やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

編集にあたって

 社団法人日本歯科技工士会(以下日技と略)が生涯研修を実施して以来10年余が経過した.日技の生涯研修も4クール目に入り,当初目的とした学術レベルの向上という目的もこの間の歯科技工学の発展等を受けてその内容の変更が迫られる時代になりつつある.
 この間歯科技工法から歯科技工士法への法改正〔平成6(1994)年2月2日公布,60日後施行〕,また「歯科技工所運営マニュアル」の作成など重要な事項も決定された.
 一方,歯科技工も技術・理論の輸入,吸収の時代から,ある面では技術的に世界的レベルに達している.
 以上のことから,つぎの2点を基本に講座の編集を行うこととした.
 (1) これまでの理論,技術,材料を今日の視点で総括し,21世紀に向けた歯科技工学の方向性を追求する.
 (2) 社会,教育,医療問題などのかかわりのなかで歯科技工,歯科技工士の果たす役割を位置づける.
 さらに,以下の2点もねらいとする.
 (3) 生涯研修のテキスト
 (4) 第3回国際歯科技工学術大会〔平成10(1998)年10月31日〜11月3日〕との相互協力
 上記4つの目標について少し詳しく述べてみたい.
 (1) 歯科医学,歯科技工学のこれまでの発展を受けて,21世紀における歯科技工学のあるべき姿を追求する.単に目先の美しさや技術の向上を目指すのではなく,歯科医学や関連諸科学とのかかわりのなかで21世紀の歯科技工学を位置づける.この目標を達成するため,本講座の愛称をDT21(DentalTechnology21)とする.
 (2) 「21世紀医学・医療懇談会」〔会長:浅田俊雄(私立学校教職員共済組合理事長)〕の第一次報告が平成8(1996)年6月13日になされた.
 この「報告」では21世紀の社会の視点として,「50年生きる日本人」から「100年生きる地球人」として人生を過ごす社会を想定し,また,高齢化,国際化,情報化,環壊問題などの大きな変化を予測している.また,医学・医療の視点として,患者の人権や生命の尊厳を尊重した医療,QOL(生活と人生の質)を重視した医療の要請への対応などを提言している.さらに,医療人育成の考え方として,患者中心,患者本位の立場に立った医療人の育成を目指している.
 このような流れのなかで平成8(1996)年10月には第15期中教審第一次答申がなされ,21世紀を展望した教育改革が提言されている.また,生涯研修のような活動も先の報告書にみられる「100年生きる地球人」としての「生涯学習」のなかで位置づけられている.
 こうした状況を踏まえ,歯科技工士も医療人の一員として,自らの果たす役割を位置づける必要がある.
 (3) 生涯研修の内容と本講座の内容および著者が,相互に影響を与えあい,生涯研修の成果が確実にあがることを目指す.
 (4) 第3回国際歯科技工学術大会までに全5巻の完結を目指す.また,同大会の演者の多くの方々に,本講座の著者になっていただくことにより,講演と出版物の両面から,その内容の理解が得られることを目指す.
 これらの目標を達成するため,本講座では以下の6つの分野を収載することにした.
 各種臨床テクニックと歯科技工
 歯冠修復技工学
 有床義歯技工学
 歯科医学の進歩・発展と歯科技工
 社会と歯科技工
 歯科技工と管理
 日技の学術担当常務理事という役目柄,諸先輩をさしおいて本講座の編集委員長の重責を担うことになった.編集委員の先生方には企画趣旨に沿って,本講座の全体構成などについて貴重なご意見を賜った.また,ご執筆を快諾いただいた執筆者の方々に感謝申し上げるとともに,本講座が多くの読者によって支えられることを祈念して,序に替えたい.最後に本講座の制作にあたられた医歯薬出版株式会社に謝意を表す.
 1997年5月10日 歯科技工学臨床研修講座編集委員長 斎木好太郎
各種臨床テクニックと歯科技工
 3.歯冠用硬質レジンの技工
  (6)-1 各種歯冠用硬質レジンとその技工 永野清司/松村英雄
 5.パーシャルデンチャーの技工
  (8)-1 キャストパーシャルデンチャー 戸口眞二
歯冠修復技工学
  (6) メタルインレーの概要と適合 陸 誠
  (7) 機能的なクラウンを作るために 矢作光昭/塩沢育己
  (14) ブリッジ
   ポンティック形態の条件を中心に 廣末富一/井川宗太郎/広門俊信
有床義歯技工学
  (2) 治療用義歯の意義と適応 旗手 敏
  (7) 有床義歯に付与する咬合様式 河野正司/荒井良明
  (8) コンプリートデンチャーの人工歯排列と咬合接触関係 渡邉清志
  (9) パーシャルデンチャーの人工歯排列と咬合接触関係 水野行博/阿部 實/細井紀雄
歯科医学の進歩・発展と歯科技工
 1.臨床歯科医学と歯科技工
  (1)顎口腔機能学
   基礎と臨床 渡辺 誠/佐々木啓一
  (11) スポーツ歯学 大山喬史/上野俊明
  (14) 齲蝕学(カリオロジー) 古賀敏比古
 2.歯科技工材料と加工法
  (15)-3 歯科精密鋳造法 仁科匡生
  (15)-4 技工物の最終仕上げとしての研磨の実際 湯田雅士
社会と歯科技工
  (4)-3 医療経済のなかの歯科技工料 岡田眞人
  (6) 海外の歯科技工制度
  (6)-1 アメリカ合衆国の歯科技工制度
   認定歯科技工士(CDT)制度を中心に 田中朝見
  (6)-2 カナダの歯科技工士とデンチュリスト制度 伊藤布久美,Shanahan
  (6)-3 ヨーロッパの歯科技工事情
   マイスター制度,教育制度を中心に 杉山 学
  (6)-4 アジアの歯科技工事情
   韓国,中国,台湾を中心に 一棟徳和
歯科技工と管理
  (5) 情報化時代に対応したネットワーク・コンピューティングシステム 松浦賢治