やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の序
 著者がアメリカで学んでいた時期,母校である歯科衛生士学校で,学校長が学生60人ぐらいにホワイトニングについて質問したところ,ほとんどの学生がホワイトニングの知識をもっていました.
 その当時の日本では,まだホワイトニングについては浸透していませんでしたが,その後徐々に人々の関心が高まり,いまホワイトニングに関わる歯科衛生士は増加しています.それに伴い,ホワイトニングについてより確実な知識が求められるようになりました.歯科衛生士対象の講習会などでホワイトニングについての質問を多く受けることも多くなっています.このような人々のニーズに対応して,専門家からさらに適切な情報を発信していく必要があることを痛感し,ホワイトニングを正しく学び,行っていただくためにも,今回,再度本書を改訂という形をとって皆様にお届けすることにいたしました.
 第2版では前版で伝えきれなかった歯科衛生士に必要な内容を加え,また,巻末にQ&Aとして,いただいた多くの質問のなかから厳選した疑問について答える章を設けました.新しい製品についても若干追加しています.
 また前版に引き続き,近藤隆一先生には全体を通して丁寧なご指導をいただき,内容の正確性を期していただきました.ありがたく厚く御礼申し上げます.
 この本が皆様の一助となればうれしく思います.
 2007年8月吉日
 加藤久子

はじめに(第1版の序)
 最近,日本でもホワイトニングという言葉をよくテレビコマーシャルや雑誌などで見かけるようになりました.機会があり東南アジアの国々を訪れましたが,どの国にも多種類のホワイトニング製品(いわゆるオーバー・ザ・カウンター・プロダクツです)がドラッグストアーに陳列してありました.
 米国では毎年さまざまなタイプのホワイトニングの新製品が市場に出ています.それに伴い一般の人々も新製品に対して敏感に反応し,製品を試しています.将来的には,このようなレベルの知識と興味をもった患者さんたち(ホワイトニング希望者)が日本にも登場するという前提で,審美やホワイトニングに対してアドバイスできる力を日本の歯科衛生士にも身につけていただきたいと思います.
 米国では白い歯をもつということは知性や教養が高く,社会的地位も高いということを示す重要なシンボルだといわれています.日本もいずれこのような流れをたどると思われます.また,一般にホワイトニングを実施する人は若年者ばかりと思われているかもしれませんが,実際は中高年の方もホワイトニングに興味をもっています.年齢を重ねると徐々に歯の色調が濃くなってくることが多いので,歯の色調を明るく改善することにより,外面的にも若々しくなり心理的にも満足していただけます.とくにホーム・ホワイトニングにおいては私たち専門家の立場からカウンセリングを行い,患者一人ひとりに適切なアドバイスをすることが必要です.
 本書は,いままでホワイトニングにあまりなじみがなかった歯科衛生士にもわかりやすいように,基本的なホワイトニングの知識をカラー写真やイラストを多用して解説しました.
 また,ホワイトニングを成功させるためには歯肉の健康や歯質の状態など口腔衛生状態がよいことが前提となります.そのために重要な歯科衛生士によるスケーリング,ポリッシングテクニックなどに多くの頁を割きました.筆者が米国において受けた4年間のアドバンス歯科衛生士教育,そしてその後約10年弱に及ぶ米国での歯科衛生士としての勤務経験から得られたホワイトニングなどの知識,それらを基に歯科衛生士として本書を執筆しました.
 本書の構成は次のようになっています.第1章から第3章までは米国の事情を紹介しながら,歯科衛生士にとって必要なホワイトニングの知識について述べました.また,第4章から第7章では歯科衛生士の立場でホワイトニングにどのようにかかわっていくかといういう実践面をご紹介しました.また,第8章は臨床写真を多く用いてホワイトニングの臨床対応について説明しています.
 最後に米国審美歯科学会(ASDA)フェローであり,ホワイトニングの第一人者である近藤隆一先生には本書の執筆に当たって多大なご協力をいただきました.筆者が執筆した第1章から第7章までは多くのアドバイスや資料・写真の提供をしていただきました.また,臨床編である第8章は全面的に近藤先生にご執筆いただきました.大変光栄なことであり,この場を借りて感謝申し上げます.
 2003年8月31日
 加藤久子
第1章 ホワイトニングとは
 1.ホワイトニングの意味(加藤久子)
 2.歯はどうして白くなるのか(近藤隆一)
  1)歯の白濁化と理想的な漂白作用の違いを知る 2)酸素のおかげで歯が白くなる 3)ホワイトニング剤の有効成分は「過酸化尿素」または「過酸化水素」
 3.ホワイトニングの種類(加藤久子)
  1)オフィス・ホワイトニング 2)ホーム・ホワイトニング
第2章 アメリカにおけるホワイトニングの現状と歯科衛生士の役割(加藤久子)
 1.アメリカにおけるホワイトニングの現状
 2.ホワイトニングでの歯科衛生士の役割
  1)患者さんのホワイトニングへの関心度の判定 2)患者さんのカウンセリング
第3章 歯科衛生士のためのホワイトニングの基礎知識(加藤久子)
 1.ホーム・ホワイトニングと歯面研磨の違い
 2.ホーム・ホワイトニング剤の種類
 3.ホワイトニング剤の成分および保管方法
  1)ホーム・ホワイトニング剤の成分 2)ホーム・ホワイトニング剤の保管方法
 4.ホワイトニングの禁忌症およびホワイトニング前の処置
  1)歯科医師による検査・診断と禁忌症 2)ホワイトニング前の処置
 5.ホーム・ホワイトニングで起こりやすい不快症状
 6.ホワイトニング後の既存修復物の色調
 7.ベースラインシェード
 8.患者さんへの注意事項(まとめ)
 9.指導の注意点
 10.ホワイトニング後の効果を維持させる
 11.カスタムトレーにレザボアは必要か
第4章 ホーム・ホワイトニングのためのカウセリングとインフォームドコンセント(加藤久子)
 1.ホワイトニングを希望している患者さんの場合のカウセリング
  1)口腔衛生指導,処置(デブライドメントを含む) 2)シェードテイキングと写真撮影 3)カスタムトレー作製のため印象採得 4)トレーの適合性チェックおよびホーム・ホワイトニング処置の指導と説明 5)インフォームドコンセントの重要事項
 2.ホワイトニング候補者へのカウセリング
  1)ホワイトニングとは何かを説明する 2)歯科衛生士が行う問診 3)歯のシェード確認
第5章 歯科医師の診断後,歯科衛生士が行うホワイトニングの手順(加藤久子)
 1.ベースラインシェードの記録
 2.写真撮影
  1)患者さんとのかかわりあい 2)症例の管理
 3.ペリオアセスメントと歯科衛生士の処置
 4.スケーリング
  1)歯肉にあったスケーラーの選びかた
 5.超音波スケーリング
 6.歯面清掃器
 7.ポリッシングとフロッシング
 8.実際のホワイトニングの前処置としてのデブライドメント
 9.口腔衛生指導
第6章 歯科医師の診断後,歯科衛生士が行うホワイトニングの手順(加藤久子)
 1.カスタムトレーの製作のための印象採得
  1)口腔内のチェック 2)口腔内の清掃 3)暫間処置の必要性 4)ポジション 5)患者さんに適合した全顎トレーの選択 6)トレー選択の工夫 7)下顎の印象採得 8)上顎の印象採得
 2.感染予防
 3.スタディモデルの製作と注意事項
 4.カスタムトレーの製作
  1)シートの種類 2)バキュームフォーマーの構成 3)カスタムトレーの製作手順とテクニックヒント
第7章 ホワイトニングの処置(加藤久子)
 1.チェアーサイドにおけるホワイトニング処置の手順
  1)カスタムトレーの歯列への適合性のチェック 2)患者さんへのトレー装着の指導 3)ホーム・ホワイトニング処置と注意事項 4)カスタムトレー装着時,装着後の注意事項 5)ホワイトニングにおける不快症状の説明とトラブル解消法
 2.ホワイトニング後の評価と指導
  1)ホワイトニング後の評価 2)ホワイトニング後の指導
 3.リコール
  1)リコールの目的 2)リコール時に歯科衛生士が行うこと
第8章 臨床:ホワイトニングへの対応(近藤隆一)
 1.ホワイトニングで白くなるか?
 2.なぜ歯が汚く見えるか?
  1)外因性着色 2)内因性変色 3)高齢化 4)DNAによる強い黄ばみ
 3.成功させるポイントは?
  1)診療する立場から選択肢を考える 2)希望者を選択に導く情報 3)患者サイドへ究極のアドバイス
 4.おさえておきたい知識は?
  1)ホワイトニング:生活歯の漂白とは 2)ホワイトニング法の適応症と禁忌症 3)ホワイトニングに使用される薬剤 4)ホワイトニングできる理由 5)治療後の改善状態を予測する 6)効果の永続性
 5.オーバー・ザ・カウンター
Q&A Question&Answer
 読書の手引き
 索引