序
本書は,公認心理師カリキュラムに準拠し,公認心理師を目指す学部や大学院の学生が興味をもって学び,臨床での問題解決能力が身につくための発達心理学の教科書として企画されました.
発達心理学は,公認心理師の大学カリキュラム25科目のなかに,心理学の基本的理論に関する科目として組み込まれています.そこでの学びの目標は,「認知機能の発達及び感情・社会性の発達」,「自己と他者の関係の在り方と心理的発達」,「誕生から死に至るまでの生涯における心身の発達」,「発達障害等非定型発達についての基礎的な知識及び考え方」,「高齢者の心理社会的課題及び必要な支援」とされています.
発達心理学という学問の発展においては,基礎研究で明らかにされた知見を発達支援にいかし,支援で直面した解決すべき課題は基礎研究として取り出し,エビデンスを蓄積していくアクションリサーチを繰り返して発展してきたという実績を見逃すことはできません.発達心理学は基礎学問と発達支援の間を常に行き来しながら,今後も理論化を発展させていくという点で,広義には臨床や教育実践を含みこんだ学問であるともいえます.
公認心理師における発達心理学の学びでは,生涯発達心理学の視点に立って,発達の基本的理解にとどまらず,現代社会の問題に対する心理的側面からの解明や,臨床や教育実践につなげていく視点を重視しています.そのために発達心理学の知見を支援にいかせるような教科書としたいと編者らで共通理解をもちました.そこで,総論では全体的枠組みから俯瞰する視点を,各論では特定領域の心理的メカニズムの解明を深めていく視点を,支援への展開としては,これらの知見を実践にいかす視点を読者に提供するように構成しました.
発達という観点で人の営みを理解することは,マクロとミクロの視点を同時にあわせもつことが肝要です.さらに,現前の人の状況を理解するにあたっては,その時空を超えた視点,つまりその人の歩みのこれまでと,これから先を見据えるという時間軸の広がりで今のありかたを捉えようとすることで,人の理解を深めることができます.また,発達心理学の知見は,「福祉」「教育」「医療」分野に限らず,広くいかしていくことができます.子どもをとりまく環境や生きづらさをかかえる人達の適応など現代の社会的課題を受けて,高まる心理への期待に対応し,基礎理論から実践にもいきる教科書として,本書を届けたいと思います.
本書の各著者には,編者らの想いを可能な限りくみ取っていただき,この視点からの執筆に向けて多大なご協力をいただきました.また,編集部の塚本あさ子さんには,企画から刊行に至るまで誠実に関わり続けていただきましたことを心から感謝いたします.
2020年6月
編者を代表して
秦野悦子
本書は,公認心理師カリキュラムに準拠し,公認心理師を目指す学部や大学院の学生が興味をもって学び,臨床での問題解決能力が身につくための発達心理学の教科書として企画されました.
発達心理学は,公認心理師の大学カリキュラム25科目のなかに,心理学の基本的理論に関する科目として組み込まれています.そこでの学びの目標は,「認知機能の発達及び感情・社会性の発達」,「自己と他者の関係の在り方と心理的発達」,「誕生から死に至るまでの生涯における心身の発達」,「発達障害等非定型発達についての基礎的な知識及び考え方」,「高齢者の心理社会的課題及び必要な支援」とされています.
発達心理学という学問の発展においては,基礎研究で明らかにされた知見を発達支援にいかし,支援で直面した解決すべき課題は基礎研究として取り出し,エビデンスを蓄積していくアクションリサーチを繰り返して発展してきたという実績を見逃すことはできません.発達心理学は基礎学問と発達支援の間を常に行き来しながら,今後も理論化を発展させていくという点で,広義には臨床や教育実践を含みこんだ学問であるともいえます.
公認心理師における発達心理学の学びでは,生涯発達心理学の視点に立って,発達の基本的理解にとどまらず,現代社会の問題に対する心理的側面からの解明や,臨床や教育実践につなげていく視点を重視しています.そのために発達心理学の知見を支援にいかせるような教科書としたいと編者らで共通理解をもちました.そこで,総論では全体的枠組みから俯瞰する視点を,各論では特定領域の心理的メカニズムの解明を深めていく視点を,支援への展開としては,これらの知見を実践にいかす視点を読者に提供するように構成しました.
発達という観点で人の営みを理解することは,マクロとミクロの視点を同時にあわせもつことが肝要です.さらに,現前の人の状況を理解するにあたっては,その時空を超えた視点,つまりその人の歩みのこれまでと,これから先を見据えるという時間軸の広がりで今のありかたを捉えようとすることで,人の理解を深めることができます.また,発達心理学の知見は,「福祉」「教育」「医療」分野に限らず,広くいかしていくことができます.子どもをとりまく環境や生きづらさをかかえる人達の適応など現代の社会的課題を受けて,高まる心理への期待に対応し,基礎理論から実践にもいきる教科書として,本書を届けたいと思います.
本書の各著者には,編者らの想いを可能な限りくみ取っていただき,この視点からの執筆に向けて多大なご協力をいただきました.また,編集部の塚本あさ子さんには,企画から刊行に至るまで誠実に関わり続けていただきましたことを心から感謝いたします.
2020年6月
編者を代表して
秦野悦子
序文
序章 人の発達を支えるということ(田中康雄)
I.はじめに
II.親の心を診立てる
III.親の心配をくみとる
IV.関係性の発達を診立てる
V.子どもの世界を尊重する
VI.発達障害を診立てる
VII.おわりに
総論
1章 発達心理学の基礎理論(岸本 健)
1.理論の学びをどのように支援にいかすか
2.発達段階理論
3.関係性の理論
4.行動主義の理論
5.社会・文化を基盤とする理論
〈1章Q&A〉
2章 発達とは何か(福島朋子)
1.発達を規定する要因
2.発達の生物学的基礎
3.発達を特徴づけるもの-発達の経過にかかわる原理
4.発達のプロセスを捉える
〈2章Q&A〉
3章 時間軸のなかでの人の発達(近藤清美)
1.人の生涯を捉える視点
2.ライフサイクルと人生移行
3.子どもたちの集団参加と学校への移行
4.子どもから大人への移行
5.大人における移行
6.高齢期への移行
〈3章Q&A〉
4章 定型発達と非定型発達(秦野悦子)
1.発達経路の多様性・多型性
2.障害の医学モデルから社会モデルそして統合モデルへ
3.非定型発達
4.非定型発達とその診断
〈4章Q&A〉
各論
5章 認知の発達(藤野 博)
【CASE】
1.感覚と知覚の初期発達
2.外界の認知と表象の発達
3.社会的認知の発達
4.障害や非定型発達への支援
〈5章Q&A〉
6章 知能の発達(中石康江)
【CASE】
1.知能とは何か
2.心理測定学研究からみた知能
3.知能の諸側面
4.知能をめぐる問題とその支援
〈6章Q&A〉
7章 言語とコミュニケーションの発達(小野里美帆)
【CASE】
1.前言語期のコミュニケーション
2.音声の発達
3.意味と文法の獲得
4.語用論の発達-会話とナラティブの発達
5.保護者の役割
6.言語とコミュニケーションの発達への支援
〈7章Q&A〉
8章 リテラシーの発達(川崎聡大)
【CASE】
1.リテラシーとは
2.萌芽的リテラシー
3.音韻意識
3.読み書きの発達
4.読み書き困難の実態とその背景
5.読み書き困難への支援
〈8章Q&A〉
9章 認知的情報処理と記憶の発達(田爪宏二)
【CASE】
1.認知的情報処理とは
2.実行機能
3.記憶のメカニズム
4.記憶の発達
5.認知や記憶の問題への支援
〈9章Q&A〉
10章 対人関係の発達(小島康生)
【CASE】
1.育ちのなかでの対人関係の発達
2.仲間関係の発達
3.集団における参加過程
4.仲間関係と適応
5.対人関係における不適応とその支援
〈10章Q&A〉
11章 情動の発達(坂上裕子)
【CASE】
1.情動発達のアウトライン
2.アタッチメントの発達
3.情動発達への支援
〈11章Q&A〉
12章 パーソナリティの発達(眞榮城和美)
【CASE】
1.パーソナリティの理論
2.気質と生物学的要因との関連
3.パーソナリティの発達過程
4.パーソナリティの発達にかかわる遺伝要因と環境要因の相互作用
5.子どもの気質の問題とその支援
〈12章Q&A〉
13章 自己の発達(佐久間路子)
【CASE】
1.自己とは何か
2.自己概念の発達
3.自尊感情と自己効力感
4.アイデンティティの発達
5.ジェンダーとセクシャリティ
6.社会的適応と自己の発達を支える支援
〈13章Q&A〉
支援への展開
14章 発達心理学の現代的問題(近藤清美)
1.生涯発達の視点から支援を捉える
2.年齢時期から捉えた発達支援の課題
3.社会的問題から捉えた発達支援の課題
〈14章Q&A〉
15章 人の生きる生活世界における発達支援(秦野悦子)
1.発達心理学の知見をいかした支援
2.支援における3つの発達的観点
3.発達支援論
4.発達論的アプローチ
5.発達支援における多職種連携
6.実践研究とアクションリサーチ
〈15章Q&A〉
付録 発達心理学にかかわる法律・制度(坂本清美)
地域保健法 母子保健法 子どもの貧困対策推進法 いじめ防止対策推進法 子ども・若者育成支援推進法 児童福祉法 児童虐待防止法 発達障害者支援法 子ども・子育て支援新制度
コラム
外国語家庭の子どもの言語発達と支援(久津木 文)
子どもの証言と司法面接(仲 真紀子)
反応性アタッチメント障害とその支援(坂上裕子)
アロマザリング(近藤清美)
災害時における子どもと家族への心のケア(大島真里子)
発達心理学の知見はこんな職場でいきる(伊藤美咲)
索引
序章 人の発達を支えるということ(田中康雄)
I.はじめに
II.親の心を診立てる
III.親の心配をくみとる
IV.関係性の発達を診立てる
V.子どもの世界を尊重する
VI.発達障害を診立てる
VII.おわりに
総論
1章 発達心理学の基礎理論(岸本 健)
1.理論の学びをどのように支援にいかすか
2.発達段階理論
3.関係性の理論
4.行動主義の理論
5.社会・文化を基盤とする理論
〈1章Q&A〉
2章 発達とは何か(福島朋子)
1.発達を規定する要因
2.発達の生物学的基礎
3.発達を特徴づけるもの-発達の経過にかかわる原理
4.発達のプロセスを捉える
〈2章Q&A〉
3章 時間軸のなかでの人の発達(近藤清美)
1.人の生涯を捉える視点
2.ライフサイクルと人生移行
3.子どもたちの集団参加と学校への移行
4.子どもから大人への移行
5.大人における移行
6.高齢期への移行
〈3章Q&A〉
4章 定型発達と非定型発達(秦野悦子)
1.発達経路の多様性・多型性
2.障害の医学モデルから社会モデルそして統合モデルへ
3.非定型発達
4.非定型発達とその診断
〈4章Q&A〉
各論
5章 認知の発達(藤野 博)
【CASE】
1.感覚と知覚の初期発達
2.外界の認知と表象の発達
3.社会的認知の発達
4.障害や非定型発達への支援
〈5章Q&A〉
6章 知能の発達(中石康江)
【CASE】
1.知能とは何か
2.心理測定学研究からみた知能
3.知能の諸側面
4.知能をめぐる問題とその支援
〈6章Q&A〉
7章 言語とコミュニケーションの発達(小野里美帆)
【CASE】
1.前言語期のコミュニケーション
2.音声の発達
3.意味と文法の獲得
4.語用論の発達-会話とナラティブの発達
5.保護者の役割
6.言語とコミュニケーションの発達への支援
〈7章Q&A〉
8章 リテラシーの発達(川崎聡大)
【CASE】
1.リテラシーとは
2.萌芽的リテラシー
3.音韻意識
3.読み書きの発達
4.読み書き困難の実態とその背景
5.読み書き困難への支援
〈8章Q&A〉
9章 認知的情報処理と記憶の発達(田爪宏二)
【CASE】
1.認知的情報処理とは
2.実行機能
3.記憶のメカニズム
4.記憶の発達
5.認知や記憶の問題への支援
〈9章Q&A〉
10章 対人関係の発達(小島康生)
【CASE】
1.育ちのなかでの対人関係の発達
2.仲間関係の発達
3.集団における参加過程
4.仲間関係と適応
5.対人関係における不適応とその支援
〈10章Q&A〉
11章 情動の発達(坂上裕子)
【CASE】
1.情動発達のアウトライン
2.アタッチメントの発達
3.情動発達への支援
〈11章Q&A〉
12章 パーソナリティの発達(眞榮城和美)
【CASE】
1.パーソナリティの理論
2.気質と生物学的要因との関連
3.パーソナリティの発達過程
4.パーソナリティの発達にかかわる遺伝要因と環境要因の相互作用
5.子どもの気質の問題とその支援
〈12章Q&A〉
13章 自己の発達(佐久間路子)
【CASE】
1.自己とは何か
2.自己概念の発達
3.自尊感情と自己効力感
4.アイデンティティの発達
5.ジェンダーとセクシャリティ
6.社会的適応と自己の発達を支える支援
〈13章Q&A〉
支援への展開
14章 発達心理学の現代的問題(近藤清美)
1.生涯発達の視点から支援を捉える
2.年齢時期から捉えた発達支援の課題
3.社会的問題から捉えた発達支援の課題
〈14章Q&A〉
15章 人の生きる生活世界における発達支援(秦野悦子)
1.発達心理学の知見をいかした支援
2.支援における3つの発達的観点
3.発達支援論
4.発達論的アプローチ
5.発達支援における多職種連携
6.実践研究とアクションリサーチ
〈15章Q&A〉
付録 発達心理学にかかわる法律・制度(坂本清美)
地域保健法 母子保健法 子どもの貧困対策推進法 いじめ防止対策推進法 子ども・若者育成支援推進法 児童福祉法 児童虐待防止法 発達障害者支援法 子ども・子育て支援新制度
コラム
外国語家庭の子どもの言語発達と支援(久津木 文)
子どもの証言と司法面接(仲 真紀子)
反応性アタッチメント障害とその支援(坂上裕子)
アロマザリング(近藤清美)
災害時における子どもと家族への心のケア(大島真里子)
発達心理学の知見はこんな職場でいきる(伊藤美咲)
索引