やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

よき歯科医療人になるための倫理・プロフェッショナリズム教育「プロフェッションワークブック」の出版にあたって
 プロフェッショナリズムは平成29年に改訂された歯学教育・医学教育・看護学教育モデル・コア・カリキュラムのA「歯科医師(医師,看護系人材)として求められる基本的な資質・能力」の9項目の最初にあげられており,医療系学生教育の重要な位置を占めていることがわかります.さらに,今,社会からは医療人としての「倫理・プロフェッショナリズム」が強く求められています.
 このプロフェッショナリズムという言葉は大きく分けて2つの使われ方があります.1つはモデル・コア・カリキュラムでプロフェッショナリズムに紐付けられているように,ブルームの教育目標の分類学(タキソノミー)3領域のうち主として情意領域に関連するものという捉え方です.情意領域は興味,関心,意欲,態度,価値観,習慣,情緒,そして判断等をさします.欧米の歯学教育で用いられているプロフェッショナリズムでも日本と同様に狭義に捉えています.これに対してプロフェッショナリズムを広く捉えたものとしては,アーノルドとスターンが表したようにプロフェッショナリズムが臨床能力,コミュニケーションスキル,倫理的および法的理解の上に立つ4本の柱(卓越性,ヒューマニズム,説明責任,利他主義)のすべてにより構築されるという見解や欧米内科3学会が表した「新ミレニアムにおける医のプロフェッショナリズム:医師憲章」があります.また,プロフェッショナリズムには個人が高みを目指すプロフェッショナリズムと,集団としての信頼を得るプロフェッショナリズムがあるとも言われています.
 どちらにしてもプロフェッショナリズム教育が,洋の東西を問わず医療人教育で重要視されていることは明らかです.しかしながら,わが国ではその教育を自発的に行う教材はありませんでした.プロフェッションワークブックは,歯科医療人になる学生の情意の涵養を援助する教育資源として,『よき歯科医療人になるための20の質問 倫理的検討事例集』を基に開発されたものです.このワークブックには主体的に考える事例38例を収載し,さらに20の質問により,学生が自己を振り返り,自己評価することができるように工夫されています.
 このワークブックを活用することで,よき歯科医療人を志す学生のみなさんがイメージをより具体化し,個人としての高みを目指すとともに,集団としての信頼を得られるようなプロフェッショナリズムを身につけることを期待します.また,更なる教育資源の開発を行いたいと思いますので,教職員の方々には本ワークブックへのフィードバックを頂ければ幸いに思います.
 令和元年9月
 日本歯科医学教育学会
 2017-2019年度 倫理・プロフェッショナリズム教育委員会
 委員長 木尾哲朗
 浅沼直樹 尾ア哲則 樫 則章
 角 忠輝 長谷由紀子 平田創一郎
 星野由美 山本龍生 和田尚久
 よき歯科医療人になるための20の質問
ワークブック
01-001 何のために学ぶの?
01-002 スマートフォン
02-003 ブリッジの再製
02-004 患者と上司命令
03-005 授業の資料
03-006 何のための授業?
04-007 アクティブ・ラーニング
04-008 授業で説明されなかった応用問題
05-009 課題レポートの提出(その1)
05-010 友人にレポート提出を委託した結果留年してしまった
06-011 課題レポートの提出(その2)
07-012 授業ノート(その1)
07-013 授業ノート(その2)
08-014 遅れてきた指導医
09-015 インフルエンザでの登校
09-016 酒臭い状態での診療行為
10-017 診療時の服装
10-018 電車の中での会話
11-019 大学キャンパス内売店での新入生の会話
11-020 臨床実習生と歯科衛生士の会話
12-021 散乱した抜去歯
12-022 エックス線撮影
13-023 受付当番
13-024 新聞への投書
14-025 同僚の出勤の打刻をした研修歯科医
14-026 医療系学部キャンパス内の有料駐車場
15-027 臨床実習でのノルマと治療方法に関するインフォームド・コンセント
15-028 院長からの指示
16-029 エレベーターホールでの会話
16-030 患者の利益・権利,患者への対応
17-031 患者さんからの一言
17-032 抜歯後の神経麻痺
18-033 臨床実習で登院中の学生がSNSで患者の募集を行っていた
18-034 インプラント治療への挑戦
19-035 口唇の裂傷
19-036 患者とのやりとり
20-037 多職種連携
20-038 臨床実習生と受付係