やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文

 前回の新しい歯科技工士教本の発行からすでに5年あまりが経過し,内容の見直しによって歯科医学,歯科医療の進歩に合わせたはずの前回の教本も,時代にそぐわない記述も出てきたことは否めない.歯科技工物の製作にかかわるさまざまな材料たとえば前装材,鋳造法,鋳造器機,接着材料などの進歩には目を見張るものがあり,製作法自体も大幅に簡略化されたり,さらに容易になってきている.このような休むことのない進歩を記述するためには毎年の改訂が必要なことはいうまでもないが,残念ながら諸般の事情によって果たすことができずにきた.
 今回,全国歯科技工士教育協議会の要請によって,新たに歯科技工士教本を発行することになり,続けて執筆の責を負うことになったのを機会に今までの教本の内容を根本的に検討し,記述方法も含めて内容を一新することにした.以下に新しい教本の改訂された主な点をあげる.
 (1) 従来,歯冠修復技工学の歯冠修復編と架工義歯編の2つに分冊されていたものを1冊にまとめ,内容,記述の重複を省いて簡潔にしたこと.
 (2) 初学者を対象としていることに留意し,ふりがなを多くし,初出の専門用語には解説を加えるなど記述をさらに容易にしたこと.
 (3) 前回の教本では,まだ評価の定まらなかった技術や材料についても,今日一般的になったものについては積極的に取り上げたこと.
 (4) 技工操作については様々なバリエーションがあるが,そのなかで基本的なもののみを取り上げ,枝葉ではなくまず大きな幹を理解することを目指した.
 (5) 付編の咬合に関する記述に関しては,新科目の『顎口腔機能学』に譲り,咬合にかかわる内容については整合性のあるものとした.用語などについては,『顎口腔機能学』ばかりでなくその他の教本とも調和するようにした.
 本教本が発行に至るまでには,前回までの教本を使用していただいた教員各位の懇切な助言やご指摘があったことを感謝したい.なお,本教本についてさらなるご助言を賜れば幸いである.
 最後に,編集にあたられた全国歯科技工士教育協議会の関係諸氏をはじめ,ご協力いただいた医歯薬出版株式会社編集部の諸氏に心から感謝する.
 1995年2月7日 著者を代表して 横塚繁雄
1 歯冠修復技工学の概説……1
 1.歯冠修復技工学の意義……1
 2.歯冠修復技工学の目的……1
 3.臨床的価値……2
   チェックポイント……3
2 歯冠修復物の概要と種類……5
 1.歯冠修復物の概要……5
 2.インレー,一部被覆冠(部分被覆冠)……5
   1.インレー,アンレー……6
   2.3/4クラウン……6
   3.4/5クラウン……6
   4.7/8クラウン……6
   5.プロキシマルハーフクラウン……7
   6.ピンレッジ……7
 3.全部被覆冠……8
   1.全部鋳造冠……8
   2.前装鋳造冠……8
   3.ジャケットクラウン……8
   4.歯冠継続歯……9
   チェックポイント……9
3 架工義歯の概要と種類……11
 1.架工義歯の概要……11
 2.架工義歯の特徴……11
 3.架工義歯の構成と各部の名称……12
 4.架工義歯の種類……12
   チェックポイント……14
4 歯冠修復物および架工義歯の要件……15
 1.生物学的要件……15
   1.歯,歯列との関係……15
   2.歯周組織との関係……17
   3.清掃性との関係……18
   4.機能的要件……19
   5.形態的要件……19
 2.物理的要件……19
   1.材料学的問題……19
   2.保持力……21
   3.力学的安定……21
 3.化学的要件……23
   1.材料学的問題……23
   2.化学的安定性……23
 4.審美的要件……23
   1.材料学的問題……24
   2.形態……24
   3.排列(歯列)……25
   4.色調,色彩……26
   5.動的状態……26
   6.心理的問題……28
   チェックポイント……28
5 歯冠修復物および架工義歯の製作順序……29
 1.印象……30
   1.印象材の種類……31
   2.印象材の取り扱い……33
 2.研究模型(スタディキャスト)……34
 3.トレー……34
   1.トレーの目的……34
   2.トレーの種類……34
   3.個人トレーの製作法……36
 4.作業模型……39
   1.意義と目的……39
   2.作業模型の構成……39
   3.作業模型の要件……39
   4.作業模型の種類……40
   5.分割復位式模型……41
   6.歯型の修正(トリミング)……43
   7.歯型の辺縁形態……44
 5.支台築造……45
   1.意義と目的……45
   2.種類と使用材料……45
   3.製作法……47
 6.テンポラリークラウン・ブリッジ……50
   1.意義と目的……50
   2.種類と使用材料……51
   3.要件……51
   4.製作法……51
 7.咬合器装着……55
   1.咬合平面板をもった平均値咬合器に装着する場合……55
   2.咬合平面板をもたない咬合器に装着する場合……58
   3.咬合器へ模型を装着するときの注意点……58
 8.蝋型形成……59
   1.分離剤……59
   2.蝋型形成(ワックスアップ)法……59
 9.埋没……66
   1.埋没の準備……66
   2.埋没材と埋没法の種類……68
 10.鋳造……71
   1.鋳型の加熱スケジュール……72
   2.鋳造法……72
   3.金属の融解法……74
   4.使用金属……75
   5.鋳造体の清掃……76
 11.連結法……77
   1.ワンピースキャスト法……77
   2.鑞付け法……77
 12.研磨……82
   1.意義と目的……82
   2.研磨法……82
   3.研磨材の種類……83
   4.研磨の手順……84
   チェックポイント……86
6 インレー,アンレー……89
 1.意義……89
 2.特徴……89
 3.インレー,アンレーの種類と用途……89
   使用する材料による分類……89
 4.窩洞形態……90
   1.歯面の数による分類……90
   2.窩洞の形態による分類……90
   3.ブラックによる分類……91
 5.窩洞の構成……92
 6.インレー窩洞の基本的形態……93
 7.製作法……93
   1.メタルインレーの製作法……93
   2.ポーセレンインレーの製作法……94
   チェックポイント……94
7 一部被覆冠……95
 1.3/4クラウン……95
   1.意義……95
   2.支台歯形態……95
   3.特徴……95
   4.用途……96
 2.4/5クラウン……96
   1.意義……96
   2.支台歯形態……96
   3.特徴……96
   4.用途……96
 3.7/8クラウン……97
   1.意義……97
   2.支台歯形態……97
   3.特徴……97
   4.用途……97
 4.ピンレッジ……98
   1.意義……98
   2.支台歯形態……98
   3.特徴……98
   4.用途……98
   5.製作上の注意点……98
 5.プロキシマルハーフクラウン……99
   1.意義……99
   2.支台歯形態……99
   3.特徴……99
   4.用途……100
   チェックポイント……100
8 全部被覆冠……101
 1.全部鋳造冠……101
   1.意義……101
   2.支台歯形態……101
   3.特徴……102
   4.用途……102
 2.前装鋳造冠……102
   1.意義……102
   2.支台歯形態……102
   3.特徴……103
   4.用途と種類……104
   5.製作法……105
 3.ジャケットクラウン……119
   1.意義……119
   2.支台歯形態……119
   3.特徴……119
   4.用途と種類……120
   5.製作法……120
   チェックポイント……130
9 歯冠継続歯……131
 1.意義……131
 2.支台歯形態……131
 3.特徴……131
 4.用途と種類……131
   チェックポイント……132
10 架工義歯……133
 1.支台装置……133
   1.概要……133
   2.支台装置の種類……133
   3.支台装置の要件……133
 2.ポンティック……134
   1.概要……134
   2.ポンティックの種類と特徴……134
 3.連結部……137
   1.概要……137
   2.連結部の種類と特徴……137
   3.連結部の要件……138
 4.製作法……139
   1.固定性架工義歯の製作法……139
   2.半固定性架工義歯の製作法……151
   3.可撤性架工義歯の製作法……154
   チェックポイント……156

参考図書……157
講義の進め方目安例……158
さくいん……159