序文
最近,老年医学会雑誌に「老人性肺炎の病態と治療」という論文が掲載され,新しい老人性肺炎に対する戦略が示されました.そのなかで特に目を見張 ったのは,“口腔ケア”という項目が太字で新しく加わったことです.このことは口腔ケアが老年医学の呼吸器疾患の分野,特に老人性肺炎予防の分野でしっかりとした位置づけがなされつつあることを示唆しています.
平成13年3月,日本歯科医師会より「在宅歯科保健医療ガイドライン」が発行されました.このなかでとりわけ目についたのは「歯科保健指導と口腔ケア」という項目です.これまで口腔ケアという用語は,高齢者歯科医療を担当する現場の歯科医師や歯科衛生士によっておもに使われてきましたが,厚生労働省監修,日本歯科医師会発行のガイドラインのなかで明記された意義は大きいと思います.こうした背景には,口腔ケアが歯科医療以外の分野で急速に認知され,歯科の側からしっかりした形で発信する必要があったためと考えます.その意味で,地道に口腔ケアを実践されてきた方々の努力がやっと実を結んだといえるでしょう.
しかし,これからが重要です.口腔ケアが今後,歯科界の社会的貢献度を高める本当の原動力になるためには,もっともっと謙虚に汗を流し,多職種の方々と連携し,自分たちの資質,人間性を高めていかなければなりません.私たちは,このような時期に本別冊を出すことができることに万感の思いがあります.社会が,国民が,要介護の方々が,本当の意味の口腔ケアを必要としているのです.であるからこそ,この“専門的口腔ケア”をプロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケア(POHC)として呼称し,多岐にわたる全身ケアへの貢献として,またEBMに基づいた専門性と人間性への追求として世に問うていきたいと思います.
本書はまず「時代に求められるPOHC」について,行政,開業医,大学研究者の立場から述べていただきました.2章では,POHCの骨格となるポイントをそれぞれの視点からまとめ,3章ではPOHCの事例を紹介していますが,POHCの広がりを感じていただけると思いますし,POHCの近未来を暗示するものです.4章ではPOHCの実際を具体的に解説し,5章では,POHCを普及するために必要な多職種や介護者との連携のための理念や具体的な連携の図り方をいくつかの方向からまとめてみました.
国は“介護保険制度“と並び“介護予防事業”を平成13年度からスタートさせました.この事業の4本柱のひとつである気道感染予防は,実は口腔ケアが中枢を占めています.この事実を知ると,あらためてPOHCが今後ますます社会の要請として求められていることがわかります.私たちはこのPOHCのなかで,客観性,科学性をもって知識を広め,技術と心を磨きさらに魂のレベルまで人を癒すことができるプロフェッショナルを希求したいと思います.本書を通して,その姿が見えてくるものと確信します.
2002年5月 米山武義・植松 宏・足立三枝子
最近,老年医学会雑誌に「老人性肺炎の病態と治療」という論文が掲載され,新しい老人性肺炎に対する戦略が示されました.そのなかで特に目を見張 ったのは,“口腔ケア”という項目が太字で新しく加わったことです.このことは口腔ケアが老年医学の呼吸器疾患の分野,特に老人性肺炎予防の分野でしっかりとした位置づけがなされつつあることを示唆しています.
平成13年3月,日本歯科医師会より「在宅歯科保健医療ガイドライン」が発行されました.このなかでとりわけ目についたのは「歯科保健指導と口腔ケア」という項目です.これまで口腔ケアという用語は,高齢者歯科医療を担当する現場の歯科医師や歯科衛生士によっておもに使われてきましたが,厚生労働省監修,日本歯科医師会発行のガイドラインのなかで明記された意義は大きいと思います.こうした背景には,口腔ケアが歯科医療以外の分野で急速に認知され,歯科の側からしっかりした形で発信する必要があったためと考えます.その意味で,地道に口腔ケアを実践されてきた方々の努力がやっと実を結んだといえるでしょう.
しかし,これからが重要です.口腔ケアが今後,歯科界の社会的貢献度を高める本当の原動力になるためには,もっともっと謙虚に汗を流し,多職種の方々と連携し,自分たちの資質,人間性を高めていかなければなりません.私たちは,このような時期に本別冊を出すことができることに万感の思いがあります.社会が,国民が,要介護の方々が,本当の意味の口腔ケアを必要としているのです.であるからこそ,この“専門的口腔ケア”をプロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケア(POHC)として呼称し,多岐にわたる全身ケアへの貢献として,またEBMに基づいた専門性と人間性への追求として世に問うていきたいと思います.
本書はまず「時代に求められるPOHC」について,行政,開業医,大学研究者の立場から述べていただきました.2章では,POHCの骨格となるポイントをそれぞれの視点からまとめ,3章ではPOHCの事例を紹介していますが,POHCの広がりを感じていただけると思いますし,POHCの近未来を暗示するものです.4章ではPOHCの実際を具体的に解説し,5章では,POHCを普及するために必要な多職種や介護者との連携のための理念や具体的な連携の図り方をいくつかの方向からまとめてみました.
国は“介護保険制度“と並び“介護予防事業”を平成13年度からスタートさせました.この事業の4本柱のひとつである気道感染予防は,実は口腔ケアが中枢を占めています.この事実を知ると,あらためてPOHCが今後ますます社会の要請として求められていることがわかります.私たちはこのPOHCのなかで,客観性,科学性をもって知識を広め,技術と心を磨きさらに魂のレベルまで人を癒すことができるプロフェッショナルを希求したいと思います.本書を通して,その姿が見えてくるものと確信します.
2002年5月 米山武義・植松 宏・足立三枝子
序文
1章 時代に求められるプロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケア
(1)いまなぜ専門的口腔ケアが求められているのか
瀧口 徹
(2)POHC-Professional Oral Health Care-
米山武義
(3)口腔ケアの効果
鈴木淳子・植松 宏
2章 プロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケアで大切なこと
(1)専門的判断―どんな場合に,どんなことを理解しているべきか
福永暁子・植松 宏
(2)有効な口腔清掃を行うために
米山武義
(3)適切な情報の提供
足立三枝子
(4)他職種への情報提供と口腔ケアプランの作成
足立三枝子
3章 プロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケアが必要とされるとき
(1)いつ,どこで,どんな人に,どんなふうに行うか
佐野真弘・植松 宏
(2)ICUで行うPOHC
宮城島俊雄・塚本敦美
(3)急性期の脳血管障害者へのPOHC
角町正勝・松下希世子・家里直美
(4)ケア・リハビリテーション総合病院でのPOHC
藤島一郎・小宮山ひろみ・高柳久与・大野友久
(5)外科手術前に行うPOHC
武内博朗・川辺良一・戸田すま子・花田信弘
(6)骨髄移植をする患者さんに行うPOHC
川辺良一・武内博朗・青田美智子・菊池百代・早川浩生
(7)口腔・中咽頭がんの患者さんに行うPOHC
菊谷 武
(8)HIV感染者・AIDS患者さんに行うPOHC
中野恵美子
(9)高齢者施設で行うPOHC
金久弥生・山根次美・吉田光由
(10)知的障害者施設で行うPOHC
大久保典子
(11)在宅高齢者・障害者に対するPOHC
光銭裕二・羽立幸子
4章 プロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケア実践編
(1)口腔ケアとは
薄井由枝
(2)機械的清掃法とは
足立三枝子・米山武義
(3)PMTC-Professional Mechanical Tooth Cleaning-
米山武義
(4)3DSにおける歯科衛生士の役割
遊佐典子
(5)身近な各種グッズを使って行う口腔ケア
牛山京子
(6)化学的清掃―歯磨剤も含めて
木山直子・浦出雅裕・岸本裕充
(7)舌や粘膜の清掃法
菊谷 武・児玉実穂
(8)義歯の取り扱いについて
佐藤令子・木村重子・清水けふ子
5章 他職種や介護者への教育・指導
(1)何をどう伝えるか
米山武義・足立三枝子
(2)病院での指導―看護職を中心に
柏有紀・中 雅美
(3)老人保健施設でのスタッフへの指導
藤原ゆみ
(4)在宅での指導―他職種の方に
晴山婦美子
(5)本人・介護者・家族への指導
中川律子
付 Q&A こんなときどうする?
福永暁子・植松 宏
参考文献
執筆者一覧
編集後記
1章 時代に求められるプロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケア
(1)いまなぜ専門的口腔ケアが求められているのか
瀧口 徹
(2)POHC-Professional Oral Health Care-
米山武義
(3)口腔ケアの効果
鈴木淳子・植松 宏
2章 プロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケアで大切なこと
(1)専門的判断―どんな場合に,どんなことを理解しているべきか
福永暁子・植松 宏
(2)有効な口腔清掃を行うために
米山武義
(3)適切な情報の提供
足立三枝子
(4)他職種への情報提供と口腔ケアプランの作成
足立三枝子
3章 プロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケアが必要とされるとき
(1)いつ,どこで,どんな人に,どんなふうに行うか
佐野真弘・植松 宏
(2)ICUで行うPOHC
宮城島俊雄・塚本敦美
(3)急性期の脳血管障害者へのPOHC
角町正勝・松下希世子・家里直美
(4)ケア・リハビリテーション総合病院でのPOHC
藤島一郎・小宮山ひろみ・高柳久与・大野友久
(5)外科手術前に行うPOHC
武内博朗・川辺良一・戸田すま子・花田信弘
(6)骨髄移植をする患者さんに行うPOHC
川辺良一・武内博朗・青田美智子・菊池百代・早川浩生
(7)口腔・中咽頭がんの患者さんに行うPOHC
菊谷 武
(8)HIV感染者・AIDS患者さんに行うPOHC
中野恵美子
(9)高齢者施設で行うPOHC
金久弥生・山根次美・吉田光由
(10)知的障害者施設で行うPOHC
大久保典子
(11)在宅高齢者・障害者に対するPOHC
光銭裕二・羽立幸子
4章 プロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケア実践編
(1)口腔ケアとは
薄井由枝
(2)機械的清掃法とは
足立三枝子・米山武義
(3)PMTC-Professional Mechanical Tooth Cleaning-
米山武義
(4)3DSにおける歯科衛生士の役割
遊佐典子
(5)身近な各種グッズを使って行う口腔ケア
牛山京子
(6)化学的清掃―歯磨剤も含めて
木山直子・浦出雅裕・岸本裕充
(7)舌や粘膜の清掃法
菊谷 武・児玉実穂
(8)義歯の取り扱いについて
佐藤令子・木村重子・清水けふ子
5章 他職種や介護者への教育・指導
(1)何をどう伝えるか
米山武義・足立三枝子
(2)病院での指導―看護職を中心に
柏有紀・中 雅美
(3)老人保健施設でのスタッフへの指導
藤原ゆみ
(4)在宅での指導―他職種の方に
晴山婦美子
(5)本人・介護者・家族への指導
中川律子
付 Q&A こんなときどうする?
福永暁子・植松 宏
参考文献
執筆者一覧
編集後記