やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

Preface
 『Q & A歯科の薬がわかる本2008』を送り出してから6 年が経ちました.幸い読者の皆様の好評に支えられ,ここに3 冊目の新刊を上程することとなりました.今回の改訂では,当初から担当しております坂本,一戸に加えて,兵庫医科大学歯科口腔外科の岸本裕充教授が編集に参加し,ご専門の口腔マネージメントの立場からの提案も含め,より充実した内容になるように編集会議を重ね,いくつかの変更を行いました.まず,第1 章に歯科で使用される薬剤にかかわる最新のトピックスについて広く取り上げ,詳細に解説を行いました.第2 章からは,抗菌薬,鎮痛薬,歯科用局所麻酔薬について取り上げましたが,新たな試みとして,それぞれの章のはじめに総論の項を設け,前提として知っていただきたい事項について解説をしました.総論部分とQ & A35項目と合わせて見ていただければ,歯科における薬の使用にかかわるさまざまな情報を網羅できたものと考えています.その点からは,第一線の先生方を始め,学生,研修医にもお勧めできる内容となっています.
 前回の刊行時には,京都大学の山中伸弥教授がヒトiPS細胞の作製に初成功されるというニュースがありました.その後のiPS細胞研究の急激な進展を鑑みますと,すでに遠い昔のことのようです.2011 年には,未曾有の大震災が東北に起こりました.2013年はアベノミクスと東京オリンピックがキーワードでしょうか? 相変わらず,世界はめまぐるしく変化しています.そのなかで,私たち臨床医は「患者さんの口を覗いて病変を治療すること」を今日も明日も続けます.人の体に薬剤を投与し,局所麻酔を行い,さまざまな処置を行うことは,大きな危険を伴う行為です.細心の注意を持ってことにあたらなければなりません.歯科医療はストレスのかかる仕事です.ただ,世のなかに数多ある職業のうちで,患者さんに心から感謝されるとても良い職業です.そして,人の体を扱う限りは,最新の知識について勉強をし続けなくてはならない職業でもあります.本書が,少しでも歯科医療に携わる方々のお役に立つことができれば,私たち筆者の望外の喜びです.
 2013 年10 月 編者代表 坂本春生
第1章 くすりの基礎知識と知っておきたいトピックス
 歯性感染症に対する抗菌薬使用のガイドライン(坂本春生)
 医薬品医療機器総合機構(塩崎恵子,一戸達也)
 添付文書の読み方(松木由起子,一戸達也)
 非歯原性歯痛への対応(松浦信幸,一戸達也)
 漢方薬(笠原正貴)
 骨修飾薬(BMA)による顎骨壊死(高岡一樹,岸本裕充)
 抗血栓薬(野口一馬,岸本裕充)
 救急薬品の取扱い(井出智子,一戸達也)
 消炎・抗微生物作用のある外用薬(岸本裕充)
 カンジダ性・ウイルス性も含めた口内炎の治療薬─外用薬を中心に─(岸本裕充)
 口腔ケアに使用する薬品類の選択のポイント(岸本裕充)
 薬物相互作用(金川昭啓)
 薬物アレルギー(松山 孝,矢作榮一郎)
 薬物の副作用による口腔症状(上川善昭)
 歯科処置に伴う感染性心内膜炎予防のためのガイドライン(坂本春生)
 Column
  経口栄養剤(首藤敦史,岸本裕充)
  サプリメント(首藤敦史,岸本裕充)
第2章 抗菌薬
 おさえておきたい抗菌薬の基本事項(坂本春生)
 Q1 抗菌薬を手術に使うときの勘所を教えてください(唐木田一成)
 Q2 抗菌薬の適切な投与量,使用期間はどのように決められているのですか?(坂本春生)
 Q3 経口抗菌薬のファーストチョイスは何ですか?(坂本春生)
 Q4 抗菌薬使用と耐性菌発現について教えてください(栗山智有)
 Q5 切開できない急性化膿性歯周炎のときに抗菌薬を使用しても痛みが止まりません.鎮痛薬だけでよいのではないですか? また,健康な人の抜歯や歯周外科時には抗菌薬はいらないのではないですか?(坂本春生)
 Q6 セフェム禁忌の人にはペニシリンは使用できないのですか?(坂本春生)
 Q7 妊娠中,授乳中の抗菌薬使用法について教えてください(関谷 亮,坂本春生)
 Q8 薬剤相互作用に注意する抗菌薬を教えてください(関谷 亮,坂本春生)
 Q9 小児に対する抗菌薬使用の特殊性について教えてください(佐藤吉壮)
 Q10 高齢者への抗菌薬投与の勘所について教えてください(尾ア昌大,坂本春生)
 Q11 重症歯性感染症における抗菌薬投与について教えてください(坂本春生)
 Topics
  ミノマイシン(R)の復活?(坂本春生)
  アジスロマイシン徐放剤の使用法(坂本春生)
  上顎洞炎へのマクロライドの長期投与の意義(坂本春生)
第3章 鎮痛薬
 おさえておきたい鎮痛薬の基本事項(山村倫世,岸本裕充)
 Q1 鎮痛薬の効力の比較について教えてください(首藤敦史)
 Q2 鎮痛薬が効かないときの原因,対処法について教えてください(吉川恭平)
 Q3 NSAIDs潰瘍を発症しやすい患者の特徴を教えてください(堀 和敏,岸本裕充)
 Q4 NSAIDsを投薬する際,胃薬はどんな場合に併用したらよいのですか?(堀 和敏)
 Q5 NSAIDsを使えない患者とは?またその対応ついて教えてください(頭司雄介)
 Q6 NSAIDsによる腎障害について教えてください(野口一馬)
 Q7 先制鎮痛とは?具体的にどのような方法で実施すればよいですか?(頭司雄介)
 Q8 トラムセット(R)は実際にはどのような症例に有用なのですか?(吉川恭平)
 Q9 市販薬と処方薬の違いについて教えてください(森寺邦康,岸本裕充)
 Q10 小児・妊婦に対する鎮痛薬使用について教えてください(森寺邦康,首藤敦史)
 Q11 経口困難な患者にはどう対応すればよいですか?(高岡一樹)
 Q12 実際にどのような薬剤をどのような基準,順序で使用するのがよいですか?(野口一馬)
 Column
  NSAIDsによる胃腸障害に関する最近の知見(堀 和敏)
 Topics
  リリカ(R)(吉川恭平)
  アセトアミノフェン(吉川恭平)
  痛みの評価(吉川恭平)
  COX-2(高岡一樹)
  消炎酵素剤(高岡一樹)
第4章 歯科用局所麻酔薬
 おさえておきたい歯科用局所麻酔薬の基本事項(一戸達也)
 Q1 高血圧症や心疾患の患者にはどの局所麻酔薬製剤がよいですか?(二宮 文,一戸達也)
 Q2 糖尿病の患者にはどの局所麻酔薬製剤がよいですか?(澤口夏林,一戸達也)
 Q3 アドレナリン添加リドカイン塩酸塩製剤を避けなければならない疾患はありますか?(若杉由美子,一戸達也)
 Q4 アドレナリン添加リドカイン塩酸塩製剤の注射後に動悸を訴える患者がいます.アドレナリンのせいですか?(川口 綾,一戸達也)
 Q5 患者の常用薬のうち,局所麻酔薬製剤と相性の悪いものがありますか?(岡本聡太,一戸達也)
 Q6 局所麻酔後の死亡事故の話を耳にします.このような事故を防ぐためにはどうしたらよいですか?(征矢 学,一戸達也)
 Q7 妊婦や授乳中の患者への局所麻酔では何に注意すればよいですか?(久木留宏和,一戸達也)
 Q8 小児や高齢の患者への局所麻酔では何に注意すればよいですか?(岸本敏幸,一戸達也)
 Q9 表面麻酔薬は本当に効果があるのですか?(岡田玲奈,一戸達也)
 Q10 伝達麻酔をしたいけれど口が十分に開きません.どうしたらよいですか?(武田慶子,一戸達也)
 Q11 局所麻酔が効きにくかったりすぐ切れたりする人がいます.どうしたらよいですか?(神戸宏明,一戸達也)
 Q12 カートリッジを加温すると注入時の痛みが少ないと聞きましたが,本当ですか?(遠藤真唯,一戸達也)
 Topics
  新しい局所麻酔薬(松浦信幸,一戸達也)
  専用器具を用いた局所麻酔法(松浦信幸,一戸達也)

 主な歯科適応薬剤一覧(村井久美)
 歯科で使用する主な漢方薬一覧(笠原正貴)
 薬剤名索引