やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 2019年6月に補綴臨床別冊として『口腔内スキャナー入門』を上梓し,口腔内スキャナーの基礎と臨床に関する基本情報をまとめた内容は,口腔内スキャナーの入門書として多くの歯科関係者に広く受け入れていただいた.以来,5年が経過し,その間の歯科分野におけるデジタル技術の普及・発展は著しく,その中でも口腔内スキャナーの性能は,精度や処理速度の改善,ユーザーインターフェイスやソフトウェアの改良が進み,さらに操作性が向上して実用的な機器へと進化している.実際,前回の『口腔内スキャナー入門』に掲載した6機種の口腔内スキャナーのうち,5機種は新たな後継機種に発展し,1機種は販売中止となっている.このような口腔内スキャナーを取り巻く状況を鑑み,編者らは最新情報へ改訂する必要があると考え,今回の『新 口腔内スキャナー入門』の発刊に至った次第である.
 今回も臨床・研究開発の最前線で口腔内スキャナーに関わっている各分野の精鋭執筆陣に詳細かつわかりやすく解説していただいた.口腔内スキャナーの最新情報とともに,本書の骨格であるデジタル印象採得の基礎知識,基本臨床ステップ,補綴・インプラント・矯正治療における臨床例を提示し,さらには新たに口腔内スキャナーを導入する際に参考となる経営判断の基準についても掲載している.したがって,口腔内スキャナーに「興味がある」「使い始めた」「すでに使用している」等々,さまざまな段階の読者の方々に参考となる内容となっている.
 本書が口腔内スキャナーに関心を持つ全ての歯科医療従事者にとって,知識の深化と技術の向上の一助となることを願っている.

追記
 本書の編集作業中に,「CAD/CAMインレー修復に対する光学印象法」が次期診療報酬改訂で保険載用される見込みとなった.ついに口腔内スキャナーが保険治療に組み込まれる時代が到来し,これを起爆剤にして口腔内スキャナーのさらなる普及・拡大が期待される.
 なお,本書の内容は口腔内スキャナーが保険未載用の段階での執筆であることをご了承いただきたい.

 2024年3月
 疋田一洋
 北海道医療大学 歯学部
 口腔機能修復・再建学系デジタル歯科医学分野
 馬場一美
 昭和大学 歯学部 歯科補綴学講座
序章 IOSで何がどう変わる?
 1.歯科診療室にとってのIOSのメリット(疋田一洋)
 2.IOSでこう変わる! 最新歯科医療のワークフロー(馬場一美・田中晋平)
 3.IOSの保険収載の可能性と歯科健診への応用(末瀬一彦)
第1章 知っておきたいIOSの基礎知識
 1.IOSの種類とその仕組み(堀田康弘)
 2.IOSによる印象採得の精確性(近藤尚知・高藤恭子・深澤翔太)
 3.IOSの“守備範囲”(馬場一美・場雅之)
 4.IOS臨床における歯科材料の基礎知識
  (1)ジルコニア(伴 清治)
  (2)コンポジットマテリアル(峯 篤史)
第2章 IOSの基本臨床ステップ
 1.IOSのための形成とスキャンの前準備
  (1)クラウンブリッジの場合(場雅之)
  (2)インレーの場合(荒井昌海)
 2.IOSの具体的な使い方
  (1)チェアサイドのスキャニング手順(岩内洋太郎)
  (2)アシスタントワーク(吉久保典子・小池軍平)
  (3)データ管理と歯科技工所との連携(藤田岳志)
 3.IOSの滅菌方法(疋田一洋)
第3章 IOS臨床の実際
 1.補綴治療におけるIOSの有用性と臨床ケース(田中晋平)
 2.インプラント治療におけるIOSの有用性と臨床ケース(植松厚夫)
 3.矯正治療におけるIOSの有用性と臨床ケース(橋場千織)
 4.院内完結型システムにおけるIOSの有用性と臨床ケース(北道敏行)
 5.歯科医院-歯科技工所のコミュニケーション(神谷光男)
第4章 IOSの導入コストと歯科医院経営上の判断基準
 1.院内完結タイプの歯科医院(佐々木英隆)
 2.保険診療も行う歯科医院(荒井昌海)
第5章 IOSの最新機種情報
 デンツプライシロナ株式会社
 株式会社ジオメディ
 インビザライン・ジャパン株式会社
 株式会社ヨシダ
 3Shape Japan合同会社