序文
歯科衛生士を取り巻く環境も変化し,業務内容や業務に従事する場所も少しずつ多様化してきました.その反面,1955年に歯科衛生士法の一部改正があり,歯科診療の補助が追加され,歯科衛生士の業務は歯科診療所が中心となったのは今から63年も前のことですが,就業場所別の状況は相変わらず歯科診療所が9割を占めています.その意味では今も変わらず歯科衛生士が患者さんに応対する多くは歯科診療所に於いてであり,逆に,患者さんが歯科と関わる割合の多くは歯科診療所に来院したときであるといってよいでしょう.患者さんの歯科に対する印象は,治療を受けに通院した歯科診療所の対応で左右されるといっても過言ではありません.
最近では,医療現場でも『ホスピタリティが求められています』といったコメントを耳にします.この言葉は,サービス業における接客の考え方として示されているようですが,歯科診療所にも必要な時代になっていると思います.患者である相手のことを思いやり,信頼や安心感を与え,医療従事者としての人間性や心が加わることで患者の治療に対する向き合い方も変わると思われます.それは医療人としてのホスピタリティが仕事の満足度にもつながるはずです.
そこで本書では,医療に携わるものとしての心構えや人格を養う大切さを1章に掲載しました.そのほかには,社会人としての対応とマナー,歯科診療所の特徴をふまえた患者さんへの接し方,歯科衛生業務の記録の作成や情報共有の仕方,今後よりいっそうニーズが高まる在宅訪問診療でのクリニカルポイント,さらに最低限知っておくべき医療保険の知識やレセプトコンピュータによる請求なども含み,プロフェッショナルな対応を目指した内容が満載です.
また,新たなこころみとして,日本語以外を母国語とする患者対応のケースも取り入れました.近年,外国人の居住者や長期滞在の観光客が増加しており,歯科診療所でも外国人の患者さんに対応する機会が増えています.今回は,歯科診療所にはじめて来院した場面を想定し,歯科衛生士が行うアセスメントや処置に対応できる会話例や会話のヒントとなるツールを示しましたが,文化や生活習慣が異なる患者さんと接する際には,なによりも共感するスキルを身につけることが重要です.本書の対象は,歯科衛生士養成校の学生や歯科診療所勤務の新人歯科衛生士向けに作成しましたが,歯科衛生士に限定することなく多くのデンタルスタッフの方々に活用していただきたいと思います.
2035年の医療ビジョンでは,多職種連携を前提とした人材育成の推進が提案されています.本書を活用された方々が,歯科衛生士としてのキャリアを蓄積することで社会に必要な人材となることを深く願っております.
2018年2月
編集委員代表 合場千佳子
歯科衛生士を取り巻く環境も変化し,業務内容や業務に従事する場所も少しずつ多様化してきました.その反面,1955年に歯科衛生士法の一部改正があり,歯科診療の補助が追加され,歯科衛生士の業務は歯科診療所が中心となったのは今から63年も前のことですが,就業場所別の状況は相変わらず歯科診療所が9割を占めています.その意味では今も変わらず歯科衛生士が患者さんに応対する多くは歯科診療所に於いてであり,逆に,患者さんが歯科と関わる割合の多くは歯科診療所に来院したときであるといってよいでしょう.患者さんの歯科に対する印象は,治療を受けに通院した歯科診療所の対応で左右されるといっても過言ではありません.
最近では,医療現場でも『ホスピタリティが求められています』といったコメントを耳にします.この言葉は,サービス業における接客の考え方として示されているようですが,歯科診療所にも必要な時代になっていると思います.患者である相手のことを思いやり,信頼や安心感を与え,医療従事者としての人間性や心が加わることで患者の治療に対する向き合い方も変わると思われます.それは医療人としてのホスピタリティが仕事の満足度にもつながるはずです.
そこで本書では,医療に携わるものとしての心構えや人格を養う大切さを1章に掲載しました.そのほかには,社会人としての対応とマナー,歯科診療所の特徴をふまえた患者さんへの接し方,歯科衛生業務の記録の作成や情報共有の仕方,今後よりいっそうニーズが高まる在宅訪問診療でのクリニカルポイント,さらに最低限知っておくべき医療保険の知識やレセプトコンピュータによる請求なども含み,プロフェッショナルな対応を目指した内容が満載です.
また,新たなこころみとして,日本語以外を母国語とする患者対応のケースも取り入れました.近年,外国人の居住者や長期滞在の観光客が増加しており,歯科診療所でも外国人の患者さんに対応する機会が増えています.今回は,歯科診療所にはじめて来院した場面を想定し,歯科衛生士が行うアセスメントや処置に対応できる会話例や会話のヒントとなるツールを示しましたが,文化や生活習慣が異なる患者さんと接する際には,なによりも共感するスキルを身につけることが重要です.本書の対象は,歯科衛生士養成校の学生や歯科診療所勤務の新人歯科衛生士向けに作成しましたが,歯科衛生士に限定することなく多くのデンタルスタッフの方々に活用していただきたいと思います.
2035年の医療ビジョンでは,多職種連携を前提とした人材育成の推進が提案されています.本書を活用された方々が,歯科衛生士としてのキャリアを蓄積することで社会に必要な人材となることを深く願っております.
2018年2月
編集委員代表 合場千佳子
歯科衛生士の一日
1章 歯科医療従事者としての心構え
(水木さとみ)
1.心構えの意義
2.歯科医療従事者としての人格を養う
1)治療的自我を養う 2)自己成長を促す行動パターン
3)患者さんとの信頼関係を築く共感力
2章 応対の基礎知識
(山岸弘子)
1.社会人として求められる基本のマナー
1)挨拶と言葉遣いのポイント 2)身だしなみ 3)報告と連絡
2.電話応対の基本
1)基本的な受け答え 2)取り次ぎの仕方
3章 歯科医院のクリニカルポイント
(品田和美)
1.患者対応の基本
2.時間の重み
1)治療時間が延びる場合の対応
2)治療時間が延びないように事前に考えておくべき対処法
3.患者を迎える準備
1)ミーティング
4.患者さんの来院から退出までの対応
1)受付 2)待合室 3)患者誘導 4)診療室 5)問診
6)診療時の配慮 7)治療後の配慮 8)退室後の確認と清掃
5.会計と次回のアポイントメント
1)受付での応対 2)診療室で説明した薬や物品
3)治療の内容とアポイントメント
6.診療後の業務
1)診療室での片付け 2)業務記録の記載
4章 対象別・状況別対応(リスクマネジメント)
(小原由紀,鈴木厚子,安田昌代,荒川優子,合場奈美,筋野真紀)
1.さまざまな患者対応
1)高齢の患者さんへの対応 2)小児の患者さんへの対応
3)障害のある患者さんへの対応 4)日本語以外を母語とする患者さんへの対応
2.状況別の対応(ケーススタディ)
1)急患への対応 2)キャンセルへの対応 3)患者さん以外の電話,来客への対応
4)インシデント・アクシデントへの対応
5章 院内でのクリニカルマネジメント
(小森朋栄,小林純子)
1.文書・個人情報の取り扱い
1)個人情報とは 2)歯科医院で扱う個人情報 3)診療録などの取り扱い
2.物品の管理
1)発注 2)在庫管理 3)5S(整理,整頓,清掃,清潔,しつけ)の考え方
3.待合室の管理
1)環境づくり
4.IT機器の活用
1)歯科医院でのパソコンの利用
6章 院内での情報共有
(水木さとみ,原田枝里,品田和美)
1.問診票
1)問診票取り扱いの注意点 2)問診票の種類 3)問診票の質問項目
4)問診票を活用したメディカルインタビュー
2.情報共有のシステム化
1)Patient recordの特徴と活用方法 2)Patient recordの実際
3.業務記録の書き方
1)SOAP形式での書き方 2)歯科診療所勤務の歯科衛生記録例
3)病院勤務の歯科衛生記録例
7章 歯科訪問診療のクリニカルポイント
(木戸田直実)
1.歯科訪問診療の流れ
1)歯科訪問診療の受付 2)診療前の準備 3)訪問時のマナー
4)診療中のマナー 5)診療後の片付け・報告・会計
2.他の医療・介護職との連携時の心構え
8章 医療保険制度の概要と仕組み
(大島克郎,猿谷芳朗)
1.医療保険制度の基礎知識
1)医療保険制度とは 2)医療保険の種類 3)医療費の患者負担割合
4)保険医と保険医療機関 5)歯科診療報酬点数表 6)診療報酬の請求と支払いの流れ
2.診療録の基礎知識
1)診療録の取り扱い 2)診療録に使用できる用語の略称
3.レセプトコンピュータによる請求
1)レセプトコンピュータの基礎知識 2)診療録入力,診療報酬明細書の作成・提出
付録
(1)処方せんの書式例
(2)診断書の書式例
(3)歯科技工指示書の書式例
(4)産業廃棄物管理票の書式例
(5)患者紹介状の書式例
a.他院への紹介用 b.他科への対診書として使用する書式例
c.大学病院歯科宛の診療情報提供書式例
(6)来院報告書の書式例
(7)歯科診療録の書式例
(8)領収証の書式例
(9)診療報酬明細書
(10)歯科の診療録及び報酬明細書に使用できる略称について
さくいん
1章 歯科医療従事者としての心構え
(水木さとみ)
1.心構えの意義
2.歯科医療従事者としての人格を養う
1)治療的自我を養う 2)自己成長を促す行動パターン
3)患者さんとの信頼関係を築く共感力
2章 応対の基礎知識
(山岸弘子)
1.社会人として求められる基本のマナー
1)挨拶と言葉遣いのポイント 2)身だしなみ 3)報告と連絡
2.電話応対の基本
1)基本的な受け答え 2)取り次ぎの仕方
3章 歯科医院のクリニカルポイント
(品田和美)
1.患者対応の基本
2.時間の重み
1)治療時間が延びる場合の対応
2)治療時間が延びないように事前に考えておくべき対処法
3.患者を迎える準備
1)ミーティング
4.患者さんの来院から退出までの対応
1)受付 2)待合室 3)患者誘導 4)診療室 5)問診
6)診療時の配慮 7)治療後の配慮 8)退室後の確認と清掃
5.会計と次回のアポイントメント
1)受付での応対 2)診療室で説明した薬や物品
3)治療の内容とアポイントメント
6.診療後の業務
1)診療室での片付け 2)業務記録の記載
4章 対象別・状況別対応(リスクマネジメント)
(小原由紀,鈴木厚子,安田昌代,荒川優子,合場奈美,筋野真紀)
1.さまざまな患者対応
1)高齢の患者さんへの対応 2)小児の患者さんへの対応
3)障害のある患者さんへの対応 4)日本語以外を母語とする患者さんへの対応
2.状況別の対応(ケーススタディ)
1)急患への対応 2)キャンセルへの対応 3)患者さん以外の電話,来客への対応
4)インシデント・アクシデントへの対応
5章 院内でのクリニカルマネジメント
(小森朋栄,小林純子)
1.文書・個人情報の取り扱い
1)個人情報とは 2)歯科医院で扱う個人情報 3)診療録などの取り扱い
2.物品の管理
1)発注 2)在庫管理 3)5S(整理,整頓,清掃,清潔,しつけ)の考え方
3.待合室の管理
1)環境づくり
4.IT機器の活用
1)歯科医院でのパソコンの利用
6章 院内での情報共有
(水木さとみ,原田枝里,品田和美)
1.問診票
1)問診票取り扱いの注意点 2)問診票の種類 3)問診票の質問項目
4)問診票を活用したメディカルインタビュー
2.情報共有のシステム化
1)Patient recordの特徴と活用方法 2)Patient recordの実際
3.業務記録の書き方
1)SOAP形式での書き方 2)歯科診療所勤務の歯科衛生記録例
3)病院勤務の歯科衛生記録例
7章 歯科訪問診療のクリニカルポイント
(木戸田直実)
1.歯科訪問診療の流れ
1)歯科訪問診療の受付 2)診療前の準備 3)訪問時のマナー
4)診療中のマナー 5)診療後の片付け・報告・会計
2.他の医療・介護職との連携時の心構え
8章 医療保険制度の概要と仕組み
(大島克郎,猿谷芳朗)
1.医療保険制度の基礎知識
1)医療保険制度とは 2)医療保険の種類 3)医療費の患者負担割合
4)保険医と保険医療機関 5)歯科診療報酬点数表 6)診療報酬の請求と支払いの流れ
2.診療録の基礎知識
1)診療録の取り扱い 2)診療録に使用できる用語の略称
3.レセプトコンピュータによる請求
1)レセプトコンピュータの基礎知識 2)診療録入力,診療報酬明細書の作成・提出
付録
(1)処方せんの書式例
(2)診断書の書式例
(3)歯科技工指示書の書式例
(4)産業廃棄物管理票の書式例
(5)患者紹介状の書式例
a.他院への紹介用 b.他科への対診書として使用する書式例
c.大学病院歯科宛の診療情報提供書式例
(6)来院報告書の書式例
(7)歯科診療録の書式例
(8)領収証の書式例
(9)診療報酬明細書
(10)歯科の診療録及び報酬明細書に使用できる略称について
さくいん