やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

Preface
 「Q&A歯科のくすりがわかる本」が初めて出版されたのは2003年のことでした.それ以来,2008年,2014年と改訂を重ね,今回も6年ぶりに新刊を世に出すこととなりました.編者は2003年から本書の作成に携わってきましたが,この間ずっと好評をいただき,内容を改変・充実させてきました.今回も,日常の歯科診療の中で最も一般的に使用され,またその使用にあたって適切な知識が特に重要となる抗菌薬,鎮痛薬,局所麻酔薬についてのQ&Aという基本構成は変わりませんが,そのなかに最近の話題をコラムとして取り入れ,新しい情報を読者に提供できるように心がけました.加えて,総論的な部分である「くすりの基礎知識と最近のトピックス」の章も内容を見直し,最近の重要な話題をピックアップしました.まず冒頭に,「くすりに関連した診療ガイドライン」の項を設け,日常の歯科診療のために有用な最新のガイドラインやステートメントを紹介しました.紙面の関係から,最も重要な関連部分のみを紹介し,その他についてはガイドラインのアドレスを示し,またQRコードを提示するなど,読者が簡単に情報を得られるように工夫しました.これらの内容によって,多くの歯科医療関係者が最新の有用な情報を容易に得ていただけるようになることを期待しています.
 図らずも,2020年は激動の年となってしまいました.新型コロナウイルス感染が世界中に拡大し,日本では東京オリンピックが2021年に延期されるなど,前代未聞の状況となっています.われわれ大学関係者は,この状況に応じた診療体制を整えることはもちろんですが,医科ではインターネットを活用した遠隔診療が一部始まっており,歯科でもその議論が具体的に行われるようになるかもしれません.学生への授業もインターネットを活用した遠隔授業を行います.さまざまな情報をインターネットを通じて得る現状に対応して,本書もQRコードでガイドラインの情報を得るなど,新しい取組みを行いました.本書が多くの歯科医療関係者に有益な情報を与え,歯科医療のレベルの向上に少しでも貢献することができれば,編者としてこれに過ぎる喜びはありません.
 最後に,今回の改訂には参加されませんでしたが,2014年版まで編集代表者を務められた坂本春生先生がつい先日ご逝去されました.謹んでご冥福をお祈りするとともに,坂本先生が育てられた本書の後継版が完成したことを,ここにご報告させていただきます.
 2020年5月 編集代表 一戸達也
第I章 くすりの基礎知識と最近のトピックス
 1.くすりに関連した診療ガイドライン
  1)歯科関係Minds掲載ガイドライン
   (1)科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン─2020年改訂版─(片倉 朗)
   (2)歯科診療における静脈内鎮静法ガイドライン─改訂第2版(2017)─(一戸達也)
   (3)歯科治療中の血管迷走神経反射に対する処置ガイドライン(一戸達也)
   (4)歯周病患者における抗菌療法の指針2010(齋藤 淳)
   (5)糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン─改訂第2版(2014)─(齋藤 淳)
   (6)非歯原性歯痛の診療ガイドライン─改訂版(2019)─(福田謙一)
  2)循環器学会ガイドライン
   (1)感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)(佐藤一道)
  3)その他のガイドライン,指針等
   (1)JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2019─歯性感染症─(片倉 朗)
   (2)歯科治療による下歯槽神経・舌神経損傷の診断とその治療に関するガイドライン(福田謙一)
   (3)安全な歯科局所麻酔に関するステートメント(一戸達也)
   (4)高血圧患者に対するアドレナリン含有歯科用局所麻酔剤使用に関するステートメント(一戸達也)
 2.薬剤関連顎骨壊死(森川貴迪,柴原孝彦)
 3.慢性疼痛と神経障害性疼痛に使用する薬物(柏木航介,福田謙一)
 4.口内炎治療薬(澁井武夫,野村武史)
 5.口腔健康管理に使用する薬物(山内智博)
 6.口腔乾燥と舌痛に使用する薬物(野口智康,福田謙一)
 7.在宅緩和ケアで使用される薬物(半沢 篤,福田謙一)
 8.漢方薬(楊 隆強,笠原正貴)
 9.救急薬品(松浦信幸)
 10.薬物相互作用(笠原正貴)
 11.薬物の副作用:薬疹・口腔症状(吉田佳史,野村武史)
 12.薬物によるアナフィラキシーショック(半田俊之)
 13.ポリファーマシー(半沢 篤,福田謙一)
 14.高齢者と薬物(山本恵史,笠原正貴)
 15.添付文書記載要領の改定(川口 潤,一戸達也)
 16.医薬品医療機器総合機構(久木留宏和,一戸達也)
第II章 抗菌薬
  Introductionおさえておきたい抗菌薬の基本事項(片倉 朗)
   Q1.歯科で使う抗菌薬は何を選べばよいですか?(笠原清弘,片倉 朗)
   Q2.歯科で使う抗菌薬でも耐性菌は発現しますか?(菅原圭亮,片倉 朗)
   Q3.抜歯後の感染あるいは感染予防にはどのように抗菌薬を投与したらよいですか?( 山本信治)
   Q4.骨膜炎で抗菌薬を投与しましたが,排膿が止まりません.抗菌薬を変更する必要がありますか?(渡邊 章)
   Q5.歯周炎に抗菌薬は効きますか?(喜田大智,齋藤 淳)
   Q6.薬物の相互作用に注意しなければならない歯科で使う抗菌薬にはどんなものがありますか?(西山明宏,片倉 朗)
   Q7.高齢者に抗菌薬を処方するときの注意点を教えてください(星野照秀,片倉 朗)
   Q8.小児に抗菌薬を処方するときの注意を教えてください(吉田秀児)
   Q9.妊産婦や授乳中の抗菌薬の使用はどうしたらよいですか.また,患者にはどのような説明が必要ですか?(栗原絹枝,野村武史)
  Column 1 抗菌薬の剤形の選択と効果について(高木 亮)
  Column 2 歯周病における抗菌薬の局所デリバリーシステム(今村健太郎,齋藤 淳)
第III章 鎮痛薬
  Introductionおさえておきたい鎮痛薬の基本事項(福田謙一)
   Q1.非ステロイド性抗炎症薬にはどのような種類がありますか?(廣瀬詩季子,福田謙一)
   Q2.非ステロイド性抗炎症薬の効力や作用時間は,薬によって差がありますか?(野口智康,福田謙一)
   Q3.非ステロイド性抗炎症薬は,消化器系に対してどのような影響がありますか?(中村美穂,福田謙一)
   Q4.非ステロイド性抗炎症薬は,胃以外の臓器に対してどのような影響がありますか?(半沢 篤,福田謙一)
   Q5.アセトアミノフェンの利点・欠点を教えてください(西岡さやか,福田謙一)
   Q6.一般的な処方では除痛が困難な著しい痛みに対してどのように対応しますか?(添田 萌,福田謙一)
   Q7.オピオイド鎮痛薬にはどのような利点・欠点がありますか?(水永潤子,福田謙一)
   Q8.妊婦・小児・高齢者に対する鎮痛薬の処方での注意点は?(加藤栄助,福田謙一)
   Q9.経口薬の投与ができない場合にはどのように対応しますか?(國奥有希,福田謙一)
   Q10.アスピリン喘息の患者にはどのように対応しますか?(赤木真理,福田謙一)
   Q11.先取り鎮痛はどのように行いますか?(太田雄一郎,福田謙一)
   Q12.神経障害性疼痛の治療薬にはどのような問題点がありますか?(柏木航介,福田謙一)
  Column 3 痛みの評価法と鎮痛薬の必要性(柏木航介,福田謙一)
  Column 4 痛みの個人差と鎮痛薬の選択(福田謙一)
  Column 5 咀嚼筋の痛みの評価と鎮痛薬(野口智康,福田謙一)
第IV章 局所麻酔薬
  Introductionおさえておきたい局所麻酔薬の基本事項(一戸達也)
   Q1.高血圧,心疾患,糖尿病等の疾患を合併した患者にはどの局所麻酔薬がよいですか?(小鹿恭太郎)
   Q2.患者の常用薬のうち,局所麻酔薬製剤と相性が悪いものがありますか?(飯嶋和斗,一戸達也)
   Q3.局所麻酔薬アレルギーって歯科臨床でも起きるのですか?(井上博之,一戸達也)
   Q4.局所麻酔薬中毒って歯科臨床でも起きるのですか?(吉田香織,一戸達也)
   Q5.メトヘモグロビン血症って何ですか?(萩原綾乃,一戸達也)
   Q6.妊婦や授乳中の患者への局所麻酔では何に注意すればよいですか?(小林彩香,一戸達也)
   Q7.表面麻酔を上手に効かせるコツは何ですか?(石崎元樹,一戸達也)
   Q8.浸潤麻酔を上手に効かせるコツは何ですか?(伊藤佳菜,一戸達也)
   Q9.局所麻酔が効きにくかったりすぐ切れたりする患者がいます.どうしたらよいですか?(小崎芳彦,一戸達也)
   Q10.局所麻酔後に動悸を訴える患者がいます.アドレナリンのせいですか?(松永真由美,一戸達也)
   Q11.カートリッジを加温すると注入時の痛みが少ないというのは本当ですか?(矢崎龍彦,一戸達也)
   Q12.局所麻酔薬カートリッジの保管はどのようにすればよいですか?(前原彩香,一戸達也)
  Column 6 局所麻酔拮抗薬(橋香央里,一戸達也)
  Column 7 局所麻酔用機器のいろいろ(野恵実,一戸達也)

 主な歯科適応薬剤一覧(高橋有希,笠原正貴)
 歯科における主な漢方薬一覧(楊 隆強,笠原正貴)