床における活用
  ● 咀嚼能力評価方法 /客観的評価
   カンテン法
    1.篩分法概説 /2.篩分法の経緯 /3.カンテンの特徴 /4.カンテン篩分法 /5.臨床応用
   検査用グミゼリーを用いた咀嚼能率検査法
    1.定義・意義 /2.特徴 /3.診断的価値 /4.臨床的意義
   エネルギー表示法
    1.定義 /2.概説 /3.特徴 /4.診断的価値 /5.臨床応用
   人工試料
    1.試験方法 /2.分析 /3.混合値の算出 /4.咀嚼ストローク数 /5.妥当性,信頼性の検討
   チューインガム
    1.背景 /2.特徴・意義 /3.検査方法 /4.臨床応用
   煎餅
    1.評価の原理 /2.唾液分泌量の測定 /3.煎餅咀嚼回数の測定 /4.唾液分泌量および舌側貯留率との関係 /5.義歯装着の評価
   米飯
    1.正中矢状断における舌運動軌跡の肉眼的観察 /2.舌運動,下顎運動および咀嚼筋筋活動の協調性 /3.診断的価値
 ■嚥下
  ●嚥下器官
   I.顎・口腔
    1.口腔 /2.顎・口腔周囲の筋
   II.鼻腔
    1.鼻腔(骨鼻腔) /2.副鼻腔
   III.咽頭
    1.咽頭鼻部(上咽頭部) /2.咽頭口部(中咽頭部) /3.咽頭喉頭部(下咽頭部) /4.咽頭の筋
   IV.喉頭
   V.食道
  ●嚥下運動
   I.食品の認知
    1.概要 /2.解説
   II.口腔内処理
    1.概要 /2.解説
   III.咽頭通過
    1.概要 /2.解説
   IV.食道通過
    1.概説 /2.解説
  ●嚥下運動の制御機構
   1.嚥下中枢 /2.嚥下反射に影響を与える因子
  ●嚥下障害とは
   1.中枢神経障害 /2.末梢神経障害 /3.筋疾患,神経筋接合部疾患 /4.加齢による嚥下障害
  ●嚥下障害の検査
   I.ベッドサイドで行う検査
    1.食事場面の観察 /2.反復唾液嚥下テスト(RSST) /3.水飲みテスト /4.改訂水飲みテスト
   II.嚥下造影検査
    1.検査の目的 /2.検査の方法 /3.検査手技 /4.観察項目
   III.喉頭もしくは嚥下ビデオ内視鏡検査
    1.評価項目
   IV.超音波エコー検査
    1.舌尖部の口蓋前方との固定 /2.食塊の動き /3.舌根部の動き
   V.筋電図検査法,嚥下圧検査
    1.筋電図検査法 /2.嚥下圧検査
 ■発音
  ●有歯顎者での発音から顎機能を診断する
   発音時の下顎運動の正常範囲
    1.単音発音時の下顎運動範囲 /2.発語運動評価の被験文 /3.発語時下顎運動の恒常性 /4.正常咬合者の発語時下顎運動
   異常咬合者の発音時の下顎運動の特徴
    1.臨床的意義 /2.代表的な咬合異常と発語時下顎運動
   咬合高径の変化と発音時の下顎運動
    1.背景 /2.臨床的意義
   下顎位の変化と発音時の下顎運動
    1.臨床的意義 /2.側方的下顎位と発語時下顎運動 /3.前後的下顎位と発語時下顎運動 /4.適用上の注意点
   スポーツ歯学的観点から見た発音の診断
    1.スポーツ歯学とは /2.スポーツとマウスガード /3.マウスガードの現状 /4.マウスガードと発音 /5.臨床的意義
  ●無歯顎者での発音から顎機能を診断する
   無歯顎者の発音の検査法
    1.自覚的発音障害の検査法 /2.他覚的発音障害の検査法
   無歯顎者の補綴処置と発音障害
    1.補綴装置と発音障害 /2.咬合高径と発音障害 /3.前歯部人工歯の排列位置 /4.臼歯部人工歯の排列位置 /5.義歯床の形態 /6.支台装置・連結子の形態
   無歯顎者のパラトグラム
    1.無歯顎者のパラトグラムの特徴・意義 /2.臨床的意義
   咬合高径の変化とパラトグラム
 ■咬合
  ●咬合と歯・歯周組織
   歯の変位測定
    1.歯の変位とは /2.歯の変位測定法 /3.歯の変位と歯および歯周組織の解剖との関係
   歯周組織の粘弾性測定
    1.粘弾性(viscoelasticity)とは /2.歯周組織の粘弾性測定法の必要性 /3.測定することの臨床的意義 /4.測定方法の種類と特徴 /5.咬合との関連性
   機能時の歯の動態
    1.咬合と歯の変位 /2.隣接接触関係と歯の変位 /3.歯槽骨と歯の変位
   咬合力と歯の運動
    1.概説 /2.咬合力負荷時の歯の運動
   歯根膜感覚
    1.概説 /2.組織学 /3.生理学 /4.精神物理学
  ●咬合接触状態
   咬合接触状態の定量評価法
    1.概説 /2.Add画像法 /3.T-scanシステム /4.デンタルプレスケール
   機能時の咬合接触状態
    1.咀嚼運動経路のパターンと機能との関係 /2.咀嚼運動経路のパターン別にみた側方咬合位の咬合接触状態
   咬頭嵌合位付近の咬合接触状態
    1.研究の概要 /2.作業側の咬合接触状態 /3.非作業側の咬合接触状態 /4.咬頭嵌合位付近の咬合接触状態からみた咬合様式
   臼歯ガイダンス
    1.側方滑走時における臼歯接触 /2.臼歯ガイダンスに起因する顎機能障害 /3.臼歯接触時の筋活動 /4.開咬症例の臼歯接触
   アンテリアガイダンス
    1.アンテリアガイダンスの2つの要素 /2.顎運動を誘導する部位 /3.顆路(ポステリアガイダンス)と調和したアンテリアガイダンス /4.咬合参照面を基準にした咬合面形態
   咬合状態の定量化
    1.定量化の要件 /2.add画像法 /3.三次元咬合検査法 /4.面積ベクトル /5.頭蓋顔面系を基準にした下顎位の定量化
   咬合支持点
    1.解説 /2.意義
  ●咬合面形態
   顎運動と咬合面形態
    1.有床義歯におけるかかわり /2.クラウンブリッジにおけるかかわり /3.顎機能におけるかかわり
   咬合面形態と咀嚼
    1.咬合面形態と咀嚼 /2.圧搾空間の存在
  ●小児の咬合
   小児の咬合診査
    1.概説 /2.診査項目(抜粋)
   小児の咬合の安定性評価法
    1.咬合接触面積を中心とした評価法 /2.咬合力重心の位置による評価法 /3.補正された咬合力重心の求め方 /4.意義・論点 /5.診断的価値
   小児の下顎安静位と測定方法
    1.小児の咬合高径決定法 /2.小児の下顎安静位誘導法 /3.アンプリチュードヒストグラム法の原理 /4.診断的価値
  ●咬合に関する治療方針
   咬合に関する治療方針(1)
    1.適切な咬合診断に基づいた咬合治療 /2.咬合治療の進め方
   咬合に関する治療方針(2)
    1.咬合支持の重要性 /2.咬合支持の回復,確保 /3.強固な咬合支持
   咬合に関する治療方針(3)
    1.矯正治療と咬合高径
   咬合に関する治療方針(4)
    1.幼児期の顎口腔機能の育成 /2.症例1 乳歯列期の下顎後退咬合を伴う過蓋咬合 /3.症例2 乳歯列期の下顎左偏を伴う前歯部交叉咬合および右側臼歯部鋏状咬合

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・用語解説
・索引