やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

刊行にあたって
 当時の校長先生とのちょっとしたご縁で,日本医歯薬専門学校歯科衛生士学科(夜間部)の「インプラントアシスタント」の授業を請け負ったのは2011年のことでした.1コマ90分の授業を全部で8コマとたくさんの時間(合計で720分)をいただき,インプラントを中心に広範囲のお話ができる時間だと,とてもうれしく思いました.
 自院で行っている臨床をベースに,解剖学や放射線学などの基本編,インプラント手術からメインテナンスまでを盛り込んだ臨床編と,これらをコマごとに分けて講義のシラバスを組みました.そのなかで,「準備と片付け」では滅菌方法に重点をおいて講義を行い,また「清潔領域と不潔領域」は口腔外科では常識的なことですが,一般歯科ではおろそかにされてしまうことも少なくないため,きちんとした知識を教えようと時間を割き,ことあるごとに取り上げて歯科衛生士のレベルの向上に燃えていました.
 座学だけでなく,ときには実習形式で手術時の手洗い,術衣,滅菌グローブの着用方法や,印象コーピング・ラボアナログの装着,アバットメントと上部構造の装着など“体験”できる実習を講義に盛り込みました.
 授業がある日は,御茶ノ水での自院の診療をぎりぎりまで行ってから中央線に乗り,高円寺駅で下車して,講義は18時から21時10分まで,90分授業を2クラスに行いました.授業を始めたばかりの頃は,話し通しで力を抜くことができなかったため,2クラスの講義を終えた後にはエネルギーがゼロになってしまいました.体力的にも精神的にもかなり苦労したことを思い出します.
 数年間続けているうちに授業が体系化でき,内容がブラッシュアップされ,インプラントアシスタントだけでなく,診療の考え方なども盛り込んで生徒の皆さんに伝えることができるようになってきました.ちょうどその頃に,医歯薬出版の方から講義内容を書籍にして,学生でも読めるインプラントアシスタントの入門的なハンドブックを作ってみないかとお誘いを受けました.そうしてこの本は8コマの授業を録音して文字に起こし,手直ししていきながら完成させたものです.
 長年にわたり授業をさせていただき,さらには書籍の話も快く賛同していただいた日本医歯薬専門学校のご関係者の方々には厚くお礼申し上げます.また,診療の合間に写真撮影にご協力いただいた医療法人社団宏礼会 塚原デンタルクリニックの歯科衛生士はじめ,スタッフの皆さまにも心から感謝申し上げます.
 この書籍がインプラントアシスタントワークだけでなく,歯科衛生士や歯科衛生士を目指す方の思いにすこしでも影響できれば幸甚です.
 2020年 8月末日
 医療法人社団宏礼会 塚原デンタルクリニック 塚原宏泰
第1章 基本編
 インプラントって何だろう?
 インプラントの“超”基本
 インプラントの違い
 インプラント治療について
 「不潔」と「清潔」
第2章 実践編(1)〜手術のサポートとアシスタント
 手術の一週間前〜前日
 手術の直前
 1次手術
 1次手術の後
 2次手術
 手術中のモニタリング
 手術の後片付け
 印象を採る
第3章 実践編(2)〜患者さんとのかかわり
 患者さんとの信頼関係の確立
 メインテナンス
第4章 おわりに〜インプラントにかかわる歯科衛生士に知ってもらいたいこと

 コラム
  偶然から生まれたインプラント
  オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンを使い分けよう!
  インプラント治療とタバコの関係
  砂糖や果糖と齲蝕の関係
  創傷治癒と栄養
  創傷治癒とエネルギー
  フレイルとオーラルフレイル
  口腔と全身の健康との関係