やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 新歯科衛生士教本『歯科臨床概論 第2 版』が出版されてから13 年が経過し,歯科医療を取り巻く多くの事柄も変化して,時代に馴染まなくなっている点も出てきたことから,テキストとして『歯科臨床概論』を改めたいという話を出版社からいただいた.そこで数人の先生方にお声掛けをして,改訂作業というより全く新しい教科書をつくる方向で,数回の会合をもち,今回の上梓に至った.
 改めるにあたり,歯科診療所を訪れたことがなく,歯科臨床にほとんど馴染みがない学生諸君にも,「歯科医療を行う側に立つ者」になることを前提にして,容易に理解できる内容にしようということになった.詳細については,それぞれの歯科医学の講義で教わるため,この『歯科臨床概論』では,なるべく平易な内容にしようということで同意が得られ,歯科衛生士学校養成所への入学が決まった学生諸君が,歯科医療を担う一員となるための理解を深めることができるように心掛けた.歯科衛生士学生のための歯科医学や歯科臨床への入門書であると同時に,要約した歯科診療の流れの紹介において,そのなかで活躍することになる歯科衛生士の役割を学生に自覚してもらうことを狙いとしている.
 このような考えから,I編では,歯科診療所という場の紹介にとどまらず,歯科診療所を訪れる人とその理由や歯科診療所における業務を時間的な流れとして解説するなど,歯科臨床のほとんどが行われる歯科診療所での日常を,記載方法を工夫して理解しやすいものとした.
 II編では各ライフステージに関わる歯科臨床および歯科衛生士の関係を表した図を挿入し,歯科臨床の専門分野を,図表や写真を使って平易に記載した.
 本書が多くの歯科衛生士教育機関において有効に活用され,歯科衛生士を目指す学生のお役に立つことを願ってやみません.
 2016 年3 月
 編著者一同
I編 歯科診療と歯科診療所
1章 歯科診療とは
 1.歯科臨床の場
 2.歯科診療の場と関わる人々
  1)歯科診療所 / 2)病 院 / 3)居 宅 / 4)施 設 / 5)その他
 3.歯科診療の対象者
2章 歯科診療所
 1.歯科診療所のスタッフ
  1)歯科医師 / 2)歯科衛生士 / 3)歯科技工士 / 4)歯科助手
 2.歯科診療所の紹介
  1)患者のためのスペース / 2)スタッフのためのスペース
 3.歯科診療所における安全管理
  1)医療安全 / 2)危険と隣り合わせの医療 / 3)感染防止 / 4)廃棄物の管理 / 5)インフォームド・コンセント(説明と同意)
3章 歯科診療所における業務
 1.歯科診療所全体に関わる業務
 2.歯科診療所における歯科診療と歯科衛生業務
 3.歯科診療所の1 日
II編 歯科診療の流れ
1章 ライフステージと歯科診療
2章 歯科診療で行うこと ─主な診療の流れ─
1.診査・検査・前処置
 1 バイタルサインの確認 / 2 画像検査 / 3 歯周組織の検査 / 4 痛みのコントロール
2.小児歯科
 1 小児歯科とは / 2 先天異常への対応 / 3 う蝕予防処置 (1)小窩裂溝填塞(フィッシャーシーラント) / (2)フッ化物歯面塗布
3.歯科矯正
 1 不正咬合と矯正歯科医療 / 2 矯正歯科治療の概要
4.口腔外科
 1 口腔外科とは / 2 外傷の治療 / 3 抜 歯 (1)普通抜歯 / (2)智歯の抜歯 / 4 口腔粘膜疾患の処置
5.歯科保存
 1 歯科保存とは / 2 象牙質知覚過敏症 / 3 歯冠部う蝕 / 4 根面う蝕 / 5 歯内療法 / 6 歯のホワイトニング
6.歯周治療
 1 歯周治療とは / 2 歯周病と全身疾患 / 3 歯周基本治療(TBI,SRP) / 4 歯周外科治療 / 5 メインテナンス
7.歯科補綴
 1 歯科補綴とは / 2 義歯の製作 (1)クラウン・ブリッジ / (2)有床義歯
8.障害者歯科・高齢者歯科
 1 障害者歯科・高齢者歯科とは / 2 摂食嚥下障害への対応 / 3 全身疾患への対応 / 4 周術期の対応 / 5 歯科訪問診療