やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 筆者らの手もとに,1972年に第2版が出版された1冊の歯周治療学の教科書があります.J.F.プリチャード先生の「Advanced Periodontal Disease」という本です.歯周炎に罹患した歯は抜歯するしかないという時代に,「適切に施術をすれば,歯を救える」としたこの本には,診査,診断から歯周基本治療,確定的治療,メインテナンスに至るまで詳細な解説がなされています.その精神は,50年近く経過したいまなお,学ぶに値します.
 もちろん当時の病因論は不確かで,これまでに修正されたものも多くありますが,「患者さんの記録を残し,結果を検証して,日々改善を試みる.そして,患者さんを生涯メインテナンスしていく」という姿勢は,今日にも大きな示唆を与えてくれます.
 この40年ほどの間に,科学的知見が集積し,歯周治療も徐々に変化してきました.しかし,この変化を学ぶ機会は意外に少なく,臨床現場では科学的に否定された考えや施術がそのまま残ってしまう場合があります.あるいは,指導や施術の意味がどこにあるのかを知らずに,漫然と臨床に取り組んでいる場合もあるでしょう.こういった状況を踏まえて,錯綜する情報を整理して,歯周病・歯周治療の基本をまとめたのが本書です.
 本書は,歯周治療に取り組むはじめの第一歩を踏み出すときに,歯科衛生士の皆さんの疑問や悩みをすこしでも軽くできればと願い執筆しました.何度も手に取って,日常臨床で活用していただけたら,とてもうれしく思います.
 2016年10月
 伊藤 中・岡 賢二
 はじめに
Chapter 1 歯周病とはいかなる疾患なのか
 1-1 歯周病の本質とは
 1-2 歯周病の疫学
 1-3 健康な歯周組織
 1-4 歯肉炎と歯周炎の歯周組織
 1-5 歯周組織破壊のメカニズム
 1-6 歯周病原性細菌(1)バイオフィルム
 1-7 歯周病原性細菌(2)レッドコンプレックス
 1-8 歯周病原性細菌(3)口腔常在細菌叢
 1-9 歯石
 1-10 リスクファクター(疾患修飾因子)
 1-11 遺伝的リスクファクター
 1-12 環境・後天的リスクファクター
 1-13 喫煙の害
 1-14 咬合によって付着喪失が起きるのか?
Chapter 2 歯周病の診査,診断
 2-15 口腔内写真
 2-16 X線写真
 2-17 正しいプロービングをするために
 2-18 プロービングポケットデプス
 2-19 プロービング時の出血(BOP)
 2-20 プロービング情報と疾患の活動性
 2-21 歯周病の分類
 2-22 歯肉炎
 2-23 慢性歯周炎
 2-24 侵襲性歯周炎
 2-25 歯根形態
 2-26 歯周炎との鑑別が必要な病変
Chapter 3 歯周病の治療
 3-27 問診 サブカルテの利用
 3-28 口腔内写真の撮影
 3-29 X線写真とプロービングチャート
 3-30 ホームケアの向上(1)歯肉縁上のプラークコントロール
 3-31 ホームケアの向上(2)補助的清掃用具
 3-32 歯周基本治療の準備(1)シャープニング
 3-33 歯周基本治療の準備(2)事前のシミュレーション
 3-34 SRP(1)キュレットワークの基本
 3-35 SRP(2)超音波スケーラーの応用
 3-36 不良肉芽組織
 3-37 再評価
 3-38 抗菌薬の応用
 3-39 非外科処置と外科処置
 3-40 メインテナンス(SPT)
Chapter 4 症例から学ぶ歯周治療の実践
 Case 1 歯周基本治療からメインテナンスまで
 Case 2 メインテナンスの中断
 Case 3 侵襲性歯周炎
 Case 4 家族単位で歯周組織を管理していく

 さくいん
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