やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第5版の序
 本シリーズの第1版初版が出版されたのは1996年7月でした.8020運動が提唱されたのが1989年,保健所法が地域保健法に改正されたのが1994年でした.保健医療福祉を取り巻く状況も現在とは大きく異なりました.たとえば,その頃の人口統計をみてみますと,65歳以上の老年人口は約11%.現在は27.7%(2017年10月)ですから,2倍以上の差のある社会に私たちは暮らしていることになります.そのようななか,口腔のケアの重要性がクローズアップされてきました.誤嚥性肺炎の抑制,周術期口腔ケアによる入院日数の短縮と予後の改善,また,咀嚼をすることによる認知症の抑制,肥満の抑制,あるいは歯周疾患の抑制による動脈硬化の抑制など高齢者のQOLの向上に大きく関与しているとの報告が相次いで出されました.さらに,スポーツ分野でも歯科保健との関連性が話題に上るようになりました.このような社会のなか,歯科衛生士の役割に国民の目が向くようになりました.
 本シリーズは歯科衛生士教育と国家試験をつなぐ「橋」の役割を担うことをねらいとしています.
 『平成29年版歯科衛生士国家試験出題基準』に完全に準拠し,20年ぶりに全面的に改訂を行いました.
 具体的には,一問一答形式をやめて,過去の国家試験を収載して,実践型の知識の向上を図ることにいたしました.
 本書を手にされた皆様は,必ずや所期の目的を達成されて,わが国の歯科保健医療福祉の分野で活躍されることでしょう.是非,何度も繰り返して自信をつけていただきたいと存じます.
 2018年3月
 歯科衛生士国家試験対策検討会



第4版の序
 2004年に本シリーズ第3版を発行してから,8年が経過した.この間,難易度が上がっていく国家試験に対して精度を高めるべく,刷を重ね,年々見直しを行い,国試対策に取り組む学生の方々の期待に応えるように編集を行ってきた.
 さて,このたび歯科衛生士国家試験出題基準の見直しが行われ,2011年4月にその内容が公開された.今回の改定の背景には,高齢化の進展,歯科医療の高度化・専門化の環境の変化等に対応した歯科衛生士の役割の拡充はもとより,歯科衛生士教育が2年制から3年制に移行したことにより,教育内容が充実されたこと及び2010年6月30日歯科衛生士法施行規則の改正により,歯科衛生士国家試験の試験科目が改正されたことによるものと思われる.
 今回の出題基準の改定点を分析すると,上記のような点をふまえた試験科目の項目の追加及び大綱化,そして問題数の増加と必要性に応じた改定となっているといえる.
 この見直し後の出題基準は,2012年3月に実施される第21回歯科衛生士国家試験から適用される.よって本書の改訂は急務と考え,以上を考慮しかつ前版の基本的な編集方針は踏襲しつつ,第4版として『歯科衛生士国家試験出題基準平成23年版』に沿った形での改訂を行った.
 歯科衛生士学校の学生の方々が,本書で受験対策に取り組んでいただき,国家試験に合格されることを期待してやまない.
 2012年1月
 歯科衛生士国家試験対策検討会



第3版の序
 1999年に本シリーズ第2版を発行してから,4年が経過した.この間,難易度があがっていく国家試験に対して精度を高めるべく,刷を重ね,年々見直しを行い,国試対策に取り組む学生の方々の期待に応えるよう編集を行ってきた.
 さて,このたび再度歯科衛生士試験出題基準の見直しが行われ,2003年6月にその内容が公開された.今回の改定の背景には,高齢社会,2000年の介護保険施行に対応した歯科衛生士の役割の拡充はもとより,少子化の進行や,健康日本21の策定,健康増進法施行などの健康支援への動きがある.歯科医療技術の進歩もある.そしてなにより,歯科衛生士教育が2年制から3年制へ移行し始め,今後進んでいくであろう全国区での3年制への移行を見すえた地ならしの意味が大きいと思われる.
 今回の出題基準の改定点を分析すると,上記のような点をふまえた項目の追加と,従来から指摘されてきた項目重複の整理と格付けの見直し,実際行われているまたは出題されている項目の明文化などであり,必要性に応じた小改定となっているといえる.
 この見直し後の出題基準は,2004年3月に実施される第13回歯科衛生士試験から適用される.よって本書の改訂は急務と考え,以上を考慮しかつ前版の基本的な編集方針は踏襲して,第3版として必要最小限の改訂を行った次第である.
 歯科衛生士学校の学生の方々が,本書で受験対策に取り組んでいただき,国家試験に合格されることを期待してやまない.
 2004年1月
 歯科衛生士試験対策検討会



第2版の序
 本シリーズを1996年に発行して以来3年が経過した.この間,国家試験対策に取り組む多くの歯科衛生士学校の学生の方々にご利用いただいた.本書の出版企画の意図は,「ただ単に知識の整理を行ったのみでなく,国家試験対策について十分検討し,学力向上のための効果的な勉強ができるように配慮した」(「第1版の序」より)ことにある.この所期の目的がほぼ達成できたことは,本書を編集した歯科衛生士試験対策検討会としては喜びにたえない.
 さて,このたび本書の第2版の改訂版を出版することになった.その理由は,以下のとおりである.
 本年(1999年)4月に「歯科衛生士試験出題基準」が改定された.今回の改定は5,6年以内に予定される歯科衛生士養成の修業年限延長(2年以上から3年以上へ)による「出題基準」大改定までの暫定措置として行われた.現在,歯科衛生士養成施設で使われている教科書の内容を,一部あと追い的に反映した性格をもつ小改定といえる.
 この出題基準の改定の内容を分析してみると,次のとおりである.(1)用語の言い換え,(2)項目の配列や内容の整理,(3)新しい項目の追加,(4)出題内容が他の科目にもわたるようになった,などである.
 しかもこの「新出題基準」は,来年(2000年)3月5日に行われる国家試験から適用される.そこで本書を国家試験受験生のために急きょ改訂した次第である.
 また,今年(1999年)3月実施の歯科衛生士国家試験の出題傾向の変化をみると,
 (1)状況設定問題が増えた
 (2)組み合わせ問題で,3項目組み合わせのものが出題された
 (3)カラーの口腔内写真を見て答える問題が出た
 などの点で,従来とは傾向が変わってきている.合格率も過去数年の99.数%から96.9%へと低下し,受験者6,392名中200名が不合格となっている.
 以上のことを十分考慮し,また「出題基準」の大改定は5,6年後に行われることを予想して,本書の必要最小限の改訂をした次第である.
 読者の皆さんは,まず「本書の特徴および利用方法」を十分読んでから受験対策に取り組んでいただきたい.
 来春には,多くの受験生が専門性をもった立派な歯科衛生士として誕生することを期待している.
 1999年11月
 歯科衛生士試験対策検討会



第1版の序
 近年の急速な高齢化社会の到来と少子化は,保健・医療・福祉の基本的なフレームの見直しをわれわれに迫っている.
 歯科保健医療をとりまく環境も,1989年から厚生省が提唱している8020運動の推進,1992年からの老人保健法の歯科衛生士による寝たきり老人の訪問指導の実施,1994年の保健所法から地域保健法への改正,1995年の老人保健法による歯周疾患検診の導入,さらに1996年の社会保険歯科診療における歯周治療システムの大幅改定など,新たな時代の到来ともいうべき様相を呈してきた.そのような状況のもとで,歯科衛生士に期待される役割はきわめて大きくなってきている.
 歯科衛生士を目指す諸姉には,それゆえ,臨床や地域保健で活躍するための十分な基礎体力を,まずは教育を通じて身につけることが求められている.
 そこで,このたび教育と国家試験をつなぐ“橋”の役割を担うことをねらいとした本シリーズを企画した.
 本シリーズの発刊にあたっては,ただ単に知識の整理を行ったのみではなく,国家試験対策について十分に検討し,学力向上のための効果的な勉強ができるように配慮したつもりである.
 すなわち,厚生省の「歯科衛生士試験出題基準」をもとに,「歯科衛生士養成所教授要綱」を加味して各科目のセクション化をはかり,それぞれの重要なエッセンスを解説している.さらに,各科目ごとの主要なテーマを問題例としてあげ,それを解くための基本的な考え方を習得することで,国家試験問題を解くための思考過程が自然と備わるように構成した.また,知識の確認としての一問一答を科目ごとに付して,短時間で学習効果を高めるように工夫してある.
 本書を手にされた諸姉が,これを上手に利用することにより,所期の目的を達成されることを祈念している.
 1996年7月
 歯科衛生士試験対策検討会
I編 総論
 SECTION 1 口腔衛生学の意義
  I.概要 II.歯科疾患の予防
 SECTION 2 歯・口腔の機能
  I.咀嚼 II.摂食嚥下 III.発音・構音 IV.味覚,触覚,冷温感
 SECTION 3 歯・口腔の発育と変化
  I.歯・口腔の発生と成長発育 II.歯の喪失
 SECTION 4 口腔環境
  I.歯と口腔環境
 SECTION 5 歯・口腔の付着物,沈着物
  I.歯の付着物,沈着物 II.舌苔
II編 口腔清掃
 SECTION 1 口腔清掃の概要
  I.プラークコントロールの意義 II.口腔清掃の種類
 SECTION 2 口腔清掃用具
  I.歯ブラシの構成と種類 II.歯間部清掃用具 III.その他の清掃用具
 SECTION 3 歯磨剤
  I.分類と剤形 II.基本成分と配合目的 III.薬効成分と配合目的
 SECTION 4 洗口剤(保湿剤含む)
  I.組成と配合目的 II.薬効成分と配合目的
 SECTION 5 ブラッシング
  I.ブラッシング法と特徴 II.ブラッシングの為害作用
  III.歯垢染色剤 IV.舌清掃の方法
III編 う蝕の予防
 SECTION 1 う蝕の基礎知識
  I.う蝕の有病状況 II.う蝕の発生要因と機序 III.初期う蝕と再石灰化
  IV.う蝕の進行と症状 V.う蝕のリスク評価
 SECTION 2 う蝕の予防方法
  I.第一次予防 II.第二次予防 III.第三次予防 IV.健康増進と3 つの対応方法
 SECTION 3 フッ化物によるう蝕予防
  I.フッ化物の分布 II.フッ化物の摂取と代謝 III.フッ化物の毒性
  IV.う蝕予防機序 V.う蝕予防への全身応用 VI.う蝕予防への局所応用 VII.う蝕予防効果
IV編 歯周病の予防
 SECTION 1 歯周病の基礎知識
  I.歯周病の有病状況 II.歯周病の分類 III.歯周病の発症要因と機序
  IV.歯周病の進行と症状 V.歯周病リスク評価 VI.歯周病と全身との関連性
 SECTION 2 歯周病の予防方法
  I.第一次予防 II.第二次予防 III.第三次予防
  IV.セルフケア,プロフェッショナルケア,パブリックヘルスケア
V編 その他の歯科疾患の予防
 SECTION 1 不正咬合の予防
  I.原因と種類 II.影響 III.予防方法
 SECTION 2 口臭の予防
  I.口臭の原因と分類 II.口臭の検査 III.口臭の予防方法(治療方法を含む)
 SECTION 3 その他の歯科疾患・異常の予防
  I.歯の損耗 II.歯・口腔の外傷 III.顎関節症
  IV.口腔がん V.着色歯・変色歯 VI.その他
VI編 歯科疾患の疫学と歯科保健統計
 SECTION 1 歯科疾患の指標
  I.う蝕に関する指標 II.歯周病に関する指標 III.口腔清掃状態に関する指標
  IV.歯のフッ素症に関する指標 V.不正咬合に関する指標
 SECTION 2 歯科疾患の疫学
  I.う蝕の疫学 II.歯周病の疫学 III.口腔の悪性新生物の疫学
 SECTION 3 衛生統計の基礎
  I.疫学調査の進め方 II.データのまとめ方 III.データの分析法 IV.検定結果の解釈
 SECTION 4 歯科保健統計
  I.国家統計調査の分類 II.歯科疾患実態調査 III.国民健康・栄養調査
  IV.学校保健統計調査 V.患者調査
VII編 地域歯科保健活動
 SECTION 1 基礎知識
  I.地域歯科保健活動の意義 II.ライフステージ別の口腔保健の課題
  III.口腔保健活動の進め方 IV.口腔保健活動の目標 V.対象と活動分野 VI.口腔保健教育
  VII.歯・口腔の健康診査と事後処置 VIII.地域特性の把握 IX.ヘルスプロモーション
 SECTION 2 地域歯科保健
  I.市町村と都道府県の歯科保健業務 II.保健所の歯科保健業務
  III.保健所と市町村の連携 IV.8020 運動 V.健康日本21 VI.健康増進法
 SECTION 3 母子歯科保健
  I.母子歯科保健の意義 II.妊産婦の口腔保健 III.乳幼児の口腔保健
  IV.妊産婦・乳幼児の歯科健康診査と保健指導 V.1 歳6 か月児歯科健康診査と保健指導
  VI.3 歳児歯科健康診査と保健指導
 SECTION 4 学校歯科保健
  I.歯・口腔の保健教育と保健指導 II.歯・口腔の健康診断と事後措置 III.学校歯科医
 SECTION 5 産業歯科保健(職域口腔保健)
  I.職業性歯科疾患 II.産業歯科保健活動 III.職域での口腔保健管理
 SECTION 6 成人・高齢者の歯科保健に関連する法律等に基づく保健事業
  I.成人・高齢者の歯科保健に関連する法律等に基づく保健事業
  II.要介護高齢者・障害児者への歯科保健
 SECTION 7 災害時の歯科保健
  I.大規模災害時の保健医療対策 II.被災地での歯科保健活動
 SECTION 8 国際歯科保健
  I.国際協力と関連機関 II.世界の口腔保健の現状 III.開発途上国への歯科保健医療協力
VIII編 環境・社会と健康
 SECTION 1 衛生・公衆衛生の定義
  I.健康の概念と保持増進 II.予防医学の考え方と適用
  III.生涯を通じた保健・福祉 IV.健康づくり運動の変遷と現状
 SECTION 2 人口
  I.世界の人口の推移 II.人口に関する統計 III.生命表
  IV.日本の人口の少子化・高齢化の問題点
 SECTION 3 環境と健康
  I.地球環境 II.生活環境と健康 III.公害 IV.廃棄物処理
 SECTION 4 疫学
  I.定義 II.疫病・異常の発生要因 III.健康・疾病の指標 IV.疫学の研究方法
  V.調査方法 VI.スクリニーング検査 VII.国家統計
 SECTION 5 感染症
  I.感染症の成り立ち II.感染症の予防 III.主な感染症
 SECTION 6 生活習慣と生活習慣病
  I.ライフスタイル II.生活習慣病と非感染性疾患<NCDs>
 SECTION 7 食品と健康
  I.国民栄養の現状 II.食中毒とその予防 III.食品の安全
 SECTION 8 地域保健
  I.地域保健の特徴 II.地域保健活動の組織
  III.地域保健医療計画 IV.地域保健活動の進め方
 SECTION 9 母子保健
  I.母子保健用語 II.母子保健統計 III.母子保健管理
  IV.小児保健管理 V.母子保健対策 VI.主な母子保健施策
 SECTION 10  学校保健
  I.学校保健安全の意義と特徴 II.学校保健の概要 III.保健組織活動
 SECTION 11 成人・高齢者保健
  I.成人・高齢者保健の意義と特徴 II.成人・高齢者保健活動の現状 III.成人保健対策
  IV.高齢者の医療・保健・福祉対策 V.要介護者保健福祉対策 VI.地域包括ケアシステム
 SECTION 12 産業保健
  I.産業保健に関する法律 II.職業性疾病 III.産業保健管理 IV.健康保持・増進対策
 SECTION 13 精神保健
  I.精神障害者数の推移 II.ライフスタイルからみた精神保健
  III.精神保健福祉対策 IV.精神保健行政
IX編 保健・医療・福祉の制度
 SECTION 1 保健・医療・福祉の制度の概要
  I.衛生行政の目的 II.衛生行政の組織
 SECTION 2 法規
  I.法の分類 II.歯科衛生士法 III.歯科医師法 IV.歯科技工士法
  V.関連する医療関係者の身分に関する法規 VI.医療に関する法規
  VII.薬事に関連する法規 VIII.地域保健に関連する法律
 SECTION 3 現況・医療の動向
  I.医療施設 II.医療従事者 III.国民の受療状況 IV.国民医療費
 SECTION 4 社会保障
  I.わが国の社会保障制度 II.社会保険行政 III.医療保険制度 IV.年金制度
  V.雇用保険および労働者災害補償保険 VI.介護保険 VII.社会福祉行政
  VIII.生活保護制度 IX.児童と家庭の福祉制度 X.障害者の福祉制度 XI.高齢者の福祉制度