やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社



 社会の高齢化が進む近年,有床義歯を製作する歯科技工士の役割はますます重要になりつつある.この社会的情勢のなかで,われわれ歯科技工士には,患者の要望に確実に応えていくために,その知識のみならず,経験に培われた熟練が,いままさに求められているといっても過言ではない.
 また,歯科の臨床においては,こういった時代だからこそ,長期的予後,つまり患者の将来を考慮したうえで設計する“可撤性“ならびに“半固定性”のクラウン・ブリッジ,コーヌステレスコープやアタッチメントを応用したパーシャルデンチャーの需要の,さらなる増大が見込まれる.そしてこれらの補綴物の維持装置の製作においては,ミリングテクニックの修得が不可欠となり,ややもすると,ミリングの精巧さが,そのままそのクラウン・ブリッジやパーシャルデンチャーの成否を決定する大きな要因となりうる.
 ミリングには高度の技術が必要とされるため,比較的新しいテクニックとしてとらえられがちだが,ミリングが施される可撤性・半固定性の補綴物とは, 歯科治療や補綴物の安全性と確実性を求め,危険性を回避する という考えから発生したという大前提をもっており,固定性の補綴物よりも長い歴史をもつものなのである.このようなことから,ドイツでは旧来,補綴物製作におけるミリングが非常に重視され,歯科技工士のマイスター試験の実技科目の一つともなっている.
 しかし,わが国においては,コーヌスクローネ,アタッチメント,リーゲルなどについての文献や発表は多くあっても,それらの成否を握る根幹といえるミリングについての文献や発表,また海外文献の日本語訳版は,ほとんど見受けられないのが現状である.したがってこれまでは,わが国の歯科技工士がミリングを行う際には,どのミリングバーを選択し,どのように切削していくのかといったミリングテクニックの基本要素を,各自が試行錯誤のうえに確立していったものと想像できる.
 本書では,まずPart1でミリングマシーンやバーの使用法およびミリングテクニックにおける共通の基本・重要事項を,図解により理解していただいた後,Part2,3で臨床においてのミリングの実際およびテクニック上のコツを習得していただく構成をとっているので,順に読み進め,ミリングについての理解を深めていただきたい・175Cなお・175B本書では,特にミリング工程について主眼をおいているため,その外冠,スタビライジングアーム,上部構造の製作についての詳述は割愛させていただいた.
 本書が現在ミリングに悩んでいる方,また,これからミリングを始めようとしている方がたの参考にしていただければ幸いである.
 1996年12月
 補綴工房モダンデンタル・ラボ 青木智彦
 湘南デンタル・テック 大野淳一
 パナヘラウスデンタル 小野寺保夫
 (五十音順)
 序
 OPENING GRAPH(大畠一成)

PART 1 Theory & Basics
 1.175Cミリングマシーンの諸機能と使用法 (青木智彦)
 2.175Cミリングバーの種類と使用法 (青木智彦)
 3.175C主要ミリングテクニックのトレーニング (大野淳一)
PART 2 Variety of Standard Technics
 1.175C支台装置として“パーシャル・パラレル・ミリング”を用いたパーシャルデンチャー製作におけるミリング工程 (小野寺保夫)
 2.175Cコーヌスクローネクラウンおよびデンチャー製作におけるミリング工程 (青木智彦)
 3.既製アタッチメント(マルチコン1)のスタビライジングアーム製作におけるミリング工程 (山口 耕)
 4.175Cリーゲルテレスコープ製作におけるミリング工程 (深山正治)
 5.175CIMZインプラントのT-ブロック製作におけるミリング工程 (田之口克規)
 6.175Cクラスプデンチャー製作におけるミリング工程 (板橋毅茂)
 7.175Cキーアンドキーウェイアタッチメント製作におけるミリング工程 (大野淳一)
PART 3 Clinical Cases
 効果的なミリングを施して製作した補綴物の臨床例
 1.175Cブレーシングアームシステムにより製作するBASデンチャー (青木智彦)
 効果的なミリングを施して製作した補綴物の臨床例
 2.175C・“パーシャル・パラレル・ミリング”の要点と臨床応用 (星 久雄・小出 馨)
 効果的なミリングを施して製作した補綴物の臨床例
 3.175Cミリング用ガム付歯型可撤式主模型を用いたセラモメタルブリッジの製作例および適合精度向上のためのテクニック (大畠一成)

付録 国内市販ミリングマシーン一覧