編集委員 序
歯科医療の目的は,治療を通じて患者の健康に寄与することであり,いつの時代においても歯科医療の本質に大きな変化はないと思う.しかし,歯科医学の発展とそれを受け入れる社会的背景によって,歯科医療の姿はいかようにも変化するようである.
ここ20年間の目ざましい経済成長は,個人の生活水準を向上させ,生活を豊かで多様なものとし,国民の意識や価値観に大きな変化を与えてきた.
このような社会情勢の変化は歯科医療に求められる内容にも大きく影響している.たとえば,歯冠補綴の分野を例にとってみると,補綴物に与えるいくつかある要件のうち機能性を特に重視し,審美性は二次的に考えられていたものが,患者の審美的要求とも相まって両者が同じ比重で考えられるようになってきている.
また,可撤性義歯においても歯科インプラントの研究とその成功率が高まったことから顎骨にしっかり固定された固定性の義歯をとの要望が強まっている.このような状況の中で歯科技工の分野においても卒後研修の必要性が叫ばれて久しいが,その間いろいろの形で各自が新しい技術習得のため努力され,一定の成果を上げてきた.
一方,書籍類においても,大型企画として十数年前に発行された「歯科技工講座」,1982年より刊行を開始し,1987年11月に全12巻が完結した「講座歯科技工アトラス」があった.これらは,その時代における技工内容と技工テクニックの進歩を反映し,歯科技工の技術向上に大いに役立ったと考えられる.
近年,歯科技工における学問の体系化が待望されるようになり,臨床における標準的な技法の確認と全体的な技術水準の向上が必要とされるようになってきた.このような時代の要請に応えるため,学校教育においては,歯科技工士教本の10年ぶりの改訂作業が始まった.
本シリーズは卒後教育のテキストとして,卒直後から卒後3〜4年の歯科技工士を対象に,その技術水準の向上を図る目的で企画されたものである.全12巻から成り,各巻の執筆責任者の先生にお願いして,その分野のスタンダードな技術を明確にするよう配慮していただいた.また,技工工程ごとに「目標」と「チェックポイント」を設け,各ステップごとに要点を示し,それら確認事項を一つずつ点検することによって読者が歯科技工技術を独習できるように工夫した.
このように,歯科技工に関する種々の知見や技術をできるだけ日常臨床に役立てられるよう企画されたもので,本趣旨にご賛同賜わりご執筆くださった各先生には深く感謝申し上げるとともに,本シリーズが,歯科技工に携わる方々にとって価値ある書物となることを確信する次第である.
1989年9月10日 田村勝美 森 博史 妹尾輝明
執筆責任者 序
欠損補綴の目的はいうまでもなく失われた機能ならびに外観の審美性を回復することである.そして,回復された顎口腔系の機能と審美を適正な状態で長期間持続することが重要となる.
欠損補綴の種類の中でブリッジの果たす役割はきわめて大きい.ブリッジの分類には,その連結部の構造から固定性ブリッジ,可動性(半固定性)ブリッジ,可撤性ブリッジ,と大別されているが,一方それらに用いられている材料と補綴物の組み合せも数多くある.しかし,今日では,審美性,強度,生体との親和性などの点から,セラモメタルによるブリッジが主流になりつつある.
ここでは,セラモメタルブリッジを製作するうえで,その製作手順に従って7章に分けることにし,それぞれをスタンダードな理論と実際で表現してもらうため,各章ごとに造詣の深い執筆者にわかりやすく述べてもらった.
2,3はブリッジの構成と分類,ブリッジの強度と審美性に影響を与える連結部の形態,ブリッジの構成要素の中で特に重要なポンティックの形態,そしてセラモメタルでは避けては通れないコーピングデザイン,さらにそれを前歯と臼歯のコーピングデザインとに分けそれぞれの留意点について述べ,ここまでをセラモメタルブリッジ製作の基礎編とし,4〜7では実際の臨床症例をステップごとに前歯ブリッジ,臼歯ブリッジ,そしてキャラクタリゼーションといったように技工術式が細かく述べられている.
そして,すべての項目には技工工程ごとに「目標」と「チェックポイント」で,次の技工工程に移る前に確認する事項を明確にしてある.また,必要に応じてコラムを設け,理工学的裏付けや,スタンダードな内容以外の事項についても言及した.
1989年9月10日 田村勝美
歯科医療の目的は,治療を通じて患者の健康に寄与することであり,いつの時代においても歯科医療の本質に大きな変化はないと思う.しかし,歯科医学の発展とそれを受け入れる社会的背景によって,歯科医療の姿はいかようにも変化するようである.
ここ20年間の目ざましい経済成長は,個人の生活水準を向上させ,生活を豊かで多様なものとし,国民の意識や価値観に大きな変化を与えてきた.
このような社会情勢の変化は歯科医療に求められる内容にも大きく影響している.たとえば,歯冠補綴の分野を例にとってみると,補綴物に与えるいくつかある要件のうち機能性を特に重視し,審美性は二次的に考えられていたものが,患者の審美的要求とも相まって両者が同じ比重で考えられるようになってきている.
また,可撤性義歯においても歯科インプラントの研究とその成功率が高まったことから顎骨にしっかり固定された固定性の義歯をとの要望が強まっている.このような状況の中で歯科技工の分野においても卒後研修の必要性が叫ばれて久しいが,その間いろいろの形で各自が新しい技術習得のため努力され,一定の成果を上げてきた.
一方,書籍類においても,大型企画として十数年前に発行された「歯科技工講座」,1982年より刊行を開始し,1987年11月に全12巻が完結した「講座歯科技工アトラス」があった.これらは,その時代における技工内容と技工テクニックの進歩を反映し,歯科技工の技術向上に大いに役立ったと考えられる.
近年,歯科技工における学問の体系化が待望されるようになり,臨床における標準的な技法の確認と全体的な技術水準の向上が必要とされるようになってきた.このような時代の要請に応えるため,学校教育においては,歯科技工士教本の10年ぶりの改訂作業が始まった.
本シリーズは卒後教育のテキストとして,卒直後から卒後3〜4年の歯科技工士を対象に,その技術水準の向上を図る目的で企画されたものである.全12巻から成り,各巻の執筆責任者の先生にお願いして,その分野のスタンダードな技術を明確にするよう配慮していただいた.また,技工工程ごとに「目標」と「チェックポイント」を設け,各ステップごとに要点を示し,それら確認事項を一つずつ点検することによって読者が歯科技工技術を独習できるように工夫した.
このように,歯科技工に関する種々の知見や技術をできるだけ日常臨床に役立てられるよう企画されたもので,本趣旨にご賛同賜わりご執筆くださった各先生には深く感謝申し上げるとともに,本シリーズが,歯科技工に携わる方々にとって価値ある書物となることを確信する次第である.
1989年9月10日 田村勝美 森 博史 妹尾輝明
執筆責任者 序
欠損補綴の目的はいうまでもなく失われた機能ならびに外観の審美性を回復することである.そして,回復された顎口腔系の機能と審美を適正な状態で長期間持続することが重要となる.
欠損補綴の種類の中でブリッジの果たす役割はきわめて大きい.ブリッジの分類には,その連結部の構造から固定性ブリッジ,可動性(半固定性)ブリッジ,可撤性ブリッジ,と大別されているが,一方それらに用いられている材料と補綴物の組み合せも数多くある.しかし,今日では,審美性,強度,生体との親和性などの点から,セラモメタルによるブリッジが主流になりつつある.
ここでは,セラモメタルブリッジを製作するうえで,その製作手順に従って7章に分けることにし,それぞれをスタンダードな理論と実際で表現してもらうため,各章ごとに造詣の深い執筆者にわかりやすく述べてもらった.
2,3はブリッジの構成と分類,ブリッジの強度と審美性に影響を与える連結部の形態,ブリッジの構成要素の中で特に重要なポンティックの形態,そしてセラモメタルでは避けては通れないコーピングデザイン,さらにそれを前歯と臼歯のコーピングデザインとに分けそれぞれの留意点について述べ,ここまでをセラモメタルブリッジ製作の基礎編とし,4〜7では実際の臨床症例をステップごとに前歯ブリッジ,臼歯ブリッジ,そしてキャラクタリゼーションといったように技工術式が細かく述べられている.
そして,すべての項目には技工工程ごとに「目標」と「チェックポイント」で,次の技工工程に移る前に確認する事項を明確にしてある.また,必要に応じてコラムを設け,理工学的裏付けや,スタンダードな内容以外の事項についても言及した.
1989年9月10日 田村勝美
はじめに 田村勝美……1
2 ブリッジとは 澤口和宏……3
支台歯……4
1.歯に関することがら……4
2.歯列に関することがら……6
支台装置……7
1.全部被覆冠……8
2.部分被覆冠……8
連結部……8
1.連結部によるブリッジの分類……8
2.連結部の設計……11
ポンティック……15
1.ポンティックとは……15
2.ポンティック形態による分類……16
3.ポンティックのコーピングデザイン……17
4.ポンティックのフレームデザイン……18
5.ハローポンティック……20
3 メタルコーピングの製作 澤口和宏……23
前歯部のコーピングデザイン……24
1.歯冠外形の回復……24
2.コーピングデザインの決定……24
3.窓あけ操作……25
4.ポーセレン層の確認……26
臼歯部のコーピングデザイン……27
4 前歯ブリッジの製作 青木大治・岡部弘昭……29
模型の製作……30
1.咬合器へのマウント……31
2.歯型のトリミング……35
ワックスパターンの製作……36
1.歯冠外形の再現……36
2.窓あけ……41
埋没と鋳造……47
1.埋没……47
2.スプルー線の植立……47
3.鋳造……49
試適と前鑞付け……50
ポーセレンの築盛と焼成……56
1.オーペークポーセレンの築盛と焼成……56
2.歯冠色ポーセレンの築盛と焼成……59
形態修正……68
ディテールの修正……69
ステインとグレーズ……73
5 セラモメタルブリッジの連結 吉野浩正……77
鑞付けとは……78
1.前鑞付けと後鑞付け……78
2.鑞付け面積……78
3.鑞付け間鑞……78
前鑞付け法……79
1.分割の位置ぎめ……79
2.クラウン同士の連結法……80
3.変形の起きないクラウンのの固定……84
石膏コアを用いる方法……85
後鑞付け法……87
1.鑞付けのコーピングデザイン……87
2.後鑞付け法でのクラウンの固定……89
3.鑞付け……91
鑞材とその性質……92
鑞付け面の前準備……93
1.鑞付け面の洗浄……93
2.フラックス……94
埋没材について……95
火炎鑞付け……95
6 臼歯ブリッジの製作 青木啓高……97
模型の製作……99
ワックスパターンの製作……103
1.歯冠外形の再現……103
2.窓あけ……108
埋没……112
1.スプルー線植立……112
2.ワックスパターンの撤去と埋没……113
鋳造……116
リマウント……119
コーピングの表面仕上げ……123
ポーセレンの築盛と焼成……127
1.オペークポーセレンの築盛と焼成……127
2.歯冠色ポーセレンの築盛と焼成……131
形態修正……140
ステインとグレーズ……144
1.ステイン……144
2.グレーズ……146
7 キャラクタリゼーション 小田中康裕……151
オーペークポーセレンの築盛……152
歯頚部色ポーセレンの築盛……153
象牙色ポーセレンの築盛……154
有色の指状構造(着色層)……155
白色帯の付与……156
エナメル色ポーセレンの築盛……157
透明ポーセレンの築盛……158
ステイン……159
症例……160
1.症例I (4)(3)(2)(1)ブリッジ……160
2.症例II (3)(2)(1)(1)(2)(3)ブリッジ……166
3.症例III (6)(5)(4)(3)(2)ブリッジ……168
4.症例IV (2)(1)(1)(2)(3)ブリッジ……173
2 ブリッジとは 澤口和宏……3
支台歯……4
1.歯に関することがら……4
2.歯列に関することがら……6
支台装置……7
1.全部被覆冠……8
2.部分被覆冠……8
連結部……8
1.連結部によるブリッジの分類……8
2.連結部の設計……11
ポンティック……15
1.ポンティックとは……15
2.ポンティック形態による分類……16
3.ポンティックのコーピングデザイン……17
4.ポンティックのフレームデザイン……18
5.ハローポンティック……20
3 メタルコーピングの製作 澤口和宏……23
前歯部のコーピングデザイン……24
1.歯冠外形の回復……24
2.コーピングデザインの決定……24
3.窓あけ操作……25
4.ポーセレン層の確認……26
臼歯部のコーピングデザイン……27
4 前歯ブリッジの製作 青木大治・岡部弘昭……29
模型の製作……30
1.咬合器へのマウント……31
2.歯型のトリミング……35
ワックスパターンの製作……36
1.歯冠外形の再現……36
2.窓あけ……41
埋没と鋳造……47
1.埋没……47
2.スプルー線の植立……47
3.鋳造……49
試適と前鑞付け……50
ポーセレンの築盛と焼成……56
1.オーペークポーセレンの築盛と焼成……56
2.歯冠色ポーセレンの築盛と焼成……59
形態修正……68
ディテールの修正……69
ステインとグレーズ……73
5 セラモメタルブリッジの連結 吉野浩正……77
鑞付けとは……78
1.前鑞付けと後鑞付け……78
2.鑞付け面積……78
3.鑞付け間鑞……78
前鑞付け法……79
1.分割の位置ぎめ……79
2.クラウン同士の連結法……80
3.変形の起きないクラウンのの固定……84
石膏コアを用いる方法……85
後鑞付け法……87
1.鑞付けのコーピングデザイン……87
2.後鑞付け法でのクラウンの固定……89
3.鑞付け……91
鑞材とその性質……92
鑞付け面の前準備……93
1.鑞付け面の洗浄……93
2.フラックス……94
埋没材について……95
火炎鑞付け……95
6 臼歯ブリッジの製作 青木啓高……97
模型の製作……99
ワックスパターンの製作……103
1.歯冠外形の再現……103
2.窓あけ……108
埋没……112
1.スプルー線植立……112
2.ワックスパターンの撤去と埋没……113
鋳造……116
リマウント……119
コーピングの表面仕上げ……123
ポーセレンの築盛と焼成……127
1.オペークポーセレンの築盛と焼成……127
2.歯冠色ポーセレンの築盛と焼成……131
形態修正……140
ステインとグレーズ……144
1.ステイン……144
2.グレーズ……146
7 キャラクタリゼーション 小田中康裕……151
オーペークポーセレンの築盛……152
歯頚部色ポーセレンの築盛……153
象牙色ポーセレンの築盛……154
有色の指状構造(着色層)……155
白色帯の付与……156
エナメル色ポーセレンの築盛……157
透明ポーセレンの築盛……158
ステイン……159
症例……160
1.症例I (4)(3)(2)(1)ブリッジ……160
2.症例II (3)(2)(1)(1)(2)(3)ブリッジ……166
3.症例III (6)(5)(4)(3)(2)ブリッジ……168
4.症例IV (2)(1)(1)(2)(3)ブリッジ……173