やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

推薦文
 臨床検査技師教育は,平成12年(2000年)にカリキュラム改正がなされ,以来,大綱化された教育が行われている.それに伴い平成14年には『臨床検査技師国家試験出題基準』が定められ,翌年の第49回国家試験から出題基準に準拠した問題が出題されている.さらに平成21年には改訂版が出され,平成23年の国家試験からそれが適用になる.出題基準が設定されたことにより,臨床検査技師国家試験の妥当な範囲とレベルが確保されることになった.国家試験出題基準の作成に先立ち,平成12年3月に当時の国家試験委員会から国家試験改善報告書が厚生省(現厚生労働省)に提出された.それは出題形式を含む国家試験の基本的な方向についての意見を取りまとめたものであった.その内容の骨子は,「卒前教育の目標と内容を踏まえ実習等の具体的な教育内容も重視し,検査業務全般を取り扱う技術者として第一歩を踏み出すに足る基本的な知識及び技能を的確に評価できるもの」ということであった.さらに改善すべき内容として,想起型といわれるTaxonomyIばかりでなく,適切な情報を獲得する能力を評価するTaxonomyIIや適切に分析する能力を評価するTaxonomyIIIの問題を出題することが提言された.また,出題形式も解答の組み合わせが限定され,的確に受験生の能力を判定できないことからK2やK3タイプの問題が少なくなり単純択一式のAタイプが増え,さらに五肢複択形式のX2タイプが導入され,現在ではAタイプ,X2タイプのみの出題となっている.
 ところでこのような国家試験の内容の変化―すなわち出題基準に対応すべく平成14年に『月刊Medical Technology別冊』として『<ガイドライン対応>臨床検査技師国家試験ファーストトレーニング』が発行された.この別冊は従来の国家試験問題集とは異なり,1問1答を確認しながら○×方式で解答させるため,国家試験のための最初のトレーニングとしてばかりでなく,臨床検査の基礎知識を整理するときにも利用できるものであった.その後平成18年には『新ファースト・トレーニング』として改訂され,多くの学生に活用されてきた.
 今回の改訂では,読者からの意見を取り入れ,いくつかの変更を加え,さらに最新の国家試験問題と医歯薬出版の模擬試験問題から新たな良問を加え,時代の趨勢に合った問題を厳選した.本書の特徴は,前版に引き続き,問題文のどこを問うているのかを明確にするため質問箇所にアンダーラインを付した.これにより低学年の学生にも利用しやすいものになっている.また解答が誤答の場合には「正解用語」を記載した.したがって,問題文に正解用語を当てはめるとそのまま「正文」として覚えることができる.さらに理解を深めるために,重要と思われる問題には「解説」を付してある.また,前版と大きく違う点は,改訂された平成23年版国家試験出題基準が掲載されていることにある.これはチェックリストとして知識の整理にも利用でき,読者にとって有用なものとなるであろう.
 本書の出題・解答には日本臨床検査学教育協議会に加盟する学校に所属し,国家試験に精通した専任教員が当たっている.したがって,本書に精選された5,000問は国家試験のためばかりではなく,臨床検査技師として知識の整理や就職試験,進学のさいにも活用できるものと思う.ただし,国家試験のための本格的な備えとしては,たとえば『日本臨床検査学教育協議会編:臨床検査技師国家試験問題集(CD-ROM付き)』をセットにして活用されることをお薦めしたい.
 今後の臨床検査技師教育は,必要な知識と技術を十分に身につけることはもちろんのこと,医療の進歩に適応でき,自ら学び考えることのできる人材の育成が社会から求められている.そのような社会的期待にそうためにも本書は有用であり,多くの臨床検査技師を目指す学生は格好の問題集あるいは参考書として十分に活用していただきたい.
 平成22年11月
 一般社団法人日本臨床検査学教育協議会
 理事長 三村邦裕
 推薦文
 本書の特徴および活用にあたって
 図版
I章 臨床検査総論
 「臨床検査総論」国家試験出題基準
 検査総合管理学 問題
  ・解説
 生物化学分析検査学 問題
  ・解説
 形態検査学問題
  ・解説
II章 臨床検査医学総論
 「臨床検査医学総論」国家試験出題基準
 臨床病態学 問題
  ・解説
III章 臨床生理学
 「臨床生理学」国家試験出題基準
 人体の構造と機能,生理機能検査学 問題
  ・解説
IV章 臨床化学
 「臨床化学」国家試験出題基準
 人体の構造と機能,生物化学分析検査学 問題
  ・解説
V章 病理組織細胞学
 「病理組織細胞学」国家試験出題基準
 人体の構造と機能,医学検査の基礎と疾病との関連 問題
  ・解説
 形態検査学 問題
  ・解説
VI章 臨床血液学
 「臨床血液学」国家試験出題基準
 人体の構造と機能,形態検査学,病因・生体防御検査学 問題
  ・解説
VII章 臨床微生物学
 「臨床微生物学」国家試験出題基準
 医学検査の基礎と疾病との関連 問題
  ・解説
 病因・生体防御検査学 問題
  ・解説
VIII章 臨床免疫学
 「臨床免疫学」国家試験出題基準
 病因・生体防御検査学 問題
  ・解説
IX章 公衆衛生学
 「公衆衛生学」国家試験出題基準
 保健医療福祉と医学検査 問題
  ・解説
X章 医用工学概論
 「医用工学概論」国家試験出題基準
 医療工学及び情報科学 問題
  ・解説
 検査総合管理学 問題
  ・解説

 ・本書で使用されている主な略語一覧