やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに

 本誌『これでマスタープロービング』もそうですが,どうしてこう繰り返し繰り返し「歯周病治療」に関する情報が提供されるのでしょうか.このような現象が始まってからすでに10年以上経つように思えます.それだけこの疾患は,診断にしても処置にしても難しい要素をはらんでいるのだともいえます.
 今回,「プロービング」をキーワードにして『デンタルハイジーン』の別冊を企画してみたいという編集部の提案を聞いたとき,とても新鮮な感じがするとともに,「まとまるのではないか」という勘も働きました.きわめて日常的な“地味”な視点から,あらためて歯周病を眺めてみるのも悪くはない,と考えたのです.
 歯周病治療に光があたるようになって,歯科衛生士への期待も高まってきました.患者さんの処置に対する意識も,良きにつけ悪しきにつけ高まりをみせています.しっかりとした情報の提供をしておかないと,思わぬトラブルに巻き込まれることもあるので,技術も知識も“底上げ”をしていく努力を強いられる時代になってきました.ですから,この別冊に記されているレベルのことはどの医院でも,またすべての歯科医師・歯科衛生士に知っておいてほしい,できるようになってほしい,と思うのです.
 目次を考え,執筆依頼をするにあたって,私は臨床医ですから,まず症例を提示しながら考えを述べていきたいと思い,その部分の執筆者には,私の開業する長野市近辺の気心の知れた歯科医師と歯科衛生士を選び,さらに札幌の佐々木勉先生にも協力をお願いいたしました.分担執筆のため,なかなか難しい作業だったであろうと想像していますが,執筆者の方々が意図を理解し,「プロービング」をつねに意識した原稿としてくださったので,思ったよりは話が散漫にならずにすんだように思えます.テーマを絞り込むことによる効果も想像以上で,とかく触れられずに通り過ぎてしまいがちな話題も,深く掘り下げることができました.
 そして,研究生活の経験がなく,「臨床実感」だけを頼りに歯周病とかかわってきた私には,基礎の知識が十分ではありません.今回,東京歯科大学の下野正基先生,井出吉信先生,愛知学院大学の野口俊英先生・吉成伸夫先生,朝日大学の岩山幸雄先生,日本歯科大学の鴨井久一先生とそれぞれの教室の方々に,ご専門の領域について充実した論文をいただくことができました.これらの論文によって,プロービングひいては歯周病治療の根幹についてしっかりとしたベースが得られ,私自身,あらためて知識の整理ができました.インプラントに関しては東京都の武田孝之先生,滅菌・消毒に関しては愛知県の村井雅彦先生のお力をお借りいたしました.
 たくさんの方々に手にとっていただき,1本のプローブから開ける道をともに歩んでいけることを心から願っています.
 2000年11月 北川原健
1章 プロービングをする前に
 (1)「プロービング」を考える 北川原 健
 (2)プロービングをする前に知っておきたい病理学 下野正基
 (3)プロービングをする前に知っておきたい解剖学 井出吉信・上松博子
2章 プロービングの基礎知識
 (1)なぜ,プロービングするの? 佐々木 勉
 (2)プローブの選択と測定時の注意事項  宮之内志保
 (3)チャートの要件といろいろなチャート 北川原 健
 (4)X線写真とプロービング 村井裕介・北川原 健
 (5)プローブの滅菌システム 村井雅彦
 (6)プロービング時の口腔内消毒 村井雅彦
 (7)部位別プロービングの実際 川浦めぐみ・北川原 健
3章 治療の進行とプロービング
 (1)治療の各ステージでプロービング結果をどう使うのか 佐々木 勉
 (2)初診時のプロービング 丸山文孝・戸谷田智恵美・北澤志のぶ
 (3)ブラッシングの定着から歯周基本治療終了の時期には何を見るか 丸山文孝・戸谷田智恵美・北澤志のぶ
 (4)ルートプレーニング時のプロービング 宮之内志保・北川原 健
 (5)再評価時・治療終了時のプロービング 澤口通洋・清水道子・徳永佳子
 (6)歯周治療・経過時のプロービングの意義 澤口通洋・湯本ユミ・柳沢美由紀
4章 プロービング・最近の話題
 (1)インプラントのプロービングは必要か? 武田孝之
 (2)プロービングデータをパソコンで管理したい 北川原 健
 (3)プロービング・自動化をめぐって〜その利点と限界,将来像〜 鴨井久一・沼部幸博・島田昌子
 (4)レーザーを用いた非接触型プローブ研究の目的と将来展望 岩山幸雄
 (5)現在の保険制度におけるプロービング 北川原 健
5章 プロービングについての文献 吉成伸夫・杉石 晋・高柳智子・松岡成範・野口俊英

 編集後記