疾患モデル動物――病因解析での役割と限界
はじめに
Introduction
山村研一(熊本大学発生医学研究センター器官形成部門臓器形成分野)
Ken-ichiYamamura
◎わが国において大学と大学院における高等教育と基盤研究の展開が必要なことはいうまでもない.問題はなにを理念目標とし,その達成のためにどのような戦略をもっているのかである.いうまでもなく,戦略とは目先の利益を追うことではなく,40〜50年後にわが国を支えることになる基礎研究の展開と人材育成である.基盤研究にはリサーチとサーチがあるが,日本ではとくにサーチに対する理解がない.サーチ研究とはリサーチ研究のためのリソースの発掘を行うものであり,大規模で網羅的に実施する必要がある.このため,本来は国家戦略として実施すべきものである.サーチ研究は縁の下の力持ち的な内容であり,それに携わる人びとはなかなか理解してもらえないことが多い.そこで,本書では“疾患モデル動物”を通してサーチ研究を行っている人びとを紹介し,その重要性に気づいてもらうことに主眼においた.
疾患モデル動物の基本にあるのは遺伝学と微生物学である.そのうち遺伝学は元来,修正の余地のない実験計画をたて議論の余地のない結果を出すことを傾向とする学問である.しかし,古代ローマの滑稽劇作者のプブリウス・シルスに“修正の余地のない計画は悪い計画である“という言葉があり,著者なりにこの言葉を解釈すると,選択の余地のない計画はよくなく,また,いまは一番よい計画であると思われても,中長期的視点からはかならずしもそうでない可能性もあるということではないかと思われる.また,コネチカット大学のトーマス・チェン教授の“Afakeprofessorlikesclear-cutresults.Arealprofessorlikesweird(不可解な)results”という言葉もある.問題点を明らかにするために,解析するシステムをより単純な系に移して明快な答えを得るのも解決法のひとつかもしれないが,その結果,なにかを失っているかもしれないし,むしろそこにとどまって不可解なことに挑む意気込みがあってもよいと思われる.個体の系を用いる研究は,DNAや細胞レベルでの研究とは異なり,明快な答えが出にくいのは事実であり,このため敬遠されがちである.しかし,ポストゲノムシークエンス時代を迎え,どうしても避けて通れないときがきたといえよう.
■疾患モデル動物研究の2つの要素
疾患モデル動物を用いて研究を進めるためには相当の覚悟が必要であるし,思想も必要である.疾患モデル動物を用いた基盤研究の展開のためには2つの要素を考える必要がある.
第1は研究の内容であり,大きくわけるとサーチ研究とリサーチ研究になる.サーチ研究はリサーチのためのリソースの探索研究ということになるが,ゲノム研究がその典型例である.リソースの探索であるかぎり,それを行うにあたっての思想は“大規模“で“網羅的”である.さらに重要なのは,そのために“適正な規模”の投資を国家として行う必要があることである.なぜなら,その効果は全研究領域に及び,長期的だからである.ゲノムの構造解析は典型的なサーチ研究であり,その実施において,この観点からの予算配分が必要であったと思われるが,わが国では後追いであるにもかかわらず不十分なままに実施され,結果はアメリカの圧勝である.サーチ研究は戦略思想から生まれるものであり,したがって,戦略思想をもたない国ではサーチ研究の必要性をまったく理解していない.
このサーチ研究の結果得られるリソースを用いて,さまざまなリサーチが発展する.リサーチの展開にはサーチ研究が欠かせない.このサーチ研究の部分をいままでは欧米に頼ってきたといえる.サーチ研究があってはじめて独創的なリサーチ研究が展開できるのである.疾患モデル動物の作製はまさにサーチ研究となっている.
第2は研究を行うための組織であり,2つの組織,実施部隊と後方支援部隊が必要なことである.戦争にたとえるとわかりやすいが,前線で戦う実戦部隊とそれらに武器弾薬などを届ける後方支援部隊が必要不可欠である.研究でいえば,実戦部隊は研究者,後方支援部隊は技術者ということになる.後方支援も実戦部隊と同様に高度の専門性を必要とし,たえざる技術の開発が必要である.太平洋戦争をみればわかるように,日本は伝統的に後方支援という思想がなく,食料にしても現地調達方式が多い.現在,研究者が同時に支援業務をやっているのとなんら変わりがないのである.
この後方支援では技術者が重要になる.日本は技術立国といい,昔から職人という言葉でいかにも技術とその従事者を大事にしてきたかのようにいっているが,実態は逆であろう.たとえば,町工場でも手の感触だけでミクロの単位の違いを見分けることのできる職人が存在するが,その処遇は劣悪である.また,全国の国立大学に支援を行う施設としての位置づけで動物実験施設,遺伝子実験施設などができているが,現状では研究と支援の両方が要求されることが多く,板ばさみの状態である.真の支援を遂行するには,研究者と同じ程度の能力が必要である.
たとえば,著者のいる熊本大学には動物資源開発研究センターがあるが,ここでは遺伝子改変マウスの作製やそれらの2細胞期胚を凍結保存し,供給するという業務がある.遺伝子改変マウスの作製といっても,それ自体が高度の知識と技術を要し,場合によっては,研究者の相談にも応え,実験内容に関して示唆を与える必要がある.このことは,支援といえども研究者と同等あるいはそれ以上の能力が必要であることを意味している.
湾岸戦争の終結後に多数の本が出版されたが,アメリカ陸軍中将W. G.パゴニス氏による『山動く』という本は印象的であった.これはまさに後方支援部隊の活躍を描いた本で,その部隊が驚嘆すべき仕事を果たしていることがよくわかる.わが国には三流,四流の研究者は存在するが,一流の技術支援者はいない.技術者が現実には尊敬されていない証拠である.ドイツのマイスター制度のような技術者の地位の確立が必要であると思われる.
■人材を育てるために
理念・思想に基づき戦略が立てられ,戦略から立案された戦術が実行されるためには結局は人材が必要である.その人材を育てようとしないのがまたわが国である.現在,日本は経済ばかりでなくあらゆる分野で行き詰まりを見せているが,その理由の大半は,人をみて信用して資金を提供し,仕事を任せることをするのではなく,人の背後にある担保にのみ目を奪われ,人をみる目を育ててこなかったからではないかと思える.後藤新平は,人を3段階に分類し“金を残すのは下である,事業を残すのは中である,人を残すのが上である”といい,人材の育成の重要性を指摘している.
ではどうすれば,人を残せるのかが問題となる.それには“思想“や“哲学”をもつ人が必要になる.人間にとって本来この“思想“や“哲学”が行動原理であるべきで,それに共感する人がそれを受け継ぐ,したがって,人が残るのではないかと思える.しかし,単に受け継ぐのではあらたな展開をはかることができない.そこで,中国の言葉にある“継承的創業“を行う必要があると思われる.つまり思想を継承しながらも,あらたな局面では思い切った改革を行うことが必要である.残念ながら日本には“思想”や“哲学“を重んじる風潮が見当たらないし,司馬遼太郎が看破したように,行動規範は“思想”や“哲学“ではなく,“世間”である.世間の常識がこの国の行動パターンを決めており,その決定が正しい方向をめざしているとは思えない.疾患モデル動物に関する本書をつくることにより,せめてこの領域だけでも正しい思想・戦略をもって臨みたいものである.
はじめに
Introduction
山村研一(熊本大学発生医学研究センター器官形成部門臓器形成分野)
Ken-ichiYamamura
◎わが国において大学と大学院における高等教育と基盤研究の展開が必要なことはいうまでもない.問題はなにを理念目標とし,その達成のためにどのような戦略をもっているのかである.いうまでもなく,戦略とは目先の利益を追うことではなく,40〜50年後にわが国を支えることになる基礎研究の展開と人材育成である.基盤研究にはリサーチとサーチがあるが,日本ではとくにサーチに対する理解がない.サーチ研究とはリサーチ研究のためのリソースの発掘を行うものであり,大規模で網羅的に実施する必要がある.このため,本来は国家戦略として実施すべきものである.サーチ研究は縁の下の力持ち的な内容であり,それに携わる人びとはなかなか理解してもらえないことが多い.そこで,本書では“疾患モデル動物”を通してサーチ研究を行っている人びとを紹介し,その重要性に気づいてもらうことに主眼においた.
疾患モデル動物の基本にあるのは遺伝学と微生物学である.そのうち遺伝学は元来,修正の余地のない実験計画をたて議論の余地のない結果を出すことを傾向とする学問である.しかし,古代ローマの滑稽劇作者のプブリウス・シルスに“修正の余地のない計画は悪い計画である“という言葉があり,著者なりにこの言葉を解釈すると,選択の余地のない計画はよくなく,また,いまは一番よい計画であると思われても,中長期的視点からはかならずしもそうでない可能性もあるということではないかと思われる.また,コネチカット大学のトーマス・チェン教授の“Afakeprofessorlikesclear-cutresults.Arealprofessorlikesweird(不可解な)results”という言葉もある.問題点を明らかにするために,解析するシステムをより単純な系に移して明快な答えを得るのも解決法のひとつかもしれないが,その結果,なにかを失っているかもしれないし,むしろそこにとどまって不可解なことに挑む意気込みがあってもよいと思われる.個体の系を用いる研究は,DNAや細胞レベルでの研究とは異なり,明快な答えが出にくいのは事実であり,このため敬遠されがちである.しかし,ポストゲノムシークエンス時代を迎え,どうしても避けて通れないときがきたといえよう.
■疾患モデル動物研究の2つの要素
疾患モデル動物を用いて研究を進めるためには相当の覚悟が必要であるし,思想も必要である.疾患モデル動物を用いた基盤研究の展開のためには2つの要素を考える必要がある.
第1は研究の内容であり,大きくわけるとサーチ研究とリサーチ研究になる.サーチ研究はリサーチのためのリソースの探索研究ということになるが,ゲノム研究がその典型例である.リソースの探索であるかぎり,それを行うにあたっての思想は“大規模“で“網羅的”である.さらに重要なのは,そのために“適正な規模”の投資を国家として行う必要があることである.なぜなら,その効果は全研究領域に及び,長期的だからである.ゲノムの構造解析は典型的なサーチ研究であり,その実施において,この観点からの予算配分が必要であったと思われるが,わが国では後追いであるにもかかわらず不十分なままに実施され,結果はアメリカの圧勝である.サーチ研究は戦略思想から生まれるものであり,したがって,戦略思想をもたない国ではサーチ研究の必要性をまったく理解していない.
このサーチ研究の結果得られるリソースを用いて,さまざまなリサーチが発展する.リサーチの展開にはサーチ研究が欠かせない.このサーチ研究の部分をいままでは欧米に頼ってきたといえる.サーチ研究があってはじめて独創的なリサーチ研究が展開できるのである.疾患モデル動物の作製はまさにサーチ研究となっている.
第2は研究を行うための組織であり,2つの組織,実施部隊と後方支援部隊が必要なことである.戦争にたとえるとわかりやすいが,前線で戦う実戦部隊とそれらに武器弾薬などを届ける後方支援部隊が必要不可欠である.研究でいえば,実戦部隊は研究者,後方支援部隊は技術者ということになる.後方支援も実戦部隊と同様に高度の専門性を必要とし,たえざる技術の開発が必要である.太平洋戦争をみればわかるように,日本は伝統的に後方支援という思想がなく,食料にしても現地調達方式が多い.現在,研究者が同時に支援業務をやっているのとなんら変わりがないのである.
この後方支援では技術者が重要になる.日本は技術立国といい,昔から職人という言葉でいかにも技術とその従事者を大事にしてきたかのようにいっているが,実態は逆であろう.たとえば,町工場でも手の感触だけでミクロの単位の違いを見分けることのできる職人が存在するが,その処遇は劣悪である.また,全国の国立大学に支援を行う施設としての位置づけで動物実験施設,遺伝子実験施設などができているが,現状では研究と支援の両方が要求されることが多く,板ばさみの状態である.真の支援を遂行するには,研究者と同じ程度の能力が必要である.
たとえば,著者のいる熊本大学には動物資源開発研究センターがあるが,ここでは遺伝子改変マウスの作製やそれらの2細胞期胚を凍結保存し,供給するという業務がある.遺伝子改変マウスの作製といっても,それ自体が高度の知識と技術を要し,場合によっては,研究者の相談にも応え,実験内容に関して示唆を与える必要がある.このことは,支援といえども研究者と同等あるいはそれ以上の能力が必要であることを意味している.
湾岸戦争の終結後に多数の本が出版されたが,アメリカ陸軍中将W. G.パゴニス氏による『山動く』という本は印象的であった.これはまさに後方支援部隊の活躍を描いた本で,その部隊が驚嘆すべき仕事を果たしていることがよくわかる.わが国には三流,四流の研究者は存在するが,一流の技術支援者はいない.技術者が現実には尊敬されていない証拠である.ドイツのマイスター制度のような技術者の地位の確立が必要であると思われる.
■人材を育てるために
理念・思想に基づき戦略が立てられ,戦略から立案された戦術が実行されるためには結局は人材が必要である.その人材を育てようとしないのがまたわが国である.現在,日本は経済ばかりでなくあらゆる分野で行き詰まりを見せているが,その理由の大半は,人をみて信用して資金を提供し,仕事を任せることをするのではなく,人の背後にある担保にのみ目を奪われ,人をみる目を育ててこなかったからではないかと思える.後藤新平は,人を3段階に分類し“金を残すのは下である,事業を残すのは中である,人を残すのが上である”といい,人材の育成の重要性を指摘している.
ではどうすれば,人を残せるのかが問題となる.それには“思想“や“哲学”をもつ人が必要になる.人間にとって本来この“思想“や“哲学”が行動原理であるべきで,それに共感する人がそれを受け継ぐ,したがって,人が残るのではないかと思える.しかし,単に受け継ぐのではあらたな展開をはかることができない.そこで,中国の言葉にある“継承的創業“を行う必要があると思われる.つまり思想を継承しながらも,あらたな局面では思い切った改革を行うことが必要である.残念ながら日本には“思想”や“哲学“を重んじる風潮が見当たらないし,司馬遼太郎が看破したように,行動規範は“思想”や“哲学“ではなく,“世間”である.世間の常識がこの国の行動パターンを決めており,その決定が正しい方向をめざしているとは思えない.疾患モデル動物に関する本書をつくることにより,せめてこの領域だけでも正しい思想・戦略をもって臨みたいものである.
別冊・医学のあゆみ 疾患モデル動物――病因解析での役割と限界
Animalmodelsforhumandiseases-Theirrolesinanalysisofpathogenesis
Editor:ken-ichiYamamura◆
はじめに 山村研一
Introduction
●疾患モデル動物研究の2つの要素
●人材を育てるために
第1章 総論
1.ポストゲノム後の動物モデルの位置づけ 山村研一
Rolesofanimalmodelsforhumandiseasesinpost-genomicera
●モデルの分類とこれまでの位置づけ
●従来のモデルの評価
●ポストゲノムシークエンス時代のモデル動物
2.マウスの大規模ENUミュータジェネシスの現状と展望 権藤洋一
Alarge-scaleENUmutagenesisofthemouse:currentandfutureperspectives
●点突然変異体の重要性
●大規模ENUミュータジェネシス
●世界の動向
●今後の課題と展望
3.大規模遺伝子トラップの現状―リソースとしての疾患モデルマウス 荒木正健・荒木喜美
Largescalegenetrapmutagenesis
●大規模遺伝子トラップを行っている研究グループ
●トラップベクター
●トラップESクローンの作製と解析
●トラップマウスラインの樹立
●表現型の解析
●可変型遺伝子トラップ
4.誘導的発現システム開発の現状 丹羽仁史
Inducibleexpressionsystemintransgenicanimals
●可逆性誘導的発現システム
●非可逆性誘導的発現システム
5.遺伝子改変マウスの胚・精子バンク 中潟直己
Transgenicmouseembryo/spermbank
●マウス胚・精子の凍結保存
●データベース
●供給
6.疾患モデルとしてのクローンマウス 小倉淳郎
Clonedmiceasexperimentalmodelsforepigeneticdiseases
●着床前から着床期の異常
●周産期の異常
●成長期以後の異常
●クローン特有の異常の原因
7.ES細胞を用いたクローンマウス 河野友宏
Clonedmicefromembryonicstemcells
●ESクローンマウスの作出法
●クローン産仔の生存性
●ESクローンマウスに認められた異常の伝達性
●導入変異遺伝子の子孫への伝達
8.疾患モデル動物データベース 山崎由紀子
Databasesofanimalmodelsforhumandiseases
●国内データベース
●海外データベース
●考慮すべき問題
9.遺伝的モニタリング 加藤秀樹
Geneticmonitoringofanimalmodelsforhumandiseases
●遺伝的汚染が過去に起こっている
●遺伝子改変マウスは遺伝的汚染と同じ状況にある
●標識遺伝子が遺伝的品質を保証する
●遺伝的モニタリングの検査対象は2種類である
●疾患形質は環境要因・遺伝要因によって変化する
10.疾患モデル動物の微生物モニタリング 伊藤豊志雄
Microbiologicalmonitoringindiseasemodels
●実験動物の感染症の特徴
●感染の一般的影響
●疾患モデル動物の作出・供給システムの変遷に伴う微生物学的品質の変化
●感染症が疾患モデル動物に及ぼす影響
●最近の疾患モデル動物の微生物モニタリング結果
●汚染動物からの非汚染動物の確立
●疾患モデル動物の感染事故防止策
11.疾患モデル動物と飼育環境 伊藤喜久治
Animalmodelforhumandiseasesandtheirenvironment
●腸内フローラとdramatype
●腸内フローラの標準化
第2章 各論
12.Alzheimer病モデルマウス 丸山 敬
MousemodelsforAlzheimerユsdisease
●Alzheimer病の分子病態
●Alzheimer病で考えられる動物モデル
●APPとPSのノックアウト(欠損)マウス
●APP過剰発現(トランスジェニック)マウス
●その他の過剰発現マウス
●Alzheimer病の治療戦略
●Alzheimer病の免疫療法
13.家族性アミロイドポリニューロパチー 前田秀一郎
Familialamyloidoticpolyneuropathy
●FAPの原因と病態
●FAPの診断法と治療法
●FAPの疾患モデルマウスを用いた発症機構の解析
14.Parkinson病 高柳淳・清水信義
Parkisonism
●遺伝子操作モデル
●MPTP(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydopyridine)処理モデル
15.成人発症II型シトルリン血症モデルマウス 佐伯武 8・小 林圭子
Animalmodelsofadult-onsettypeIIcitrullinemia
●CTLN1とCTLN
●SLC25A13遺伝子とそのコードする蛋白機能の発見
●遺伝子変異の同定と,新しい疾患NICCDの発見
●AGCの機能とシトリン欠損症の症状
●シトリンとアララ遺伝子ノックアウト(KO)マウスの作製
16.先天性代謝異常症 衛藤義勝
Inheritedmetabolicdisease
●モデル動物を用いての先天性代謝異常症の病態解析とその限界
●疾患モデル動物の治療への応用とその限界
17.生体防御機構―Toll様受容体ノックアウトマウスの解析 植松 智・審 良静男
Hostdefense
●TLRファミリー
●TLRファミリーの機能
●TLRを介したシグナル伝達経路
18.関節リウマチモデルマウス 岩倉洋一郎
Rheumatoidarthritismodelmice
●HTLV-I-Tgマウス
●IL-1Ra-KOマウス
19.ウイルス肝炎の動物モデル―その意義と限界 小池和彦
Animalmodelforviralhepatitis
●肝癌発生の特徴はなにか
●肝発癌の分子病態解明―動物モデルの考え方
●HCVコア遺伝子導入トランスジェニックマウス
●コア遺伝子トランスジェニックマウスと慢性C型肝炎患者の比較
●HCVによる肝発癌研究のパラダイムシフト―“炎症かウイルスか“から“炎症の質的相違”へ
●肝炎ウイルスによる肝発癌機序―“non-Vogelstein”な発癌メカニズム
20.肥大型心筋症 森本幸生
Hypertrophiccardiomyopathy
●肥大型心筋症の分子遺伝学と臨床的特徴
●HCMのinvitro研究
●HCMの動物モデル
21.遺伝性腎癌 樋野興夫・小林敏之
Hereditaryrenalcellcarcinoma
●研究対象の選択―自分のオリジナルで流行をつくれ
●発癌の連盟的首位性―起始遺伝子
●癌のドラマタイプ(dramatype)―癌性化境遇
●遺伝性腎癌(Eker)ラットの歴史―学歴から学問歴へ
●Eker(Tsc2mutant)ratの発癌遺伝病理学―DNAチップはHE染色に勝てるか
●Eker(Tsc2mutant)ratの多段階腎発癌―“吉田富三”の温故創新
●TSC2遺伝子機能―signallingpathway
●新規遺伝性腎癌(Nihon)ラット―日本からの発信
●Nihonratの発癌病理―clearcelltypeの腎癌
●疾患モデルへの臨床への応用―分子標的治療法
22.DNA修復異常と発癌―アルキル化DNA損傷の修復と突然変異・発癌の抑制 續輝 久・河手久弥
DNArepairdeficiencyandcarcinogenesis
●アルキル化剤によるDNA損傷と修復酵素
●DNA修復酵素MGMTの遺伝子欠損細胞・マウス系統の樹立
●Mgmt遺伝子欠損マウスのアルキル化剤に対する感受性
●アルキル化剤感受性におけるミスマッチ修復系の関与
23.ノックアウトマウスモデルにおける腸管腫瘍発生機構 大島正伸・武藤誠
Intestinaltumorigenesisingeneticallyengineeredmice
●ApcΔ716マウスの腸管ポリープ
●β-catenin変異マウスの腸管ポリープ
●ApcΔ716Smad4複合変異マウスの腸管腺癌
●COX-2遺伝子欠損による腸管ポリープ抑制
24.高血圧モデル動物の役割と限界―レニン-アンジオテンシン系を中心に 深水昭吉
Aroleformodelanimalsofhypertensionanditsrestrictedusagefortherenin-angiotensinsystem
●レニン-アンジオテンシン系
●レニン-アンジオテンシン系と高血圧トランスジェニックマウス
●レニン-アンジオテンシン系とノックアウトマウス
25.糖尿病モデルマウス 寺内康夫・門脇孝
Mousemodelsofdiabetesmellitus
●膵β細胞の糖代謝や転写因子に関するマウスモデル
●膵β細胞のインスリン/インスリン様成長因子細胞内情報伝達系にかかわるマウスモデル
●インスリン作用に関するマウスモデル
●遺伝子欠損マウスのかけ合わせによるモデルマウス――多因子病としての糖尿病の発症過程や発症因子の解明
26.筋ジストロフィー 宇山英一郎
Animalmodelsformusculardystrophy
●X染色体劣性遺伝型筋ジストロフィーのモデル動物
●常染色体劣性遺伝性肢帯型筋ジストロフィーのモデル動物
●先天性筋ジストロフィーのモデル動物
27.外生殖器の発生分化と異常 尾木秀直・他
Developmentandmalformationoftheexternalgenitalia
●マウス外生殖器の発生
●外生殖器の分子発生機構
●疾患モデル動物の限界とあらたな一歩
■サイドメモ
飽和ミュータジェネシス
ホットスポット
位置効果(positioneffect)
ゲノム刷込み(genomicimprinting)
核のリプログラミング(nuclearreprogramming)
すべての商品には品質が求められる
微生物モニタリング
ノトバイオート(gnotobiote)
コンフォメーション病
高次神経機能のマウス疾患モデルの問題
ドミノ肝移植
Parkinson病原因遺伝子と細胞死
NADHシャトルと脂肪肝・高脂血症
疾患モデル動物を用いての病態解析・治療への応用
ショウジョウバエによる感染防御機構
CD40リガンド,OX40
ROS(reactiveoxygenspecies)
拡張型心筋症
アルキル化抗癌剤に対する感受性
COX-2阻害薬と化学予防
膵β細胞のインスリン/インスリン様成長因子細胞内情報伝達系
糖転移酵素(glycosyltransferase)
先端尿道上皮(DUE)と外胚葉性頂堤(AER)
Animalmodelsforhumandiseases-Theirrolesinanalysisofpathogenesis
Editor:ken-ichiYamamura◆
はじめに 山村研一
Introduction
●疾患モデル動物研究の2つの要素
●人材を育てるために
第1章 総論
1.ポストゲノム後の動物モデルの位置づけ 山村研一
Rolesofanimalmodelsforhumandiseasesinpost-genomicera
●モデルの分類とこれまでの位置づけ
●従来のモデルの評価
●ポストゲノムシークエンス時代のモデル動物
2.マウスの大規模ENUミュータジェネシスの現状と展望 権藤洋一
Alarge-scaleENUmutagenesisofthemouse:currentandfutureperspectives
●点突然変異体の重要性
●大規模ENUミュータジェネシス
●世界の動向
●今後の課題と展望
3.大規模遺伝子トラップの現状―リソースとしての疾患モデルマウス 荒木正健・荒木喜美
Largescalegenetrapmutagenesis
●大規模遺伝子トラップを行っている研究グループ
●トラップベクター
●トラップESクローンの作製と解析
●トラップマウスラインの樹立
●表現型の解析
●可変型遺伝子トラップ
4.誘導的発現システム開発の現状 丹羽仁史
Inducibleexpressionsystemintransgenicanimals
●可逆性誘導的発現システム
●非可逆性誘導的発現システム
5.遺伝子改変マウスの胚・精子バンク 中潟直己
Transgenicmouseembryo/spermbank
●マウス胚・精子の凍結保存
●データベース
●供給
6.疾患モデルとしてのクローンマウス 小倉淳郎
Clonedmiceasexperimentalmodelsforepigeneticdiseases
●着床前から着床期の異常
●周産期の異常
●成長期以後の異常
●クローン特有の異常の原因
7.ES細胞を用いたクローンマウス 河野友宏
Clonedmicefromembryonicstemcells
●ESクローンマウスの作出法
●クローン産仔の生存性
●ESクローンマウスに認められた異常の伝達性
●導入変異遺伝子の子孫への伝達
8.疾患モデル動物データベース 山崎由紀子
Databasesofanimalmodelsforhumandiseases
●国内データベース
●海外データベース
●考慮すべき問題
9.遺伝的モニタリング 加藤秀樹
Geneticmonitoringofanimalmodelsforhumandiseases
●遺伝的汚染が過去に起こっている
●遺伝子改変マウスは遺伝的汚染と同じ状況にある
●標識遺伝子が遺伝的品質を保証する
●遺伝的モニタリングの検査対象は2種類である
●疾患形質は環境要因・遺伝要因によって変化する
10.疾患モデル動物の微生物モニタリング 伊藤豊志雄
Microbiologicalmonitoringindiseasemodels
●実験動物の感染症の特徴
●感染の一般的影響
●疾患モデル動物の作出・供給システムの変遷に伴う微生物学的品質の変化
●感染症が疾患モデル動物に及ぼす影響
●最近の疾患モデル動物の微生物モニタリング結果
●汚染動物からの非汚染動物の確立
●疾患モデル動物の感染事故防止策
11.疾患モデル動物と飼育環境 伊藤喜久治
Animalmodelforhumandiseasesandtheirenvironment
●腸内フローラとdramatype
●腸内フローラの標準化
第2章 各論
12.Alzheimer病モデルマウス 丸山 敬
MousemodelsforAlzheimerユsdisease
●Alzheimer病の分子病態
●Alzheimer病で考えられる動物モデル
●APPとPSのノックアウト(欠損)マウス
●APP過剰発現(トランスジェニック)マウス
●その他の過剰発現マウス
●Alzheimer病の治療戦略
●Alzheimer病の免疫療法
13.家族性アミロイドポリニューロパチー 前田秀一郎
Familialamyloidoticpolyneuropathy
●FAPの原因と病態
●FAPの診断法と治療法
●FAPの疾患モデルマウスを用いた発症機構の解析
14.Parkinson病 高柳淳・清水信義
Parkisonism
●遺伝子操作モデル
●MPTP(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydopyridine)処理モデル
15.成人発症II型シトルリン血症モデルマウス 佐伯武 8・小 林圭子
Animalmodelsofadult-onsettypeIIcitrullinemia
●CTLN1とCTLN
●SLC25A13遺伝子とそのコードする蛋白機能の発見
●遺伝子変異の同定と,新しい疾患NICCDの発見
●AGCの機能とシトリン欠損症の症状
●シトリンとアララ遺伝子ノックアウト(KO)マウスの作製
16.先天性代謝異常症 衛藤義勝
Inheritedmetabolicdisease
●モデル動物を用いての先天性代謝異常症の病態解析とその限界
●疾患モデル動物の治療への応用とその限界
17.生体防御機構―Toll様受容体ノックアウトマウスの解析 植松 智・審 良静男
Hostdefense
●TLRファミリー
●TLRファミリーの機能
●TLRを介したシグナル伝達経路
18.関節リウマチモデルマウス 岩倉洋一郎
Rheumatoidarthritismodelmice
●HTLV-I-Tgマウス
●IL-1Ra-KOマウス
19.ウイルス肝炎の動物モデル―その意義と限界 小池和彦
Animalmodelforviralhepatitis
●肝癌発生の特徴はなにか
●肝発癌の分子病態解明―動物モデルの考え方
●HCVコア遺伝子導入トランスジェニックマウス
●コア遺伝子トランスジェニックマウスと慢性C型肝炎患者の比較
●HCVによる肝発癌研究のパラダイムシフト―“炎症かウイルスか“から“炎症の質的相違”へ
●肝炎ウイルスによる肝発癌機序―“non-Vogelstein”な発癌メカニズム
20.肥大型心筋症 森本幸生
Hypertrophiccardiomyopathy
●肥大型心筋症の分子遺伝学と臨床的特徴
●HCMのinvitro研究
●HCMの動物モデル
21.遺伝性腎癌 樋野興夫・小林敏之
Hereditaryrenalcellcarcinoma
●研究対象の選択―自分のオリジナルで流行をつくれ
●発癌の連盟的首位性―起始遺伝子
●癌のドラマタイプ(dramatype)―癌性化境遇
●遺伝性腎癌(Eker)ラットの歴史―学歴から学問歴へ
●Eker(Tsc2mutant)ratの発癌遺伝病理学―DNAチップはHE染色に勝てるか
●Eker(Tsc2mutant)ratの多段階腎発癌―“吉田富三”の温故創新
●TSC2遺伝子機能―signallingpathway
●新規遺伝性腎癌(Nihon)ラット―日本からの発信
●Nihonratの発癌病理―clearcelltypeの腎癌
●疾患モデルへの臨床への応用―分子標的治療法
22.DNA修復異常と発癌―アルキル化DNA損傷の修復と突然変異・発癌の抑制 續輝 久・河手久弥
DNArepairdeficiencyandcarcinogenesis
●アルキル化剤によるDNA損傷と修復酵素
●DNA修復酵素MGMTの遺伝子欠損細胞・マウス系統の樹立
●Mgmt遺伝子欠損マウスのアルキル化剤に対する感受性
●アルキル化剤感受性におけるミスマッチ修復系の関与
23.ノックアウトマウスモデルにおける腸管腫瘍発生機構 大島正伸・武藤誠
Intestinaltumorigenesisingeneticallyengineeredmice
●ApcΔ716マウスの腸管ポリープ
●β-catenin変異マウスの腸管ポリープ
●ApcΔ716Smad4複合変異マウスの腸管腺癌
●COX-2遺伝子欠損による腸管ポリープ抑制
24.高血圧モデル動物の役割と限界―レニン-アンジオテンシン系を中心に 深水昭吉
Aroleformodelanimalsofhypertensionanditsrestrictedusagefortherenin-angiotensinsystem
●レニン-アンジオテンシン系
●レニン-アンジオテンシン系と高血圧トランスジェニックマウス
●レニン-アンジオテンシン系とノックアウトマウス
25.糖尿病モデルマウス 寺内康夫・門脇孝
Mousemodelsofdiabetesmellitus
●膵β細胞の糖代謝や転写因子に関するマウスモデル
●膵β細胞のインスリン/インスリン様成長因子細胞内情報伝達系にかかわるマウスモデル
●インスリン作用に関するマウスモデル
●遺伝子欠損マウスのかけ合わせによるモデルマウス――多因子病としての糖尿病の発症過程や発症因子の解明
26.筋ジストロフィー 宇山英一郎
Animalmodelsformusculardystrophy
●X染色体劣性遺伝型筋ジストロフィーのモデル動物
●常染色体劣性遺伝性肢帯型筋ジストロフィーのモデル動物
●先天性筋ジストロフィーのモデル動物
27.外生殖器の発生分化と異常 尾木秀直・他
Developmentandmalformationoftheexternalgenitalia
●マウス外生殖器の発生
●外生殖器の分子発生機構
●疾患モデル動物の限界とあらたな一歩
■サイドメモ
飽和ミュータジェネシス
ホットスポット
位置効果(positioneffect)
ゲノム刷込み(genomicimprinting)
核のリプログラミング(nuclearreprogramming)
すべての商品には品質が求められる
微生物モニタリング
ノトバイオート(gnotobiote)
コンフォメーション病
高次神経機能のマウス疾患モデルの問題
ドミノ肝移植
Parkinson病原因遺伝子と細胞死
NADHシャトルと脂肪肝・高脂血症
疾患モデル動物を用いての病態解析・治療への応用
ショウジョウバエによる感染防御機構
CD40リガンド,OX40
ROS(reactiveoxygenspecies)
拡張型心筋症
アルキル化抗癌剤に対する感受性
COX-2阻害薬と化学予防
膵β細胞のインスリン/インスリン様成長因子細胞内情報伝達系
糖転移酵素(glycosyltransferase)
先端尿道上皮(DUE)と外胚葉性頂堤(AER)