やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 歯科放射線が従前に日常の臨床業務として扱っていた画像診断は,口腔外科との関連の業務が多く,パノラマX線写真の読影業務以外で他の診療科と密に連携をとることは少なかったと思われます.歯科全体としては,以前より多くの診療分野が協力して診療をしていましたが,この四半世紀でインプラントが歯科の診療領域のみならず学問領域で目覚ましい進歩を遂げました.これを契機に,口腔機能回復の担い手である補綴学の分野のみならず,口腔外科学,歯周病学,歯科放射線学など多くの分野のmultidisciplinary
 な連携がことさらに求められるようになった印象があります.
 画像診断においてはtechnologyの進歩に従い,先達の築き上げた歯科独自の口内法撮影(デンタル撮影)やパノラマ撮影に加え,歯科用コーンビームCTが登場しました.歯科用コーンビームCTの登場により,それまでの2 次元情報による画像診断から3 次元的に細かく見ることができる画像診断へ“パラダイムシフト”をしました.しかし,歯科用コーンビームCTが歯科の画像診断に多大な福音をもたらしたことは言うまでもありませんが,万能のツールではないことも利用される先生方はご理解しておられると思います.一方,医科用のCTでは検出器が複数列並んだ多列検出器CT(MDCT)が登場し,短期間のうちに検出器の列数が増え,現在では320 列を有するCTがすでに利用されています.このMDCTを使用して冠動脈を心電図と同期することにより,心筋梗塞や狭心症などの診断が可能となりました.また,MRIは,磁気を利用して人体の断層画像を作成する方法であり,軟組織の病態診断では特に有用性が高く,歯科の領域では顎関節をはじめ多くの疾患の診断に利用されています.さらに体の化学的,生理学的情報をもたらす重要な手段としても利用されており,機能を評価するmodalityとして歯科においても今後,より活用する機会が増えることが期待されています.
 本書では,歯科で利用されているさまざまな画像診断法と実際の症例を歯科放射線学のエキスパートの方々に解説していただきました.本書が,先生方が明日からの診療において画像診断を一層有効に活用していく上での一助となることを心から願っています.
 2013 年11 月
 編集委員
 昭和大学歯学部 口腔病態診断科学講座 歯科放射線医学部門
 佐野 司
 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 口腔放射線医学分野
 倉林 亨
 序

Part_01 正常像を理解する
 1.口内法X線写真(小嶋郁穂・阪本真弥・笹野高嗣)
 2.パノラマX線像(小林 馨・五十嵐千浪)
 3.医科用CT(全身用CT)の正常解剖(誉田栄一・前田直樹・細木秀彦)
 4.歯科用CTの正常解剖(誉田栄一・前田直樹・吉田みどり)
 5.MRI(佐野 司・藤倉満美子・音成実佳)
Part_02 各種画像診断機器を理解する
 1.デジタル化で何が変わったのか(西川慶一)
 2.パノラマ撮影法の原理(和光 衛)
 3.CT画像の基礎(原理)(勝又明敏)
 4.MRIの原理(坂本潤一郎)
Part_03 歯科用CTを活用する
 1.CTでわかること,わからないこと(林 孝文)
 2.埋伏智歯(荒木和之・佐野 司)
 3.下顎管との位置関係(関 健次)
 4.顎関節症等,顎関節の形態(松本邦史・本田和也)
 5.顎裂等,顎骨の形態(小豆嶋正典)
 6.腫瘍等,病巣の広がり(中山英二)
 7.根尖性歯周炎(庄司憲明)
 8.根分岐部病変(河合泰輔)
Part_04 各種疾患を読む
 1.歯(森本泰宏)
 2.歯周組織(松田幸子)
 3.顎骨(林 孝文)
 4.嚢胞(吉浦一紀)
 5.外傷(箕輪和行)
 6.上顎洞(倉林 亨)
Part_05 画像診断の実際
 1.顎関節症の画像診断(佐野 司・黒田 沙・音成実佳)
 2.歯根破折の画像診断(飯久保正弘・笹野高嗣)
 3.腫瘍の画像診断(倉林 亨・中村 伸)

 さくいん