やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社



 近年歯科医療は急速な変化をとげている.中でも,審美修復の分野の進歩は目を見張るものがある.その理由の一つに,接着システムの確立とそれに伴う治療選択範囲の拡大があげられる.すでに確立した感のあるエナメルボンディングと進展をとげたデンティンボンディングを上手く組み合わせることにより大幅に歯冠修復治療の選択肢が拡大し,従来行われてきたような,修復処置をするために歯質を大量に削除するといった治療を回避することが可能となった.
 しかしながらその一方では,適切な診査・診断も必要とされる.これら診断のもとに顔貌,歯列,軟組織および機能的な調和を多角的に考慮し,歯冠修復の最終ゴールを確実にイメージすることにより,最小限の削除量,ひいては歯質をほとんど削除することなく修復することが可能になった.
 ミニマルインターべンションが普及しつつある現在,天然歯質を可及的に保存し修復することが可能なラミネートベニアは,従来型の修復治療よりもかなりのアドバンテージとなる.また,Pascal Magneらが提唱するラミネートベニア修復の構造力学および科学的審美などのリサーチは,従来のラミネートベニアに対する既成概念を根底から覆すに値するものであり,それにより切歯歯冠破折や失活歯,大きなコンポジット修復歯といった,従来では適応できないと思われていた症例にまで修復が可能になった.
 またラミネートベニアでは,ポーセレン本来の持つ独特な剛性や表面特性,光透過性などといった特徴を最大限審美効果として生かせるため,従来のポーセレン修復とはまったく違う発想でより質の高い審美修復治療を実現可能とする.
 このように高レベルの審美効果を持ったラミネートベニアがさらにその応用範囲を拡大させることによって,その必要性がますます高まるであろうことを確信している.
 2003年7月
 東京都千代田区・土屋歯科クリニック 土屋賢司
 東京都港区・DENTCRAFT Studio 土屋 覚
 序

Opening Graph Porcelain Laminate Veneer:The Representative Case 山崎長郎
Part 1 ラミネートベニア概論――What's Laminate Veneer ?
 1 歯冠修復におけるラミネートベニア適応の鑑別診断 日高豊彦
 2 ラミネートベニアの臨床的マテリアルポイント 日高豊彦/高橋 健
 3 ラミネートベニアの接着のメカニズム 宮崎真至/檜垣 潤
Part 2 ラミネートベニアスタンダードテクニック――Laminate Veneer Step by Step
 1 チェアサイドとラボサイドワークのフローチャート 大河雅之
 2 術前処置 植松厚夫
 3 支台歯形成 瀬戸延泰
 4 印象採得 北原信也
 5 チェアサイド-ラボサイドの情報交換と技工操作 土屋 覚
 6 試適〜最終接着 北原信也
 7 接着の臨床的アシスタントワーク 内田真由美
 8 メインテナンス 土屋和子
Part 3 症例に見るラミネートベニアの臨床・技工――Variety of Clinical Cases
 ブラックトライアングルの改善を目的としたラミネートベニア修復 土屋賢司
 正中離開をラミネートベニアとオールセラミッククラウンにて改善した症例 北山恵一朗
 失活歯に対して,その術前状態を改善しラミネートベニアを用いた症例 植松厚夫
 オールセラミックスシステム(IPS Empress)を用いたラミネートベニア修復 南 昌宏
 ラミネートベニア修復により,患者固有のキャラクターフォームを残しつつブラックスペースの閉鎖と色調の改善を行った症例 大河雅之
 広範囲にわたる欠損部におけるラミネートベニア修復治療 北原信也
 前歯部はアンテリアガイダンス獲得のためのラミネートベニア,臼歯部はバーティカルストップ確立のためのオールセラミッククラウンによる修復で審美と機能の調和を目指した症例 木原敏裕