やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 私はいまから7年前に開業したのですが,そこではじめて気がついた事実があります.それは,外来においては「定期通院こそが最高の善」であるということ.糖尿病と歯周病は,患者さんが治療を中断することによって,急激な悪化や合併症の併発,歯の喪失が起こります.定期通院さえしていただいていれば,多くの不幸は未然に防ぐことができるのではないでしょうか.
 そして,この定期通院を実現するために役立つ学問が「医療面接(メディカル・インタビュー)」なのです.私は医学部において長らく,医学生相手に医療面接の講義と試験を担当していましたが,開業後はこの経験が大いに役立っています.患者さんのためにも,そして医院経営のためにも定期通院は最も大切なことですが,医療面接が強力にその後押しをしてくれているのです.
 医療面接は医科の世界で生まれた学問ですが,私自身の経験をもとに,歯科外来においても医療面接が役立つことを確信しました.ただし歯科の場合は医科と違い,患者さんとの間に大きなユニットが介在するため,コミュニケーションをとりにくい状況にあります.また,チェアタイムが限られているため,短時間で効率よく患者さんから信頼を得るための技術が必要になります.そこで,実地で多くの歯科衛生士や歯科医師,歯科衛生士学校の生徒さんのご協力を得ながら,メディカル・インタビューを歯科向けに進化させた「デンタル・インタビュー」をつくりあげました.
 本書は,生まれたばかりのデンタル・インタビューの入門書です.普遍化し,系統立てた学問のひとつではありますが,難しいことはありません.当たり前のことのなかに「有り難さと感謝」を見出し,それに対する「敬意」の気持ちを言語化していく方法が,文章と動画で示されています.ロールプレイングを通じて実践し,フィードバックし合えば,患者さんとの間に信頼関係を構築することが容易になり,ひいては定期通院につながることでしょう.本書が,歯科衛生士の皆さまが「子どもからお年寄りまでその生涯に寄り添う」一助になれば,著者としてこれ以上の喜びはありません.
 最後に,歯科医療における医療面接の重要性をいち早く理解してくださり,デンタル・インタビューの構築におつきあいくださった日本歯科衛生士会 武井典子会長,解説動画の撮影に快くご協力くださった歯科衛生士の山田広子さん,そして月刊『デンタルハイジーン』での連載から書籍化までお世話になりました医歯薬出版編集部の皆さまに,この場を借りて厚く御礼申し上げます.
 令和元年 九月吉日
 にしだわたる糖尿病内科 西田 亙
 なぜ「デンタル・インタビュー」が必要なのか?
学習編
 「マスクを外して見合う」だけで歯科外来は変わる
 「正しい位置」から信頼関係は生まれる
 「私は歯科衛生士です」と名乗ることの意味
 患者さんの「勇気」に敬意を払う
 「前向きな言葉がけ」で患者さんを勇気づける
 患者さんに「感謝」!
体験編
 ロールプレイングに挑戦!
 マスクに隠された「素顔」の力
 チェアサイドの「正しい位置」はどこか?
 「自己紹介」で覚悟が降りてくる
 「送り返し」が相手の心を開く〜共感を生み出すテクニック
 「前向きなクロージング」が再診につながる
 来院した「勇気」をたたえる
 得難い「ご縁」に感謝する

 動画でもっとわかる! ロールプレイングのコツ
 私たちもロールプレイング“体験”しました!〜全国から寄せられたお宝レポート特集