やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 3・4年課程の歯科衛生士教育が定着した現在,あらためて専門職としての歯科衛生士が注目されています.これまでも,歯科衛生士はわが国の歯科医療において重要な役割を担ってきましたが,教育の充実は新たな臨床の展開をもたらしました.2001年に日本初の3年制教育が開始された際,柱となったのが,歯科衛生ケアプロセス(Dental Hygiene Process of Care,歯科衛生過程)です.
 既刊「歯科衛生ケアプロセス」が2007年に世に出てから早くも8年の歳月が流れました.この間,歯科衛生ケアプロセスは,わが国の新たな歯科衛生士教育の潮流となり,今や基礎教育のみならず臨床現場でも着実に浸透しつつあります.
 重要性が認識される一方で,歯科衛生ケアプロセスは難しい,実際の展開がよくわからない,などの声を耳にすることがありました.最初の本は,根拠に基づく歯科衛生士の臨床の考え方を提示するものでした.今回,さらに実践的な解説が欲しいという要望に応えるべく,本書を上梓することとなりました.執筆は歯科衛生士教員・歯科医師に加えて臨床の最前線で活躍する歯科衛生士に参加していただきました.一つひとつの段階をていねいに解説し,初学者から臨床経験豊富な歯科衛生士の方々まで,わかりやすいガイドとなるよう議論を重ね,編集も工夫いたしました.
 今後,歯科衛生ケアプロセスを基盤とし対象者(患者)中心の臨床を積み重ね,より効果的に関わるための研究が進めば,臨床の可能性は広がり,歯科衛生士はさらに輝きを増すはずです.本書がそのきっかけとなることを願っています.
 最後に,ご多忙のなか執筆してくださった皆様,少しでも理解しやすい内容にするため辛抱強く編集を担当していただいた医歯薬出版歯科書籍編集部の松本智子氏ならびに関係各位に心から御礼を申し上げます.
 2015年4月
 編者 佐藤陽子
    齋藤 淳
 Prologue(齋藤 淳)
  歯科衛生ケアプロセスの概念
  通常の思考過程との違い
I編 歯科衛生ケアプロセスの概要
 1 歯科衛生ケアプロセスとは…(前田尚子)
  1 歯科衛生ケアプロセスの柱
   (1)歯科衛生ケアプロセスは考えるツール
   (2)歯科衛生ケアプロセスの必要性
   (3)どのように使用するのか
  2 歯科衛生ケアプロセスと看護過程
   (1)歯科衛生ケアプロセスの背景
   (2)看護過程とのちがい
  3 臨床応用の先にあるもの
 2 教育での取り組み(遠藤圭子)
  1 歯科衛生士に求められること―人びとのニーズに応えるために
   (1)人びとのニーズ,健康とは何かを考える
   (2)治療から予防への発想の転換
  2 歯科衛生過程(歯科衛生ケアプロセス)の教育と専門性
   (1)従来型の活動のしかた
   (2)専門性の発揮
  3 これからの歯科衛生士
II編 歯科衛生ケアプロセスを臨床に活かしてみよう
 (佐藤陽子/齋藤 淳)
 1 アセスメント
  1 アセスメントとは
   (1)情報収集
    1)情報はどこからとるの?
    2)情報の種類
   (2)記録
    1)情報の記録
   (3)情報の処理
    1)情報を処理するということ
    2)情報の整理・分類
    3)情報の解釈・分析
    4)情報から問題とその原因を推測する
  2 歯科衛生・保健行動の理論や概念モデルを応用する
   (1)理論や概念モデルを取り入れたセルフケア質問紙
   (2)口腔関連QOLの歯科衛生モデルとその応用
   (3)歯科衛生ヒューマンニーズ概念モデルとその応用
    1)歯科衛生ヒューマンニーズ概念モデルとは
 2 歯科衛生診断
  1 歯科衛生診断とは
   (1)歯科診断と歯科衛生診断
   (2)歯科衛生診断の目的
   (3)歯科衛生診断文の構成要素
   (4)歯科衛生診断の種類
  2 歯科衛生診断文を書いてみよう
   (1)「〜に関連した」という用語を使う理由
   (2)問題を引き起こしている原因を考える
   (3)歯科衛生ケアで改善可能な前提に基づいて表現する
 3 計画立案
  1 計画立案とは
   (1)計画立案の目的と考え方
    1)臨床的配慮
    2)行動科学的配慮
   (2)計画立案における理論・概念モデルの応用
   (3)QOLに配慮した計画立案
   (4)セルフケア向上への支援
  2 歯科衛生ケアプランを構成するもの
   (1)目標
   (2)歯科衛生介入
   (3)期待される結果
 4 実施
  1 実施とは
   (1)実施の前に
   (2)優先順位
   (3)実施の流れ
  2 実施の記録
   (1)業務記録とは
   (2)業務記録の形式
    1)SOAPIE形式の業務記録の書き方
    2)業務記録と歯科衛生ケアプロセス
 5 評価
  1 評価とは
   (1)評価の目的
   (2)評価の基準
  2 評価の方法
   (1)評価の具体的ポイント
    1)全体的な所見と機能
    2)特定の症状の改善度
    3)対象者の知識の変化
    4)対象者の技術
    5)対象者の態度
  3 「目標」「期待される結果」の達成度の評価
   (1)どこまで達成されたのかを判断する
    1)全面的達成
    2)部分的達成
    3)未達成
   (2)評価において重要なこと
   (3)質の保証の意味を考える
 6 展開例
   (1)アセスメント
   (2)歯科衛生診断
   (3)計画立案
   (4)実施
   (5)評価
III編 歯科衛生ケアプロセスを展開してみよう
 1 歯周病の症例(上島文江/森本陽子)
  1 展開例
   (1)アセスメント
   (2)歯科衛生診断
   (3)計画立案
   (4)実施
   (5)評価
 2 高齢者の症例(江川広子)
  1 展開例
   (1)アセスメント
   (2)歯科衛生診断
   (3)計画立案
   (4)実施
   (5)評価
 3 小児の症例(鈴木麻美)
   (1)アセスメント
   (2)歯科衛生診断
   (3)計画立案
   (4)実施
   (5)評価

 Column
  歯科衛生ヒューマンニーズ概念モデルの応用
  スモールステップ(Small step)