やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 日常の歯科診療では,口腔外科,歯周外科などで,観血手術が必要な場面にしばしば遭遇します.
 これらの小手術を行ううえで大切なことは,
 (1)周手術期(周術期)の循環不全や血圧の変動を予防すること
 (2)脳循環障害など容態の変化が起きないこと
 (3)止血を確実に行えること
 (4)術後に感染を起こさないこと
 (5)創傷治癒が遅滞なく進むこと
 (6)処置後に機能回復がなされること
 などがあげられます.
 本書はQ&A形式で,抜歯と歯周外科以外で日常診療で起こる小手術にまつわる疑問について端的に回答し,これに解説を加える形でまとめました.
 Questionは臨床研修歯科医師,若手口腔外科医より集め,できるだけ基本的な事項を抽出し,回答は現時点での考え方を紹介するようにしています.
 また,項目は単なる外科手技の列記とその対策でなく,小手術が“うまくできる”ための医学的管理の事項を厚く解説するようにしました.
 なお,Answerは簡結に述べることを目的としたため,断定的な言い方となっていますが,Commentaryにおいて根拠や補足的内容を述べています.
 本書には,臨床研修歯科医師はもとより,ベテランの臨床家にとっても有益な情報を掲載しているものと考えています.皆様の日常診療のお役に立てれば幸いです.
 2010年5月
 東京歯科大学 オーラルメディシン・口腔外科学講座
 山根源之
 外木守雄
 はじめに
 著者一覧
第1章 小手術を行っても大丈夫?─全身疾患,全身状態の基礎知識─
 1 歯科小手術を行う際は,何に注意すればよいのですか?
 2 手術後に止血困難となりました.出血性素因が予想された場合,どうすればよいのですか?
 3 抗血栓療法を受けている患者の場合,何に注意すればよいのですか?
 4 血小板数が少ない場合,手術を行う際の目安は何ですか?
 5 心疾患患者の場合,何に注意すればよいのですか?
 6 ウイルス性肝炎をもつ患者の小手術に際して針刺し事故が起きた場合,どうすればよいのですか?
 7 肝機能障害患者の小手術で,注意することは何ですか?
 8 感染用防護はどのように行えばよいのですか?
 9 血圧変動が激しい患者の場合,何に注意すればよいのですか?
 10 高血圧患者の場合,安全に手術を行う目安はありますか?
 11 低血圧患者の場合は,注意が必要ですか?
 12 免疫抑制剤使用中の患者の手術はできますか?
 13 喘息患者の場合,何に注意すればよいのですか?
 14 糖尿病患者の場合,何に注意すればよいのですか?
 15 腎透析中の患者の場合,何に注意すればよいのですか?
 16 腎透析中の患者の投薬は,どうすればよいのですか?
 17 口腔カンジダ症がある場合,何に注意すればよいのですか?
 18 妊娠中の患者の場合,手術可能な時期の目安は何ですか?
 19 出産後どのくらいで手術を行うのが適当ですか?
 20 ビスフォスフォネート製剤を服用している患者の場合,何に注意すればよいのですか?
 21 ビスフォスフォネート製剤による顎骨壊死に対する処置は,どうすればよいのですか?
第2章 患者の状態を把握するために─臨床検査のススメ─
 22 小手術を行う前に,どのような検査が必要ですか?
 23 検査では,何を見ればよいのですか?
 24 検体はどう調べればよいのですか? 結果はどのようにして得ますか?
 25 金属アレルギーがあるといわれている場合,どのような検査がありますか?
第3章 処置に入る前に─消毒の基本─
 26 口腔内で使用する消毒薬は何がよいのですか?
 27 手指,術野で使用可能な消毒薬は,何ですか?
 28 器具・器材の消毒は,何がよいのですか?
 29 術野の滅菌布のかけ方で,よい方法はありますか?
第4章 小手術がうまくなる─テクニックのコツ─
  30 術者の姿勢は立位,座位のどちらがよいのですか?
 麻酔
  31 痛くない麻酔針の刺入方法はありますか?
  32 伝達麻酔はどのような場面で行うべきなのですか?
  33 伝達麻酔の際に針先を血管内に入れてしまった場合,どうすればよいのですか?
  34 伝達麻酔は危険がないのですか?
  35 伝達麻酔針の刺入の深さは,どのくらいですか?
  36 伝達麻酔が奏功しない場合,どうすればよいのですか?
  37 伝達麻酔後に奏功させる体位や工夫はありますか?
  38 処置中に麻酔が切れてきたら,どうすればよいのですか?
  39 追加麻酔はよく効きませんが,どうすればよいのですか?
  40 なぜ2%のキシロカインを使用するのですか?
  41 キシロカインとシタネスト-オクタプレシンの使い分け方法はありますか?
  42 シタネスト-オクタプレシンは,なぜ循環器疾患をもつ患者に使用できるのですか?
   小手術と関連する行為成分の早見表
 切開/切離
  43 メスにはいろいろな形がありますが,どのように選択すればよいのですか?
  44 それぞれのメスの使い方の違いは何ですか?
 消炎/排膿,洗浄
  45 口腔内消炎手術を行う時期の目安はありますか?
  46 口腔底を切開する場合の注意点は何ですか?
  47 口腔外消炎手術の際,何に注意すればよいのですか?
  48 炎症の洗浄,消毒には,何がよいですか?
  49 切開排膿,洗浄後は,どうすればよいのですか?
  50 ドレーンは,どのようなものを使用したらよいのですか?
 剥離
  51 粘膜骨膜弁形成は,どのように設定したらよいのですか?
  52 粘膜骨膜弁形成時のコツは何ですか?
  53 粘膜骨膜弁の設計には,どのような手法がありますか?
  54 ノイマン切開で,粘膜骨膜弁を起こす際の注意点は何ですか?
  55 粘膜骨膜弁を形成すると,手術後の腫れがひどくなりますか?
 骨削除
  56 骨はどのようにして削除するとよいのですか?
  57 歯槽骨鋭縁の除去には,どのような器材がよいのですか?
 摘出,切除
  58 歯根嚢胞,肉芽組織の除去のコツは何ですか?
  59 歯根端切除術の際,注意事項は何ですか?
 形成
  60 小帯切除術の際,何に注意すればよいのですか?
 縫合
  61 切開線部の縫合,止血のための縫合,抜歯後の定位縫合はそれぞれ違いますか?
  62 処置後は必ず縫合が必要ですか?パックなどではだめですか?
  63 縫合糸は何を選べばよいのですか?
  64 持針器(把針器)は,何を選べばよいのですか?
  65 ピンセットは,何を選べばよいのですか?
  66 縫合がうまくいかない場合,どうすればよいのですか?
  67 粘膜骨膜弁が足りなくなった場合,どのようにして縫合すればよいのですか?
  68 縫合は何・間隔で行いますか?
  69 器械結びは手指結びより清潔ですか?使い分けはどのようにすればよいのですか?
  70 縫合糸の結び目は,どのくらい残して切ればよいのですか?
  71 縫合時に余ったフラップの先端は,どのようにすればよいのですか?
  72 数本ずつ滅菌パックになっている縫合糸は,余った場合に再滅菌できますか?
  73 抜糸は術後何日で行いますか?全部一緒に抜糸するのですか?
第5章 安全有効な投薬処置とは?─薬物使用の原則─
 74 抗菌薬の服用は,どのくらいの期間ですか?
 75 簡単な処置でも,抗菌薬や鎮痛薬は必要ですか?
 76 抗菌薬の選択の際,何に注意すればよいのですか?
 77 口腔内処置と感染性心内膜炎とは,どのような関連があるのですか?
 78 抗菌薬を投与する際,何に注意すればよいのですか?
 79 鎮痛薬の選択は,どうすればよいのですか?
 80 鎮痛薬の選択・服用方法で,より有効な使い方はありますか?
 81 鎮痛薬に特有な,注意すべき副作用はありますか?
 82 アレルギー患者に薬物を処方する際,何に注意すればよいのですか?