序
人口の高齢化と食生活の欧米化に伴い,わが国でも生活習慣病に起因した血管疾患が増加し注目を集めている.血管疾患の診断には,CT,MRIなどの画像診断法と脈波伝搬速度の測定などの機能的検査があるが,いまのところ超音波検査が精度と手軽さの面でもっとも優れた検査法である.事実,最近の学会,セミナーなどにおいて血管エコーの人気・注目度は凄まじく,満席どころか常に立錐の余地もない状態である.このことは血管超音波検査の需要の高さと,正しい検査,診断を行うためには走査技術の習得はもちろん,装置の設定法や検査の進め方など実際に即したテクニックの必要性を裏付けている.
頸動脈に代表される血管超音波検査は対象部位が体表面に近いため,明瞭な画像が得られることが多い.そのため,初心者の多くはブラウン管に映し出される鮮明な画像を見て“血管超音波検査は簡単かな?”と思うそうである.しかし,実際に検査を行ってみると探触子の当て方,アプローチ部位,装置の設定法,血管走行の熟知などマスターすべきことが多く,途中で投げ出したくなるともいう.
本別冊はこうした声をもとに,いかにしたら血管超音波検査のコツがわかり,円滑な検査ができるかを目的に企画されたものである.したがって,これまでのような症例中心の解説をやめ,探触子の選択,装置の設定法,ドプラ法の使い方など,検査担当者があらかじめ知っておくべき項目を重点的に解説していただいた.また,超音波検査には他の画像診断法とは異なり,目的対象から情報を“探す“という難しい作業があり,診断精度のポイントとなっている.この“異常を探す”という作業を正確,かつ迅速に行うためには日々の積み重ねが必要であり,一朝一夕にできるものではない.本音を言えば“探す”という超音波検査の欠点は,実のところ検査担当者にとっては技能経験を十分に発揮できる長所でもある.長年の経験の中で培ってきたノウハウは,担当者にとっては門外不出のマル秘テクニックであるが,本別冊では第一線でご活躍されている方々にご執筆をお願いし,惜しみなくご披露していただいた.
飛躍的な発展と普及を遂げた超音波検査は,今後は装置の小型・高性能化をセールスポイントに役割分担を担っていくものと思われる.本別冊は,超音波検査の領域拡大と,次々に登場する新技術に対応することを意図してシリーズ化した第一弾である.雑誌の別冊という制約はあるが,ご執筆いただいた方々には,とりわけ時代の変化と読者の要求を察知し,情報の羅列だけではなく日常検査に役立つテクニックをできるだけ多く取り入れてもらうよう留意していただいた.
今後は皆様のご声援とご批判をいただきながら,わかりやすくためになる『 超音波エキスパート』シリーズを育んでいく所存である.
本別冊が血管超音波検査に携わる臨床検査技師をはじめ,関係する多くの方々の関心と知識技能の習得に少しでも役立てば望外の喜びである.
平成16年4月
編集代表 遠田栄一
人口の高齢化と食生活の欧米化に伴い,わが国でも生活習慣病に起因した血管疾患が増加し注目を集めている.血管疾患の診断には,CT,MRIなどの画像診断法と脈波伝搬速度の測定などの機能的検査があるが,いまのところ超音波検査が精度と手軽さの面でもっとも優れた検査法である.事実,最近の学会,セミナーなどにおいて血管エコーの人気・注目度は凄まじく,満席どころか常に立錐の余地もない状態である.このことは血管超音波検査の需要の高さと,正しい検査,診断を行うためには走査技術の習得はもちろん,装置の設定法や検査の進め方など実際に即したテクニックの必要性を裏付けている.
頸動脈に代表される血管超音波検査は対象部位が体表面に近いため,明瞭な画像が得られることが多い.そのため,初心者の多くはブラウン管に映し出される鮮明な画像を見て“血管超音波検査は簡単かな?”と思うそうである.しかし,実際に検査を行ってみると探触子の当て方,アプローチ部位,装置の設定法,血管走行の熟知などマスターすべきことが多く,途中で投げ出したくなるともいう.
本別冊はこうした声をもとに,いかにしたら血管超音波検査のコツがわかり,円滑な検査ができるかを目的に企画されたものである.したがって,これまでのような症例中心の解説をやめ,探触子の選択,装置の設定法,ドプラ法の使い方など,検査担当者があらかじめ知っておくべき項目を重点的に解説していただいた.また,超音波検査には他の画像診断法とは異なり,目的対象から情報を“探す“という難しい作業があり,診断精度のポイントとなっている.この“異常を探す”という作業を正確,かつ迅速に行うためには日々の積み重ねが必要であり,一朝一夕にできるものではない.本音を言えば“探す”という超音波検査の欠点は,実のところ検査担当者にとっては技能経験を十分に発揮できる長所でもある.長年の経験の中で培ってきたノウハウは,担当者にとっては門外不出のマル秘テクニックであるが,本別冊では第一線でご活躍されている方々にご執筆をお願いし,惜しみなくご披露していただいた.
飛躍的な発展と普及を遂げた超音波検査は,今後は装置の小型・高性能化をセールスポイントに役割分担を担っていくものと思われる.本別冊は,超音波検査の領域拡大と,次々に登場する新技術に対応することを意図してシリーズ化した第一弾である.雑誌の別冊という制約はあるが,ご執筆いただいた方々には,とりわけ時代の変化と読者の要求を察知し,情報の羅列だけではなく日常検査に役立つテクニックをできるだけ多く取り入れてもらうよう留意していただいた.
今後は皆様のご声援とご批判をいただきながら,わかりやすくためになる『 超音波エキスパート』シリーズを育んでいく所存である.
本別冊が血管超音波検査に携わる臨床検査技師をはじめ,関係する多くの方々の関心と知識技能の習得に少しでも役立てば望外の喜びである.
平成16年4月
編集代表 遠田栄一
月刊Medical Technology別冊 超音波エキスパート1 頸動脈・下肢動静脈超音波検査の進め方と評価法 目次
■巻頭カラー
超音波検査に必要な解剖知識――頸動脈,下肢動静脈 土居忠文
■総論
1 血管超音波検査が必要な背景 松尾 汎
1 はじめに―いま,なぜ,血管なのか?
2 超音波機器の進歩
3 血管疾患にはどんな疾患があるか
4 血管疾患の病態を知る
5 森と樹を見る
6 血管エコー検査の基本
7 血管エコー検査の意義
8 血管疾患への超音波の応用
9 解剖と生理を知っておく
10 超音波の原理・超音波機器の取り扱いを知る
11 検査の実際
12 実技の習得
13 血管超音波検査の課題
2 血管超音波検査における装置設定と基本走査,アーチファクト 佐藤 洋
1 はじめに
2 探触子の選択
3 超音波検査法の種類
4 明瞭な画像と正確な計測のために
5 知っておきたいテクニック
■各論I 頸動脈
1 頸動脈超音波検査の進め方 寺島 茂
1 はじめに
2 頸部動脈の解剖
3 必要な装置
4 頸部血管の画像表示法
5 検査時の体位と探触子の持ち方
6 頸部動脈へのアプローチ
7 検査の進め方と観察のポイント
8 頸動脈超音波検査の留意点
9 まとめ
2 頸動脈超音波検査の計測法 半田伸夫
1 はじめに
2 検査方法
3 計測方法
4 おわりに
3 頸動脈超音波検査の評価法 長束一行
1 はじめに
2 頸動脈のオリエンテーション
3 頸動脈エコーでの評価項目
4 intima-media thickness
5 プラーク
6 狭窄率
7 術後,血管内治療のフォローアップ
8 血流速度
9 椎骨動脈
10 動脈解離
11 大動脈炎症候群
12 おわりに
■各論II 下肢動・静脈
1 下肢動脈超音波検査の進め方(手順)と計測法 久保田義則
1 はじめに
2 条件設定:プリセットをチェック
3 検査手順を考える
4 患者情報を得る
5 超音波的基礎
6 推奨する検査手順
7 報告書
8 照合する
9 おわりに
2 下肢動脈超音波検査の評価法 知久正明・西上和宏
1 はじめに
2 下肢血管疾患の血管超音波像
3 まとめ
3 下肢静脈超音波検査の進め方と評価法 孟 真・中村道明・金子織江・廣瀬文子
1 はじめに
2 下肢静脈の解剖
3 下肢静脈超音波検査の対象疾患
4 検査の準備,超音波装置
5 静脈検査に用いる特殊な検査手技
6 下肢深部静脈血栓症の病態と超音波診断の目的と意義
7 下肢深部静脈血栓症の検査の進め方と評価法
8 静脈血栓症における検査結果の伝達法
9 一次性下肢静脈瘤の病態と超音波診断の目的と意義
10 一次性下肢静脈瘤の検査の進め方と評価法
11 おわりに
各論III モニターとしての血管超音波検査
1 モニターとしての血管超音波検査 山本哲也・松村 誠
1 はじめに
2 何のモニターに利用されるのか
3 解剖と基礎知識
4 アプローチ方法
5 術前評価ポイント
6 術後評価ポイントと合併症
7 おわりに
■トピックス
頸動脈ステントの現状 伊苅裕二
1 頸動脈狭窄症と脳梗塞
2 頸動脈狭窄症の診断
3 頸動脈ステント法の実際
4 頸動脈狭窄症の治療――ステントと内膜摘除術
5 冠動脈疾患と頸動脈疾患の合併と治療の方針
■巻頭カラー
超音波検査に必要な解剖知識――頸動脈,下肢動静脈 土居忠文
■総論
1 血管超音波検査が必要な背景 松尾 汎
1 はじめに―いま,なぜ,血管なのか?
2 超音波機器の進歩
3 血管疾患にはどんな疾患があるか
4 血管疾患の病態を知る
5 森と樹を見る
6 血管エコー検査の基本
7 血管エコー検査の意義
8 血管疾患への超音波の応用
9 解剖と生理を知っておく
10 超音波の原理・超音波機器の取り扱いを知る
11 検査の実際
12 実技の習得
13 血管超音波検査の課題
2 血管超音波検査における装置設定と基本走査,アーチファクト 佐藤 洋
1 はじめに
2 探触子の選択
3 超音波検査法の種類
4 明瞭な画像と正確な計測のために
5 知っておきたいテクニック
■各論I 頸動脈
1 頸動脈超音波検査の進め方 寺島 茂
1 はじめに
2 頸部動脈の解剖
3 必要な装置
4 頸部血管の画像表示法
5 検査時の体位と探触子の持ち方
6 頸部動脈へのアプローチ
7 検査の進め方と観察のポイント
8 頸動脈超音波検査の留意点
9 まとめ
2 頸動脈超音波検査の計測法 半田伸夫
1 はじめに
2 検査方法
3 計測方法
4 おわりに
3 頸動脈超音波検査の評価法 長束一行
1 はじめに
2 頸動脈のオリエンテーション
3 頸動脈エコーでの評価項目
4 intima-media thickness
5 プラーク
6 狭窄率
7 術後,血管内治療のフォローアップ
8 血流速度
9 椎骨動脈
10 動脈解離
11 大動脈炎症候群
12 おわりに
■各論II 下肢動・静脈
1 下肢動脈超音波検査の進め方(手順)と計測法 久保田義則
1 はじめに
2 条件設定:プリセットをチェック
3 検査手順を考える
4 患者情報を得る
5 超音波的基礎
6 推奨する検査手順
7 報告書
8 照合する
9 おわりに
2 下肢動脈超音波検査の評価法 知久正明・西上和宏
1 はじめに
2 下肢血管疾患の血管超音波像
3 まとめ
3 下肢静脈超音波検査の進め方と評価法 孟 真・中村道明・金子織江・廣瀬文子
1 はじめに
2 下肢静脈の解剖
3 下肢静脈超音波検査の対象疾患
4 検査の準備,超音波装置
5 静脈検査に用いる特殊な検査手技
6 下肢深部静脈血栓症の病態と超音波診断の目的と意義
7 下肢深部静脈血栓症の検査の進め方と評価法
8 静脈血栓症における検査結果の伝達法
9 一次性下肢静脈瘤の病態と超音波診断の目的と意義
10 一次性下肢静脈瘤の検査の進め方と評価法
11 おわりに
各論III モニターとしての血管超音波検査
1 モニターとしての血管超音波検査 山本哲也・松村 誠
1 はじめに
2 何のモニターに利用されるのか
3 解剖と基礎知識
4 アプローチ方法
5 術前評価ポイント
6 術後評価ポイントと合併症
7 おわりに
■トピックス
頸動脈ステントの現状 伊苅裕二
1 頸動脈狭窄症と脳梗塞
2 頸動脈狭窄症の診断
3 頸動脈ステント法の実際
4 頸動脈狭窄症の治療――ステントと内膜摘除術
5 冠動脈疾患と頸動脈疾患の合併と治療の方針


